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レモンの香りが嫌われて
 <プロローグ>

 柔らかい波が静かに押し寄せる砂浜のすぐ傍に鍾乳洞のような洞窟が見えた。それがきっとメリッサの言っていた、オーロラの魔女の洞窟なのだろう。
 その洞窟に近づく前に人気の無い砂浜でゆっくりと周りをみわたす。
 別に人の気配を探しての事じゃない。私自身が心を落ち着かせるための行為だ。
 あそこに行ったら、私は『普通の人間』になれる。
 怖がることじゃない。
 さっきまで後ろでみつあみして束ねていた髪をこの海岸にきたところでほどいた。オーロラの魔女に私の髪を感じてもらうために。
 私の髪はストレートだけれど、みつあみの跡でウェーブがかかっている。潮風に髪が揺れてその波打つ髪から、いつも以上に強くレモンの香りが漂う。
 大丈夫かな? 少しは勉強してきたけれど私の日本語で通じるかな?
 ここは日本。オーロラの魔女も日本人のはず。
 そんな心配を感じつつもザクリザクリと砂浜を洞窟の方へと歩いて行った。


 <1>
 洞窟に入るとそこには、よくある庭付き一軒家のような家が建っていた。しかも洞窟の中にあるとは思えないほどに大きな一軒家だった。
 それだけではない、洞窟の中だというのに明るいのだ。
 外の明るさほどでは無いけれど曇りの日の空ぐらいには明るい。
 近づいていくと、庭先に青年の姿が見える。そら豆のような植物の手入れをしているようだ。
 ……いや青年じゃない!植物の丈が高くて全体が見えなかったが 馬? 本などで見たことのある、ケンタウロス? そんなような名前だったような、とにかく上半身が人間で下半身が馬の姿をしている者が何やら作業をしていた。
 本で見るケンタウロスは上半身裸だけれど、今私が出会ったケンタウロスはアロハシャツのようなものを着ている。だからこそ最初は普通の青年だと思って下半身の姿に気がつくのが遅れたのだ。
 彼(?)は私に気がつくと近づいてきた。表情は笑顔でまるで私を歓迎し怖がらせないようにしているかのような態度だった。
「ようこそ、オーロラの魔女の家へ」
 手で玄関に導き示す。
「ど、どうも。こんにちは」
 何を言っていいか分からず、とりあえず挨拶をした。
 更に「どうぞ」と彼は玄関の扉を開けてくれた。
 私は彼の導きで家の中に入って行った。
「あら、素敵な香りがするわね」
 家の奥の方から女の子の声がする。
 家の中はどこにでもありそうな普通の室内で、玄関からすぐの廊下を抜けるとダイニングキッチンのような場所に出た。
 そこには先ほどの声の主だろうか? 十歳ぐらいの女の子がエプロンをして料理をしていた。
「あ、あの、私、アイラ・マルスと言います。オーロラの魔女さんは?」
 この女の子が誰だか分からないけれど、この洞窟の家にいるということはきっとオーロラの魔女の身内か何かなのだろうと思ったので、おそるおそる尋ねてみた。
「私がオーロラの魔女よ。ちょっと待ってね、お茶出すから適当に座ってて」
 外見は十歳ぐらいの女の子だが喋りは何となく大人びている。この子がオーロラの魔女と信じていいのだろうか?
 まだ少し半信半疑だったけれど、ひとまず傍の椅子に座ることにした。
 座って、周りをみわたす。これまたどこにでもありそうな普通のダイニングキッチンだ。キッチンの先には更に廊下があり、いくつか部屋もありそう。
「はい、どうぞ」
 女の子は私にお茶とお茶菓子を出してくれると、私の斜め横に座った。
 近くで良く女の子を見ると、背の高さや雰囲気は子どもだが顔立ちはもっと大人のようにも見えた。やっぱりこの子がオーロラの魔女ということ?
「私が子どもみたいだからビックリした?」
「あ、はい」
「これはね、私の一族の特徴の一つなのよ。一般的にいうところの小人? みたいな。これでも私は二十歳。顔を見てもらうと分かるだろうけど、幼いわけじゃなくて体が小さいだけで顔はそれなりに老けてくのよ」
 オーロラの魔女は長い黒髪を高めのポニーテールにしている。彼女が言ったようにそう言われてみればもう彼女の事を十歳ぐらいの子どもというより“小さい人”というふうに見える。目はツリ目だけれどキツイ印象ではなく、入り口で会ったケンタウロスの青年と同じく笑顔で私を歓迎してくれているという雰囲気はとても伝わってきた。
「あの、言葉……日本語じゃないですよね?」
 通じるか心配してきたけれど、私が私の国の言葉を喋る前からオーロラの魔女さんは私の国の言葉を話してた。
「ああ、ここはね、言葉が自動翻訳されているのよ。魔法でね。だから私は今、日本語で喋ってるけれどアイラさんには母国語のように聞こえるでしょう?」
「はい。何だか不思議」
「ここはね、色々なところから色々な者がくるから、言葉で困らないようにしてあるのよ」
 凄いわ、やっぱり魔女の家って。見た目は普通でも色々な魔法がかかっているんだ。
「私、あの……」
 ここに来た理由を話さなければと口を開いたが何をどう話し始めたらいいか戸惑う。
「大丈夫よ。ここに来たということは、だいたいの望みは分かってる。ゆっくりでいいわ、まずはあなたの事を話してくれると嬉しいわ」
 そんな彼女の包容の言葉を聞いて、私はここに来るに至った自分の生い立ちを話し始めた。


 <2>
 私は学校に入る年齢まで、屋敷の外に出る事がほとんど無い生活を送っていました。
 私の父は町で一番の工場の持ち主で町の有力者だった。だから大きな屋敷に住んでいたし、屋敷の中で働く人たちや、その家族、子どもたちも居たし広い庭もあって屋敷の外に出なくても小さな子どもとしては困らなかった。
 けれど学校に入る年齢になった時、突然私は遠い国の寮がある学校に入れられてしまった。
 父も母も私を愛してくれていたし、何故突然私を遠くへ追いやるのか分からなかった。
 そんな中、私を慰めてくれたのは同室だったメリッサの
「アイラの髪って素敵ね。いつもいい香りがする」
 と言う言葉だった。
 今まで気にした事が無かったけれど、そういえばこの私の髪の特別な香りは父や屋敷の人たちには無いもので、唯一、母だけが同じように香りを漂わせていたということを思い出した。
 父も屋敷の人たちも皆、黒髪だったけれど私と母だけは金髪だった。
 だから私は金髪の人は髪からこの香りがするものだと思い込んでいたのだ。
 けれど同級生で同じく金髪の子からは、私や母のような香りはしなかった。

 そして髪と香りのことに疑問を残したまま更に成長した私は高等部に上がってから、新しくきた歴史の先生に
「おや、君はレモン族なのかね? この辺りでは珍しいね」
 と声をかけられた事によって、初めて『レモン族』という人たちがいるという事と私や母がそのレモン族なのかもしれないというのを知った。
 その先生に尋ねたところによると、レモン族というのは私や母のように髪が金髪で尚且つ髪からレモンの香りがする種族のことらしい。
 自分がレモン族かもしれないと知っても、学校にいる間はそれが特に意味のなすことだとは思わなかったのです。
 私の過ごした学校はレモン族以上に変わった特性を持った生徒や髪や肌の色が違う子たちは大勢居たから。
 けれど学校を卒業して父の会社を手伝うために町に帰って、私はレモン族であることがどういうことであるか、というのを痛いほどに体感することになったんです。

 故郷の町は父の工場を中心として成り立っていて、工場で働く人が生活するための商店や食堂が工場を取り巻くように存在していた。
 子どもの頃は屋敷から出る事もなく、外で食事や買い物をした事は無かったけれど会社で働くようになって初めて、町の食堂を利用して『違和感』を感じました。
 町の食堂は何故かどこも食券制のところばかりなのです。
 工場で働く人が多く入るお店なので会計を早くするとか何か特別な理由があるんだろうと思う程度だったのですが、すぐにそれはレモン族のためだと知りました。
 私が食券を買い、カウンターに提出しても料理が中々出てこないのです。頼んだ料理が時間のかかるものだったからではありません。私と同じものを注文した人や私より後から注文した人は次々に料理を受け取って行くのです。
 私だけ十分以上待たされました。他の人は一、二分で受け取れるのに。さすがにおかしいと思い、ちゃんと注文が受理されているか聞くと
「売り切れだ」
 と言われたのです。他の物を頼むのも嫌になったので別の食堂に行くと、そこでも信じられないぐらい同じような接客を受けました。
 その日は外で食事をとるのを諦めましたが、次の日もまた別の食堂で同じような事が起きました。すると今度はそれだけではなく食堂にいた他の客の一人が
「レモン族は臭くてかなわん、早く出てってくれ」
 とぼそりと言ったのです。ぼそりとだったので誰が言ったのかは分かりません。
 ですが周りを見渡した時に、その発言はそこにいた全員の総意だということは怖いぐらいに分かりました。

 両親が私を遠い国の寮制の学校に入れたのは、私がこの町で差別を受けないためだったのだとその時になって初めて気がつきました。
 そして町の食堂がみな、食券制だったのは昔、レモン族の一人が無銭飲食をしたためだったと後から父に聞きました。
 その無銭飲食をしたレモン族の青年はレモン族であるために仕事に就く事ができずに、苦し紛れで無銭飲食をしたそうです。
 ですが青年は「皿洗いでも何でもします、ここで働かせてください」と言ったものの、聞き入れてはもらえず、そのまま警察に引き渡されたらしいです。
 私のこの髪が差別の原因なのです。
 私は母の髪を臭いとは思いません。けれど父はレモン族ではないので言わないだけで本当は臭いと思っているのだろうかと勇気を出して聞いてみました。
「臭いわけがないだろう。娘だから言っているのではないよ」
 と父は言いました。
「じゃあ何故、町の人々はレモン族のことを臭いと言うの?」
 という私の問いに
 この町は昔から閉鎖的な町だった。この町だけで生活が事足りるために外に出ようとする者がほとんどいない。しかも皆が同じ人種で肌は白く髪は黒い者ばかりだ。そして観光地があるわけでもなく他の町や国へ行く通り道でも無い辺境の地であることから、外部からの人間もほとんどやってくることもなかった。
 ところが不作や不況が続いた隣国からレモン族の人々が仕事を求めて、この町にやってきたんだ。その時にワシと母さんもそれで出会ったんだよ。
 閉鎖的な町の、閉鎖的な住民たちはレモン族を歓迎するどころか邪魔にした。
 怖かったのだろうと思う。
 髪が美しい金髪な上に、いい香りを放って、自分たちにない身体的特徴を持っていることが羨ましい反面、嫉妬していたんだと思う。
 と語ってくれた。


 <3>
 残り少なくなって、冷めていた私の紅茶を庭から戻ってきたケンタウロスさんが新しく入れ替えてくれた。
 同じく新しく紅茶を入れてもらったオーロラの魔女さんはケンタウロスさんを私に紹介してくれる。
「外で会ったのかな? 彼ね、コットンというの。うちで代々、助手をしてくれてる。見たとおりのケンタウロスよ」
「コットンです。よろしく」
「アイラといいます。よろしくお願いします」
 私の話を一通り聞き終えたオーロラの魔女さんは紅茶を一口すすってからクッキーをつまみ、ようやく言葉を発した。
「聞いてて思ったんだけど、アイラさんのお父さんって町の有力者なんでしょう?」
「あ、はい」
「町の人たちは、その有力者の娘であるはずのアイラさんまでもレモン族だというだけで差別をするなんて、余程だと思わない?」
「……」
「あ、ごめんね。そんなのアイラさんには分からないし、どうあろうと辛い思いをしてきたわけだものね。ただ、こうやって話を聞いていて客観的な見方して、どうしてもそこが気になっちゃったのよ。そして、もしかして何か特別な事情があるんじゃないかって……もちろん事情があろうとも差別なんてしていいわけが無いわ、ただ……」
「分かります、気にしないで続けてください」
「私、その事情に関連してるかもしれない出来事を知ってるのよ。だから余計に気になっちゃってね」
「事情? どういうことですか?」
 またもやオーロラの魔女さんは紅茶を飲んで、クッキーをほおばる。
「レモン族じゃなくてね、ローズ族っていう人たちがいるのよ」
「ローズ族……」
「そのローズ族は黒髪で髪からバラの香りがする種族らしいわ。似てるわよね、レモン族と」
「そうですね、けれどローズ族は黒髪なんですね」
「そうなの。その黒髪のローズ族はね、もう何百年も前のことになるんだけど、ある国で自分たち以外の黒髪の者たちを奴隷として扱っていたんですって」
「それでどうなったんですか?」
「ローズ族の勝手な支配に耐え切れなくなった黒髪のひとたちは、団結してローズ族を滅ぼしたの。そんな支配の嫌な思い出のある国を多くの黒髪の人たちは捨てて、遠くの辺境の地に小さな町を作ったという話があるのよ」
「それってもしかして」
「でしょう? そう思うでしょう? アイラさんの故郷がその黒髪の人たちの築いた町かどうかは分からないわ。けれど何となく関係ある気がしない?」
「はい」
 少し長い間があく。私も次の言葉を発することが出来ず、オーロラの魔女さんの言葉を待ちながら紅茶を飲む。
「アイラさん。これからあなたに私は『普通の人間』になるための魔法薬を作るわ。けれどこの薬は平均で三日ほどかかる。その間に、気持ちが変わってやっぱり今のままでいいとなるのもOK、そしてもちろんそのまま『普通の人間』になるのもOK、そのためにゆっくり色々と考えてほしいの」
 つまり、ローズ族の話をしたのは、私やレモン族に町の人たちが差別をするのは昔の恨みみたいなものがあるから。それもちゃんと知った上で私にレモン族でいることをやめるかどうか考えてほしいということなんだろう。
「間違えてほしくないのは、私やコットンが三日間の間、色々な話をするかもしれないけれど、それは決して『普通の人間』になることを思いとどまって、と諭すためじゃないって事」
「はい」
「私は魔法で『普通の人間』にしてあげることは出来るけれど、元の姿に戻してあげることは出来ない。だから後悔してほしくないだけなのよ」
「……分かりました」
 私の気持ちは変わらない。ローズ族のことを知ったって町の人たちから差別されることに耐えられるわけじゃない。
 私はそんなに強くない。


 <4>
 私が人『普通の人間』になるための魔法薬を作るには私の体の一部がいるという事で、髪の毛を一本渡した。後はオーロラの魔女が三日かけて薬を作るらしい。
 それが出来るのを待つ間、私はこの家に泊まる事になった。
 泊めてもらう部屋に案内されると、私はベットに座って一息つく。そして改めてここにくることになった経緯を振り返った……。

 この場所を教えてくれたのは学生時代の親友、メリッサだった。
 故郷に帰って、激しい差別に傷つき愕然とした私はメリッサに救いを求めた。
「私、レモン族なんて止めたいよ」
 そんな私の言葉を聞いて、メリッサは
「止められるかもしれない。あたし聞いたことあるのよ。半人半獣の者や特殊な能力を持った人を普通の人間にしてくれる魔女がいるって」
 と言った。メリッサ私も見たことのある先輩の話をしてくれた。先輩は普段は普通の人間だった。けれど実は猿男だったらしい。
 その猿男だった先輩は、人間にしてくれるという魔女に会いに行って『元』猿男になったという。
 メリッサは私の代わりに先輩に話を聞きに行ってくれた。その教わった情報がここのことだった。
 場所は日本の島根県。海岸沿いに鍾乳洞のような洞窟があるという。そこは特殊な人しか入れない場所で、普通の人間は見つけることができないという。
 その洞窟にはオーロラの魔女という魔法使いが住んでいる。
 それが私を救ってくれるのならば私は信じる、そう思って私はここを見つけることができた。
 ということはやっぱり私は、そしてレモン族は『普通の人間』では無かったということだろう。
「元猿男?」
 ここで普通の人間になった元猿男の先輩をオーロラの魔女さんが憶えているかどうか尋ねてみた。
「ああ、いたね」
「来たのは最近ですか?」
「うん、三年ぐらい前かな。確か彼は夜中に知らないうちに巨大化して暴れるのが困るとか、怒りが増すと髪が金髪になって逆立つのが困るからと言って普通の人間になったのよ」


 <5>
 次の日の午後に、コットンさんにお茶に誘われた。オーロラの魔女さんは私が普通の人間になるための薬を作っている最中で、二人だけで昨日のようにダイニングキッチンでお茶とお菓子をつまみながら話そうということになった。
 コットンさんは、とても変わった形をした椅子を壁際から持ってきてそこに乗って座った。
 縦長のソファのような形で下半身が馬の姿をしているコットンさんが乗って座るとちょうどテーブルに良い感じに近づく作りになっている。
 そういえばここは日本だが、家の中でも靴を履いていていいみたいだ。コットンさんや訪れる半人半獣さんたちに合わせているのかもしれない。
「いいだろう、僕が自分で作ったんだよ」
 そうコットンさんは椅子の自慢をする。
「ケンタウロスの世界では、こうやって食卓にテーブルや椅子を並べて皆で囲むという習慣がないんだ。けれど僕はそれに憧れていた」
 椅子だけでなくテーブルもコットンさんは愛おしそうに撫でた。
「憧れて……いたんですか?」
「うん、僕はね、人間の生活に憧れていたんだ」
「もしかして、そのシャツも椅子のようにコットンさんが作ったんですか?」
「うん? ああ、これはオーロラの魔女のいとこが持ってきてくれるんだ。僕に似合いそうだからとね」
 人間に憧れていたからシャツを着てるんだと思ったが、もしかして私今、ものすごーく失礼なこと言ったのではと思えてきた。
「あ、あの、ごめんなさい。絵本や物語で見かけるケンタウロスさんは皆、上半身裸だったから、コットンさんがアロハシャツを着ていることに勝手に“意外”だと思っちゃったんです」
「いいよ。確かにね僕の世界でも僕の種族はあまり服を着ないんだ。人間より獣の生活に近いからね。だからこそ人間に憧れた。そして人間になりたいと思ったんだよ」
 えっ、コットンさんも人間になりたくてここにきたの? それなのに今もケンタウロスのままなのはどういう事なんだろう。
「人間にならなかったんですか?」
「ああ、ここにきてみて僕の夢は叶っちゃったんだ。だから人間にわざわざなる必要は無かったんだよ」
「夢が叶った?」
「そう。僕は人間と同じような生活がしたかった。ここだったらそれが出来るんだよ、ケンタウロスのままでも。だからオーロラの魔女、あっ、僕が来たときは先代の魔女だったんだけれど、彼女に頼んでここで助手として住まわせてもらうことにしたんだ」
「じゃあコットンさんはもう、ここに来て長いんですね」
「うーん、十年ぐらいかな」
「十年、ここでオーロラの魔女さんと?」
「そう、今のオーロラの魔女は三歳の頃からここに居たらしいから、僕が来たときにはもう居たんだよ。だから最初の頃は三人で暮らしてた。今は先代の魔女は引退して町にいるよ」
「そうだったんですね」
 そうやってコットンさんと話しているうちに私の中にある疑問が湧いた。
 コットンさんって、どこからきたんだろうかと。というか、そもそもコットンさんはどこの出身なのだろう? 上半身の人間の部分は栗色の髪に濃いブラウンの瞳、鼻は高すぎず、肌の色は白人系だ。
 私は日本に来るのに普通に飛行機を使ってきた。けれどコットンさんは飛行機には乗れないだろう。日本は島国だし船でくるにしたって、途中で人間に見つかってしまわなかったのだろうか。
 失礼かもと思いつつも聞いてみることにした。
「僕はこの世界の住人ではないんだよ。うーん、分かりやすく言うなら異世界? のようなところから来たんだ。この洞窟のように特殊な空間はそういう世界と通じているんだ。僕だけじゃない、半人半獣の者たちはそういう別の世界からオーロラの魔女に会いにきてるんだ」
 まるでおとぎの国の話のようだ。けれど、ここに来ることになった時から何でもアリのような感覚になっていたから、免疫があったんだと思う。自分でもビックリするぐらい、すんなりと受け入れられた。
「あの、コットンさんの世界には私のような髪からレモンの香りがするような種族っていますか?」
 もしかして元々はレモン族のような人たちはコットンさんのように別の世界からきたのではないかと馬鹿げているかもしれないけれど聞いてみたくなった。
「うーん、髪が香るという種族はいないね。空を飛べるとか髪が蛇になる者たちはいたけどね」
 それってハーピーやメデューサ? 何だかますます、物語の世界みたい。


 <6>
 翌日の午後、オーロラの魔女さんにキッチンに呼ばれた。何かと思えば、お話しようと言う。私は、何を聞いたって気持ちは変えないと少し警戒心を持っていたがオーロラの魔女さんがあまりにも、あっけらかんとしているので、そういう私の気構えは独り相撲のようで、少し恥ずかしくなった。
「今日はね、この後しばらくコレ煮込まないといけないからキッチンにつめてなきゃいけないのよ。コットンは今日は森に行っているし、話し相手になって」
 コンロには料理屋さんで使っているような大きなスープを煮込むような筒状の鍋が火にかかっていた。
「これ、魔法薬ですか?」
「ううん、ラーメンのスープ」
 はい? 魔女がラーメンのスープを煮込んでるんですか? まぁ確かに、そういうのを煮込む鍋だよね。
「大丈夫よ、アイラさんが帰る前に出来上がるから美味しいのを食べてって」
 私が心配そうな顔をしていたのだろう。魔女さんは見当違いな事を言いつつ私の前にお茶とお菓子を置いた。
 魔女さんがこんな調子だから私はやっぱり一人で空回りしているような気分になる。
「うちはさ、お客さんがこない限りコットンと二人っきりでしょう。だからたまに人がくるとこうやって料理に懲りたくなるのよ。でもさ、そうやって考えると、おばあちゃんは凄かったと思うわよ。だって私やコットンが来る前は、ほとんど一人だったんだから」
「おばあちゃん? あ、先代のオーロラの魔女さんですか?」
「そう。私なんてここに来た時から、おばあちゃんとコットンがいたから誰もいない生活なんて耐えられないわ」
 そういえば、こうやっていつも出してくれるお茶やお菓子はどうしているのだろう? 近くにお店があるようでは無かったけれど。
「外に買い物に出たり、誰かのところに行ったりはしないんですか?」
「そうね、基本、魔女になったら町には出て行かないわ。ほとんどのものはここで自給自足できるし、他のいるものは時々、一族の誰かが届けてくれるのよ。それにほら私、小人でしょう? 今はまだ魔女になったばかりだし若いから子どもみたい、で済むけれどもっと魔女として成長したら、そして歳を重ねたら体は更に小さくなるのよ。もっと小人らしくね」
 そうだったんだ。もっと小さくなったら町に出たときに奇異の目で見られるよね……ある意味私と同じかも。それがどんどん進むなんて、辛いだろうな。
 私の場合は近づかないと香りに気がつかないけれど、見た目で分かることとなると積極的に外にでるなんて出来なくなるよね。
「なーんて顔してるのよ。別にへっちゃらよ。町に出なくったって」
 町に出なくたって? 差別されることじゃなく? また私に気を使ってるというか説得の一部だったりする?
「……オーロラの魔女さんは、差別されることは平気なんですか?」
「ミキでいいわよ。それが私の本名。差別? 多分ね、されてないから分かってないんだと思う。三歳からここで暮らしているし、ここで普通の人間になった者以外の普通の人間に会った事が無いから」
 なるほど。私だって故郷に戻るまでは差別された事がなかったから分からなかった。けれど今は知ってしまった。差別されるという事の辛さを。


 <7>
 更に翌日は昨日煮込んでいたラーメンを食べさせてくれるということで、皆でダイニングキッチンに集まった。
「少し待っててね、今、コットンが麺を切ってるから」
 ラーメンのスープだけじゃなく、麺まで手作りらしい。
「もう終わるから。後はこれを茹でれば出来上がり」
「じゃあ、お話でもして待ってましょうか。そうね……今日はうちの先祖の話でもしてあげる」
「ご先祖様ですか?」
「うん、うちの一族の祖先はね『スクナヒコナ』という日本神話に出てくる人なの。その人が小さかったから私たちに、その影響が出てるらしいわ」
 神話って……そんな昔の人まで遡れるなんて凄い。
 そっか祖先か。お母さんしかレモン族の人を知らないし、自分がレモン族なんだって事も大きくなるまで知らなかったんだもの、祖先までなんて考えた事なかった。
「ミキや先代のように魔女を継ぐものはスクナヒコナさんの血を色濃く受け継いでいるけれど、たまにここにやってくる一族の他の人たちはミキたちほどは小さくないんだよ」
 麺を茹でながらも私たちの会話にコットンさんも入ってくれる。
「そうなんですか?」
「うん、だから普通に町で暮らしてても『少し背の低い人』ってぐらいで、そんなには異質な感じはしないのよ」
 そっか、そうよね。そうじゃないと町で暮らせないよね。
「ミキたちの一族は、一族の者同士だけじゃなくて一般の人たちとも結婚することがあるから血が薄い人たちもいる。中には一族の人間なんだけど、この洞窟に入れない者までいるんだ」
 一族の人間以外との結婚?それってお母さんがお父さんと結婚したのと同じようなものかな。
「そうなのよ、それでね思ってたんだけど、もしかしてアイラさんってかなりレモン族として血が濃い方なんじゃないかしら。お母さんのご両親が両方レモン族というぐらいに」
 お母さんの両親か……私が生まれる前に亡くなったことぐらいしか知らない。でも、そっか、レモン族じゃない人の血が多く入っていたら、髪が香らなくなるかもしれないよね。お母さんの方が私より香りが強く感じるのは、私はずっと自分の香りより人の香りの方が強く感じられるからだと思ってた。けれど、そうよ考えてみたら私は少なくともハーフなんだわ。
「前にローズ族の話をした事があったでしょう? ローズ族は奴隷にしていた黒髪の人たちによって滅ぼされてしまった。けれど、レモン族がどこかの人たちによって滅ぼされたって聞いたことがないわ」
「はい。滅ぼされてはいなくても、お父さんが言っていたように自分たちの国を追われ、私の故郷の人たちに迫害されて消えていったのかな、と」
 だって、あんな酷い扱いを受けていたんでしょう? きっと私が受けたものよりもっと酷かったんじゃないのかな。
「アイラさんの故郷では迫害を受けたかもしれないけれど、他の国では違うんじゃないかしら。ね? アイラさんだって学生時代には何の差別も受けなかったんでしょう?」
 そういえば……。
「ということは、もしかたらどこかの国で少ないながらもレモン族はまだいるってことなんでしょうか……」
「あり得ると思うわ。とはいうものの、もしかしたら他の香らない一般の人たちと結婚をして、純粋なレモン族の人は減っているということもあるかもしれない」
 レモン族は滅んでない? ローズ族が滅んだという話を聞いてからレモン族も、もしかしたら滅んだんじゃないかと思えていた。
 何だか複雑な気分。自分と同じ香りを持つ人たちに会ってみたいという気持ちもあるし、もうこの髪と香りを思い出すものとは関わりたくないという思いが入り混じっている。
「そっか、私にレモン族のことを教えてくれた先生は『この辺りでは珍しい』と仰ってた。つまり、どこかレモン族がいてもおかしくない国が、町があるってことの言い方にも聞こえますよね」
「そうね。ただ、うちの一族みたいに一般の人と結婚する人がいても、一族同士の結婚も無くならないというのは稀だと思うから、どんどん純粋なレモン族の人が減ってしまっているということも考えられるかもね」
 純粋なレモン族が減っている? そうかもしれない。レモン族同士ばかりが結婚するとは限らないから。
「ほら、出来たよ」
 コットンさんが麺を仕上げてラーメンを出してくれた。
「美味しそう」
「話の途中になっちゃったけど、まずは食べて。私の作ったスープとコットンの打ってくれた麺で出来た自慢のラーメンよ」
 スープは薄いカスタードのような色だ。香りが独特なのに何故だか食欲をそそる。
「これはね、とんこつラーメンって言うんだ。もしかしたらアイラさん初めてだろう? ミキの作るとんこつスープは絶品なんだ」
 ちょっと変わったスプーンにすくって飲んだスープは今まで味わった事が無い、とてもとても美味しいものだった。


 <エピローグ>
 私を『普通の人間』にしてくれる魔法薬が出来上がった。その魔法薬を私が飲む時に、更に魔法をかけると私の髪からはレモンの匂いは消える……。
 色々考えた、ミキさんやコットンさんと話したこと。レモン族のこと。
 そして出した私の結論は……
 
「私、保留にします!」
「ほへ? 保留?」
 ミキさんは素っ頓狂な声を出した。私の言った事に驚いたのだろう。
「はい、今回は『普通の人間になるのを止めます』けれど、私はそんなに強くないから……また気持ちが変わる事があるかもしれません。それまでは保留ということで」
「そっか、OK、OK、てっきりアイラさんの意思は固いと思ってたからさ、ちょっとビックリしたけど、うんうん、そしたらさ、またここにきてよ。あ、『普通の人間になりに』だけじゃなくて遊びにね。今のアイラさんならまだここにこられるんだから」
「はい」
 この三日間でミキさんやコットンさんと話して色々なことを考えた。
 特に一番大きかったのは、『純粋なレモン族が減っている』かもしれないという話。私はハーフかクオーターか分からないけれど、少なくとも差別を受けるほどのレモン族の血が入っている。
 差別されることに耐えられなかった。けれど私が普通の人間になってしまって、濃いレモン族がまたいなくなってしまうのも、とても寂しい気がした。
 そして私は、お母さんの、お母さんの、お母さんの、そのまたずっと前の先祖の人たちの忘れ形見のようなものなんだと思ったら、簡単にレモン族を止めたくない気持ちになってきた。
 だから今回は保留にすることにした。
 故郷の町じゃないところに住めば、差別を受けずに暮らせるかもしれないし、もし会えるなら他のレモン族の人たちに、私がレモン族のままで会ってみたいと思ったから。
 そして、あの独特の香りのラーメンも私に影響を与えた。
 故郷で私の髪、そして私の匂いを否定されてから、何となく匂いというものは人に不快感を与えるものだ、ということばかり考えてきた。
 その気持ちを変えてくれたのが、あのラーメンの香り。決していい香りとは言い切れないのに、何故か惹かれ、そして食してみたら幸せな気分になるほどに美味しかった。
 私も自分の香りに負けない人間になってみたい。
 本当は、そんなに簡単に意気込めるほど強くは無いけれど、もうちょっとだけ頑張ってみてもいいかなと思えたのだ。

 行きにも通ってきた砂浜は、今日も優しい風が吹いていた。今度はいつものように後ろで一つにみつあみに束ねている。まとめていない前髪とおくれ毛だけが風に揺れてレモンの香りをさせた。
 ふと振り返り、洞窟を見ると入り口でコットンさんの背に横すわりしながら大きく手を振っているミキさんが見えた。
 ミキさん自慢の手作りラーメンはとても美味しく、それをご馳走になるためだけでも、またここを訪れてもいいなと思った。
ピューレラ 

2016年04月12日(火)22時09分 公開
■この作品の著作権はピューレラさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
運営の皆さん、お疲れ様です。企画開催ありがとうございます。

「はやく人間になりたい!」という題名にしようと思ったのですが止めました。
名前負けする!と。

妖怪が出るホラーではなく、ほのぼの物語りです。

よろしくお願いします。


【あとがきのようなもの】

企画に参加するたびに、ほとんどの回でストーリーの起伏が無い事をご指摘いただいているのに
毎回、こんな感じですみません。
今回は特にひどかったかもしれません。

今回、私なりのテーマが
「先祖と今の自分」でした。

現代は特に、ご先祖様のことを意識しません。
ですが、主人公のように特殊な人間はふとした時に
これこそが自分の中に流れているご先祖様の血なんだと意識しやすいかと思いました。

自分に起こっている差別も、元を辿ればご先祖様に関連してくる。
今を生きていながら、自分の血を遡るとそこにいた人々を振り返り思うことを無視できない
そういうものでは無いだろうか?
そういうことも描きたいと思いましたが、まだまだ未熟で上手く表現できませんでした。

オーロラの魔女側を主観にするか、レモン族であるアイラを主観にするか
迷ったところもありましたが、普通の人間になるかどうかの葛藤を描く上での
一人称ならアイラ主観の方がいいかなと、こうなりました。

読んでくださってありがとうございました。

2016年05月15日(日)00時29分 ピューレラ作者レス
>たぬきさん
こんばんは。
元々、意思や心の強いキャラクターではない主人公なので
完全に、普通の人間になるのを止めましたとするのは違うなと思い書きました。
だからと言って、そのまま普通の人間になってしまうのも、その後の後悔を背負えるほど
これまた強くないと思い、保留という形にしました。

>そんな不安から、薬を飲めなかった……もったいないと思ってしまった。など、そんな風に思いたくなるようなつながりを、彼女達で作るのもよいかと思います。

そうですね。そういう話にもっていったら良かったですね。

ありがとうございました。



>wさん
こんばんは。
そうですね、母親の差別についての設定や考えが甘かったです。
プロットの時点で詳しく考えてあったにも関わらず、それをちゃんと書けなかったことで
余計に皆さんに伝わりづらい、何かしら疑問や矛盾を感じるものになってしまいました。

ありがとうございました。



>たてばんさん
こんばんは。
>ただ、ミキが二代目の設定は意味が無いように感じました。

こちらのコメントを読んで、自分の設定に関する記述の少なさをより反省しました。
スクナヒコナの時代から続くので何十代、何百代目かのわけですがそれも、まったく書かなかったので二代目とお感じになって当然です。

それ以外にも、書いて下さったようにアイラの葛藤シーンをもっと描くべきでした。

ありがとうございました。



>99kgさん
こんばんは。
日本神話のスクナヒコナさんの一族なので島根県在住がしっくりいくかなと
そういう設定にしました。

>「結局捨てないんだろ?」というのは始めから読めている。
そうなんです。
これは読んでいる方に分かってもいいかなと思い書いていました。

私の中で物語の展開を奇抜にする以上に、人物の心理描写や感受性を表現することに
力をいれたいと思っているところがあるからです。
ですが、ラノベとしてはそれでは面白みに欠けますよね。
そして私の自己満足でしかない。

ですので私も色々葛藤を感じつつ、ストーリー展開もちゃんとして
それでいて私の書きたいものをと思うところもあるのですが、今回はストーリー展開の部分は
起伏が無く、皆さんに楽しんで頂けないものだったかなと反省しています。

ありがとうございました。



>いりえミトさん
こんばんは。
>たとえばレモン族だらけの集落の中に『普通の人間』が一人混じったら、『普通に人間』のほうこそが「異常」という扱いを受けると思います。結局、普通か否かというのは、多数派か少数派かで決まるところが大きいので、そのあたりは考えさせられます。

ここまで考えてくださって嬉しいです。
そうなんですよね、普通の人間がところ変われば普通じゃなくなるかもしれない

もっともっと深く描けばよかったと思いました。

今回は、ほとんど会話でストーリー展開がいつも以上に乏しくなってしまったと思います。

ありがとうございました。



>T.Kさん
こんばんは。
レモン族のような種族については昔から書きたいなと思って考えていたので
今回使えて良かったです。

ケンタウロスも、自分の中では色々考えていた設定があったので
そういうのも、もっと描けば良かったと思いました。

ありがとうございました。



>茉莉花さん
こんばんは。
ストーリーのほとんどが会話や過去の振り返りなどになるので
せめてプロローグとエピローグで情景を描こうと思いました。

このレモン族である主人公が差別を受け、悩み、種族を止めたがるというものを
どう描こうと思いつつ、ずっと設定だけ考えて書き上げていないものでした。

それを今回の企画で使ってみようと思い描きました。

ありがとうございました。



>ローさん
こんばんは。
足跡だけでも残してくださって嬉しいです。
ありがとうございます。



コメントを下さった皆さん、読んでくださった皆さん
ありがとうございました。

作者コメントに“あとがきのようなもの”を追加しました。

そちらももし良かったらご覧いただけると嬉しいです。
 

nice252
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2016年05月14日(土)23時12分 ピューレラ作者レス
>たかセカンドさん
こんばんは。

情景描写はわざと最初と終わりだけに力を入れたのですが
限定的だったので、逆に足らないとご指摘を受けるかもと思っていたので
丁寧と言っていただけで良かったです。

話の起伏は……毎回、皆さんにご指摘頂く部分で私としても分かっているのに
どうしても心理描写の方に力を入れてしまうようで反省です。

ありがとうございました。



>つとむューさん
いつもお世話になっています。

>冒頭でいきなり、「私」、「メリッサ」、「オーロラ魔女」の三人の人物が言及されていて、
戸惑ってしまいました。
しかも、メリッサについて説明があるのは、中盤以降になってからでした。

そうですね、いきなり過ぎでしたね。

レモン族が嫌われたのは、故郷の町の人たちは、昔、同じように髪からバラの香りがする
ローズ族にはぐ害を受けていた過去の因縁を髪が香る種族であるレモン族に対して恨みとして返していた
という感じでした。

高知県須崎名物の鍋焼きラーメンですか?
機会があったらぜひに食べてみたいです。

ありがとうございました。



>兵藤晴佳さん
こんばんは。

>まず、彼女がどこから来て、どこに来たのか。
「遠い国」に「この」がつくかつかないかで、読者の理解の速さが違います。

そうですね。
パラレルワールド的だったり、異世界という感じより
今のこの時代の世界でありながら、世界のどこかにそういう特殊な人が
実はいる、という感じにしたいなと思っていたので出身地を曖昧にしたいなという思いがありました。

ですが、私が考えていたものは多分、かなり独りよがりで説明も少なく伝え切れなかったですし
ご指摘くださったように、どこから来て、どこに来たのかは
読んでくだっさっている方に伝わるように描くべきだったと思いました。

ありがとうございました。



>おいげんさん
こんばんは。

>この物語がどのような時代背景で、文化をもっているのか記述されていませんので、的外れになるかもしれません。アイラ・コットン・ミキ。この日本人離れした集合は一体何なのでしょうか? オーロラの魔女の『オーロラ』は、具体的に何を指しているのでしょうか。

異世界でもパラレルワールドでもない現代の中で、実は普通の人間に紛れて、普通じゃない
人間たちが暮らしていた。
というのを想像して書いていました。

けれどその詳しい説明を書いていないですし、読んでくださった方には伝わらないですよね。

オーロラの魔女は、今回、神話がテーマなのでオーロラの女神からきていると考えてくださった方もいたかもしれないのですが

これは完全に私のミスで、本来入れるはずだった彼女が何故にオーロラという名で
呼ばれるかというエピソードがあったのです。
簡単に書いてしまうと、彼女が魔法を使うときにオーロラが発生するからなのですが

そういう点も含めて、枚数をもっと増やして丁寧に描くべきだったと思います。

ありがとうございました。



>ハイさん
こんばんは。

普段、コメディを書かないのについ感覚でサイヤ人っぽい人物をはさんでしまいました。

>差別する側からすればレモン族が元レモン族になったところで、差別対象に変わりはないと思います。
あいつは元レモン族だぞ! って感じに。
差別する人ってのは、だいたいそんなもんだと思います。

そうですね。髪は染めればいいかと考えていましたが
仰るとおり。
差別する人ってそういうものですし、レモン族に対する怨念のようなものは
故郷の人たちの気持ちから消えないですしね。
書いて下さって気づきました。

ありがとうございます。



>志田 新平さん
こんばんは。

今回、レモン族という香りに関することで差別を受け悩む主人公だったので
その主人公の気持ちを動かすものは香りにしようと思いました。

香りは強いけれど美味しいで考えた時に「くさや」や「ドリアン」では強烈過ぎると思い
とんこつラーメンにしました。
とんこつラーメンは、普段食べる時は香りが強いとはあまり感じないですが
本格的にスープを作っているお店などではかなり強烈な匂いがするのをかいだことがあります。
自宅でスープを手作りすれば、その感じが少しは出るかなと思い
(でもそこをあまり描けていませんでしたね)
香りは独特だけれど、食べたら美味しいというものとして使いました。

よくテレビのインタビューなどで外国人の方が好きなラーメンはとんこつラーメンと
答えているのを見かけたので、外国人であるアイラにも他のラーメンよりいいかなと思って
書きました。

オーロラの魔女に関してはすみません。
書く予定でいたのに、私の中エピソードとして飛ばしてしまいました。

現代のこの世界や、他の異世界の人たちに多く名が知れ渡る時に本名やただ「魔女」
というだけより、あだ名のような感じのものがあった方が伝わりやすいだろうと思い
オーロラの魔女としました。

名前の由来は簡単に書いてしまうと、魔法を使う時にオーロラが発生するからです。

ありがとうございました。



>ささしろさん
初めまして。
髪から香りがする種族については昔から案として考えていました。
そして最近では、香水だけではなく柔軟剤の香りも嫌われることがあるスメルハラスメントが
ありますよね。
“誰もが嫌う香りだけでなく、好きだと感じる人がいる香りでも強いと嫌われる”
それを話しに盛り込みたいなと思い今回書きました。

ありがとうございました。



>キーゼルバッハさん
こんばんは。

すごく細かく読んでくださってありがとうございます。

>この物語のキャラたち自体、おとなしめで

そうですね。もっとキャラとして立つものを描けば良かったと思いました。
せっかく今回はキャラクター賞もあったんですものね。

猿男については他の方も書いて下さっていますが、失敗でしたね。
何かしら誰もが知っているキャラクターっぽい人物が、人間にしてもらったというのを
はさもうと思い書いたのですが、私の書くもの、そしてこの物語には合わなかったかもしれません。

ありがとうございました。
 

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2016年05月06日(金)14時36分 ロー
感想はこれといってないですが、
一応読みましたという事で足跡残し。
 

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2016年05月01日(日)04時18分 茉莉花10点
作者の方へ

茉莉花と申します。
貴作、拝読しました。

まず、なんといっても秀逸だったのがプロローグでした。
とても印象的でわくわくする、そういう話運びでした。
すばらしかったです。
レモン族という設定も少し無理矢理感が否めないものの、オリジナリティが高かったなと思っています。
全体的には柔らかい感じの作品で、とげとげしいところがないかな、と感じました。
いや、もちろん話の内容はいじめが入っていて少し暗くなっているのですが、書きぶりが非常に牧歌的というか柔らかだったな、と。
作者の長所、または武器になる部分ではないかな、と感じました。

引っかかりというほどのものではないのですが、全体的に見ると話の筋が少し単純だったかな、と思います。中盤が少し長く感じてしまった感じ。
プロローグとエピローグが抜群にうまいので、思い切って短くしてラストの「私、保留にします!」を強く生かすような、スパッとした構成にした方がよかったのではないかなと思います。

いろいろ言ってしまいましたが、とても柔らかな……それこそレモンの香りのように爽やかな気持ちになれる作品でした。
読めてよかったです。

それでは執筆お疲れ様でした。
また機会がありましたらどこかで。


 

nice273
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2016年04月30日(土)00時44分 T.K30点
髪からレモンの香りがする、レモン族という設定が独特でいいですね。
これといって秀でているものはないですが、その分劣っている所もない。
悪く言えば平坦ですが、よく言えば安定していると思います。
いじめの部分をもっと省略して、魔女さんとケンタウロスさんとのやりとりに終始した方が、もっとほのぼの感が出て良かったと思います。

 

nice240
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2016年04月27日(水)20時28分 いりえミト10点
 『レモンの香りが嫌われて』拝読しました。


 なかなか考えさせれる題材でした。
 主人公のアイラは「レモン族」であるがゆえに差別をされてきた。だから『普通の人間』になりたい……しかし、一体何を持って「普通」もしくは「異常」とするのか? というのがこの作品のテーマであるように私は感じました。

 >ということはやっぱり私は、そしてレモン族は『普通の人間』では無かったということだろう。

 この部分が印象的でした。自分とては普通のつもりなのに、という思いが伝わります。
 たとえばレモン族だらけの集落の中に『普通の人間』が一人混じったら、『普通に人間』のほうこそが「異常」という扱いを受けると思います。結局、普通か否かというのは、多数派か少数派かで決まるところが大きいので、そのあたりは考えさせられます。

 文章も非常に読みやすくてよかったです。

 ただ、ストーリーとしては起伏が少なく、全体的に盛り上がりが弱いように感じました。
 差別エピソードはもうっちょとエグくしたほうが心を打たれると思いますし、アイラが心変わりするきっかけがラーメンというのも、ちょっと弱いかなと。
 また、最後の決断が「保留」というのも中途半端に感じました。「私はそんなに強くない」というのには人間臭さがあっていいのですが、物語的には、もっと大きな決断をしたほうが映えると思うんですよね。一生レモン族を続け、差別と徹底的に戦う決意をするとか、他のレモン族を探す旅に出るとか。

 作者さん的には、あまり深刻的な書き方はしたくない、という思いがあったのかなとも思いますが、私としては、やはりもう少し話の起伏があったほうがよかったかなと思いました。 


 短いですが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。
 

nice249
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2016年05月07日(土)14時21分 99kg30点
ほのぼのとした世界の雰囲気がよいですね。
でもその雰囲気の割にはいじめの話が出てくるので似つかわしくない。
人々の羨望から迫害って……、人間も捨てたモンでもないですよ。

でもこれは珍しい話でもないんですよね。
美しい金髪も子供の世界では奇異に見られ、からかわれ、それがトラウマになって自身の髪を疎ましく思い捨てようとする。
そういう話は昔からありました。
それをファンタジーに置換したもの、という面ではきちんと王道に添った話です。

ただファンタジーに置換する、という部分で世界観が分かりにくい。

レモン族、オーロラの魔女、ケンタウロスと出てくるファンタジーな世界に島根県
……島根県!?
と思わず読み直してしまうほどビックリしました。
確かに日本って言葉出てきますけどね。
ワンピースにもシャドウスキルにも海皇記にも日本刀は出てきます。
現存する島根県の住民はオーロラの魔女も知らないしレモン族も聞いた事ないと思います。
島根県がどうこの世界に存在するのかが分かりませんねん。
ていうか島根県である必要があるのでしょうか?

そして事件らしい事件が無い。要は「転」に値する部分。
物語的には主人公の心境の変化がそれに当たると思われますが、ハッキリ言って「結局捨てないんだろ?」というのは始めから読めている。
むしろ本当に捨ててしまう方が「転」ですね。それなら「ええ?」となります。
そして自分が何を失ったのかを後に知る事になって後悔、レモン族の性質を取り戻そうとする展開。
それでも旧スーパーマン2になってしまうか……。

奇抜な事を狙わず、シンプルにスタンダードに展開した、という点では評価できます。
この話で一番重要な役割を持っているのはケンタウロスなんでしょうね。
それならもう少し彼語りがあってもよかったかな。

残念なのはタイトルがイマイチ、という所でしょうか。

そんな中でサイヤ人ネタは不意打ちでしたね。
見事なカウンターパンチ。

とんこつスープがいい香りじゃないだとう!?


追記
何気にケンタウロスに投票したのは私です。
 

nice248
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2016年04月26日(火)22時52分 たてばん L2TtHY/jcg10点
 執筆お疲れ様でした。
 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残します。

 《文章》
 > 柔らかい波が静かに押し寄せる砂浜のすぐ傍に鍾乳洞のような洞窟が見えた。
 冒頭のこの文に違和感を覚えました。
 鍾乳洞のような、の一言で洞窟の描写が終わってしまうのは勿体ないです。
 『洞窟が見えた。洞窟に一歩踏み出すと天井には乳白色の氷柱が一面に垂れ下がっていた。足下はところどころ濡れて水たまりができているうえに、削り出された岩壁が不気味さを際立たせている。さしずめ鍾乳洞と言ったところだろうか』
 駄文で申し訳ないですが、鍾乳洞という説明だけでこんな感じの表現ができますし、上手い人はもっと細かい描写が書けます。
 これに加えて洞窟に入ってからの描写で、寒いのか暑いのかが書けます。鍾乳洞は一年を通して平均十五度前後なので、冬なら湿気が凄いが暖かく、夏ならひんやりとした空気が心地良い、という感じで季節感も一緒に出せると思います。

 見渡すと三つ編みは漢字に変換しても良いと思います。

 《設定》
 髪が香るレモン族という種族は面白いと思いました。
 ただ、ミキが二代目の設定は意味が無いように感じました。

 《構想》
 時間は三日と限られているのに、コットンと話してラーメン食べて、そして、私保留します、では話のオチが無理矢理に感じます。
 アイラはレモン族を辞めるか人間になるかという、自分の一生を決める大事な三日なのに全然悩んでいるように見えませんでした。もし、自分が性別を変えるのに三日の猶予が与えられたら、一睡もできないほど悩むと思います。

 せっかく先代の魔女が町にいるのですから、町に出向き先代の魔女にどんな種族に薬を与えて、またどんな悩みがあったか聞く話を入れても良かったと思います。
 アイラには心の葛藤のシーンが圧倒的に少ないと思います。

 この作品は匂いをメインに組まれていると思います。なら、嫌な思い出の他に、レモン族の匂いのおかげで普通では体験できないような良い思い出を作ることで、レモン族に思い留まるきっかけぐらいにはなると思います。
 母や先祖を重んじる性格のようなので、母との特別な思い出でも良いと思います。
 ラーメンの香りに説得させられるオチではちょっと残念です。 

 《総評》
 題材は良いと思いました。
 中間の話がスカスカなので、そこを埋めていくと作品の魅力は上がっていくと思います。
 
 未熟者の身でいろいろと口出ししてすみません。
 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
 

nice237
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2016年04月24日(日)16時01分 w-10点
こんにちは。読みましたので、感想を残してみます。

タイトルが目をひきました。
冒頭シーンも良い引き込みでした。レモンの香りの髪、という設定は面白かったです。

しかし、レモンの香りの髪、という設定は良いのですが、その周囲に付随する差別に関する設定が納得できず、そこで物語から心が離れてしまいました。
主人公は幼い頃から箱入りで育てられた、ということは、その頃にはすでにレモン髪に対する強いヘイトがあったということになります。
元々レモン髪に対する恐怖や嫉妬があったとはいえ、無銭飲食のヘイトをずっと引きずるのはあまりリアリティを感じませんでした。いや、引きずったという設定でもいいのですが、だとすると、そんな激しいヘイトがある中で、主人公の母はその街でどういう扱いを受けていたのかが疑問でした。主人公は差別を受けたのに、母が差別を受けていたような感じが全くしなかったので。街の有力者の妻であるからには、家の中でずっと引き籠もってばかりもいられないと思います。政治家の妻ほどではないにせよ、会合に出席とか夫の代理で冠婚葬祭とか色々あると思うので、そこで差別を受けなかったのかな、と。
また、自分の妻がそれだけ激しい差別を受けたり、娘が差別を受けることが想定されるのなら、有力者ならなんらかの対策を取っているようにも思います。別の街に住むとか。娘を遠いところの学校に行かせた、というのは良い対応だと思います。また、箱入りで育てることができるくらいなら、そもそも主人公が労働者に混じって働く必要が無いような感じもします。学校卒業と同時に婿をとって結婚させる、というふうにしてもいいはずです。
ということで、レモン髪差別に関する設定がなんとももにょってしまいました。

ラストの、とんこつラーメンのにおいで決断するという流れは良かったと思います。
しかし、そこで結局自己肯定になってしまったのは不満足でした。
自己肯定に戻ってきたからといって、街の差別がなくなって問題が解決するわけではありませんし。「故郷の町じゃないところに住めば、差別を受けずに暮らせるかもしれないし」とありますが、故郷から遠い学校に行っていたくらいなら、もっと早い段階でその選択肢が出ていたはずです。
といった感じですので、すみませんが、あまり楽しむことができませんでした。
執筆おつかれさまでした。


 

nice224
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2016年04月23日(土)23時29分 たぬき nY39lNOBNk10点
人種差別との関わり方について悩む主人公。最終的には、あくまで保留の形を取ったり、少し根の深い問題に対する問いかけがテーマとなっているような気がする作品でした。
受身がちな主人公が少しだけ変わったというお話なので、印象は少し薄めでした。
主人公がメインに据えられているのではなく、あくまで背景を見せるような作りだったと感じます。(悪く言えばキャラクターが薄いです。ケンタウロスは好きでした)

サイヤ人を組み込んであるのはちょっと違和感でしたが、多世界から人間になりたい者達が集うという設定はいいですね。

全体的に雰囲気はやわらかく読みやすいですが、読んでいて気になる部分と言えば、ラーメンのできあがりを待つ際の話です。
メインキャラクターの過去話や実話ではなく、種族に関する予想での会話だったからかもしれません。(どこか一歩引いてみていたから退屈に感じたのかも)

オチに関して、あくまでも案ですが、主人公が「もう一度ここへ来たい」という想いを強く抱くシーンなどを中盤から後半にかけて入れてみるともっと具体性が出る気がします。
人間になってしまうと、もうこの場所に来れない。そして普通の人間じゃない者達との接点も失われるかもしれない。(=視野が狭まる?)
そんな不安から、薬を飲めなかった……もったいないと思ってしまった。など、そんな風に思いたくなるようなつながりを、彼女達で作るのもよいかと思います。

 

nice240
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2016年04月23日(土)21時57分 キーゼルバッハ10点

キーゼルバッハと申します。読まさせていただきましたので感想を。

(設定)

 金髪の少女、アイラは金髪の艶やかなレモンの匂いが香る髪を持つレモン族の女の子。
 『普通の人間』に戻るために、はるばる日本の島根県の海岸沿いにある、
 ある洞窟にやってきた。そこには、オーロラの魔女と呼ばれる人物が住んでいる。
 アイラはレモン族であるがゆえに、差別を受けていた、だから彼女は
 自分が普通の人間になれば、差別をされることなく、普通の人生が送れる、そう
 思っての事だった。アイラは洞窟煮立てられた家に住む、オーロラの魔女に出会う。
 果たして彼女は、『普通の人間』になれるのか? それとも……という内容でした。
 主人公アイラの過去を印象的に書いていて、物語に深みを持たせている一方で、
 その他の謎について(レモン族やバラ族とはそもそも何なのか等)の描写や、
 それぞれのキャラについての個性が薄いような気がしました。
 ストーリーの内容的にも、ハラハラドキドキ、読者の感情を揺さぶるような描写
 も乏しく、少々退屈に感じてしまう場面も多々ありました。

(キャラ)
 
 アイラ・マルス  
      
      :この物語の主人公で、レモン族の少女。
       地元の街では、両親がお金持ちで何不自由なく育ったが、
       両親に自分の住んでいる町よりも遠い町の、寮制の学校に
       進学させられたことから疑い初め、実は自分の町では
       レモン族の人間は差別されているのだということに気付く。
       それから、自分を普通の人間に戻してもらうために、
       遠くからはるばる日本の島根県にいるオーロラの魔女に
       会いに来た。
       アイラの過去についての描写、またアイラがどうして
       普通の人間に戻りたいのかも、細かく書かれており、
       それがこの物語の面白さに繋がっていると思われます。
       ただ、この物語のキャラたち自体、おとなしめで、物語
       全体に関して、あまり起伏も無く、感情が揺さぶられる
       ような場面もないので、少々退屈に感じてしまいました。
       もっとアイラが葛藤して、悩む場面や、感情的になっている
       場面があったほうが、感情移入しやすいんじゃないかなと
       思いました。


 ミキ(オーロラの魔女)  

      :島根県の海岸沿いにある洞窟に住んでいる魔女で、
       実は日本神話のスクナヒコナの子孫。そうであるがゆえに、
       身長が一般の人間より小さく、歳を重ねるごとに顕著に
       身長差が現れる。
       主人公、アイラの願いを聞き元に戻す魔法薬を作ることに
       なったが、3日ほど時間がかかるため、それまでアイラを
       自分の家に止めてもてなした。
       助手に、ケンタウルスのコットンがいる。
       キャラの性格や、言動的にアイラにとって彼女は年の近い
       お姉さんというような、印象を感じました。料理が上手で、
       とんこつラーメンを作っている所は好感が持てました。
       しかし、キャラとして強い個性はあまりなく、二つ名である
       オーロラの魔女という名前の由来も作中で語られないので、
       どこかキャラとして中途半端な感じがしました。
       魔女としての、インパクトが少なく肩透かしな印象です。   
  
       
 コットン :オーロラの魔女に助手として働いているケンタウルスの男。
       オーロラの魔女が住む洞窟は、色々な次元とつながっていて、
       彼は別の次元から、ここへやってきた。現代的なな暮らしが
       したくて、オーロラの魔女のところへやってきたらしい。
       彼についても、性格はやさしく親切でいいのですが、
       キャラとしてのインパクトは少ない印象です。せっかくの
       ケンタウルスというキャラとしての個性も、あまり活きて
       いない気がしました。別の種族にしても、物語的には
       成り立ちそうです。もっと、助手としての仕事やケンタウルス
       としてのキャラの個性を物語で絡ませて欲しかったです。
     
       
 メリッサ :アイラの親友で、唯一金色のレモンの香りがする彼女の髪を
       ほめてくれた女の子。
       主人公の過去で登場し、主人公に対してオーロラの魔女のことを
       教えるなど、物語的にも重要な役割を果たしている少女。
       ただ、彼女についての描写がアイラの過去話しでしかなく、
       またメリッサというキャラについての説明もあまりないので、
       キャラ的には重要な位置にいるのに、もったいないキャラだと
       思いました。      

 元猿男

      :メリッサが話していた、オーロラの魔女に頼んで『普通の人間』
       にしてもらった男の人。
       オーロラの魔女、ミキも彼については覚えており、過去の話で
       登場いたします。
       彼についての設定は、某有名な漫画のキャラに酷似していますが、
       これはパロディーを狙って行ったのだとしたら、物語全体の雰囲気
       とまるで合っていないので、個人的に滑っている気がしました。
       彼についての描写も、過去の中の話でしか登場せず、またキャラと
       しての描写も少ないと感じました。
       彼は、オーロラの魔女に『普通の人間』に戻してもらった重要な
       キャラなので、もっと物語と絡ませて欲しかったと個人的に
       思いました。



(世界観)
 
 世界観に関しては、日本の島根県を舞台に異国からきた少女が、
 洞窟の奥に住む魔女に、会いに行くということで、作者様の
 オリジナリティーが強い世界観だなという、印象です。ただ、
 その世界観が物語の面白さに繋がっているかと言われれば、微妙
 という印象であります。ストーリー的には別に日本の島根県じゃ
 なくても、全然成立しそうだなと、個人的に思いました。

(文章)

 文章は、普通に読みやすかったです。ただストーリーの展開上、
 起伏が少なく、読んでいると個人的に少々退屈になってきてしまい
 ました。
 また、地の文において、主人公の一人称にて語られているのですが、
 ところどころ、敬語になっている部分があり、仕様なのかどうか
 わからないのですが、違和感を覚えました。

(テーマ)

 テーマ的には、ギリシア神話におけるケンタウルスが出たり、
 日本神話にでているスクナヒコナの子孫がでたりしていて、今回の
 企画のテーマには、十分沿っているとは思います。
 ただ、あまり神話の展開とは関係はない印象です。キャラについて、
 神話の内容ともう少し設定を近づけたり、神話の出来事と絡ませると
 個人的にもっと面白くなりそうだなと思いました。
 
(総評)

 物語全体の印象としては、正統派のファンタジーという印象で、
 ストーリー的にもほっこりする内容でした。
 ただ、キャラ的にもストーリー的にも、あまり感情の起伏が少なく、
 最初から終盤まで、一本調子という印象でした。
 また、キャラについても神話のキャラとしての個性が少し乏しい
 用に感じました。もう少し、神話と絡ませると、企画のお題的にも
 ストーリー的にも、面白くなるのではないかなと、個人的に感じ
 ました。
 主人公のアイラに、もっと葛藤や心境の変化と、キャラ同士の絡みを
 増やして欲しかった印象です。
 
 
それでは、GW企画お疲れ様でした。また機会がありましたら、読ませていただけると嬉しいです。

キーゼルバッハでした。
 

nice246
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2016年04月23日(土)19時07分 ささしろ10点
はじめまして。未熟者ですが感想を書かせていただきます。

金色の髪からレモンの香りがするレモン族っていう設定が好きでした。

冒頭は少し文章が固くて読みづらかったのですが、段々と文章がやわらかくなっていってよかったと思います。

〈2〉のところは、回想している感じと、オーロラの魔女に話している感じの両方があって、敬体か常体かどっちかに統一した方がいいかなと思いました。

内容については、色んな種族、価値観について書かれていてよかったです。小説が多声的になっていたと思います。

簡単な感想ですみませんが以上です。
 

nice256
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2016年04月23日(土)15時36分 志田 新平 2XEqsKa.CM10点
作品拝読いたしました。

レモンの香りが髪からする種族というが聞いたことがなくて興味を持って冒頭を読み進められました。ラーメンの匂いを好きになって問題が解決するというオチも綺麗だと思います。

少し気になった点は
○「~だった」と「~です」が混ざっているところがあって少し混乱してしまいました。
統一したほうが良かったのではないでしょうか。

○オーロラの魔女という名前だったので舞台が異国だと思っておりました。
ごめんなさい、何故オーロラの魔女なのか、ということもよくわかりませんでした。
読み落としていたらすいません。

それでは執筆お疲れ様でした。

 

nice249
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2016年04月20日(水)00時19分 ハイ10点
拝読致しました。



いい作品でしたが、ちょっともの足りませんでした。
特に、絞め方があまりに予定調和でもう少し何か工夫が欲しかったところです。



また、全体にいい雰囲気で書かれているのに、途中おかしなネタ、猿男の話を入れたのは選択ミスとしか言いようがありません。
もしかすると作者さんは、普段コメディを書かれていて、笑いがないと不安になる方なんでしょうか?
気持ちはわかりますが、せっかく独特の世界観が感じられる話に仕上がっていたのにだいなしでした。
なお、笑いが問題だったわけではありません。ネタが問題なんです。一応。



また、これは重箱のすみつつきみたいなもので読み流してもらってかまいませんが。
この話、仮に人間になっても、なにも解決しませんよね?
だって、この場合だとレモンの香りがしなくなるだけで、見た目はかわりません。そして、差別する側からすればレモン族が元レモン族になったところで、差別対象に変わりはないと思います。
あいつは元レモン族だぞ! って感じに。
差別する人ってのは、だいたいそんなもんだと思います。




上記の問題点以外は丁寧に書かれていて、楽しく読ませていただきました。
レモン族に、ローズ族。発想が素晴らしいと思います。
何か元ネタがあるんでしょうか?

出来れば、レモン族であるということをもっと活かした話が読みたかったですね。




それでは、執筆お疲れさまでした。
 

nice246
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2016年04月19日(火)09時37分 おいげん10点
御作拝読させて頂きました。
早速、感想を述べたいと思います。

◆良かった点
①『香り』という主題、あるいは副題。
 一読すると、差別という強い用語に目を奪われがちになります。ですが、主人公の心の動きは、常に香りと共にあることが分かります。物語をまろやかにしているのは、作者様が香りを用いたことによって生み出されたものだと思いました。

②不思議な造語と現実感のある物品。
 レモン族やローズ族、ケンタウロス。ファンタジー要素を多分に含んでいて、本当にこの話は日本なのかと思わせられます。幻想的な描写と、心情の吐露を中心軸に展開していくのは、美しくありました。
 とんこつラーメンが出なければ(笑)
 これも魅力の一つなのかもしれませんね。

◆気になった点
①舞台背景が飛ぶこと
 冒頭で洞窟の中に魔女が居ると説明されています。これがまず鉄板の第一印象です。
 ですが、その後に洞窟内で生活している様子が感じられません。
 時には町の話だったり、工場の話だったり、キッチンの話だったりしています。
 枚数的に余裕があると思いますので、もう少し洞窟内の生活感を出しても良かったのではないでしょうか?

②ネーミング
 この物語がどのような時代背景で、文化をもっているのか記述されていませんので、的外れになるかもしれません。アイラ・コットン・ミキ。この日本人離れした集合は一体何なのでしょうか? オーロラの魔女の『オーロラ』は、具体的に何を指しているのでしょうか。
 読み取れていなかったら申し訳ない限りです。

◆総評
 所謂パラレルワールドの幻想譚という印象を抱きました。種族や歴史に関して掘り下げがなされており、説得力があります。一方で、明かした方が読者の為になる情報も、多々存在するように思えました。
 しっとりとした物語なので、不相応な要求かもしれませんが、「あー面白かった!」とカタルシスを得るような何かが欲しかったです。

 執筆お疲れ様でした。作者様の次回作を楽しみにしております。
4/19 おいげん

 

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2016年04月22日(金)21時46分 兵藤晴佳-10点
ギリシア神話に『出雲の国風土記』、『古事記』。
難しい融合でしたね。

少女が自己受容できるかどうか、というのがポイントでした。
それは結局、ラーメンか薬か、という選択になるのでしょうが。

そこが分かりにくかったのが残念です。

まず、彼女がどこから来て、どこに来たのか。
「遠い国」に「この」がつくかつかないかで、読者の理解の速さが違います。

たとえ話に出た異種族の設定。
私は「そうか、これは富野由悠季『無敵超人ザンボット3』や『海のトリトン』辺りのオチが来るな!」と思ったのですが……。
ちょっと残念でした。

「エピローグ」の使い方。
ヒロインの選択を明示しないで、「その結果どうなったか」を出来事だけで淡々と語れば効果的だったでしょう。

以上の点を工夫するだけで、作品の質は変わります。
ツッコミが厳しくてすみません。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
 

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2016年04月17日(日)21時07分 つとむュー10点
GW企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

レモン族という設定が独特で面白い作品でした。
ほのぼのとした雰囲気も良かったです。


>それがきっとメリッサの言っていた、オーロラの魔女の洞窟なのだろう。

冒頭でいきなり、「私」、「メリッサ」、「オーロラ魔女」の三人の人物が言及されていて、
戸惑ってしまいました。
しかも、メリッサについて説明があるのは、中盤以降になってからでした。

これは個人的な意見ですが、冒頭のシーンは、タイトルにあるような
レモン族の香りが嫌われるシーンの方がいいんじゃないかと思いました。
それで、メリッサに相談したらオーロラ魔女のことを紹介してもらって、洞窟を訪れる。
そうすれば、冒頭でぐぐっと読者の心を引きつけることができるような気がしますし、
登場人物も順番に出て来てわかりやすいですし、
なによりも、洞窟を訪れる時のドキドキ感を、読者も味わえるんじゃないかと思います。


>「レモン族は臭くてかなわん、早く出てってくれ」

レモン族が嫌われる理由が、個人的にはいまいちすうっと入ってきませんでした。
おそらく、レモンの香りはどちらかと言うといい香り、というイメージを持っているからだと思います。
もう少し、納得しやすい理由とかにしてもらえると、分かりやすかったんじゃないかと思いました。

ここからは個人的な妄想ですが、「街の人はほとんどミルク族」という設定も面白いかもしれません。
「レモン族が近づくと、肌が固まってしまってかなわん」と言われたら、
おお、そうか、と納得してしまうかもしれません。


>特に一番大きかったのは、『純粋なレモン族が減っている』かもしれないという話。

こういうことは、図書館などで調べものをしても気付くことができることだと思います。
せっかくオーロラ魔女のところに行ったのだから、そこでしか聞けないような話を聞いて、
主人公が普通の人間になるのを保留する、という流れの方がよかったんじゃないかと感じました。
例えば、普通の人間になった人の成功話や失敗話、思い留まった人の話などを聞くという展開です。
オーロラ魔女のところでしか聞けない話であれば、読者の興味もぐぐっと増すんじゃないかと思います。


>同じく新しく紅茶を入れてもらったオーロラの魔女さんはケンタウロスさんを私に紹介してくれる。

せっかく紅茶が出てくるのであれば、紅茶とレモンを絡めて欲しかったです。
これはもったいないと思いました。


>そして、あの独特の香りのラーメンも私に影響を与えた。

独特の香りのラーメンと聞いて、高知県須崎名物の鍋焼きラーメンを思い出しました。
鍋焼きラーメンは、土鍋の蓋を開けた時の、すごく良い香りが忘れられません。
未体験であれば、一度味わってみることをお勧めします。美味しいです!


いろいろと書いてしまいましたが、ほのぼのとした雰囲気が心地よい作品でした。
レモン族やローズ族など、設定はとても面白く、興味深いものでした。
その面白い設定を、もっとストーリーに絡めてもらえると、より楽しめたのではないかと思います。
ローズ族の人も、オーロラ魔女さんのところに来ていたら、面白かったんじゃないかと思いました。
偉そうなことを沢山書いてしまい申し訳ありません。取捨選択、よろしくお願いします。
今後のご活躍を期待しています。
 

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2016年04月15日(金)23時57分 たかセカンド10点
こんばんは。
「レモンの香りが嫌われて」を読ませていただきました。

感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。
納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。


とても雰囲気が良く、情景描写も丁寧に感じられました。
くどいわけではなく、良いバランスですんなりと頭の中に情景が浮かんできました。

ただ、話しの起伏としてはあまりなく、ずっと平坦で気分の盛り上がりというのは感じることができませんでした。

無理に事件を入れて試練を与えてほしい! と言うわけではなく、もっと主人公自身の葛藤を表面化してほしいと思いました。
こんな差別を受けた! というエピソードをもっと盛り込み、どうしても人間になりたいんだ! という情熱を見せてほしかったと個人的には思います。

確かに、主人公は差別を受けつらいのだろうな。とは思いますが、エピソードが少々少なめに感じましたので、最後の主人公の決断を見てもカタルシスはそこまで高まることはありませんでした。

いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。

以上となります。

このたびは有難うございました。
 

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合計 16人 150点

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