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メドゥーサとカエルのぬいぐるみ
 世界の外れにある陽気なこの島では、漁師たちの言葉とWi-Fiがたのしそうに飛び交っていた。島の中央に行くと、小さいながらも立派な町並みが広がっている。町の背後にそびえる森の奥の奥には薄暗い洞窟があった。
 洞窟のなかでは、激しい剣と魔法の音が響き渡っている。おぞましい怪物の悲鳴があとに続いた。
「なかなかにやるな……。だがこれでおしまいだ」
 ゴルゴン三姉妹の末っ子、メドゥーサが不敵に笑う。
 徹夜続きで周りに隈のついた目と、真っ白い肌が、パソコンの光によって照らされていた。
 画面にはミュートロギア・オンラインという世界中で愛されているオンラインゲームが映っている。仲間と協力し合い伝説の怪物たちをやっつけるのだ。
 人間を石化してしまうことで恐れられたメドゥーサも、ネット社会の波には抗えなかった。現在は洞窟に引きこもり、絶賛ネトゲ中である
「よくぞ粘ったな。……私の手で滅びるがいい。ステンノーよ」
 ゲームのキャラクターが渾身の一撃を放つ。
 巨大な蛇の姿をしたステンノーが、光を放ち消滅した。
「また一つ平和に近づいたな……」
 メドゥーサは満足気にホッと息をつく。
 チャット画面では倒したことへの喜びの声と、お祝いコメントが並んでいた。さっそくメドゥーサも「いぇーい(^ ^)b」とコメントを打つ。
「メドゥーサ」
 後ろから名前を呼ばれてメドゥーサは振り返った。
 立っていたのは、ゲーム上の怪物ではなく。本物のステンノーだった。ゴルゴン三姉妹の一人で、メドゥーサの姉に当たる。
「ステ姉も見てくれていたのか……。私が見事悪しきステンノーを倒したところを」
 しばらく出かけていたが帰ってきたようだ。身体中から塩の匂いがする。
 ほとんど子供体型のメドゥーサと比べて、ステンノーは出るところは出て引っこむところは引っ込んでいた。
 きれいな顔に、不気味なほどの笑みが浮かんでいる。
「メドゥーサ、あなたは引きこもってどのくらい?」
「十年くらいだが……」
 パソコンを入手してから洞窟を出た覚えがなかった。アトランティスの闇市で買った水晶に三千年分の電気を蓄え、Wi-Fiが届きやすい位置をずっと確保していたのだ。
「そのあいだに誰か石化した?」
「ステ姉は愚かものだな。ずっとパソコンの前にいたんだからできるわけがないだろ……」
 何をわかりきったことをとでも言いたげに、メドゥーサは答える。
 ステンノーはため息をついて額を押さえた。ヘビの姿をした髪の毛も一緒になってうなだれている。
「ところで、頭のヘビはどうしたの?」
「あいつらキーを勝手に叩いてな……。邪魔だから野生に帰してやったよ」
 メドゥーサは人間と同じ髪の毛にしていた。しかもショートカット。傍から見ると普通の引きこもり少女にしか見えない。
「かわいいだろ……ゲームのヒロインと同じなんだぜ……」
 憐れみのこもった視線を羨望と勘違いしたらしく、メドゥーサが鼻を膨らませる。
 ステンノーが叫んだ。
「世界征服!」
「……?」
「世界征服はどうしたのよ?」
 何を言っているのかさっぱりわからないという表情でメドゥーサが首を傾げる。
「あなた五千年前の、かわいらしく『せかいせいふちゅ』っていっていたときの、その、あれは、どこへ行ったの? 『がんばってせきかちゅる』っていっていたあれは?」
「ああ……懐かしいな」
 メドゥーサは追憶の眼差しを浮かべたあと、誇らしげな顔で言った。
「ステ姉……。人は変わるのだ。私はこのミュートロギア・オンラインで世界を救おうと思ってる……。大切な仲間たちとともに……」
「あんたは倒される側だろうが!」


「まさか追い出されるとはな……」
 洞窟の外にメドゥーサはいた。入口にはステンノーのヘビが睨みをきかしている。
 人間を石化するまで洞窟に入れさせません、というのがステンノーのお言葉だった。
「しかし、外はまぶしいな……。まあいい。さっさと石化してゲームに戻ろう。待ってろ、我が仲間たちよ……」
 森のなかをメドゥーサは歩きだす。
 奥行きのある現実世界にクラクラした。ごつごつとした地面ではなく、柔らかい土の地面はどうもバランスが取りにくい。
「ひさしぶりに本物の人間に会うな……」
 メドゥーサは少し緊張していた。そういえばいつ水浴びをしただろうかと、肌の匂いをかぐ。嗅覚が鈍っているだけかもしれないが、特に変な匂いはしなかった。
「……一応、距離を置いて石化しよう。……何事にもエチケットがあるからな」
 一、二時間ほど歩くと、唐突に視界が開けて、家々が見えてきた。
 町に辿り着いたのだ。
「……?」
 メドゥーサは辺りを見回す。
 誰も歩いているものはいなかった。
「まあ家にいるだろ」
 さっさと済ませてしまおうと、メドゥーサは近くにあった家のドアを叩いてみる。
「すまない。石化させてくれないか」
 何度叩いても、応答がなかった。家のなかからは生活音が聞こえてくる気がするが、空耳なのだろうか。
 次の家も、次の家も、誰も出なかった。
「おい。頼む。石化しないと洞窟に帰れないんだ……」
 切羽詰まったメドゥーサは、乱暴にドアを叩きつける。
 ドアを震わすくらいの大声が返ってきた。
「うるせえ! こちとら、いま重要な戦い中なんだ!」
「なんだと……」
 窓から家のなかをのぞきこむ。男の背中とパソコン画面が見えた。どうやらゲームに熱中しているようだ。
「失礼した……。貴君の見当を祈る」
 メドゥーサはその場所を離れた。まさか町の人たちもゲーム中毒になっているとは彼女も思いもしなかった。ほとんど娯楽のないこの島では、ネットぐらいしか退屈を癒すものがなかったのだ。基本的に漁は午前で終わる。
「はたから見ると異常だな……」
 自分のことを棚にあげてメドゥーサがつぶやく。
 人間を求めて町のなかを歩いていく。
 引きこもりで弱った体力のせいか、五分と歩かないうちに疲労がピークになっていた。
 壁に寄りかかり、ため息をつく。
「パソコンのなかだったら、いくら歩いても疲れないのだがな……」
 目を閉じる。足音が聞こえてきた。目を開ける。
 こっちに向かってくる老人を発見した。杖をついている。
「……ふふふ。これで家に帰れるぞ」
 憐れな獲物は自分が狙われているとも知らずに近づいてきた。
 石化するためには見つめ合わないといけない。
 すまん石化させてくれ、とメドゥーサは老人に言うつもりだった。しかし、実際の人間を目の前にすると緊張して言葉にならなかった。
「あ、あの……」
「あ? なんじゃ!」
 耳の遠くなった老人が大声で聞き返す。
 メドゥーサは肩をびくっと震わせる。老人がこっちをじろりと睨んでいるのはわかった。恥ずかしさと恐怖で視線を合わせられない。
(なんだこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいぞ……)
 引きこもっているあいだに対人恐怖症になってしまったらしい。それに加えて、自分の匂いが気になる。
 老人は鼻をくんくんとさせていた。
 メドゥーサは打開策として、ちらっと見ることにした。さっと顔を動かして、さっと戻すのだ。
「なんや、その奇っ怪な動きは! 新しいダンスか!」
 ちょっとずつ老人の足が石化していく。三〇秒近くかけて、ようやく膝のところまで石化できた。
 よし、この調子だ、とメドゥーサは思った。
 その矢先に、老人が叫ぶ。
「なんだ、足腰が丈夫になった。杖がいらんぞ!」
 喜んだ老人は杖を放り投げると、駆け足でその場を去っていった。
 夕焼けが町並みを染めていた。メドゥーサは一人、取り残された。


「おかえり。おいしいシチュー作ってあるよ。石化できた?」
 ゆっくりとした足どりでメドゥーサは洞窟に帰ると、ステンノーが凸凹とした鍋を使ってシチューを作っていた。ヘビが炎を吐いて鍋を温めている。
「ああ。見てくれ」
 メドゥーサはポケットから石化したカエルを取り出した。帰るとき森で遭遇したのだった。
「ステ姉にプレゼントしようか」
「んー。あらかわいい」
 ステンノーは手を口もとに当てて喜ぶ。それから小首を傾げる。
「それで石化した人間は、どこかな?」
「いないが」
「あ?」
 ステンノーのどす黒い声が洞窟に響き渡った。ヘビの髪の毛がメドゥーサの顔に迫ってくる。
「カエルしか石化してないっていうのかしら」
 メドゥーサは顔をそむけながら言った。
「……ステ姉、何を言う。命は平等だろ」


「まさか鍋ごとシチューをかけられるとはな……」
 メドゥーサの体はシチューまみれだった。洞窟の入口ではステンノーのヘビがシャーシャー言いながら回転している。 
「困ったな……」
 もう辺りは暗い。夜になっている。
「これじゃ明日のログボがもらえない……」
 ログインするたびにゲーム内通貨と回復薬がもらえるのだった。また町へ行って誰か石化するしか方法はなかったが、メドゥーサの体力はもう限界だった。
 地面に倒れこみ、ため息をつく。
「……しかし、見つめ合うのがあんなに恥ずかしいとはな」
 ヘビの髪の毛があったころは、何もしなくても人間の方が恐怖でおののきながら自分を見てくれた。
 しかしいまはメドゥーサとして一対一で見つめ合わないといけない。しかもヘビがいないせいもあり石化にも時間がかかる。カエルのときでさえたっぷり二秒かかった。
「このままだと一生ゲームができない……」
 そもそも島には住民が少なすぎるのだ。しかも町まで遠い。
「……こういうときは友に限る」
 スマートフォンを取り出すと、メドゥーサは友人に電話をかけることにした。
「もし」
 電話に出たのは、イザナミノミコトだった。日本の女神である。死んでいる彼女には石化が効かないらしく、メドゥーサにとって心許せる相手だった。二回ほど現実で会ったことがある。
「イザちゃん、ちょっといいか」
「誰だよ」
「メドゥーサだよ、メドゥーサ」
「どうした。この世の終わりみたいな声の調子じゃないか」
「このままだとミュートロギア・オンラインにログインできないんだ。世界を救うことができない……」
 メドゥーサはこれまでの出来事を話した。話しながら頬についたシチューを舐めとってみたが、しょっぱくて顔をしかめる。
 イザナミノミコトが興味なさそうに言う。
「ふーん。あんたも大変だね」
「……ああ。早急に石化しなくてはならない。目と目が会っても恥ずかしくない相手ってわかるか?」
「犬」
「かわいいのは駄目だ」
「ブルドック」
「駄目だ。想像しただけで顔が赤らむ。……それに人間じゃないとステ姉は許してくれないって言っただろ」
 メドゥーサは今日何回目かわからないため息をつく。目の前にある森の葉っぱの塊が揺れて音を立てている。自分をあざ笑っているかのようだ、とメドゥーサは思った。
「別にさ、石化しなくても、日本に来て新しいパソコン買えばいいじゃん。最新型のいっぱいあるよ」
「なるほど。その手があったか」


 さっそくメドゥーサは泳いで日本に渡った。泳いだといっても、ほとんど鯨やイルカの背中で寝ていただけだった。
 イザナミノミコトの言ったとおり、東京のお台場から陸にあがる。眩しいほどの晴天だった。これなら濡れた服もすぐかわいてくれるだろう。
 スマートフォンで位置情報を確認する。
「……ここから、秋葉原なる土地を目指せばいいのだな」
 イザナミノミコトは先に言って待っているらしい。
 歩き出すと、見渡すかぎりあちこちに人間がいた。メドゥーサが住んでいた島では考えられないほど大きな建物がそびえている。
「ふーむ。電車という巨大なヘビみたいなものに乗ればいいらしいが……」
 スマートフォンの地図をぐるぐる回転させても、どこをどう行けば駅につくかわからなかった。
「もしかしてきみ困ってるの?」
 貴金属を顔中に埋めこんでいる男が、メドゥーサに話しかけてきた。メドゥーサはうつむきながら答えた。
「……電車に乗りたいのだが……」
「オッケー。俺が切符を買ってきてやるよ。財布は?」
「ここにある」
 メドゥーサはカエルの財布を取り出した。
「さんきゅー」
 男がさっと奪いとると、走ってその場を去っていく。
 小さくなっていく背中を見ながら、メドゥーサは心穏やかな気持ちになっていた。
「……そんなに急がなくてもいいのに。現実世界にもいいやつはいるものだな」
 走っていた男の体が急に前のめりに倒れた。
 急に青年が現れて、男の腕をしばりあげたのだ。辺りが騒然となっている。
「大変だ!」
 どうやら強盗が現れたらしい。善良な男を助けようとメドゥーサは駆け寄っていった。
(しかし……、二人も人間がいると恥ずかしさも二倍だな……)
 メドゥーサは片手で顔を隠すようにしながら近づいていった。
「そ、その男を離せ」
 捕らえられた男は苦悶の声をあげていた。
 青年がメドゥーサの方を向く。指の隙間からのぞきこむと、なかなかの好青年だった。
 背が高く、顔が整っている。ゲームの主人公のような風格をともなっていた。
「これはおまえの財布だろ」
 カエルの財布がさし出される。びっくりしてメドゥーサは上半身を逸らした。
「そ、そうだが。彼は私のために……」
「万引きだ」
「なんだと……。そういうものなのか」
 確かに逃げるように去っていったな、とメドゥーサは思い返す。てっきりあれは日本流の礼儀だと思っていた。
 財布を受け取る。
「……よく戻ってきたなカエルくん。もうおまえを離しはしないぞ」
 青年は訝しそうにメドゥーサを見た。視線を感じてメドゥーサは顔をそむける。落ちている石に視線を合わせた。
「日本ははじめてなのか?」
「……まあ。そうだ」
「よかったら、俺が案内してやろうか。そのまえにこいつを警察に連れていくが」

 
 メドゥーサと青年は電車に揺られている。
 心やさしき青年に、連れていってもらえることになったのだ。ちょうど青年も秋原葉に用があるらしい。恥ずかしさで死ぬとメドゥーサは思ったが、ゲームのために背に腹はかえられない。もう三日もログインできていなかった。
 車内には大量の人間がいたが、ドアの窓から景色を見ることで難を逃れていた。金属のドアにおでこをくっつけると、その冷たさから洞窟での生活を思い出す。
 慣れない土地でメドゥーサははやくも心細さを感じていた。
 自然とため息がこぼれる。
 ちらっと青年の方を見ると、同じように窓の外を眺めていた。
 おでこから伝わる震動を感じながら、メドゥーサは言う。
「……さっきはすまんな。助かった」
「いや。大したことはしてない」
「こうして連れていってくれて、何から何まで恩に着る……」
「……」
 青年は黙った。目には強い意志がこもっていた。
「笑われるかもしれないが、俺は悪が許せないんだ」
「……私もそうだ。私も世界を守るために日夜戦っている」
 メドゥーサが言っていたのはもちろんゲームのことだったが、彼女にとってはリアルよりミュートロギア・オンラインの方が大切だった。
 メドゥーサはじいっと青年に視線をそそいでいる。見つめ合わない限りは石化しないことがいまはありがたかった。
 青年は笑みを浮かべながらメドゥーサの方を見た。顔を赤くしながらメドゥーサは視線を窓へと逸らす。
「変なやつだな」
「……そうなのか。自分ではよくわからないが」
「俺が言えたことじゃないけどな」
「何を言う……。悪は滅ぶべきだ」
「俺は正義のために戦う」
「私もだ」
 青年とメドゥーサは神妙な顔つきでうなづきあっていた。
 近くにいる乗客が「なんだこいつらは」という目で見ているが、二人は気にもとめていない。
「……なぜかはわからんが、おまえとははじめて会った気がしない」
「私もだ……」
 メドゥーサの心のなかには、いつの間にか心細さがどこかへと消えていた。

 
 秋葉原に降りたったメドゥーサは、あまりの人の多さに頭が痛くなりそうだった。青年の後ろに寄りそうようについていく。
 あちこちから人の喋り声や、電子音がする。
 メドゥーサの目を惹きつけたのは、ゲームセンターだった。
「かわいそうに。閉じこめられているぞ」
 ガラスのなかに大量の動物のぬいぐるみが押しこめられていた。ガラスに両手をつけて囚われのものたちを見る。
 青年が後ろから言った。
「これはUFOキャッチャーというんだ。お金を入れて取るんだ。俺もはじめて見たときは悪の仕業だと思ったんだが」
「そうか……」
 メドゥーサの視線はガラスのなかのカエルに釘付けになっていた。
「どれ」
 青年がお金を入れる。アームを動かすとカエルのキャラクターのぬいぐるみを掴んで見事穴に落とした。
「ほれ」
「……いいのか?」
 カエルのぬいぐるみは手のひらくらいの大きさしかなかったが、メドゥーサは心の底から喜びが湧きあがってくるのを感じていた。
 ふと顔をあげるとゲームセンターの奥にはずらりとゲームが並んでいる。
「すごい。ゲームがいっぱいある……」


 メドゥーサはあらゆるものに目をとめたが、文句を言うことなく青年は付き合ってくれた。
 二人はクレープ屋のまえに立っている。
「悪いな……」
「いや俺も助かっている。こうしていれば敵も俺に気づかないだろ」
「敵……。すごいな。本当に正義の味方なんだな……」
「まあな」
「……おいしい」
 メドゥーサはクレープを食べて驚きの声をあげた。あまりのおいしさに咀嚼を終えないまま、もう一口かじる。
 青年は穏やかな眼差しでメドゥーサのことを見つめていた。それに気づかず、メドゥーサは満足そうに微笑んでいた。
(現実世界も楽しいものだな……)
 メドゥーサは秋葉原観光を満喫していた。
「ところで用事はいいのか」
 青年の一言で、すっかり目的を忘れていることに気づく。
「……そうだ。パソコンを買いに来たんだった」


 入ったお店では、パソコンがずらっと並んでいた。とはいっても、どれがいいものなのかメドゥーサにはさっぱりわからない。
「……欲を言えばぜんぶ欲しいところだが、そんなに持てないしな」
 店員の勧められるままに、最新式のノートパソコンを選んだ。webカメラやタッチパネルがついているらしいが、ゲームができればそれでよかった。
 ノートパソコンの入った紙袋を抱えてメドゥーサはお店から出てくる。
「よし。これで目的は達せられた……」
 ようやくミュートロギア・オンラインができるというのに、途端に物寂しい気持ちに襲われた。
 隣に立っている青年を見上げた。それなりに一緒にいたからか、視線を合せないようにするのに慣れはじめている。
 目的が達せられたということは、青年がメドゥーサと一緒にいる理由はなくなったということだ。
「……貴殿はどうするんだ。用事があるんではないのか」
「ああ。だが……」
 メドゥーサのスマートフォンがぶるぶると震えだした。
「失礼」
 慌てて出ると、イザナミノミコトの拗ねた声が聞こえてきた。
「あんた。約束したのにすっかり忘れちゃってさ」
「……イザちゃんか。すまない」
 秋葉原で落ち合う約束を思い出す。そもそも日本に来たのはイザナミノミコトが言ったからだったのに、すっかり忘れていたのだ。
「しかしパソコンは手に入れたぞ。これで世界を平和に導くことができる」
 伝説の剣のように、紙袋を高く掲げた。
 電話の向こうのイザナミノミコトの声が焦ったようなものに変わった。
「ちょ、あんたいまどこにいるの?」
「ん……」
 メドゥーサは振り返ってお店の看板の名前を読み上げた。
「……自分が誰と一緒にいるかわかっている?」
「誰って?」
 そこではじめてメドゥーサは青年の名前を知らないことがわかった。名前を知らないどころか素性もよく知らない。
 正義心あふれる心やさしい人物だ、とメドゥーサは思っていた。
 イザナミノミコトのため息が聞こえてくる。
「いい。いますぐそいつから離れて、右手にある路地をまっすぐ進みなさい」
「すまぬが、少し待っていてくれ……」


 路地をまっすぐ進んでいくと、思いっきり腕を掴まれた。そのまま建物の壁に押しつけられる。
「あんた、何してるのよ」
 怖い表情をしたイザナミノミコトの顔が目の前にあった。狐のように細い目がさらに細くなっている。
「……買い物だが」
 メドゥーサには、イザナミノミコトが不機嫌な理由がわからなかった。
「あれ、ペルセウスじゃない? あんたの宿敵でしょ。殺されたいの」
「そうか。どうりで見たことあると思ったな。……何千年ぶりだからお互い変わってしまった……」
 メドゥーサは他人事のようにつぶやいた。
「とっとと、やっつけちゃいなさい」
「駄目だ。……できない」
 メドゥーサは首を横に振った。
「あんたは悪よ。悪。忘れたの?」
「……話しあえばわかってくれるさ」
「バカ。知らない。勝手に殺されろ」
 イザナミノミコトはメドゥーサに背中を見せると、すっと消えてしまった。


「実は……私はな……」
「おまえだから話そう」
 戻って青年に自分がメドゥーサであることを伝えようとしたが、そのまえに青年は話し出した。
「近いうちに、日本で数多くの人間が石化されるという予言を受けた。おそらくメドゥーサの仕業だ」
「……」
 メドゥーサは絶句する。
 新しいパソコンも手に入ったし、そんなことをするつもりはなかった。
「どうやら東京のどこからしい。そうだ。おまえも手伝ってくれないか。一緒に悪しきメドゥーサを倒すんだ」
「……それは、本当なのか?」
 ペルセウスは真剣な表情でうなづく。
「もし、……それが嘘だったらどうする? メドゥーサが何もしなかったら。改心したとしたら」
「それでも俺はあいつを殺すつもりだ」
「なぜ……?」
 ペルセウスはメドゥーサの悪行の数々を連ねた。
 ほとんど言われのない噂だったが、なかには本当のこともあった。メドゥーサは数千年前の自分の行いを恥じた。
 自分が現実世界では悪であることを改めて認識する。
 そして、ペルセウスの倒す相手であることも。
 ペルセウスはメドゥーサに向かって片手を差しだした。
「一緒にメドゥーサを倒すのを手伝ってくれないか」
 差しだされた手のひらをメドゥーサは悲しい眼差しで見つめていた。
「……いや……私はもう帰るよ。いままでありがとう……」
 メドゥーサはとぼとぼとその場から離れだす。
 ペルセウスが何か言葉を言ったが、メドゥーサの耳には届かなかった。
 何もかもが歪んでみえる。
 頭のなかに次々と言葉が浮かんでいく。
(何が悪を倒すだ。……私がそもそも悪なのではないか。人間をを石化するんだ。殺されて当然だよ。あまつさえ私は、ゲームのために言われるがまま石化しようとした。何が正義だ。私には不可能だ。そうだ。思い出せ。私がいていいのはここではない。ミュートロギア・オンラインだ。そこでなら私はヒーローになれる。世界を救えるのだ)
 ため息をついて、メドゥーサは立ちどまった。
「そこのお嬢さん。ちょっとインタビューいいかな」
 呼びかけられてメドゥーサは顔をあげる。
 巨大なカメラが目の前にあった。
 どうやらテレビカメラのクルーらしい。
(どうだっていい……)
 虚ろな表情を浮かべたまま、メドゥーサはじっとカメラの丸い部分を見つめた。


 悲鳴が響きわたる。
 はっとしてメドゥーサは辺りを見回した。
 あちこちで人々が石化している。石化していない人間も突然の出来事にパニックになっていた。目の前のカメラを持った人間も石化している。
 ビルの巨大テレビに自分が映しだされていることに気づく。画面の左上にはLIVEという文字が浮かんでいた。
「……まさか」
 メドゥーサは慌ててカメラの前から移動した。しかし時はすでに遅かった。
 ペルセウスが受けた予言通り、テレビを通して大量の人間が石化していた。
 メドゥーサはどうすることもできず辺りを見回す。
 生き残った人間たちは彼女の姿を見ると、みんな悲鳴をあげて逃げていく。
「嘘だったのか」 
 声のする方を向く。怒りに満ちたペルセウスの姿があった。メドゥーサの足元をじっと睨みつけている。
「正義のために戦っているというのは、俺をだますための卑劣な策か。メドゥーサよ……」
「ち、ちがう。……こんなつもりはなかったのだ。私は本当に正義の――」
「おまえとはわかりあえると思ったのに……」
 ペルセウスが苦悶の表情を浮かべる。
 手をかざすと、光の剣が現れた。
「おまえを倒し、世界を救う」
 メドゥーサのもとへ斬りかかってくる。
 メドゥーサはそれをぼんやりと眺めていた。ペルセウスを石化させてしまわないように目線を少し下げる。
(……そうか。私が死ねばみんなは……)
 しかしいつまでたってもメドゥーサの体に痛みは走らなかった。
「ほんと。馬鹿な友だち持つと大変だわ」
「イザちゃん……」
 イザナミノミコトが、メドゥーサを抱きかかえるようにして走っている。
「おのれ……」
 ペルセウスが追いかけてくる。
「イザちゃん……降ろしてくれ。私は死ぬべきなのだ……」
 イザナミノミコトがため息をついた。
「あんたは帰るのよ」
 イザナミノミコトが指を鳴らすと、一瞬で辺りが暗くなる。メドゥーサは急激に眠くなって目を閉じた。


 目を開けると、そこは見慣れた島だった。目の前に真っ暗な海が広がっている。波の音が聞こえてくる。
 夢だったのか、とメドゥーサは思う。
 近くに落ちている紙袋がそれを否定した。
「こんなもの……」
 思いっきりノートパソコンを叩きつけてやろうと振りかぶった。
「あ……」
 そのとき、紙袋の口からカエルのぬいぐるみが地面にぽとっと落ちた。ペルセウスがUFOキャッチャーで取ってくれたものだった。何も知らないように呑気に微笑んでいる。
「…………」
 メドゥーサは、カエルとノートパソコンを抱きしめて、洞窟に向かって歩きだした。


「……ただいま」
 メドゥーサが帰ってくると、ステンノーはあふれんばかりの笑顔を浮かべた。メドゥーサをきつく抱きしめる。
「素晴らしいわ。よくあんな策を思いついたわね」
「ああ……」
「さすが私の愛すべき妹だわ。ベストオブ悪って感じ」
「そうだろうな……」
「動画サイトで拡散されてるし。世界中の人間が石化されるのも近いわね」
「どうでもいい……」
 ステンノーのハグから逃れると、メドゥーサは洞窟の隅っこで丸くなった。愛用のパソコンも、買ってきたノートパソコンも手をつけようと思わない。
 カエルのぬいぐるみを抱きしめたまま目を閉じる。
 ただこのまま千年近く眠りたい気分だった。できれば目覚めたくないとさえ思う。
「……どうしたのよ? ゲームしていいのよ」
 ステンノーが心配そうな声を出しながら、寝ているメドゥーサの体を揺さぶる。
「……いい」
「ゲームしたら気分が晴れるって。忘れることよ。人間なんてどっちみち一〇〇年もしないで死ぬんだから。邪魔者の私は消えるから、ね。ほら、立つ。混乱している世界を見てくるわ」
 ステンノーはそう言うと、スキップしながら洞窟から出ていった。
 メドゥーサは目を開けて、重たい体を起こす。
「……そうだな。私は悪だが……せめてゲームの世界くらい平和にしてやらんとな……。仲間たちも私を待ってるだろ……」
 愛用のパソコンを起動させた。
 ひさしぶりのミュートロギア・オンラインの画面に少しだけ心が軽くなる。
 しかし、人が少ないことに気づく。あれだけ賑わっていたのにおかしい。
 パーティも半分ほどしかいなかった。
 メドゥーサはチャットで理由を尋ねる。
 すぐに返事がやってきた。
「化物のメドゥーサがみんな石化しちまうからだろ」


 メドゥーサは倒れこんだ。体中から力が抜け落ちていく。
(みんな私のせいだ。私が……。やはりあのとき殺されればよかった……)
 メドゥーサの頭のなかに浮かんだのは、ペルセウスの怒りに満ちた顔だった。それから正義に燃える力強い顔、少し微笑んだ顔が浮かんでいく。どれも石化してしまわないように、こっそり盗み見たものだった。
 メドゥーサの目から涙が流れていく。声をあげて泣き出した。メドゥーサが泣くのははじめてのことだった。
 ゲコゲコという声が聞こえてきて、ポケットからカエルが飛びだした。どうしてこんなところにカエルがいるんだ、とメドゥーサは思う。
 いつか石化したカエルだった。ポケットに入れっぱなしだったらしい。
「そうか……。涙で石化が解けるんだな……だが、いまさらわかったところで……」
 メドゥーサは自嘲気味に笑う。
 あれだけの人間を石化したんだ。カメラで全国に放送でもしない限り無理な話だった。
「カメラ……」
 メドゥーサははっと思い出して、紙袋を見つめる。
「確か店員がWebカメラがついてるといっていたな」
 メドゥーサは急いだ。ノートパソコンをセッティングする。
 この涙が乾かないうちにはじめないといけない。
 うまくいくかはわからなかった。
 それに自分の泣いている姿を流すのは、恥ずかしかった。しかし恥ずかしがっている場合じゃない
 自分の顔が画面に映る。メドゥーサは、ライブストリーミング配信サイトで自分の泣き顔を流した。録画して動画サイトにもアップロードする。
 スマートフォンが震える。「拡散しといたよ^_^」と、イザナミノミコトから届く。
「ありがとう……イザちゃん」
 再生回数がどんどん伸びていく。
 石化した人間に見せるともとに戻る動画として話題になり、世界のあちこちで映像が流された。
(ステ姉にまた怒られるだろうな……)
 メドゥーサは涙を流しながら微笑んでいた。


 それから数週間後。
 世界のはずれにある陽気な島。町は静まりかえっている。その背後にそびえる森の奥の奥の洞窟で、メドゥーサは今日も戦っていた。
「エウリュアレーよ……私の必殺技のまえに滅びるがいい」
 ゲームのキャラクターが空から光の剣を出して一刀両断する。
 エウリュアレーが悲鳴をあげながら消滅した。
 チャット画面がお祝いコメントで埋めつくされる。そのなかにペルセウスの名前を発見する。「やったな」という文字列が並んでいた。
 本物のペルセウスではないことはわかっていた。彼はおそらく現実で悪と戦っているのだろう。それでもじんわりとした喜びが広がっていく。
「やったぞ……」
 そうつぶやきながら、メドゥーサはカエルのぬいぐるみを抱きしめた。
ささしろ 

2016年04月13日(水)23時06分 公開
■この作品の著作権はささしろさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
扱ったのはメドゥーサです。かなりアレンジしているのでアウトだったらすみません。
地の文少なめ。会話文多め。テンポ速め。
微妙に暗いですが、軽い感じを意識しました。読んでくださると幸いです。

2016年05月14日(土)21時25分 ささしろ作者レス
ナマケモノさんへ

実際は死んでいるんですが、そこらへんはIFということで許していただけたらな嬉しいです。三姉妹のなかでメドゥーサが一番有名というのもあって、読者さんもイメージしやすいんじゃないかなと思いました。
ストーリーよかったですか。ありがとうございます。
髪の毛がヘビじゃない件は、ストーリー上問題がありまして、ヘビだと日本へ行くときにパニックになっちゃうので原作通りだと難しかったです。あと、メドゥーサを弱らせたかったというのもありますね。
感想ありがとうございました。

 

nice290
pass
2016年05月09日(月)19時52分 ナマケモノ
どうも、ケモノと申します。本作を読ませていただいたので、感想を書かせていただきます。とにかくメドゥーサが可愛い作品でした。
 ペルセウルに首切られて死んじゃったんじゃなかったっけという疑問はありますが、最後まで彼女の可愛さにきゅんきゅんできる作品でした。
 総合1位もなっとくの安定感のあるストーリー展開が何とも羨ましいです。ただ、もうちょっとストーリーを膨らませてもよかったかもしれません。あと、髪の毛が蛇じゃないってどうゆうことでしょうか? そこはちゃんと原作に忠実でいて欲しかったです。
 

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2016年05月08日(日)23時03分 ささしろ作者レス
【たぬきさんへ】

オチが好みだということで嬉しいです。賛があると安心します。
やっぱり展開はやかったですね。ペルセウスとのエピソードをもう少し掘り下げられたらよかったんですが、普段そういった恋愛物を書かないもので、私の実力だとこれが限界でした。もう少し時間があれば……というのは言い訳ですね。
感想ありがとうございました。


【99kgさんへ】

面白かったと言っていただいて嬉しいです。
あ、拡散の問題がありましたね。思いっきり失念していました。自分のなかではステンノーが拡散させたという感じがあったのですが、イザナミというのもおもしろいですね。
涙の映像で石化が解けるというのは、やっぱり強引すぎたかなと思います。できるだけ話を大きくしたかったので、たたむところで無理が生じてしまいました。
ラストも、本当はもっとハッピーにしたかったんですけどね。最後の方は自動筆記状態でした。
感想ありがとうございました。


【いりえミトさんへ】

文章とキャラクターを褒めていただいて嬉しいです。
大きな指摘はないということで、ほっとしています。
感想ありがとうございました。


【T.Kさんへ】

新しい物になっていると言っていただいて嬉しいです。メドゥーサだと、やっぱりありきたりなのかなと少し不安でしたが、大丈夫そうでよかったです。
感想ありがとうございました。


【茉莉花さんへ】

おもしろかったといってもらって嬉しいです。
そうですね、後半少し駆け足ぎみだったかなと思います。
老人の足の石化シーンは、自分的には両足が離れている感じで書きました。全体的にリアルではなく、カートゥン調をイメージしました。ですが、カートゥン調といっても気になる人は気になるでしょうね。もう少し読者のことを考えられるように気をつけます。
カエルのシーンは言われてみて気付きました。茉莉花さんや、他の何人から指摘があった通り、やっぱり設定が甘かったですね。読者の方に違和感を覚えさせないようにがんばりたいと思います。
感想ありがとうございました。


これで全員だと思うのですが、抜けていたら言ってください。
改めまして、みなさん感想ありがとうございました。色んな意見があって、とても参考になりました。自分の小説について、率直に言っていただける機会がめったにないので、大変ありがたく思っています。
また次の機会がありましたら、よろしくお願いします。


 

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2016年05月08日(日)22時50分 ささしろ作者レス
【兵藤晴佳さんへ】

楽しんでいただけたようで何よりです。
そこまでしてネトゲやりたいのかよ……、というのは作者が言うのもあれですが、私もそう思います。
感想ありがとうございました。


【おいげんさんへ】

軽妙で面白いと言っていただけて嬉しいです。
そうですね、ベルセウスは何してたんでしょうか。言われてみて、はじめて気づきました。そこら辺、設定が甘いですよね。読者に、「?」マークが浮かばないようにもっと詰めていきたいです。
感想ありがとうございました。


【七月鉄管ビールさんへ】

あ、やっぱり既視感ありましたか。メドゥーサは安易かなと自分でも思いました。神話について全く知らなくて、色々と調べてみたんですけど、一番ピンと来たのがメドゥーサだったんです。
みんな知っているぶん、恐ろしい怪物じゃなくて親しみやすく書いてみようと挑戦しました。
七月鉄管ビールさんの感想を拝見させていただくかぎり、メドゥーサのこと気に入っていただけたようで嬉しく思います。
感想ありがとうございました。


【ハイさんへ】

やっぱり誤字がありましたか。できるかぎり見返したんですけど、これからはもうちょっとじっくり見返すことにします。
なるほど。構成の仕方、参考にさせていただきます。自分でも少し終盤、駆け足だったかなと思っていました。クライマックスを長くですね。
カゲロウデイズは名前は知っているんですけど、アニメなのか小説なのかもわからないレベルです。もし観ていたら無意識的にやっちゃったかなと思うんですけど、知らなかったので少し戸惑いました。ただ、知らなかったで済む問題ではないかと思うんで、今度観てみます。観るのが怖いんですが、若干というハイさんの言葉を信じてみようかと。
これからはできるだけ似ている作品を事前に調べるようにします。
ストーリーが凄く良かった、という言葉うれしいです。
感想ありがとうございました。


【wさんへ】

冒頭がイマイチということですね。石化を頑張らなければならない理由が薄く、というのは確かにそうかもしれないです。参考になります。
疲労の部分は、文章をいじっているときにおかしくなってしまったところです。もうちょっと推敲をがんばります。
展開と伏線を褒めていただいてありがとうございます。ほとんどプロットを作らないので、物語を進ませようとして展開が多くなるのかなと思っています。
感想ありがとうございました。


【志田 新平さんへ】

メドゥーサを気に入っていただいてありがとうございます。
そうですね、やっぱり中盤以降急ぎすぎたのかなと思います。もう少し描写を増やして読者を置いてけぼりにしないようにしたいです。
メドゥーサが「本物のベルセウスかも」と思うっていうのもありですね。参考にさせていただきます。
感想ありがとうございました。

 

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2016年05月08日(日)22時37分 ささしろ作者レス
はじめまして、ささしろと申します。たくさんの感想ありがとうございました。ライトノベル作法研究所自体は前々から知っていたのですが、鍛錬室含めて今回が初投稿になります。なので、感想の多さにびっくりするとともに、本当にありがたく思っています。これであと三年くらいは一人でがんばれそうです。

読者さん、感想者さん、企画者さん、管理人さん、ありがとうございました。
というわけで、感想のお返事に移させていただきます。


【たかセカンドさんへ】

前半の会話劇は楽しめたということで嬉しいです。雰囲気の変化については、こちら側で配慮が足りなかったかなと思います。最初の方に暗示(予告)みたいなものがあればよかったのですが、思いっきり失念していました。
ペルセウスとのエピソードの不足もそうですね、やっぱり中盤から駆け足すぎたかなと思います。
感想ありがとうございました。


【ミチルさんへ】

最後まで読みきってくれたみたいで嬉しいです。
そうですね、もうちょっとハッピーで明るい感じにしたかったんですが、ミチルさんの仰っているとおり、ちょっと都合いいかなと思ってしまって、難しかったです。
全体的にお褒めの言葉ありがとうございました。


【キーゼルバッハさんへ】

はじめてこの感想見たとき、ほんと感動してしまいました。ここまで書いてもらうと作者冥利に尽きます。私は設定とかプロットをほとんど書かないタイプなので、こうしてまとめてもらったのを見るととても新鮮でした
面白く読んでいただけたようで嬉しく思います。
最後については、メドゥーサがペルセウスをゲームに誘う、という風に最初はなるんじゃないかなと思っていたんですが、書いているうちに自然とこうなってしまいました。もう少し納得できるような終わり方ができなかったのは、私の実力不足ですね。
感想ありがとうございました。


【たてばんさんへ】

文章、設定、構成、褒めてくださってありがとうございます。
疲労のところは、「あ……」っていう感じですね。ここら辺は推敲しているときにいじった部分で、それで整合性が取れなくなってしまったのだと思います。
次の指摘もそうですね。テンポ良くしようとして失敗しちゃったやつです。ここも推敲でいじったところなので、変に文章いじるとやっぱり浮いてしまうのかな、と思いました。
感想ありがとうございました。


【コボルトスキーさんへ】

テンポを褒めていただきありがとうございます。
ラストはそうですね、他の方も仰っているとおり、半端に終わってしまったのかなと思います。
感想ありがとうございました。


【つとむューさんへ】

ところどころ笑っていただけたようで嬉しいです。
そうですね、冒頭は確かにカタカナ多いですね。いつもはだいたい現代物を書いているので、気を配ることを忘れていました。助かります。
涙の映像で石化が解ける、っていうのは自分でも強引だなと思ったのですが、他に方法が思いつかなかったので、そうしました。
感想ありがとうございました。

 

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2016年04月30日(土)03時31分 茉莉花10点
作者の方へ

茉莉花と申します。
拝読しました。
かなり粗い感想となりますがご容赦いただければ嬉しいです。

総じて言うとおもしろかったです。

特にメドゥーサのキャラクターと前半の設定がいいなと思いました。
その反面、後半……特に秋葉原に行ってからの展開が若干駆け足だったのかな、と思います。

あと、私の読解力の低さかもしれないのですが

> ちょっとずつ老人の足が石化していく。三〇秒近くかけて、ようやく膝のところまで石化できた。
 よし、この調子だ、とメドゥーサは思った。
 その矢先に、老人が叫ぶ。
「なんだ、足腰が丈夫になった。杖がいらんぞ!」
 喜んだ老人は杖を放り投げると、駆け足でその場を去っていった。

ここが情景として少しうまくイメージできませんでした。
膝まで石化できたのに駆け足で去っていくというのはどういう状況なのかな、と考えてしまいました。
何かの読み落とし、誤読でしたら失礼しました。


もうひとつ、非常に細かい部分で恐縮なのですが、石化したカエルについて……
涙で石化がとけるということなのですが、これは涙を流すメドゥーサを石化したものに見せれば(正対させれば?)石化がとけるということでしょうか?
カエル……ポケットに入っていたら彼女が泣くところは見えないんじゃないかなーと思いますが、そのへんはどうなんでしょう?

総じて言うと、キャラクター・文章のかけあいでは抜群のおもしろさがあったものの、中盤から少しごちゃっとした印象を受けてしまいました。あとは細部の設定かな、個人的に気になったのは。

それでも、充分に楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

 

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2016年04月30日(土)00時43分 T.K30点
設定は基本から外れていないのですが、ハートフルな恋愛物に当てはめる事で新しい物になっていると思います。
これといった毒も無く、安定した読み安さがあると思います。
細かい突っ込み所を感じさせないシンプルなノリがいいですね。

 

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2016年04月26日(火)00時08分 いりえミト30点
 『メドゥーサとカエルのぬいぐるみ』拝読しました。


 メドゥーサとネトゲという組み合わせが面白かったです。
 あの恐ろしいイメージのあるメドゥーサがぐーたらでネトゲ漬けになっているとは、なんというギャップ萌えw
 文章はとても読みやすいですし、メドゥーサ以外のキャラクターもそれぞれ個性的で好感が持てて(特にイザちゃんが良い味出してました)、終始楽しめました。

 秋葉原で宿敵ペルセウスに出会い、カメラのせいで多くの人が石化し、そして最後はまたカメラによって石化を治すという話の流れも見事でした。
 前半のコメディと後半のシリアルのバランスもいいですし、全体として大きな指摘はありません。
 面白かったです。


 短いですが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。

 

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2016年04月30日(土)00時20分 99kg40点
総評としては面白かったです。

頭のヘビを野生に返したって……、寄生だったんかい!
と突っ込み。伝承でも抜けるそうですね。なのでかなり短髪なイメージです。

多くの場合、鏡で石化視線が跳ね返るのだから、テレビ越しでも拡散しますね。
伝承ではペルセウスは鏡に映った像を見ながら倒したので、厳密には返らないと思われます(諸説あります)。
(どうでもいいですが、聖闘士星矢のドラゴンの盾でメドゥーサの視線を防げたのはなんでなんですかね?)
しかしネトゲ廃人もテレビは見るのか……。
分からないのはメドゥーサの映像を録画してネットに拡散したのはダレなんでしょうか。
見た人間は石化してしまうのだから、拡散したのは見てない人間。
見もせずにたまたま録画していたものをアップロード、とかなんか不自然です。
メドゥーサ自身も知らなかった涙の映像を逸早くイザナミが拡散した所を見ると、実は拡散の犯人はイザナミなのではないか?
やってしまったが、あまりの惨事に後悔して解除に協力したのでしょうか。
なんて事を想像してみる。

やはり惜しまれるのは涙によって石化が解かれるというのが、テレビ電波に乗って拡散する所でしょうか。
そのメカニズムが今一つ分からない。
都合良すぎですが、そこは作風から見ればそれほど不自然ではないです。

個人的にはラストがイマイチ。
やはりペルセウスに登場してもらいたかった。そこが完璧、とするには今一歩と思った所です。

ゴルゴン、ステンノー、エウリュアレー、メドゥーサ
という単語が並ぶとステンノーが四天王に見えてきます。あ、これもどうでもいいですね。

 

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2016年04月23日(土)23時24分 たぬき nY39lNOBNk20点
 伏し目がちなメドゥーサが可愛いかったです。ペルセウスとの運命は変えられなかったけど、オチで彼女が一つ答えを見つけたような、後味が尾を引く感じが好みでした。
 ちょっと展開がはやくて、メドゥーサがペルセウスに夢中になりきれていないうちにオチに向かった印象がありました。そのほうがオチは納得できそうですが、個人的にはもう少しだけ彼女がぞっこんになるところを丁寧に書いてあったほうが好きです。
 ペルセウス自身は正義漢なのでその気は無い。というのはこのせつないオチと合っていてよかったです。
 

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2016年04月23日(土)15時58分 志田 新平 2XEqsKa.CM20点
作品拝読いたしました。

コメディなのかな、と思っていたら切ないお話だったので不意をつかれました。メドゥーサが一途で可愛かったです(メドゥーサに初めて萌えました)

少し気になった点は
○できれば何故メドゥーサが改心したのか理由が欲しかったと思いました。

○オチがもう少し余韻があっても良かったのに、と感じました。
ペルセウスにゲームで「やったね」と褒められて、「もしかしたら本物のペルセウスかも…」みたいなことをメドゥーサが思っても良かったじゃんないのかな、と思います。

町に行って「石化させて欲しいです」というセリフ、笑いました。
ペルセウスと別れてしまうシーンも切なくて良かったです。
それでは執筆お疲れ様でした。
 

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2016年04月24日(日)08時10分 w20点
こんにちは。読みましたので、感想です。
今回の企画では14作品出展ですが、その中でゴルゴン姉妹が題材なのが本作を含めて2作、ということで、題材としては誰でも思いつくものだったかなあという感じはします。ですが、メドゥーサというきわめて特殊な能力を持っているモンスターが題材ならではの展開で、今回の企画のテーマに最も沿った作品だったとも思いました。
もうちょっと詳細に作品の感想を述べるとしますと、冒頭に関してはもう少しイマイチでした。文章もあまり良いとは思えず、また、メドゥーサがゲームをしているだけ、というのがあまり興味をひかなかった。人間を石にしろ、という指令を受けますが、メドゥーサがゲームなんかしているような世界観で石化を頑張らなければならない理由が弱く、いまひとつ納得できませんでした。
人間の住んでいるところまで1、2時間くらい歩いて行ったのに、次のシーンでは、ゲームばかりやっていて運動不足のため5分くらい歩いたら疲れて息切れ、みたいになっていて設定もきちんと詰めきっていないと感じました。
ですが、中盤以降の展開は良かったです。
天敵であるペルセウスと出会い、天敵同士であることに気づかずに仲良くなる展開もある意味王道かもしれませんが、この後どういうふうに展開するのか興味をひきました。
メドゥーサがどうやって石化するのかと思ったら、テレビカメラを通じてというのも、この世界観ならではで、良かったですし、ネット動画でワクチン、というのもいい発想だなと思いました(既に石になった人が動画を観ることができるのかとは思いましたが)。ウェブカメラ、なんていう伏線もしっかり張ってありましたし。伏線というと、ウェブカメラに限らず、諸々のことがしっかり伏線が張られて、その伏線がちゃんと回収されていたのが良かったです。
ずっとゲームをしていた主人公が、倒される側のモンスターだけど、英雄になりたい、というのも良かったです。
ラストシーンもきれいでした。本物かどうかは分からないペルセウスと仲間になって一緒に力を合わせて敵を倒すことができて、ペルセウスが取ってくれたカエルのぬいぐるみを抱きしめる、というところに、分かり合えない不倶戴天の敵同士でも、つながりあえる部分があるというのが描かれていて良かったです。
感想は以上です。
執筆おつかれさまでした。

 

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2016年04月23日(土)15時18分 ハイ20点
執筆ご苦労様です。
拝読しました。



まず、欠点など指摘事項からいきます。


○全体のチェックが間に合わなかったのか、誤字がちらほらありました。
それほど多くはありませんが、一応。

>見当→健闘

他、「を」が一個多いところが後半にありました。


○構成の仕方が勿体ない。

話の起承転結、揺さぶり100点! と言いたくなるぐらい良い出来ですが、それぞれの場面に対する枚数の割りふりが×または△。
これは、私的な理屈かもですが。
仮に七場面50枚の作品を書くとき、均等に7枚程度づつ書くのはあまりよい手ではありません。
なぜなら、いきなり長い場面ではじめられると、読者によっては読みづらさを感じる場合がありますし、書く側も作品の魅力を凝縮しづらい、または無駄に枚数を割いてしまって知らぬまに魅力的な冒頭を薄めてしまうからです。
逆にクライマックスは枚数が少ないと、読者の気持ちが盛り上がりきらないうちに話が終わってしまいますから、全体の三分の一ぐらい割きたいところ。
今作の場合、冒頭はともかく全体の場面に対する枚数がほぼ均一で。冒頭は充分ですが、クライマックスに割く枚数は決定的に足りてません。
読んでいて、気持ちが入り込む前に話が流れてしまって、大変残念でした。
これは良い場面だっただけに、余計にそう思います。
作者さんは、今後作品を読むときも書くときもこのあたりを少し意識してみると、もっともっと巧くなるんじゃないでしょうか。
(なお、あくまで私的な話ですので実行するかどうかは御随意に)



○キャラ

若干、キミ……カゲロウデイズからパクったね?
と言いたくなる設定と展開でしたが、まあそこは目を瞑っておきましょう。
相手がメドゥーサだけにね!(ドヤ顔で)
……失礼しました。
もしカゲロウデイズをご存じなければすいません。
でも、そう言いたくなる感じに似てるので、一応。
それがなければ、もっと誉めてあげたいところでした。


○ストーリー

好きです。
あ、すいません、言い直します。
好きですw


いや、何が好きって、メドゥーサの魅力を十二分に引出しに来てるストーリーが凄く良かったんですよね。転もあくまでキャラの魅力を引き出すための方向で、凄いと言わざるえなくて。
うん。
それだけに、カゲロウデイズがなければ……。



とまれ、良い作品を読ませていただきました。
ありがとうございます。
それでは、作者さんの今後のご成長に期待しています。
 

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2016年04月21日(木)18時08分 七月鉄管ビール xn8ZkIqS3k30点
 同じ趣向は商業作品でも結構あると思う。既視感からくる不利を本作は感じない。 

 魔性の少女メドゥーサがネトゲで駄目魔人に……。
 引き籠って怪物廃業したら駄目だろう。
 お姉ちゃんに叱られて渋々人類石化に乗り出したものの、引き籠りの後遺症で上手くいかない。
 この子の間抜けさはなんか可愛い。読んでいて楽しくなる。
 おまけに何、この読後感。

 エエもん読ませてもらいました。
 作者様、ホントにホント、ありがとうございました!!
 

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2016年04月19日(火)09時59分 おいげん20点
御作、拝読させて頂きました。
早速感想を述べたいと思います。

◆良かった点
①テンポが良い
 説明過多でも不足でもなく、トントンと話が転がって行くのは、読んでいて気持ちが良かったです。作者様は暗めとおっしゃってますが、私は軽妙で面白く感じました。

②期待を裏切らない
 メデューサ、ネトゲ……あっ と思いました。当然石化オチだよねーと言うのは誰でも予測できると思いますが、この手段で来るかと。
 意表を突いたうえで、明るくオトす手腕はお見事でした。
 カエルの伏線回収も素敵でした。

◆気になった点
 特にありません。
 強いて言えば、ペルセウスは今まで何をやっていたんだと言う、重箱の隅レベルです。

 執筆お疲れ様でした。

4/19 おいげん

 

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2016年04月22日(金)21時54分 兵藤晴佳10点
 子供っぽいのに偉そうなメデューサという設定がほのぼのとした笑いを醸し出しています。
それほど悪者ではないのにキャラ的にアラインメント設定されている辺りが悲哀を感じさせますね。

 ステンノーとの力関係も憐みを誘います。
 そこまでしてネトゲやりたいかよ……。

 さりげない伏線に思わずニヤリとさせられました。
 そう来ますか。
 
 オチも切ない。
 笑わせておいて見事にシメましたね。

 楽しませていただき、ありがとうございました。
 

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2016年04月18日(月)21時42分 つとむュー20点
GW企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

>メドゥーサは人間と同じ髪の毛にしていた。しかもショートカット。傍から見ると普通の引きこもり少女にしか見えない。

メドゥーサがとても可愛かったです。
キャラクター賞に投票したくなってしまうほどでした。


冒頭は、個人的にはちょっときつかったです(こちらの読解力不足が原因です。泣)
いきなりカタカナの固有名詞が沢山出て来ると、覚えられなくて困惑してしまいます。
時間差で出してもらえるとか、少し工夫してもらえると、
自分のような読者にも入り込みやすい冒頭になったのではないかと感じました。


>「さすが私の愛すべき妹だわ。ベストオブ悪って感じ」

爆笑してしまいました。
テレビ中継で人間が石化、という展開も面白かったです。


>メドゥーサは涙を流しながら微笑んでいた。

最後はホロリとさせていただきました。
涙の映像そ見ただけでは石化は解けないだろう、とツッコミを入れたくなりましたが、
「まあ、そういうこともあるんじゃないか(笑)」と
思わせてくれる雰囲気づくりには成功していると思います。


>「あいつらキーを勝手に叩いてな……。邪魔だから野生に帰してやったよ」
>引きこもっているあいだに対人恐怖症になってしまったらしい。
>「なんだ、足腰が丈夫になった。杖がいらんぞ!」
>「これはUFOキャッチャーというんだ。お金を入れて取るんだ。俺もはじめて見たときは悪の仕業だと思ったんだが」

ところどころでクスリとさせてもらいました。
面白かったです。


>「それで石化した人間は、どこかな?」
いやいや、もし石化に成功していたら、担いで来なければいけなかったんですかね?(笑)


いろいろと書いてしまいましたが、テンポが良くて展開が面白い自分好みな作品でした。
拙い感想で申し訳ありません。
今後のご活躍を期待しています。
 

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2016年04月25日(月)23時01分 コボルトスキー303 LGzEDAtRks10点
読ませていただきました。
テンポはよかったと思います。
ただラストは「これでおしまい?」みたいな肩透かしを食らったような感じになったのは確かです。
ペルセウスとはこの後どうしたのでしょうか? 「やったな」で終わり? しかも本人じゃないし。
また再び引きこもりを続ける妹に対して姉ステンノーはどう思ったのでしょうか?
こう言っては申し訳ありませんが、半端に終わってしまった感じがします。
執筆お疲れ様でした。
 

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2016年04月27日(水)22時28分 たてばん L2TtHY/jcg20点
 執筆お疲れ様です。
 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残します。
 
 《文章》
 さくさく進む文はとても読みやすくて、気付いたら読み終わってました。
 表現の仕方や語呂が良くストレスなく読めて、自分も見習いたいと思いました。特に、主人公であるメドゥーサの心理描写はなかなかでした。
 
 《設定》
 現代ファンタジーでしょうか。現代の機器と神話のキャラクターが上手くマッチしていて、なんの違和感も出ませんでした。
 メドゥーサの心情もしっかりしていて、少しだけネトゲをしていた自分には共感できる部分が多かったです。

 《構成》
 問題が起きて、また問題が起きて、さらに問題が起きる怒濤の展開で飽きさせない構成で、読んでいて楽しかったです。
 絶対相容れない存在に恋心を抱くのは王道で、それがラストに繋がり心地良い余韻に浸らせてくれます。

 《総評》
 作者様とお互いに成長したいので、細かいとこを突っつきます。

 >一、二時間ほど歩くと、唐突に視界が開けて、家々が見えてきた。
 この後に、引きこもりのせいで体力が落ちて五分で疲れのピークを迎えるという描写があるので、ここで一時間も歩いたのだから、かなり疲れている描写を入れても良いと思います。

 >目を閉じる。足音が聞こえてきた。目を開ける。
 かなりざっくりしているので、どのくらい目を閉じていて、どんな足音が聞こえてきて、目を開けたら何が映ったか、描写を足した方が良いです。

 あとは特に気になるところは無いです。
 各キャラの設定がしっかりしているおかげで、言動が生き生きしてました。

 メドゥーサちゃんが可愛くて恋しそうです(笑)

 未熟者の身でいろいろと口出ししてすみません。
 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
 

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2016年04月16日(土)13時05分 キーゼルバッハ20点
 キーゼルバッハと申します。読まさせていただきましたので感想を。


(設定)
 
 神話の時代から数千年後の現代で、メデューサは引きこもりになっていた。
 洞窟の奥に引きこもり、ミュートロギア・オンラインというオンライン
 ゲームでヒーローをやっていたのだ。いつしか、髪の毛のヘビたちも
 森に返し、ショートヘアーにして、まるでその姿はニート。
 そんな妹の姿に危惧した姉のステンノーは、人間を石化するまで、戻って
 来るなとメデューサを追い出してしまった。しかし、すっかりひと目から離れて
 しまったため、メデューサは対人恐怖症になってしまった。まともに
 人の目も見れず、石化も出来ないメデューサは、友達のイザナミノミコト
 の助言を元に、ノートパソコンを買いに日本の秋葉原に訪れた。そこで、
 メデューサは知らずに宿敵と出会いを果たしてしまう……という内容でした。
 基本的なストーリーはもちろん、キャラ一人一人にもちゃんと個性があって
 短いながらも読み応えのある物語で、とてもおもしろかったです。
 とくに、メデューサの純真無垢で可愛らしい素直な性格は魅力的で、
 この作品の中で一番好きなキャラクターであります。

(キャラ)
 
 メデューサ
      :数千年前の威厳のある姿はどこへやら、今は洞窟の奥で、
       アトランティスの闇市で買った水晶に三千年分の電気を
       蓄え、日がな一日オンラインゲーム三昧な、ニート
       まっしぐらな女の子。髪の毛のへびたちも森へ返して、
       ショートヘアーの髪にしている。
       素直で、ちょっと天然の入っている可愛らしい性格で、
       頑張って人間を石化しようとしている姿は、とても
       好感が持てました。
       正義感溢れる青年、ペルセウスの優しさに触れ、宿敵
       であるにもかかわらず好意を抱いてしまうところには、
       青春というか、初恋の甘酸っぱさを感じてしまいます。
       また、不可抗力で多くの人間たちを石化してしまい、
       ペルセウスに誤解されてしまい、引きこもってまた泣い
       てしまうところも、ちゃんと感情移入して読むことが出来
       自分も悲しい気持ちになりました。それは、キャラに
       魅力があるからこそであると思います。
       この物語の中で、一番好きなキャラクターです。


 ステンノー
      :メデューサの姉で、洞窟奥でオンラインゲームをしながら
       引きこもっているメデュ―サのことを心配している。
       人間を石化するまで戻ってくるなと洞窟から追い出した時も、
       メデューサの帰りをシチューを作って待っているなど、
       家庭的な面もあり、よく出来た女性である。
       優しく、時に厳しくメデューサを応援しているところに、
       好感を覚えました。メデューサのせいで世界中の人間が
       石化した時には、妹の功績を褒めて甘やかすなど、実は、
       シスコンの気質がありそう? 魅力的なキャラでした。
       

 イザナミノミコト  
      :メデューサの友達で、洞窟から追い出されて途方に暮れていた
       メデューサにアドバイスをして、日本に呼んだ張本人。
       もすでに死んでいるから、メデューサの目を見ても石化しない
       ので、メデューサが腹を割って話せる貴重な友人である。
       メデューサが宿敵であるペルセウスと一緒にいるのを注意して、
       引き離そうとしたり、ペルセウスに殺されそうになっている
       メデューサを助けてお家に帰したりなど、メデューサに厳しい
       事を言いながらも、友達思いの子である。
       メデューサの次に好きなキャラです。

 ペルセウス
      :危うく財布を取られそうになったメデューサの元に、颯爽と
       現れ助けてくれた好青年であり、実はメデューサの宿敵。
       話しあううちに意気投合したり、UFOキャッチャーから、
       カエルのぬいぐるみを取ってプレゼントしてくれたりと、
       メデューサはその優しさに惹かれてゆく。
       しかし、実はこの好青年が宿敵のペルセウスだと、イザナミ
       から指摘されて気付く。
       最後は、メデューサのことを誤解したまま別れてしまうのですが、
       そこが切なくて、なんともいえません。
       最後の展開については、モヤッとした気持ちが残ってしまった
       ので、メデューサとペルセウスのことについて、ちゃんと
       決着を着けて欲しかったと、個人的に思いました。



(世界観)
 
 世界観に関しては、ギリシア神話をベースにメデューサとその他の登場人物
 をコミカルに書かれていました。メデューサが洞窟に引きこもってオンライン
 ゲームをしている点など、世界観に関しては作者様独特のオリジナリティが
 出ていて、非常に面白かったと思います。

(文章)

 文章は、読みやすく最初から最後まで飛ばすこと無く一気に読むことが出来
 ました。また、この物語はメデューサの一人称で書かれているのですが、
 読みやすい文章とあいまって、メデューサに対しても感情移入しやすかった
 印象です。

(テーマ)

 ギリシア神話をベースに、ギリシア神話に登場する神や、一部日本神話に
 登場する神も登場するので、十分企画のテーマに沿った作品だと思います。
 それでいて、この物語に登場する神話の登場人物のキャラクターは、個性
 的で、テーマを守りながらオリジナリティに溢れる作品だという印象です。
 

(総評)

 ややコメディー風な物語の内容に、切ない展開なども相まって、とても
 面白く読まさせていただきました。
 洞窟で引きこもってオンラインゲームにハマり、人間恐怖症になりながらも、
 頑張って人間を石化しようとするメデューサや、辛口ならがらも友達思いの
 イザナミに、何だかんだ妹に甘いステンノーや、正義感溢れるペルセウスなど、
 魅力にあふれるキャラたちが、この物語を一層盛り上げているといった印象
 でした。
 しかし、最後の展開について、ペルセウスに誤解されたまま別れ、逃げるように
 またオンラインゲームにハマってしまうという終わりについて、ちゃんと
 決着を着けて欲しかったなと、個人的に思いました。このままで終わりは、
 さすがにメデューサが報われないので、読後モヤモヤしてしまいました。

それでは、GW企画お疲れ様でした。また機会がありましたら、読ませていただけると嬉しいです。

キーゼルバッハでした。

 

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2016年04月16日(土)09時29分 ミチル20点
 おはようございます、御作を読了いたしました。
 メデューサがゲームをしていて、ペルセウスと組んで戦おうとする所が最高に胸熱でした! しかし所詮は共に戦えないという、運命の残酷さが胸をえぐります。ペルセウスも気の毒です。
 暗い感じでしたが、最後まで途切れることなく読みきりました。
 いっそのことメデューサが現実の世界を救ってもいい気はしましたが、それではご都合主義な気もしますし、悩ましいです。
 メデューサがカエルのぬいぐるみを抱きしめる場面は、不覚ながら涙が出そうでした。

 楽しみました。これからも執筆を頑張ってください!
 

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pass
2016年04月15日(金)22時57分 たかセカンド10点
こんばんは。
「メドゥーサとカエルのぬいぐるみ」を読ませていただきました。

感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。
納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。


コメディらしく、余分な情景描写が無くテンポ良く読み進めることができました。
ステ姉との会話も、二人のキャラクター性が良く出ていて、読んでいて面白かったです。

ただ、前半部分はコメディらしく、非常に楽しめたのですが中盤から恋愛? 方面に雰囲気が変わって行ってしまったのが残念です。
メデューサが知恵を働かせて、ステ姉を出し抜きゲームをする。
もしくは、メデューサが「ちょっと外に出てもいいかな?」と思うようになる成長物語を期待してしまいました。
もちろん、コメディとしての雰囲気を維持したままです。

読み手は非常に勝手でわがままだと思いますので、自分の期待が裏切られてしまうと、ほんのちょっとだけ残念に感じてしまいます。

ペルセウスに関しましても、述べさせてください。
終盤決別してしまうわけですが、ちょっとペルセウスとのエピソードが少なく感じます。
メデューサは自暴自棄になってしまうほど落ち込んでいますが、掘り下げが少ないためメデューサがペルセウスを思う気持ちに感情移入できませんでした。

もう少しページを割いてペルセウスとのエピソードを盛り込んだほうが良いと感じました。

最後になりますが、メデューサもペルセウスとの交流を通して「何が変わったのか」「何を学んだのか」感じられるラストがあれば良かったと思います。
現状、メデューサの成長が感じられませんでしたので……。

いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。

ただ、前半の会話劇は非常に楽しめました。
それだけに私自身、強く残念に思ったところがありました。

以上となります。

このたびは有難うございました。
 

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pass
合計 17人 350点

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