漢詩方術士レューン |
前方に黒い牛の姿がこちらに向かって来るのが見えた。あれは暴れ牛だ。 「もうすぐ村に着くと思ったら暴れ牛が猪突猛進の大歓迎か!」 「いや、私が思うに、あれはお世辞にも歓迎しているとは言い難いね。それに猪じゃなくて牛だし」 ブ・ホゥラの台詞に対して、レューンは冷静に返答した。 それまでは、森の脇を通り抜けて行く道は平穏だった。時々、牛に牽かせてゆっくり進む荷車とすれ違う時には、道端に避けなければならない。昨日降った雨が轍に溜まっているので、そこからの跳ね上がりにだけ注意していれば良かった。森の中の日陰には、まだ雪が残っているようだが、日当たりの良い道はすっかり春だ。 道端では気の早い 二人の方に向かって突進して来る牛は、立派な角を生やしている黒い雄牛だ。かなり大きい。まるで激怒しているかのような、叫び声のごとき大きな鳴き声をあげながら道の真ん中を駆けて来ている。 「レューン! 避けろ!」 怒鳴りながら、ブ・ホゥラは道の脇に回避して牛をやり過ごした。ブ・ホゥラは力自慢の大柄な若者ではあるが、敏捷さも兼ね備えていた。 「避けるなと言われても、この状況なら避けるしかないね」 大男であるブ・ホゥラとは対照的に小柄な少女のレューンも、素早く体を開いて、ブ・ホゥラとは反対側の道端に寄った。黒っぽい濃紺の道服の袖と、背中に垂らした小さな三つ編みが動きに沿って揺れた。 道の両脇に避けたブ・ホゥラとレューンの間を、暴れ牛は走り過ぎた。そしてそのまま一目散に走り去ってくれれば二人にとっては都合が良かったのだが、そうはならなかった。黒き雄牛は速度を落として立ち止まったと思ったら、方向転換し、鼻息荒げながらブ・ホゥラとレューンを睨み付けた。大きな声で鳴く様子は、もはや雄叫びか咆吼とでも呼ぶべきものだった。 「どうやら闘わなければならないようだね」 十三歳の少女としては落ち着いたやや低めの声で、レューンは呟いた。 「戦いか! 望むところよ! 力は嘘をつかないのだから、俺の力を見せつけてやるぜ! 力こそ正義。力こそ真実。力こそ神。力こそ腕力。力こそ膂力!」 「最後の二つは文脈的な意味でいうと、力と同義だから。同語反復で、力こそ力、って言っているようなものだから」 「そんなことはどうでもいい! 力こそ力! 大いに結構。危ないからレューンは下がっていろ!」 ブ・ホゥラは小柄な少女レューンを庇うように前に出ると、意気揚々と腕まくりをした。が、白い衣服の袖はすぐに手首のあたりまで戻ってきてしまって意味は無かった。 もう一度腕まくりし直そうとするブ・ホゥラを待っていてくれる雄牛ではなかった。口を大きく開けて涎を垂らしながら、怒り狂ったかのごとき鳴き声を伴って、ブ・ホゥラに向けて突進してきた。二本の角で相手を串刺しにするべく、逞しい蹄で黒っぽい土を踏みしめて疾駆する。 「うぉぉぉぉっ! 俺の力を見よ!」 雄牛に負けない大声で咆吼をあげて、ブ・ホゥラは雄牛の二本の角を左右の手で握って掴んだ。雄牛の猪突猛進を受け止めた、と、思ったが、勢いを殺しきることができず、地面に足を踏ん張ったまま、少しずつ後ろに押し込まれていった。 「おいおいブ・ホゥラ、威勢のいいことを言った割には、牛に負けているじゃないか」 「うるさいな。足が轍の水溜まりに入ってしまって、滑って踏ん張りが効かないんだよ。早く援護してくれ!」 本人の言う通り、ブ・ホゥラの右足は、道に刻まれている二本の轍の片方に入り込んでいた。白い 「このまま力勝負に負けて牛に押され続ければ、歩かずに村に到着できるじゃないか。良かったね」 レューンは、自分より五歳上のブ・ホゥラに対して遠慮無く辛辣な言葉を吐いた。ブ・ホゥラと雄牛はレューンが見ている前を通り過ぎて村の方へと少しずつ進んでいる。 「いいから早く援護を頼むって! それとも即興で漢詩が思いつかないのか?」 「そんなことはないよ! 失礼だな。だったら、私の実力を見せてあげようじゃないか」 レューンは表情を引き緊めた。大きな目は少し垂れ気味ではあるが、黒き瞳に強い光を宿した。朱唇から音吐朗朗たる詠唱が紡ぎ出される。 春風駘蕩靄余暉 春風、 睡眠深閨未解囲 睡眠 莫厭重遊於短夢 陶磁高枕入霞微 陶磁の高枕、霞に 黒い雄牛を指さしながらレューンが唱えたのは、一句あたり七文字で四句から成る七言絶句の漢詩だった。詠唱に呼応するようにして方術が発動した。雄牛の周囲を、薊の花のような薄紫色の霧が覆った。その霧が雄牛の体に吸い込まれていくと、変化が生じた。 急に体が弛緩し、雄牛の進撃は止まった。生まれたての仔牛のように足元がふらつき、立っているのも覚束なくなった。 「やったか?」 二本の角を掴んでいた両手を離しながらも、ブ・ホゥラは油断無く雄牛の様子を見続けた。 「眠りの漢詩方術だよ。既存作じゃなくて即興だから、効果覿面のはずだよ。これでこの牛はしばらくは眠ったままだね」 特殊な才能を持ち訓練をした者が、体内の気を練り上げて常人には不可能な不思議な効果を生み出す技を方術という。そして漢詩を詠唱することにより更に威力を高めた方術を駆使するレューンのような使い手は、漢詩方術士と呼ばれている。 突然襲われた眠気に、黒い雄牛は抗し得なかった。涎は相変わらず垂らしたまま、両目の目蓋は次第に下がってくる。四本の脚は力が入らなくなっており、大きな胴体の重さを支えられなくなっていた。 遂に牛は、脚を伸ばしたまま右側に横倒しになった。地面にぶつかって重い音を立てる。眠っているのでなければ、かなり痛そうな音だ。 「よし、上手く行った。……って、あれ?」 レューンは瞠目した。方術が効いて立ったまま眠ってしまった牛は均衡を崩して真横に倒れた。が、地面に衝突した衝撃で、目を覚ましてしまっていた。首を持ち上げ、寝そべった状態から立ち上がろうとしている。 「おいレューン! 眠ったはいいけど、倒れた痛みで目が覚めるとか、どういう茶番劇だよ。ちゃんと方術を発動させたのか?」 「お、おかしいな。本当にちゃんと方術が効いたら、ちょっとくらいの刺激では目覚めないはずなんだけど。詠唱が、どこか失敗していたのかな?」 「おい」 「どこか一箇所くらい 言葉の最後は春の雪融けのように消え入ってしまった。漢詩方術士といっても、レューンはいまだ年齢も若く、修行中の身だ。失敗することもあった。 「まあいいさ。やはり最後に頼りになるのは、この俺の力ってことだな」 相棒の失敗を喜ぶわけではないが、ブ・ホゥラは自分の活躍の場が回ってきたことに歓喜していた。 再び立ち上がって、牛とは思えぬような咆吼をあげながら向かってくる相手に対して、ブ・ホゥラの対応は代わり映えの無いものだった。雄牛の二本の角を両手で掴み、足を踏ん張って力較べだ。 「ぐぐぐぐぐ! どうだ。俺には同じ技は二回は通用しないんだぜ!」 雄牛が押し込もうとしても、ブ・ホゥラは後退せずにその場に留まって持ちこたえた。最初のぶつかり合いのときには牛の方が突進する勢いがあったが、今はお互いに立ち止まったままの力戦奮闘だ。それに、牛の体にはレューンの漢詩方術による眠気の影響が残っていて、万全の力が入っていなかった。 牛は吠えた。鳴いた。叫んだ。されど、方術の影響が残る体でいかに力を振り絞ろうとも、怪力自慢のブ・ホゥラは壁のように立ちはだかり、動かなかった。 端から見れば、ブ・ホゥラと雄牛の熱闘は、その場で我慢しながら静止しているだけのように見えた。つまり、この場で自由に動けるレューンの行動次第で、この戦いを終わらせることができる。 「さっきは何故か失敗したみたいだけど、今度こそは……って、あれっ?」 レューンの大きな瞳は捉えていた。雄牛の黒い背中に、木の破片が突き刺さっていることを。長さとしては、レューンの手の指先から手首くらいまでだろうか。まるで、落雷に撃たれて裂けたように先端が鋭く尖っているので、何らかの理由で突き刺さってしまったらしい。雄牛はこれが痛くて、悲鳴をあげながら走り回って暴れていたのだ。 「そういうことだったのか。可哀想に。でも、もう大丈夫だから」 目を閉じて、リューンは大きく一呼吸した。臍下丹田にて気を練り上げ、同時に即興で詩を構築する。心の中で五言絶句がまとまった時、レューンは目を開けた。黒牛の背の木片が突き刺さっている部分を凝視して、静かに、だがはっきりとした口調で漢詩を吟詠する。 夢繞辺城月 夢は 陣雲之已時 陣雲、 茱萸黄菊節 郷里輒吟詩 郷里にて 夢は、戦の場である辺境の城に懸かっている月をめぐって離れない。 しかし、陣形を保ち進軍する時にわき起こる土煙の雲は、これはもう、やむ時なのだ。戦争は終わりだ。 重陽の節句というのがある。高い所に登って遠い故郷の方を見て懐かしむ日だ。その日に、茱萸という赤い木の実を身に飾って厄除けとしたり、菊酒を飲んで長寿を願ったりする。故郷に帰ろうではないか。 郷里に帰って、すなわち、詩でも吟じながらのんびりと過ごし、戦いで傷ついた心と体を癒そう。 という意味だ。つまり戦いが終わって傷を癒す方術である。 今度は押韻も平仄も間違えていなかったようだし、詩の内容もそれほど悪くはなかった模様だ。方術が発動し、牛の背に突き刺さっていた木片は、空中に浮き上がって抜けて、そのまま地面に落ちた。刺さっていた物が抜けた後の傷口は、あっという間に肉芽が盛り上がって塞がった。原因が取り除かれたこととレューンの漢詩方術の効果により、雄牛の興奮も落ち着いたようで、もう悲鳴のような鳴き声をあげることもなくなり、角でブ・ホゥラを突き刺そうと前進するのもやめた。 「おっと、力較べはおしまいかい?」 ブ・ホゥラも、牛の角を掴んでいた両手を離して、力を抜いて大きく一つ息を吐いた。騒動の元凶となった雄牛はというと、暴れて疲れたのか、その場に座り込んでいた。 「あんた、今、見とったで。唐詩方術士なのか。若いのにみごとな腕だったなあ」 背後からの声に、レューンは振り向いた。農夫らしい中年男が、遥かに年下のレューンを尊敬の眼差しで見ていた。 「今、ウチの村に妖怪が出没するようになっていて、みんな困っているんだ。助けてくれないか? ウチの村にも、去年までは唐詩方術を使える者が二人いたんだけど、今はいないんで。普通の人間じゃ妖怪とは闘えないんで、どうしても唐詩方術士の力が必要なんだよ」 唐詩方術というのは漢詩方術の別称だ。農夫の言葉に反応したのは、レューンよりもブ・ホゥラが先だった。 「妖怪退治か。ならばこのブ・ホゥラ様に任せなさい。この銀帝国で一番力の強い男になることを目指して武者修行をしているのだ。そのへんの妖怪などは、ちょっとした経験値稼ぎに丁度良い相手だ」 自信満々のブ・ホゥラの言葉に、農夫は髭の濃い顔に困惑の皺を刻んだ。 「えっと、こちらの大柄なお兄さんも、唐詩方術士なんですかね?」 「いや、ブ・ホゥラは違うよ。私はレューンといって、漢詩方術士だよ。困っている人を助けるのはいいけど、旅を続けるための路銀が必要なので、妖怪を退治した時には報酬を受け取れるよう約束してほしいんだ。どうだろう?」 「ほ、報酬か。それは、村長に相談すれば出してくれると思う。まずはオラと一緒に村に来て、村長に会ってくれないかね?」 報酬は村長との交渉次第ということだろう。ならばレューンには断る理由は無かった。報酬の話が出る前からやる気満々だったブ・ホゥラは言うに及ばない。 農夫の男が先導する形で、三人は村へと向かって行った。元々村で飼われていたのだろう、黒毛の雄牛もまた、三人に従うようにして後ろをついて歩いてきた。 ●●○○● 村長宅は村で一番大きな家であるようだった。四方を壁で囲われている四合院方式の住宅で、南北に細長い中庭では赤い牡丹や黄色い棣棠などが咲いている。 農夫の案内があったので、ブ・ホゥラとレューンは村の門をくぐる時も咎められることはなかったし、村に入ってからも道に迷うことはなかった。黒牛は、村の門をくぐってから自分の飼い主の家に帰ったのだろう、いつの間にかいなくなっていた。 「漢詩方術士? おお、禍福はあざなえる縄のごとしというが、運が良い方にめぐってきましたかな」 古典文学の本が所狭しと並んでいる書斎で面会したこの村の村長は、白髪に白髭の老人だった。 「話は既に聞いていると思いますが、村に炎の鳳凰が出没して、困っているのです。今のところ、村の住居が焼かれたことはありませんが、村の外の森で、何本も木が燃やされているのです。村人はみな、不安を抱いています。これでは、臨月の妊婦も安心して出産にのぞめません」 村長と向かい合う形で、レューンとブ・ホゥラは並んで椅子に座っていた。ブ・ホゥラは力仕事専門なので、こういった場面での交渉はレューンが行うことになる。 「案内してくれた人にも話しましたが、私たちは旅をしています。行った先々で何かの仕事をして報酬を得て路銀としています。炎の鳳凰を撃退することは承りますが、報酬のお約束をお願いします」 村長は小さく首をひねった。 「報酬ですか。ウチの村は見ての通り、畑を耕して牛や山羊などの動物を飼って生計を立てている裕福とは言えない村です。そんなに多額は出せませんが、漢詩方術士一人分ということで、なんとか頑張ってお出しします」 「一人分ではなく、二人分お願いします」 「えっ、でも漢詩方術士はあなたですよね。こちらの大柄な方は、お付きの方とお見受けしますが」 「付き人扱いとは失礼ですな。俺の方が主人で、漢詩方術士レューンの方が付き人ですぞ」 ブ・ホゥラが牛のように鼻の穴を膨らませた。 「どっちが主人とか付き人とかはともかく、私とブ・ホゥラは二人で組んで仕事をしています。漢詩方術は、漢詩を詠唱している間はどうしても隙ができてしまいますので、そこを守ってもらうブ・ホゥラは欠かすことのできない存在です。私たちは二人で、お互いの長所を活かしてお互いの欠点を補い合うようにして、銀帝国の各地を旅しているのです。相手が妖怪などといった超常の怪異であっても、ブ・ホゥラの腕力は色々と役に立ちますよ。そういう部分をご理解いただきたいです」 真っ直ぐな瞳のレューンに諭されて、村長はしばし目を閉じて考えに耽った。 「分かりました。漢詩方術士については、七言律詩のような長い詠唱の時はどうしても隙ができてしまうというのは、ワシも若い頃は漢詩方術士を目指して勉強したことがありますので、承知しております。二人分お出ししましょう。ただし、あくまでも成功報酬であり、また申し訳ないですが一人分の単価については少し値引きさせていただくということで、よろしいでしょうか」 具体的な金額を取り決めて、話はまとまった。とにかく、村としては早く炎の鳳凰に消えてもらいたいので、交渉がこじれることだけは避けたかったのだ。レューンもそういった事情を理解できたので、相手の都合を酌みつつも自分たちも満足できる線で合意にこぎつけた。 「それはそうと、村長さんも漢詩方術士を目指しておられたのですか」 「ワシだけではなく、この村の村長をやっているウチの家系は代々、漢詩方術士を目指して勉強しております。この書斎にあるたくさんの蔵書は、代々の村長が勉強のために少しずつ買い集めた古典資料です。しかし恥ずかしながら、ウチの家系からは一人も輩出しておりません。帝都で科挙の漢詩方術士部門に及第して翰林院に入るのが壮大な夢ではありましたが、地方都市で行われる一次試験にすら合格した者もおりません。ワシも、元々才能が乏しかった上に、今ではすっかり勉強した内容も方術の使い方も忘れてしまいました」 村長の白い眉毛がさらに長くなって重く垂れ下がったような錯覚を、レューンは抱いた。村長は自ら六〇歳だと言っていたが、実際の年齢よりも老け込んでいるように見えた。 「まあそれでも、もうすぐ孫が生まれますので、その孫が科挙に合格してくれるものと期待しておりますよ。臨月の妊婦というのは、ウチの息子の嫁なのですよ」 子どもや孫に期待するのは、どの地域でもどの時代でも同じことだ。ましてや、科挙合格を目指して多くの古典資料を蒐集した家系ならば尚更だろう。 漢詩方術を使うためには、当然漢詩を詠まなければならない。過去の詩人が作った詩を暗記して唱えるだけでは全く不十分で、自ら即興で詩を吟じることが求められる。 漢詩を読むためには、単に韻や平仄を合わせるだけでは足りない。古典文献に載っている歴史や故事を踏まえた内容を盛り込む機会も多い。詩を読む才能だけではなく、浩瀚な資料を渉猟し、幅広い知識を蓄えることも必要なのだ。 「集めた資料も、決して無駄ではありませんでしたよ。科挙を受けたいという村人がいたら、この本を貸して勉強の助けとしております。その成果で、約一年前になりますが、この村から初めて、漢詩方術士部門の地方一次試験に合格する者が一名出ました」 「そりゃすごい。まあ私も、試験を受けたことはありませんが、地方一次試験くらいは余裕で合格する実力があると自負していますけど」 すごいと言いつつ、全然感心している様子の無いレューンだった。更に自分の実力を誇示するあたりは、もはや商談のための駆け引きという問題でもない。 「一次だけではありません。一カ月ほど前に便りが届きまして、その者が帝都での最終試験にも合格しました」 「おお!」「そりゃ本当にすげえや!」 レューンだけではなく、ブ・ホゥラまでもつい感嘆の声を出してしまった。 「この村始まって以来の破天荒解の出来事でした。村を挙げてのお祭り騒ぎとなるはずだったところに、あの炎の鳳凰が出現しまして……」 「なるほど。お祝いの気分もしぼんでしまったということですか。ここは私たちにお任せください。さっそく、鳳凰を探しに行ってきます」 ●○○●◎ 二人は荷物を預けて、村長宅を出た。屋内に入る時点では春の青空が気持ちよく広がっていたのだが、交渉をしているうちに雲が多くなってきたようだ。それでも気温は下がっておらず、風は柔らかだった。 ブ・ホゥラはやる気満々で腕を撫した。 「さ、報酬をもらえる約束さえすれば、あとは闘って力で圧倒して勝つだけだ。早く出てこないかな、炎の鳳凰」 少し悲しそうな表情で、レューンは身長差のあるブ・ホゥラの角張った顔を見上げた。 「私は、あんまりそういうことはしたくないな。いつも言っているけど、こういう怪異とか妖怪とかが出るっていうのは、何らかの理由があるんだよ。その理由を理解して、きちんと問題を解決して、平和に立ち去ってもらいたいんだ」 「レューンは心優しいな。まあ、そこが女の子らしくて、いいところだけど」 「なんか、上から目線で言われているような気がするよ」 「上から目線? そりゃ当然だ。俺の方がレューンよりずっと背が高いんだからな」 「そういう意味の上から目線じゃないよ」 会話しながら、二人の足は来た道を戻っていた。今までの炎の鳳凰が森の木を焼いていると聞いたからには、当然そちらに向かうべきだった。 村を横切る形で流れる小川に懸かった橋を渡り、もうすぐ村の出入り口の門というところで、村民の誰かの叫び声が静寂を破った。 「鳳凰だ! 炎の鳳凰が飛んでいるぞ!」 「また森の上だ!」 往来を歩いていた村人たちが、森の方角の上空を指さして口々に叫んでいた。 「なんだありゃ。夕陽みたいに真っ赤だな」 「確かにあれは尋常じゃないね。この場所から見ても鳥の形をしているのが分かるくらいだから、結構な大きさだよ」 「落ち着いて状況を分析している場合じゃねえ。レューン、急ぐぞ!」 「うん、行こう」 二人は走り出したが、すぐにブ・ホゥラが先行する形になった。力自慢の大男は瞬発力にも優れ、足も速かった。だがレューンも、速さでは及ばないものの、さほど息を切らすこともなくしっかりと走っていた。 街道から外れてブ・ホゥラが森に入る。下生えの羊歯や笹などは季節に関係なく茂っているようで、前進の邪魔となった。 「邪魔な下草だな!」 所々融け残っている雪に足を取られながら、ブ・ホゥラは森の奥に入って行った。少し開けた場所に出たので上を確認してみたら、灼熱に燃え上がっている鳳凰が鳶のように旋回していた。 「かなり大きいな。普通の鳥とは、さすがに違うな」 相棒のレューンはまだ到着していないので、独り言だ。 木々の梢よりも少し上を飛んでいる炎の鳳凰は、翼を一杯に広げたら先ほどの雄牛のよりも少し上回るくらいだろうと思われる大きさだった。しかしブ・ホゥラは相手が大きくても怯むことはない。自らの力に自信を持っているし、自分より力の強い奴と戦うことが楽しみでもあるのだ。 「力で勝負だ。俺は力では絶対負けない。俺より力が強い奴がいたら、俺はそいつよりもっと強くなって行くんだ」 威勢の良い口調ではあるが、独り言だ。レューンはまだ来ていないし、炎の鳳凰も聞いていない。 「え、ええと、空を飛んでいる相手と、どうやって戦えっていうんだ」 これがブ・ホゥラの短所だ。力は強いが、その力をふるえない場面ではどうしようもない。だから漢詩方術士のレューンと組んで、お互いの足りない部分を補い合う必要がある。 「ごめんごめん、待たせたね。あ、ブ・ホゥラ、まだ焼かれていなかったんだね。間に合って良かった」 「なんだよ。その、俺が負けること前提みたいな言い方は」 ようやくレューンが追いついてきた。レューンはブ・ホゥラと炎の鳳凰だけではなく、周囲の様子もしっかり見渡して確認した。 「空を飛んでいる相手から一方的に攻撃されたら、ブ・ホゥラでは対処のしようが無いだろう。この辺一帯、森の中で開けていると思ったら、木が何本も焼かれたからだよ」 「あ、本当だ」 この開けた場所は、本来はそれほど大きく開けていたわけではないらしい。あちこちに、燃えて黒焦げになった木の残骸が横たわっている。原因が炎の鳳凰であることは疑う余地も無いだろう。これまでに大がかりな森林火災が起きていなくて幸いだった。 「生木が、こんなに真っ黒焦げになってしまうのだから、鳳凰の火力は相当なものだね。あれを退治する方術となると、かなり大がかりなものじゃないと効かないだろうね」 「いや別にレューンが奴を倒し切る必要は無い。飛んでいる鳳凰を地上に引きずり降ろしてくれれば、あとは俺の力を見せつけてやる」 「そうかい。それじゃあ」 レューンは大きく息を吸い込みながら、空を仰いだ。 「おーい! 鳳凰。地上に降りてこーい!」 大声で叫んだのが聞こえたのか、悠々と空を舞っていた炎の鳳凰は両翼を大きく広げながら下降し、二本の足で地上に立った。翼をたたんでしまえば、飛んでいる時よりは一回り小さく見える。 「ほ、本当に地上に降りて来やがった。でもこれなら俺の力の勝ちが確定したようなものだぜ!」 威嚇するように、いや、実際に威嚇なのだろう、鳳凰が翼を大きく広げた。炎の熱気が圧力のある風となって吹き付ける。ブ・ホゥラの短く刈り込んである髪の毛が熱で焦げた。焦げ臭いにおいが漂う。日焼けで赤茶けた色になっている髪の毛の先端に、赤い小さな火が灯って、その熱がブ・ホゥラの頭皮に痛みを突き刺す。 「あちちちちち!」 慌てて掌で頭を叩き、燃えかけている髪の火を消すブ・ホゥラ。 「やい、鳳凰、炎なんて卑怯じゃないか。正々堂々と力で勝負しろ!」 「炎の鳳凰にとっては、炎こそが力なんだよ」 「そこをなんとかしてくれるのが、レューンの漢詩方術のあるべき姿なんじゃないか?」 「しょうがないなあ。炎をなんとかするったら、水の術かな?」 と、レューンが言った時、ブ・ホゥラの頭に水滴がしたたった。一つ、二つ、いくつも。気がついてみると空はどんよりと灰色に曇っていて、雨が降り始めていた。 「雨か。レューン、詠唱も無しに雨を呼んだのか?」 「いや、これは自然の雨だよ。……っあっ! 鳳凰が!」 「き、消えたぞ……」 二人が見ている目の前で。炎の鳳凰はその場から忽然と姿を消した。炎に熱された空間の熱気だけがその場に残されたが、降る雨によって冷やされてすぐに消えた。 「雨にちょっと濡れて鳳凰のヤツが俺と力較べする前に消滅しちまった、……って都合のいい話じゃないだろうな」 「うん、鳳凰は出現したり消えたりしているみたいだから、また晴れた時には出現すると考えるべきだろうね」 レューンは空を見上げてから歩き出した。雲は厚く、しばらく雨はやまないだろう。 「次に鳳凰が出てくるまでに、対策を考えないとな。っていうか、あの炎をなんとかするだけだな。炎さえ無ければ、あとは俺の力でねじ伏せる!」 「問題は、いつどこで鳳凰が出るかだね。まあそれに関してはあの鳳凰を出している犯人に直接問いただしてみればいい」 レューンの背中で小さく揺れている三つ編みの後ろをついて歩いていた巨漢は驚きを隠さなかった。 「なんと! あの鳳凰を出しているヤツの目処がついているのかよ! だったら先に言ってくれたらいいじゃないか。んで、誰なんだよ、犯人って?」 レューンは歩きながら、後ろを振り返らずに静かに語る。 「去年までは、この村に漢詩方術士が二人いた、って村民が言っていたよね? 覚えている?」 「言っていたっけ?」 こちらも歩きながら、ブ・ホゥラは過去を回想する。過去といって遠い昔ではなく、ついさっきの交渉だ。大股で歩いてレューンに追いつき、すぐに追い越す。 「そして、つい一カ月前くらいに、この村から初めて、科挙の漢詩方術士部門及第者が出てお祭り騒ぎになった、っていう話だったよね」 「そりゃ科挙合格は凄い快挙だからな。帝都の翰林院に入って出世まっしぐらだ」 漢詩や方術を使えないブ・ホゥラにとっては自らとは無縁の話ではあったが、官吏登用試験である科挙に合格するのが極めて難しいことは誰でも知っていることだ。 「つまり、この村から二人、科挙の漢詩方術士部門を受験する人がいた。そして一人が合格した。じゃあ、残りの一人は落選したってことだね」 「なるほど! そいつが犯人ってことか。確かに、自分が落ちた科挙に、もう一人の村人が合格すれば、嫉妬で暴れたくもなるかもしれないから、可能性は高いな」 レューンの冷静な分析に、ブ・ホゥラは素直に感心していた。二人は濡れた下生えを掻き分けて冷たい水滴が跳ねるのを浴びながら、ようやく森を出て街道に戻った。 「んでレューン、その犯人は誰なんだ?」 「村長の家系は、代々、科挙を受験しているって言っていたね。だから古典資料もたくさん揃っている。でも村長は方術の才能が乏しくて、若い頃に早々に挫折したらしい」 「ああ、そういえば、そんな話をしていたかも。でもそれじゃ村長は犯人じゃないってことになるんじゃないのかな?」 「うん。犯人は村長ではないよ」 街道は、轍の水溜まりが深くなっていた。二人をそこを避けて歩いた。 「息子の嫁が臨月で、もうすぐ孫ができる、って村長が言っていたよね」 「そうか! 村長の息子か! 村の誰が合格したのか知らないけど、村長の家系以外の者が合格したのに自分が落選したら、そりゃ、良い気分ではないな」 問題解決の道筋が見えた。二人の前途を象徴するかのように、雲が少し切れて西から光が差し込み、雨もやや弱まってきたようだ。 「犯人は村長の息子だとして、それをどうやって立証するんだ? まさか炎の鳳凰を呼び出している場面を押さえるっていうほど上手く尻尾を出してはくれないだろうし」 「いやいや。さっきも言ったけど、直接本人に問いただすのさ。回りくどいことをする必要もないよ。さっさと解決してしまおう」 明日の天気を述べるような気軽さで、レューンはこともなげに言った。 「なんの工夫も無く単純に力押し、っていうやり方は、どうかと俺は思うぞ。不安だ」 「それをブ・ホゥラに言われたくはないなあ」 ●○○●● 二人は村長宅に戻った。雨に濡れたままだと風邪をひいてしまう。二人が屋内に入るとほぼ同時くらいに雨はあがった。ブ・ホゥラは思わず間の悪さを呪ったが、だからといって再び雨が降り出してほしいわけではない。 濡れた服は脱いで、予備の服に着替える。レューンの服装は少し黄色みがかった白で、ブ・ホゥラの方はほぼ真っ黒だ。今までとはお互いの白黒が入れ替わったような格好だ。 着替えが済んだ二人は、村長に対し、軽く状況を説明した。 鳳凰と対峙したものの、いざこれから勝負というときに雨が降り出してしまい、鳳凰が消えてしまったこと。今はもうやんでいるが、先ほどまで雨が降っていたことは村長も承知していたため、その説明はすんなり受け入れられた。 だが、村長の息子に会いたいという申し入れに対しては、村長は眉根を寄せてあからさまに怪訝そうな表情をしていて、隠そうともしなかった。村長の息子が犯人だと推理したことについては、伏せたままなのだ。 「息子とあの鳳凰にどういう関係があるのか、ワシにはさっぱり見当もつかないが、息子ならばもうすぐ畑から帰ってくるから、待っておればいい」 村長の息子は副村長という地位にあって、次期村長としての経験を積んでいるところだという。だが村長見習いとしての仕事が無い時は、村人たちと一緒に畑仕事に精を出している、という村長の話だった。 ブ・ホゥラは不安そうな、村長は不信感を露わにして、レューン一人だけが自信に満ちた顔で、ほどなく夕刻を迎えた。春とはいえ、夕方になると急速に気温は下がってきて、これ以上温度が下がるようなら屋内にいても肌寒さを感じるようになるだろう。 「俺に客が来ているって?」 村長の息子はほどなく帰ってきた。村長宅の、南北に細長い中庭にて、村長の息子とレューンは対面した。 村長の息子は、ブ・ホゥラよりは少し小柄なものの、一般人基準からすると偉丈夫であった。年齢は三〇歳前後らしく、顎には黒い髭をたくわえている。 「私は旅の漢詩方術士で、レューンといいます」 レューンが名乗った時に、漢詩方術士、という語を聞いて村長の息子の表情が少し動いた。 「俺はこの村の副村長のタイロンだ。漢詩方術士ということは、あれだな。鳳凰を駆除するためにオヤジが雇ったってことだろう」 「さすがは副村長。回りくどいことは面倒なので単刀直入に行こう。今回の事件の犯人はあなただろう、副村長。あなたが方術で炎の鳳凰を出しているんだ」 副村長の真っ正面から、レューンは人差し指を突きつけた。 「おいおい。何を言い出すかと思ったら。そんなバカなことがあるか!」 非難の声を挙げたのは、中庭を囲む回廊に立って様子を見守っていた村長だった。 名指しされた本人である副村長は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたものの、すぐにある程度の状況を理解したようだった。 「ははあ。小さな漢詩方術士さん、何か勘違いしているんだな。この村には漢詩方術士が二人いて、一人は帝都に行って科挙に合格したから、もう一人は消去法で俺だ、ってことになったんだろう」 「つ、つまり、炎の鳳凰を出した犯人の漢詩方術士は自分である、と認めるのですか?」 あまりにも堂々とした副村長の態度に、レューンは少し弱気になりそうになるも、気持ちを立て直して冷静に問いかける。ブ・ホゥラはレューンの斜め後ろに控えて、成り行きを見守っている。 「残念ながらその推理は情報不足でハズレだな。俺は、確かに若い頃には漢詩方術士を目指して勉強をしていた。だけど方術の才能が無くて、早い段階で諦めたんだ」 「それは嘘ですね。本当は漢詩方術を使えるけど、使えないフリをしているだけだね」 レューンはしぶとく食い下がったが、副村長は腕組みをして余裕の表情を見せた。 「俺は、かなり早い段階で才能の無さが明らかになって、さっさと諦めて、その後はずっと次期村長になるために農作業をやっていたからね。俺が漢詩方術を使えないことは、この村の人間みんなが知っていることだよ。そもそも、俺が漢詩方術を使えるんだったら、あんた達のような余所者に鳳凰退治を頼まないで、俺に出番が来るってことじゃないか?」 「だ、だからその漢詩方術を使えない、というのが嘘なんだよ。副村長が村人全員を騙しているんだよ」 レューンと副村長が向かい合っている間を、白い猫がのんびりと横切って行った。 「俺が、漢詩方術を使えない、ということを証明するのは難しいな。この村には、去年の今頃くらいまでは、漢詩方術士が二人いたことを知っているか?」 油断無く、レューンは首肯した。副村長の台詞は、村人が事前に言っていたことと合致する。 「でも、今は一人もいないんだよ。だから旅人のあんた達に鳳凰撃退を依頼したんだよ」 村人たちはそう思っている。が、それは騙されているからだ。レューンはそう思っている。 「去年までいた漢詩方術士二人のうち、一人は帝都で殿試に合格した。もう一人は誰だと思う? 俺じゃないぜ。俺はずっと昔から方術を使えない。一年前にいきなり方術を使えなくなったわけじゃないぞ」 「あ、あれ?」 ここにきてようやくレューンは、事態の割り符が合わないことに気付き始めた。 「じゃあ、去年まで二人いた漢詩方術士のもう一人って、副村長でないなら、誰なんだ?」 疑問に答えたのは、回廊に立って成り行きを見守っていた村長だった。 「サイジュという者だよ。サイジュも去年、一次試験を受けた。だが落ちてしまった。自信満々だっただけに衝撃は大きかったらしい。村を貫流している小川に飛び込んで自殺してしまったのだよ」 レューンは村長の方へ振り向いた。 「そ、それは本当ですか?」 「村人みんなが知っておることだ。嘘だと疑うなら、今すぐにでも村人に聞き込みでもしれみれば良かろう」 もう既に夕陽は西の山並みの果てに沈んでしまっていて、辛うじて残光が空を照らしているだけだ。今から村人たちに聞き込みを行うわけにはいかないだろう。行く必要もなさそうだ。 もし副村長が去年までいた漢詩方術士の一人だとしたら、去年までは漢詩方術を使えたけど、突然使えなくなったことになる。、それはあまりにも不自然だ。 「えーと。だったら、副村長は、本当に漢詩方術は使えないんですか? あの炎の鳳凰を呼び出したのも、副村長ではない、ってことですか?」 「俺が漢詩方術を使えないフリをしているだけ、という可能性については、否定することは難しいな。だけど、臨月の妻を怖がらせてまで炎の鳳凰を出す理由がどこにあるというのかな?」 「あっ……」 レューンは見落としていた。副村長が仮に犯人だったとして、鳳凰を呼び出すことに何の利点があるのか。もうすぐ出産間近の妻を不安に陥れるという不利益に、何の意味があるのか。 「じゃあ、副村長は、鳳凰を出した犯人じゃない、ってことですか?」 「違うね。もしこれ以上俺が犯人だと言い張るなら、誰もが納得できるような証拠を出してほしいものだね、小さな漢詩方術士さん」 ●●●○◎ 「おいレューン、これは一体全体、どういうことなんだ?」 こうなっては、レューンに実施できる行動は一つしかなかった。 「すみません。本当に申し訳ございませんでした」 「俺からも謝罪します。犯人扱いしちゃってすみませんでした」 レューンとブ・ホゥラは並んで、副村長に対して深々と頭を下げた。平謝りである。 「まあ、単なる調査不足でしょう。ちょっと調べれば、サイジュがいたことはすぐに分かったはずなのに。いずれにせよ、思い込みだけで行動してはいけない、という教訓ですな」 そう言ったのは村長だ。明らかに機嫌が悪い。 「すみませんでした」「今後はきちんとレューンを指導しますので」 レューンとブ・ホゥラは村長に対しても頭を下げて謝った。 謝罪が終わっても、レューンは項垂れたままだった。背中に垂らした小さな三つ編みが、叱られた子犬の尻尾のようだった。 「で、問題は、本当の犯人が誰か、ってことだ。そうだろうレューン」 ブ・ホゥラは犯人を誤認した張本人ではないこともあり、切り替えが早かった。 話し合いの場は、古典書籍が大量に並んでいる書斎に移された。副村長は畑仕事を終えたばかりで、途中で雨に打たれたので、着替えてから書斎に入った。 「今の話を聞いた限りでは、その、川に飛び込んで自殺したというサイジュというヤツが怪しいと俺は思う。そいつ、自殺したフリだけして、本当はまだどこかで生きていて、炎の鳳凰を操っているんじゃないのか?」 「いいや、それは違いますな」 ブ・ホゥラの仮説は村長にあっさり否定された。 「サイジュの遺体は発見されていて、ちゃんと埋葬されております。遺書は見つかっていませんし、遺言のような発言もありませんでしたが、一次試験に自分だけ落ちたという状況から考慮して、川沿いの柵が壊れているところから飛び込んで自殺したものと推測されます」 「む、そうですか。やはり思い込みだけで決めつけてはいけませんな。得難い教訓です。ならば、サイジュの亡霊が、この世に未練を残して、炎の鳳凰を呼び出して暴れている、と考えるべきではないでしょうか?」 ブ・ホゥラの主張に、村長と息子の副村長は難しい表情をした。 「サイジュが自殺したのは、もう一年も前です。村のみんなも忘れかけていました。かく言うワシも忘れかけていましたわ。それが、自殺したすぐ後からではなく、今頃になって、炎の鳳凰で暴れだす、というのは理解に苦しみます」 「ですから、それはもう一人の受験生が科挙に最終合格したことに対する嫉妬じゃないんですか?」 村長と副村長は互いに顔を見合わせた。 「確かに可能性はありますな」 「でも、そんな単純な話なのでしょうか。サイジュの亡霊が犯人であるという可能性に思い至らなかった俺も考え不足だったかもしれません。でも、そんな単純な話だったら、俺でなくても村人の誰かがとっくに気付いていたようにも思うのですが」 ブ・ホゥラの言っていることは理解できる。だが、完全に飲み込むことができないでいる。だが、その飲み込めない理由を上手く説明できないもどかしさがあるのだ。 そこへ口を挟んだのはレューンだった。 「自殺したサイジュという人が、この世に未練を残して亡霊になった、というそれは矛盾していると思う」 いつもよりも更に低い声だった。 「自殺っていうのは、この世に絶望して、この世にもう居たくないと思ったから、自殺したってことだよね。それなのに、この世に未練があって亡霊になって出てくる、というのは矛盾していないかい」 「あ」 一人の少女の鋭い指摘に、男三人は弱った表情をした。 「で、でも、それでサイジュが犯人候補から外れると、調査は完全にふりだしに戻るんだぞレューン」 「分かっているさ。たとえ一番最初からやり直しになったとしても、真実を明らかにするためには、仕方のない手順だよ」 「まどろっこしいな。やっぱり、あいつを出した犯人が誰かなんて面倒なことを考えるまでもなく、このブ・ホゥラ様の力で圧倒して撃退してやった方が手っ取り早い解決なんじゃないか」 「でも、誰かがこっそり方術を使って炎の鳳凰を出しているのなら、あの炎の鳳凰を倒したところで、第二、第三の炎の鳳凰が出てくるだけじゃないのかな。やっぱり、あの炎の鳳凰の根っこを見つけて、そこを解決しないとダメだよ」 「第二、第三。上等じゃないか。出てきた奴を全部倒せば、黒幕もおのずと尻尾を出すだろうさ」 ブ・ホゥラは豪快に笑ったが、結局ここで仮説を喧喧囂囂と議論していても何も始まらない。 ここから先は現実的な話になった。 もう既に日は暮れてしまっている。ブ・ホゥラとレューンの今夜の宿をどうするか。 村にも小さいながらも宿屋はある。が、二人は鳳凰に対する用心棒として村長に雇われた格好なので、村長宅に泊まってほしいと村長に依頼された。宿に泊まっていると、いざ夜中に鳳凰が出現したとしても、呼びに行くと宿の迷惑になってしまうし、時間もかかる。ということで、村長宅の玄関に近い小さな部屋に雑魚寝という形になった。食事については、村長宅で供することとなった。ただしその食事代は、鳳凰退治の報酬から差し引くことになった。早とちりによりレューンが副村長を犯人呼ばわりしてしまうという大失態を演じた負い目があるため、報酬差し引きに対して異を唱えることは見送ったのだ。 副村長が言うには、炎の鳳凰は夜に出現したことはないという。とはいえ、それは今までの話である。今後も出ないという保証は無い。 ●●○○● 夕食をとった後、二人は指定された玄関近くの小部屋に入った。毛布を貸してくれると村長側から申し出があったのだが、断っていた。二人は銀帝国漫遊の旅をしているため、野宿をする機会も多かった。荷物の中には草臥れているものの使い慣れた毛布がある。 ブ・ホゥラ、レューンは、それぞれ自分の毛布にくるまり、暗い小部屋の中で目を閉じた。 暗闇と静寂の中で、ブ・ホゥラの規則正しい呼吸の音だけが小さく聞こえる。寝息だろうか。 レューンはそっと目を開けた。暗さに目が慣れたはずだが、部屋の様子はほとんど分からなかった。まだ眠りに入っていないが、眠気はある。いわゆる睡眼なので、視界がはっきりしないのだろう。 睡眼。 その語を思い出した時、レューンの中で一つの謎が解けた。小さな声で囁いた。 「ブ・ホゥラ、起きているかい?」 「眠っていたけど、レューンに呼ばれたので起きた」 ブ・ホゥラも囁き返した。二人とも毛布にくるまって寝転がったままなので、暗闇の中で顔を合わせない対話だ。 「あ、眠っていたのか。ごめん」 「いや、いい。いざ敵が出現した時にはすぐに目を覚まして戦わなければならないからな。それよりどうした?」 「うん。今日、黒い雄牛と戦った時のことを思い出したんだ。私の漢詩方術が中途半端な効果で、牛が横倒しになった衝撃で目が覚めてしまったよね」 「ああ。何の茶番劇かと思ったぞ」 「失敗の理由が分かったんだ。唱えた漢詩が、一文字間違えていたんだよ」 「たった一文字間違えただけで、効果が中途半端になってしまうのか?」 「二句目の二文字目だ。睡眠深閨未解囲、と詠んだけど、これは本当は眠ではなく眼でなければならなかったんだ」 少し、間を置いてからブ・ホゥラは返事した。 「大した違わないように俺には思えるのだが?」 「いや、これが大違いなんだよ。今までにも何度も言ったことあるけど、漢詩には平仄を合わせるという規則があるんだ」 「ひょうそく。確か、漢字には二種類の音があって、平と仄だというアレか?」 「そうだよ。二四不同といって、二番目の文字と四番目の文字の平仄は同じではいけないんだ。二六同というのもあって、二番目と六番目の文字は同じ平仄である、という規則さ」 「理解できん。なあ。もう寝ていいか?」 「どうせ目が覚めてしまったのなら、もう少し聞いてよ。理解しなくても聞き流すだけでいいから」 「さっき、起こしてごめん、とか言っていたのは、なんだったんだよ」 「まあそう言わないで聞いてよ。第二句目に注目してみると、第四字は閨、第六字は解だ。二四不同だから、二字目と四字目の平仄は別々でなければならない。二字目が仄の眼だったら四字目の平の閨とは別々になるから問題なかった。でも二字目で平の眠を使っちゃったから、二四不同の規則から外れてしまった」 レューンは間違えてしまった悔しさを噛み殺す。ブ・ホゥラはというと、言っていることが理解できず、聞き流すだけだ。 「それだけじゃない。もし二字目が仄の眼だったら、六字目の解が仄なので、きちんと合っていたんだけど。でも眠だと、二六同の規則からも外れてしまう。大失態だ」 「そもそも、その平仄、というのがイマイチ飲み込めない」 「全ての漢字には、平か、または仄の属性があるんだよ。譬えで言えば、平は白い服を着ているブ・ホゥラで、仄は黒っぽい服を着ている私なんだ。つまり、同じ句の中で偶数番目の文字は、ブ・ホゥラの白ばかりが並んでいてもダメだし、逆に黒ばかりもダメ。交互に並ぶ必要があるってことさ」 「難しい話は理解できないが、要はその、眠、という字が致命的に間違いだったってことなのか?」 「うん。その認識で合っている。二四不同も崩れて、二六同も狂った。更に言うと、各句の第二字目が、風、眠、厭、磁になっている。平仄は平平仄平だ。これは本来、反法と粘法からいって平仄仄平でなければならない。だから、眠、は決定的に間違いで、正しくは、眼、であるべきだったんだ」 「おい、言っている細かい内容は理解できないけど、つまりの話、漢詩方術はたった一文字間違えただけで、平仄の構造が完全に崩れてしまって術の効果が激減してしまうっていうことなのか?」 「うん。そうなんだ。だから方術が中途半端にしか効かなかったんだよ。ブ・ホゥラに迷惑かけてごめんね」 夜の中で闇は一層深さを増す。ブ・ホゥラは、レューンの方術の失敗をそれほど迷惑とは思っていなかった。むしろ、中途半端に効力を発揮した術のおかげで、黒牛と互角の力勝負ができて満足していた。しかし、心の中ではそう思っても、口には出さなかった。 「同じ過ちは繰り返さないようにしっかりやってくれ。それと、反省するのはいいが、気に病みすぎて睡眠不足になっても意味が無い。しっかり眠って体力を回復させておけよ」 「うん。分かったよ。本当に起こしてごめんね」 「レューンの気が済んだのなら、それでいい」 ○○○●◎ 結局夜中に叩き起こされることはなかった。仮に犯人が炎の鳳凰を操っているとするなら、犯人も夜更かししてまで鳳凰を出したいとは思わなかったのだろう。迎えた翌朝。天気は、やや雲は多いものの晴れだった。鳳凰びよりである。そんな言葉は存在しないが。 村長宅で朝食をいただいてから、レューンとブ・ホゥラは屋外に出た。レューンは黒っぽい濃紺の道服。ブ・ホゥラは白い服を纏っている。昨日は途中で雨に濡れて着替えてしまったが、レューンは黒、ブ・ホゥラは白というのが服の基調色だ。 二人は森に向かうことに決めていた。 が、その前に、一カ所、寄る場所があった。 「この世を儚んで自殺したのなら、せめてあの世で幸せになってね」 村を貫流する小川の畔に二人は来ていた。小川は、村の土地よりは随分低い場所を流れていた。小川に降りるためには笹が生い茂っている急な坂を降りなければならないので、とても危険だ。 だから、村の子どもが間違って転落したりしないように、川沿いには木製の柵が連なっている。随分昔に作られたもののようで、木材は黒っぽいくたびれた色になっている。 レューンとブ・ホゥラが現在立っている場所の柵は、そこだけ白っぽい新しい木材を荒縄で縛って、壊れた箇所を補修してあった。レューンはその場所に黄色と赤の花を供えた。村長宅の中庭から、いくつかの花を切り取ってもらってきていたのだ。 「科挙に合格するだけが漢詩方術士の生きる道じゃないし、科挙の試験だって一度落ちたって何回も受けることもできたのに。でも、私は漢詩方術士として、亡くなったサイジュという人の分もこの世の役に立ってみせるよ」 合掌し、静かな声で見ず知らずの漢詩方術士サイジュという故人に対して死を悼む。 弔いが終わってから、二人は昨日の森へ向かった。木が焼かれてできた空き地だ。 「いねえな。雨が降っているわけでもないのに」 本日は朝早くから好天である。 「案外、朝に弱くて寝坊している、というんじゃないか?」 「それはどうか分からないけど、いないんだったら、呼べば出てくると思うよ」 「そんな都合良く行くわけな」「鳳凰、出てこい!」 炎が激しく燃え上がる音を伴って、二人の上空に炎の鳳凰が忽然と姿を現した。 「おいおい本当に出てきやがったな。こっちには都合がいいけど」 「これではっきりしただろう、ブ・ホゥラ。あの鳳凰は、ちゃんと話が通じる相手なんだよ。力でねじ伏せるんじゃなくて、きちんと話し合ってみようよ」 レューンがそう提案した矢先だった。 ただ無目的に空を飛んでいるだけだった鳳凰が、嘴を大きく開けた。レューンとブ・ホゥラが下で見守っている中で、炎の鳳凰は全開にした嘴から灼熱に輝く炎の玉を吐き出した。 火の玉は、真下に居る二人とは全然別の方向へ飛んで行った。春の微風の中で舞う薊の綿毛くらいの速度で、ゆっくりと斜め下へ直進した。 その火の玉が飛んだ先は、広場を取り囲むようにまばらな木が生えている場所だった。木の根本、日陰のためまだ融けていなかった残雪に、火の玉は命中した。そして残雪の奥まで潜り込んだ。 一瞬遅れて、激しい爆発が起きた。火の玉に籠められていた熱量と、残雪の冷たさと水分が急激に反応したのだ。木の根本が爆発の直撃を受ける形で、木の破片が立木の間をすり抜けて勢いよく飛び散った。 「危ないっ」 ブ・ホゥラがレューンに覆い被さる形で地面に倒れ込んだ。その背中の上を破片が飛んでいった。 「あの鳳凰、こんな芸当もできやがるのか」 「昨日の牛の背中に突き刺さっていた木の破片、鳳凰がやったのかもね」 根本を木端微塵にされた木は、周囲の木の細枝を折りながら地面に横倒しになった。 ブ・ホゥラとレューンは立ち上がり、すぐに動けるよう身構える。そんな二人からやや距離をおいた場所に、鳳凰は降り立った。 「鳳凰、聞いてくれ。私は漢詩方術士レューンという。鳳凰と話し合いたい。暴れて村に迷惑をかけるのをやめてほしいんだ。そうしてくれないと、鳳凰を討伐しなければならなくなる」 炎の鳳凰から発散している熱量が大きくなった。それが圧力という形で二人に押し寄せる。 「僕を討伐するだと? できるとでも思っているのか?」 鳳凰の言葉を聞き、二人の反応は分かれた。 「しゃ、喋りやがったぞ! と、鳥のくせに!」 「いや野生の鸚鵡だって旅人の言葉を覚えて喋るよ。驚くようなことじゃないよ」 「いやだって鳥だろう」 明らかに鳳凰を軽視したブ・ホゥラの言い方に、鳳凰が気分を悪くした。 「単なる鳥じゃなくて、鳳凰だから。僕は天才漢詩方術士サイジュだ。バカにしないでもらいたい」 ●○○●● 出てきた名前を聞いて、ブ・ホゥラは半歩後ろに下がった。 「サイジュだと? 去年、科挙一次試験に落ちて、絶望して川に飛び込んで自殺したという、サイジュなのか?」 「自殺だって? 僕は自殺なんかした覚えは無いぞ。試験に落ちて、川沿いの柵にもたれかかってどうしようかと放心していたら、急に柵が壊れて転落してしまったんだ。また次の年も試験を受けようと思っていたのに」 それを聞いて、レューンはブ・ホゥラの一歩前に進み出た。 「そういうことだったのか。自殺というのは村人たちの思い込みだったんだね。冷静に考えてみれば、自殺するんだったら、わざわざ柵の壊れている所まで行かなくても、柵なんて乗り越えようと思えばいくらでもできるはずだしね」 遺書が無かったのも、自殺でないなら当たり前だ。サイジュはこの世に未練があって、炎の鳳凰となって出現していることになる。 「サイジュ、同じ漢詩方術士のよしみで、私に話してくれないかな。この世に何の未練があるんだ。それを解決すれば、安心して眠ることができるのか?」 「僕の経緯については村人から一通り聞いているんだろう。だったら分かるはずだ。科挙に合格できなかったことこそ最大の未練さ」 鳳凰の瞳には、悲しみの炎と怒りの炎と悔しさの炎が渦巻いている。 「僕は才能があったのに落ちたんだ。それも一次で。確かに、僕よりもハクの方が日頃から若干優れた能力は示していたさ。でも、わずかな差だった。それなのに、僕は一次落選。ハクは殿試にまで合格したじゃないか」 ハクとは誰のことなのか。改めて問うまでもなく明らかだった。 「ハクが一次試験で合格したのは、運が良かったからだよ。試験官の前で漢詩方術の実演をするんだけど、その試技の順番が、ハクはたまたま一番最初だったんだ。あいつ、運に恵まれていたんだ」 「俺にはよく分からないんだが、試技の順番が最初だと有利になるとか、そういうのあるのか? 力さえあれば、順番が最初だろうが真ん中だろうが最後だろうが関係なしに合格できるように思えるんだが?」 「もちろん表向きは、今、大柄なお兄さんが言った通り順番は関係なしの実力勝負さ。でもね。試験官だって人間なんだよ。何人も試技を見ているうちに飽きてくる。そうなると、心に残るのは最初に試技をした人なんだ」 鳳凰サイジュは真面目な顔で力説した。鳳凰の顔の表情の違いなど、レューンにもブ・ホゥラにも分からないが、気持ちが籠もった力説であることは十分に分かった。 「でも、地方試験の合格者って、一人に限ったことじゃないよね。優秀な人がいれば何人でも合格者を出せるし、逆に、優れた人材がいないなら合格者無し、とすることもできるはずだけど」 科挙を受けたことはないものの、レューンとて漢詩方術士の一人として、科挙の概要くらいは当然知っている。何人でも合格者を出せるからといって相応しくない人材を合格させていては、試験官の資質が問われてしまうことになる。だから、一次試験に合格するかしないかは、一次通過水準に達しているかいないかで厳正に判定されている。 「そうさ。本来なら、一次試験の合格者はこの僕とハクの二人であるべきだったんだ。だけどあの時の試験会場ではハク一人しか一次通過者は出なかったんだ。これが納得できないんだよ」 サイジュは拳を握りしめて熱弁した。鳳凰の翼のどこにも拳は存在しないが、心の中の拳はきつく握っていた。 「一次試験っていうのは、広大な銀帝国全土の地方都市で開催されている。つまり、一人の試験官が各地全部の一次受験生の試技を見ているわけじゃないんだ。もしかしたら、別の街の全ての受験生より、僕の方が優れていたかもしれないじゃないか。それなのに僕は落ちた。その試験官が見ていない受験生の成績との整合性が取れていないんだよ」 「はあ? 見ていない受験生との整合性、だと?」 ブ・ホゥラはあからさまに侮蔑の表情を浮かべた。 「そんなことを言っていたら、一次試験なんて実施しようがないじゃないか。レューン、やっぱりコイツは駄目だ。こんな愚かな考え方を持っているようなヤツと話し合ったって、時間の無駄だぞ」 ブ・ホゥラは早々に説得を諦めた。最初から説得する気もなかったが。 「僕にとって一番自信があったのが、炎の鳳凰を出す方術で、一次試験でもそれを使おうと思っていた。だけど当日、ハクのやつが最初に炎の鳳凰の術を使ってしまったんだ。ハクにとっても炎の鳳凰が得意だったらしい。それが僕の不運だった」 「サイジュとハクは、村長の家にある蔵書を読んで勉強したんだろう? 同じような資料を読むから、使う術の傾向が似ちゃったんじゃないかな?」 「動揺してしまった僕は、自分の順番の時に、満足な漢詩を吟詠することができなかった。運が悪かったんだ」 「多少運の善し悪しが影響するにせよ、本当に実力があれば、その程度の運なら跳ね返せるはずだよ。たぶん、その時の漢詩がよっぽど悪かったから、落ちたんじゃないかな」 「違う! 他の地方都市での受験生との整合性が取れていない以上、僕が落ちた理由は、運悪く試験官が厳しすぎる人だったんだ!」 炎の鳳凰は感情の起伏が表に噴出しているかのように、全身が赤く、時に黄色っぽく燃え続けている。まるで、レューンが柵のところに備えた花のように。 「本当に試験官が厳しい人だったら、ハクだって落ちていたはずじゃないか。ここで議論していても始まらないよ。その時にどんな詩を詠んだのか、実際に聞かせてみてよ」 「いいだろう。詩のみ吟じてみよう」 漢詩方術士が漢詩を詠んだからといって必ず方術が発動するわけではない。気を練り上げて方術を発動させようとしなければ、単純に詩だけを詠唱することもできる。 劫火炎赤赤 劫火 炎 赤赤たり 地獄灼熱気 地獄の 灼熱の気 大鳳熾烈翼 踊躍渭橋祝 堂々たる口調で自らの漢詩を詠みあげた鳳凰サイジュだったが、それを聞いてレューンの顔に浮かんだのは、ある意味納得の表情であり、諦めであり、悲しみでもあった。 「その詩じゃあ、別の都市の受験者との整合性どうこうの問題じゃないよ。漢詩は、ただ文字を適当に並べればいいってもんじゃないんだよ。分かっているよね」 「バカな。この詩のどこが悪いというのだ」 「全部だよ。炎の鳳凰を呼び出す術だからといって、やたらと炎に関連する語ばかり無節操に列挙しているだけじゃないか。純粋に詩としての完成度が低い」 「なんだと……」 「韻だって踏んでいないし。いやそれ以前の話として、平仄が最悪すぎる。使っている二十文字、全部仄の文字であって、平が一つも入っていないだろう」 「これは、意図してやったことだ。ハクに先に炎の鳳凰を使われてしまい、動揺して、上手く平仄を規則に合わせることができなかった。だからいっそのこととして、全部仄に染めてみたのさ」 「詩聖や詩仙くらいの超上級者が意図して規則を崩すのならともかく、炎の関連語を列挙するだけの稚拙な詩では、規則を守らなければ漢詩方術としての威力は大幅に減少してしまうのは当たり前だよ」 「嘘だ!」 「私は嘘をつくかもしれない。だけどサイジュだって漢詩方術士なら知っているよね? 漢詩は嘘をついても、漢詩方術は嘘をつかないんだ」 普通の漢詩ならば、例えば権力者に媚びて、思ってもいないようなお世辞を詠むこともできる。しかし漢詩方術は、詩としての出来が悪ければ威力が下がるし、韻や平仄などの規則に外れていても効果が劣る。 「漢詩方術は嘘をつかない……確かにその通りだが、ならば他の都市の受験生との整合性はどうなる?」 「見てもいない相手との整合性なんて考えること自体が不毛で不要なんだよ! そんなことを言うくらいだったら、自分が優れた漢詩を詠めばいいだけなんだ。サイジュは漢詩方術士としての実力が劣っていたから落選したんだ! 私が今、それを証明してあげるよ!」 「証明? どうやって?」 それに対してレューンは漢詩方術で応えた。 弄玉仙簫調 鳳凰帰故村 鳳凰 故村に帰る 小川徐緩往 小川 徐緩として 大海渺茫屯 大海 漢上林帰雁 漢の上林に雁は帰り 唐翰院集魂 唐の翰院に魂は集う 牡丹元果朶 牡丹 朱雀帝都門 朱雀 帝都の門 秦穆公の娘である弄玉が仙人に簫という笛の吹き方を学び、弄玉の簫の調べを聞いて鳳凰が飛来するようになった、という故事がある。 その鳳凰が故郷の村に帰ってきた。つまりサイジュのことだ。 サイジュが落ちた小川は、緩やかに流れ往き、いずれ広々とした大海に注ぐ。川の流れは人生にたとえられる。最初は細い小川でも、やがて出世して大河となり大成して海となる。鳳凰は、出世して大人物になることに対する象徴でもある。 帝都へ出て出世することを夢見ていたサイジュの気持ちを思いやった内容だ。 漢の武帝は帝都の上林苑という御園で雁を捕らえた。その雁の脚には布の文が縛り付けられていた。書いたのは蘇武という武将で、北方の遊牧民族匈奴に捕らえられて生死不明だったのだが、この文により生存が確認された、という故事がある。 唐の翰林院には、魂、志を持った多くの優れた人材が集う。 その唐の都の大慈恩寺は、牡丹の名所として知られる。その境内でも特に元果院というところはとりわけ素晴らしい。朶とは枝のことだ。 唐の帝都においては、皇城の南に朱雀門があり、そこから南へ延びる大通りを朱雀門街という。 この詩の後半は、朱雀、という語を導き出す内容だ。 レューンが五言律詩を唱え終わった時、真っ赤な、巨大な鳥がレューンの横に出現していた。 「そ、その鳥は?」 「そうさ。風よりも熱い翼、炎より速い心を持つ朱雀さ」 青龍、白虎、玄武とともに四神とされる朱雀は、南を司る霊獣だ。サイジュ以上に真っ赤に燃え上がっている。今は翼をたたんでレューンの横に立っているが、翼を畳んだ状態でも牛よりも大きいくらいだ。 「行け、朱雀」 レューンの指示を受けて、朱雀は翼を広げ、地面のすぐ上を滑るように飛び、真っ直ぐ鳳凰サイジュに向かって高速で突進した。 「今の律詩、孤仄が二個あったじゃないか!」 そういいながらも、サイジュは口を開けて火の玉を吐き出した。一つ、二つ。火の玉と朱雀は正面衝突したが、朱雀の前進の勢いは全く止まらない。火の玉は朱雀の莫大な熱量の中に吸収されてしまっていた。 三つ目の火の玉を吐き出そうとしていた時には、既に朱雀は鳳凰サイジュの目の前に迫っていた。鳳凰サイジュは逃げることもままならない。炎の鳳凰と炎の朱雀は激しくぶつかり合った。 「あ、熱い熱い熱い!」 体の大きい朱雀が、悲鳴をあげる鳳凰サイジュを翼で包み込むような格好になっていた。サイジュもまた炎の鳳凰でありながら、朱雀の炎に焼かれて熱さと苦痛に悶えていた。 「孤仄の禁はそれほど厳密に守らなくても大丈夫だってことくらい知っているだろう」 「熱い。熱い! 焼け死んでしまう。助けてくれ!」 「サイジュはもう死んでいるんだよ。熱さなんて感じないはずじゃないのかい」 サイジュの訴えの声は明らかに弱々しくなってきた。 「だ、けど……この、朱雀は、あ、熱い」 「押韻は上平声の十三元。これが漢詩方術の実力だよ」 そんなことはない。という反論が来るべきところだったが、鳳凰サイジュは弱い喘ぎ声を途切れ途切れに漏らすだけだった。 「このままじゃ消し炭も残らずに燃え尽きてしまいそうだから、術を解いてあげるね」 レューンがそう言うと同時に、紅蓮の朱雀は瞬時に消えた。その場には羽毛が黒く焦げた鳳凰が残った。炎の鳳凰ではない。黒焦げになって衰弱している生身の鳳凰だ。 「毒を以て毒を制す、ならぬ炎を以て炎を制した。ブ・ホゥラ、今こそ力で鳳凰をねじ伏せるんだ」 「お、おう。この時を待っていたんだ!」 意気揚々とブ・ホゥラは駆けた。 鳳凰が反応する前に、もうブ・ホゥラは自分の間合いに相手を捉えていた。鳳凰の首を両手で締め上げる。苦しそうに呻く鳳凰。ブ・ホゥラは続けて、鳳凰の首を自らの腋に抱え込み、そこから体を入れて投げた。首投げと背負い投げの合わせ技のようなものだ。 ブ・ホゥラの力の前に、炎を失った鳳凰はなすすべもなかった。鮮やかな首背負い投げを食らって、鳳凰は背中から地面に落ちた。翼で受け身を取ることすらできず、踏み潰された蛙のような哀れな声をあげて、そのままのびてしまった。 「こ、こんなにあっさり、漢詩方術士と力持ちの男に負けてしまうなんて、この僕が」 かろうじて、仰向けにだらしなく倒れた鳳凰の口から小さな呟きが漏れ聞こえてきた。 「僕は、確かに実力不足だったのかもしれない。だから、科挙落第したのかな」 途切れそうな鳳凰サイジュの声に、ブ・ホゥラと並んで見下ろしているレューンが優しく諭す。 「そうだよ。それさえ認めてしまえば、もうこの世に未練は無いだろう。静かに休みなよ」 「ああ、僕はもう休むよ。ありがとう。でも、諦めたわけじゃないから。生まれ変わって、また科挙合格を目指すよ」 そこまで言うと、鳳凰は発火し始めた。命を燃やし尽くす最期の美しい炎だった。ほどなく炎が消えた時には、もう鳳凰の姿はどこにも無かった。 ○●●○◎ 二人は村長宅へ戻った。何人かの村人たちが集まり、賑やかだった。 「生まれた。生まれた」 「元気な男の子ですよ」 女たちの声で、何が起きているのかは容易に推察できた。 「お、そうか。あの副村長の奥さん、臨月だって言っていたか」 「なんか出産で取り込んでいるみたいだね。鳳凰退治の報告は、家の人が落ち着いてからにしようと思うんだけど、ブ・ホゥラもそれでいいかい?」 「ああ、そうだな。報酬だけはきっちりもらっておかないとな」 二人は村長宅の中庭で時間潰しをした。レューンは白猫をなでて遊び、ブ・ホゥラはその横で筋力の鍛錬をしていた。春らしい暖かい日差しがあたりを包んでいた。 「いやぁ、孫はかわいいもんだ。お、これはお二方、鳳凰の方はどうなりましたかな?」 満面の笑顔で村長が回廊に出てきて、中庭にいる二人に気づいた。 「それについて、私の方からご報告します」 レューンは事の顛末について静かに語った。鳳凰の正体はサイジュであったこと。サイジュは自殺したのではなく事故死だったこと。 そして、サイジュはこの世に未練を残して死んだため、魂が死にきれず、この世を迷走していた。レューンとブ・ホゥラの二人がかりによる激しい戦闘の末に鳳凰を倒して浄化した。もう、鳳凰が出てくる心配は無い。 原則として事実をその通り報告したが、一部は脚色を加えた。亡くなったサイジュやその遺族が、村にとっての悪者にならないように。そして、あまりにも簡単に鳳凰に勝ったからといって報酬が値切られたりしないように。 レューンの説明が旨かったからか、村長は約束通り報酬を支払ってくれた。これで無事に事件解決である。 「そういえば炎の鳳凰といえば、気になることがございまして」 「なんですか村長さん。まだ何か問題があるのですか?」 「いえ、さっき生まれたばかりの孫なのですが、お尻に大きな赤い痣がありまして。それがあの、炎の鳳凰と似ているのですよ。恐らく見た者みんながそう思っているはずですが、出産でおめでたい時に言うのが憚られて、誰も口に出してはいませんが」 レューンはブ・ホゥラの方に向かって短く言った。 「生まれ変わりだね」 ブ・ホゥラもレューンに言い返す。 「村長の孫なら諦めずに科挙に挑めるな」 二人は顔を見合わせて微笑み合った。 「な、なんですかお二方。何か心当たりでもあるのですか?」 「村長、安心してください。その痣は悪いものではありません。その子が成長して科挙の勉強をする時に、助けになってくれるはずですよ」 「そ、そうですか。いえ、不吉なものではない、ということが分かればいいんです」 実際の年齢よりも老けて見える村長は、ようやく安心した表情になった。 「さて、報酬も受け取ったし、俺たちは荷物をまとめて失礼しますよ」 「おや、もう行かれるのですか?」 「はい、私たちの本当の旅はこれからですから」 白い服のブ・ホゥラと黒に近い濃紺の道服のレューンは村を出て、新たな旅路へと向かうことにした。 炎の鳳凰からこの村を救ったのだが、功績を村人達に吹聴したわけでもないので、特に感謝もされていない。村人たちは、通りすがりの旅人のことなど覚えていなくてもいい。村長から謝礼さえもらえれば、それで良かった。 しかし、ブ・ホゥラとレューンのことを覚えていて、村の出口で見送ってくれる者がいた。 白い猫と黒い牛だった。 |
w 2016年04月11日(月)22時52分 公開 ■この作品の著作権はwさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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2016年06月09日(木)22時32分 | w | 作者レス | ||||
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ここから個別レスです。 ナマケモノさん感想ありがとうございます。 北欧神話は、一瞬考えたのですが。 でも北欧神話というと、レーヴァテインとか、運命の女神ノルンとか、ラノベ界隈での中二御用達という感じですので、誰か必ず書いてくるだろうと思いました。一方で中国だと神話というイメージはなかなか出てこないだろうし、鳳凰が神話の登場キャラとは思わないだろう、ということで盲点だろうから中国神話にしてみました。 フタをあけてみると。中国神話を扱ったのは予想通り本作だけだったのですが。北欧神話に関しては、予想に反して誰もメインで扱いませんでした。カレワラがちょっと惜しいくらいで。 北欧神話が出てこなかったということは、出典作品数の母数が少なかったということだと思います。そういう意味でも作品数の少なさは残念でした。 感想ありがとうございました。 T.Kさん感想ありがとうございます。 意訳すると出来が悪いという率直な感想をいただき、感謝いたします。 感想ありがとうございました。 つとむューさん感想ありがとうございます。 漢詩方術士だから雇ってくれと最初に頼んでいるのだから、 →そうではなく、冒頭のシーンで、レューンの漢詩方術を見た村人が声をかけているわけで、先に頼んでいるのは村の側です。 もちろん、交渉の段階ではレューン側は漢詩方術士であることをウリにしてはいますけど。 このへんも分かりにくかったようですので、分かり易い表現を模索してみようと思います。 感想ありがとうございました。 茉莉花さん感想ありがとうございます。 キャラの名前について →レューンについては、確かにあてはまる漢字はありません。意図して、漢字があてはまらない名前にしています。 これは、自分の好みになってしまいますが、中華風異世界ファンタジーにおける、中国語をカタカナ読みした名前があまり好きではありません。 カタカナで書くくらいだったら漢字で書いてカタカナでルビふればいいのに、とどうしても思ってしまうからです。 後宮小説では、イリューダという名前はかっこよかったと思いますが、コリューンあたりは自分的にはあまりぴんとこない感じです。 感想ありがとうございました。 たぬきさん感想ありがとうございます。 最後に仕留めるのがブ・ホゥラなのは、ブ・ホゥラをひき立てるレューンの性格ゆえでした。シリーズ物としてはそれでも良かったのですが、独立した短編としてはあくまでも主人公のレューンが仕留めた方が良かったですね。 ルビについては、原文にはつけようがありませんし、読み下しに全部つけるとくどいかと思ったのですが、読み下しを書くならば全部つけた方がいいみたいです。ご指摘感謝いたします。 いりえミトさん感想ありがとうございます。 このシーンでは「思いこみはいけない」という村長の言葉がブーメランになっている部分があるので、「もしかしたら村人たちも思いこみをしているのかもしれない」という感じでレューンが鳳凰の正体に気がつく流れにしてもよかった気がします。 →素晴らしい案を出していただき、ありがとうございます。そのへんは全く思いつかなかった部分なので参考にさせていただきます。 感想ありがとうございました。 たかセカンドさん感想ありがとうございます。 おっしゃる通り、シリーズものの一つとして考えていたので、最大上限70枚の中に無理矢理詰め込んだ要素も多く、テンポが悪くなった部分もあったと思います。そういったところをうまく表現できるよう試行錯誤してみたいと思います。 感想ありがとうございました。 ローさん感想ありがとうざいます。 リジィオを「意識」したのは事実ですが、リジィオと同じものは書けませんし、四半世紀前のラノベと同じものを書く必要もないと思っています。作者コメントで過大な期待を抱かせてしまったのは申し訳ございません。 感想ありがとうございました。 たてばんさん感想ありがとうございます。 > 唐詩方術というのは漢詩方術の別称だ。 村の人が唐詩方術と声をかけているなら、村長を含めた村人は全員が唐詩方術と呼ばないとおかしいと思います。 主人公達は旅人なわけですから、この呼び方は村の方言のようなものですよね? 唐詩方術という呼び方を使わないなら、最初から漢詩方術だけにしといた方がまとまると思います。 →んー。 申し訳ないのですが、方言と別称を混同しておられるのではないでしょうか。 たとえば、 「お手洗い」は「トイレ」の別称だ。 といった場合、日本全国どこへ行っても、トイレと言っても通用しますし、お手洗いと言っても通用します。日本全国どこの地方でも、どちらの言い方も普通に使われています。 北海道旭川市だけでお手洗いという言い方が使われていて、その他の地域ではトイレという言い方だけが使われているなら、それは、お手洗いは旭川の方言だ、ということになります。 唐詩方術というのは、方言ではなくあくまでも別称です。 なので、村人でも、唐詩方術という言い方をする人もいますし、漢詩方術という言い方をする人もいます。 しかし、方言と別称の混同が発生する可能性は全く想定外でした。なので、村人のシーンで唐詩方術の名前を出すのではなく、最初に漢詩方術の定義について説明している地の文の中で出してみようかと思います。 なお、ここで唐詩方術という呼称を出したのは二つの理由があり、一つは、共通レスにも書いた通り、中華風異世界に現実の中国史がゆるく混じった世界観を提示するためと、レューンの最後の漢詩に、漢と唐が出てくるので、それの伏線です。なので、思いつきでテキトーに出したものではなく、意図をもって出したものでした。 感想ありがとうございました。 シュバルツシルトさん感想ありがとうございます。 漢字が多いのは仕様ですのでご了承ください。 感想ありがとうございました。 99kg さん感想ありがとうございます。 冒頭、登場人物が分かりにくい 導師リジィオを出されてレューンが少女だと後から説明つけられて困惑。最初の台詞から想像するのはムリです。 キャラそのものは好きなのですがやり取りについていけなかった。 →レューンの台詞はあからさまに女の子っぽいのは避けたいと思っていたのでこういう形にしましたが、分かりにくいという感想は参考になります。 特に冒頭は大事なので、分かり易くなるよう修正したいと思います。 感想ありがとうございました。 兵藤晴佳さん感想ありがとうございます。 漢詩がいまいち →共通レスにも書いたのですが、漢詩の部分は中二要素として、呪文詠唱をドイツ語やロシア語で書いてあるかのように読み流してもらうよう誘導するつもりでした。 その一方で、兵藤さんのようにきちんと漢詩を読み込んで、その内容にまで細かく突っ込んでくださるのは、たいへんありがたいです。 仰るとおり、六句目まではともかく、七句目と八句目はいまひとつでした。 七句目と八句目で対句にしたこともあって、五句目、六句目っぽい内容になってしまいました。原因をしばらく考えたのですが、院、門、と体言止めにしたのがまずかったかな、と。最後の二句は動詞や形容詞など、何か動きのあるものにした方が良かったと思いますので、韻のあう修正を考えて見たいと思います。 感想ありがとうございました。 ピューレラさん感想ありがとうございました。 共通レスで述べたのですが、本作品はどうしても漢詩が難しいためバランスを取る意味でもゆるい世界観を目指しました。 そこで指標とさせていただいたのが、実のところ『勇者様はテレビショッピングがお好き』でした。異世界ファンタジーと現実ネタの混ざり方が良い感じにゆるく、商業出版作品では見ることができないもので、非常に新鮮でした。恐らく重箱の隅をつつけばいくらでも矛盾点などは出てくるのでしょうけど、そういうのを超越した魅力がありましたので、たいへん勉強させていただきました。 感想ありがとうございました。 おいげんさん感想ありがとうございます。 シティーハンターはアニメで観たことがありますが、かなり昔に漠然と観ていたので、勉強という意味でバンダイチャンネルで観直してみたいと思います。 漢詩の術の理論については、この尺の短編の中でやるべきではなかったかな、と思います。もっと長編の、中盤より少し後くらいに、もう少しすっきりした形でやるか、あるいはスッパリとはしょってしまうのも方法だと思いました。そのへんはもうちょっと模索してみたいと思います。 感想ありがとうございました。 七月鉄管ビールさん感想ありがとうございました。 さっきまで暴れていた牛がついてくるシーンに着目して頂きありがとうございます。 漢詩で使われるワードの一つに「帰牛」というのがあり、その牧歌的イメージが良い感じで、作品のゆるい方向性にも合っていると思って、牛がついてくることにしました。ググってみたところ、実際の使用例は夏目漱石の漢詩くらいしかないみたいですが、漢詩の中でも使ってみたいです。 感想ありがとうございました。 ハイさん感想ありがとうございます。 平仄についても重要な要素であろうと思われるものの、中盤に進むまで説明がされないので、かなりやきもきすることになりました。 →平仄の部分はさほど重要なところではなかったのですが、読者にとって分からない部分を「これはどういうことなんだろう。続きが気になる」と思うのではなく「やきもき」だったということですので、最初から嫌われた状態だったのだと参考になります。 そうならないよう、冒頭の引き込みや、適切な時点での情報開示をするよう、気を付けていきたいと思います。 感想ありがとうございました。
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2016年06月09日(木)22時31分 | w | 作者レス | ||||
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共通レス2です。 ●キノの旅 →実のところ未読です。 有名作品ですし、かなり以前から読んでみたいとは思っているのですが、自分の読書能力から考えたらリソースがたりなさすぎる感じもします。それこそ、本作を執筆するにあたっては岩波文庫の唐詩選を読んで漢詩の感覚をつかむのに忙しかったですし。 でもそのへんは頑張らないといけないところでしょうか。第一巻くらいはこの機会に読んでみたいと思います。 ●「科挙に合格すると翰林院に入ることができて、そこで修行して初めて漢詩方術士になれる」と思っていました。 →ここの部分は一番誤解を生んでいたようで、分かりにくくて申し訳ないです。 冒頭に書いてある通り、漢詩を詠唱して方術を使うのが漢詩方術士であり、そこには翰林院に入ってどうこうという条件はありません。 要は、魔術師が国家試験に合格したら、宮廷付き魔術師になれる、ということです。 その、宮廷付き魔術師、に該当する専門用語を用意して印象づけした方が良かったようです。 ●探せば地の文が足りない場所が結構あると思います。 →それについては最初から自覚していました。 問題の根っこがどこにあるかというと、自分の実力不足により、必要枚数を読み切れず、第一稿を仕上げた段階で、本作品でした。69枚なので、もうほとんど書き足す余地もありませんでした。 一番最初に述べた通り、作品のクオリティよりも参加作品数を一つでも多くすることを優先したため、その時点で改稿を諦めてしまいました。 上に書いた通り、濡れ衣に対してあっさり許すところも、村長副村長の思考過程はあったのですが、文字数の都合で省いてしまっています。その他、もろもろ足りていない部分があることは承知しています。 文字数制限に縛られて十分な作品が描けないよりは、長編のみに絞った方がいいのかなという思いもあります。短編企画に参加することも楽しいですし、企画自体が今後も安定して続いていくためには参加した方が良いのですが、今後については、参加しないかもしれませんし、感想だけでも参加するかもしれません。 ●TRPGのリプレイをそのまま小説にしたような →TRPG、というのは実のところ、かなり意識しています。そのあらわれが、ブ・ホゥラの台詞に「経験値稼ぎ」というメタ視点的なものをあえて入れたものです。 最大上限が70枚ということで、そんな複雑なストーリーにはできないので、どこで山場をもってくる、などといった考えはオーソドックスでした。そのため、完全に展開が読めてしまう形になり、面白さが損なわれてしまったのは残念です。 その一方で、世界観、というか世界設定に関しては、最近のラノベにありがちな、というか最近に限らず大昔のロードス島戦記やソードワールドの頃から続いていることですが、異世界といいつつTRPG的なきっちりと決めきった世界観からはあえて外しました。 TRPGはTRPGで面白いのですが、どんな不思議なモンスターが出てきても、それはあくまでも皮をかぶっているだけの能力値の数字でしかない、という部分については、常々物足りなさも感じていたためです。 そのため、あまり描かれることのない中華風とし、世界観もゆるめを目指しました。どうしても漢詩の部分が難しくなってしまうため、バランスを取る意味でもゆるい方が良いと思ったためです。で、中華風異世界に、現実の中国史がゆるく混ざった感じにしました。ただ、それと犯人捜し要素やバトル要素とはもうひとつマッチングが良くなかったのは大いに反省すべき点でした。本作品でガチのバトルものをやりたいわけではなく、推理ものをやりたいわけでもありません。たまーにバトル要素が出てきたり、たまに推理的要素が出てきたりする、という辺りに行きたいので、じゃあそうするためには、本作品をシリーズの第一話にもってくるのは良くないかな、と思いました。そういった部分に気付くことができたのは、ここで多数感想をいただけたおかげです。 共通レスはこんなところでしょうか。 以下、個別レスに移ります。 先に述べた通り、個別レスは簡単に済ませますので、ご了承ください。
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2016年06月09日(木)22時30分 | w | 作者レス | ||||
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本作品は近々跡地化します。ご了承ください。 まず最初に。 クミンさん企画開催ありがとうございました。 自分的には、今まで感想をもらったことがない方から多数感想をいただき、意義のある企画でした。 以下、作者レスです。 こちらは共通レス1となります。 重複して指摘をいただいたところ、それに関連する部分などについては、こちらでがっつりレスしていき、個別レスは簡単に済ませます。作者レスは同時に、自分メモ、自分的反省会の場でもありますので、そういったことの記述も入りますのでご了承ください。また、いつも言っていることであり当然ではありますが、ご指摘いただいたことについては、取捨選択させていただきます。 ●なぜこの作品を書いたのか? → 1。企画の日程が謎のため、出展作品数が少なくなると予想される。枯れ木も山のにぎわいとして、なんでもいいから作品を書いて、作品数を少しでも底上げしたい、と思ったためです。 これがほぼ全てと言ってもいいです。 フタをあけてみたら、本作品を含めても14作品でした。あまりにも寂しくてガッカリ。枯れ木も山の賑わいとしては十分役割を果たすことができましたので、出して良かったです。 2。どうせ何か出すのなら、以前から使いたいと思っていた漢詩方術ネタを出してみよう。 ということで、本作品は漢詩方術がどうか、という部分だけを目的として書いたものです。キャラとかストーリーとか世界設定などに関しては、悪い言い方をすればテキトー、それなりに誤魔化した言い方をすれば暫定的なものでした。 極端な話、西洋風異世界ファンタジーの中で、東方出身のちょい役キャラが漢詩方術を使う、という使い方もできるわけです。その場合、かなり出オチ的になってしまうのが難点ですが。 漢詩方術に関しては、こうしてたくさんの感想をいただいて、自分的には収穫があった部分と課題が見えた部分があり、やっぱり書いてみて良かったと思います。 ●長いシリーズの一つのお話と言う印象を受けました。 →おっしゃる通り、本作品は企画終了後にはカクヨムあたりで連載でもしてみようかという考えでの作品でした。そのため、作品の尺に対して世界観が過大となっています。世界設定の細部については、ビジョンが無いわけではありませんが、じゃあそれを最大上限70枚という枠の中で全部説明できるかといいますと、すみませんそれは無理です、としか言いようがありません。諸々、説明不足であることはご指摘を受けるまでもなく自覚していましたし、それゆえに独立した短編としての完成度が劣っていることも承知の上での出展でした。 そういう制作意図だったというわけで、以下のレスにおいても続編を書くことを念頭に置いた旨の記述が出てくることをご了承ください。 なお、実際にカクヨムあたりで連載して続編を書くかどうかについては、もう少し再考した上で決めたいと思います。 ●読者を選んでしまうかもしれません。 喰わず嫌いされかねない。 →こういう内容の作品ですし、読者を選ぶことは最初から分かっていましたし、むしろ、最初から、ある程度ではありますが読者を選ぶつもりで書きました。 確かに多くの読者に受け容れられる作品を目指すというのは大切なことです。が、その一方で、作品の方向性を尖らせることで一部の選ばれた読者に受けるものを目指すというのも一つの方策だとは思います。大きいレベルで具体例を言うと、かつてのライトノベルはたとえばそれこそ道士リジィオのようなかなり万人受けするような作品が主流だったと思います。富士見ファンタジアだからいちおう少年向けレーベルではあるけど、女性読者も多かったはずです。しかしその後のラノベはハーレムとか萌えとかエロを前面に押し出して、女性読者を切り捨てて男性向けに特化していく方向に行ったと考えています。 そんな感じで、本作品は万人受けを目指したものではない、ということは確かです。 ●漢詩のところは難しい ルビが欲しかった 作中のブ・ホゥラ同様に細かい部分は理解できませんでした →漢詩が難しい、という感想が多くなることは想定済み、というか、むしろそうなることが狙いでもありました。 目指したところは、中二要素、でした。中二作品でよくあるタイプの、呪文の詠唱がロシア語やドイツ語だったり梵字だったりして、無理矢理解読しようとすればできるのかもしれないが大抵の人には読めないものだったり、あるいは作中に難しい漢字がやたらと出てくる作品があったりすると思います。本当にかっこいいかどうかではなく、中学二年生くらいが、なんかかっこいいっぽい、と思うようなあたりです。カクヨムあたりで連載するならば、中二、というタグを付けるつもりでした。 ただ、中二に徹しきれなかった部分は反省点です。 読者をどこに誘導するか、というのがきちんと交通整理しきれなかったです。 漢詩の部分をきちんと理解して、その上で出来が良くないとつっこんでいただいている感想もあったのはありがたかったです。 理解できないならば理解できないで、中途半端に理解しようとするのではなくさらっと読み飛ばしてもらえるよう誘導したかったのですが、そこは書き方に工夫の余地があるようです。 ルビについては、読み下しの難しそうな漢字にはルビは付けたのですが、それだけじゃたりなかったでしょうか。あまり簡単な字にもルビをつけたらうるさいかな、と思ったのですが。 ルビについては、実験的に、読み下しの漢字全部に付けてみようかと思います。ただしそれは読み下しも入れる場合のことで、もしかしたら読み下しも無しにするケースもあるかもしれません。そのへんはもっとじっくり考えてみたいです。 ●思い込みで行動しすぎ 行き当たりばったりというか、そうじゃないだろ、と主人公に言いたくなるような場面 「ああ、この気持ち分かる」「俺はこいつだったかもしれない」 →レューンの行動が思い込みだけで浅はか、というのは意図して書いた部分です。 レューンの場合は13歳で、それこそ誕生日を迎える前の中学二年生の年齢です。若いから人間的に未熟、というのはある意味当然であり、仕方ない部分でもあります。 その一方で、現代人の読者は、レューンの愚かさをバカにできるでしょうか?ツイッターあたりで誤った情報を安直にRTして拡散してしまったり、きちんと読解せずに誤読してクソリプを飛ばしてしまう、なんてことが現代人にはよくあるのではないかと思っています。今まで一度もそういうことが無いのか。そして今後も絶対にそういうことが無いと言い切れるのか。もちろんこれは自戒でもありますが、レューンよりもよっぽど現代人の方が思い込みだけで安直な行動をしていると言えるのではないでしょうか。レューンの場合、副村長を誤って告発しましたが、村人たちの前で言ったわけではなく、村長と副村長しかその場には居ませんでした。つまり誤った情報の拡散は最小限でとどまっています。それに対して現代人の場合は、一度発してしまった情報は、容易に不特定多数に伝わってしまい、修正はなかなか難しい。なので、「俺はこいつだったかもしれない」と思うべきキャラは、本作の場合は悪役ではなく、主人公の方でした。 ●濡れ衣に対してあまりにもアッサリと許していた →これも現代人の傾向にありそうなことですが、少しでも落ち度のあった相手に対しては必要以上に叩いて炎上させることが普通になりつつあるのかな、と。それってどうなのかな、と。 文字数の都合で、村長と副村長の思考経路については何も書きませんでしたが、二人は色々打算を働かせた結果、レューンたちをあまり責めないという結論にいたっています。 あまり執拗にレューンたちを責めすぎて「やっぱり炎の鳳凰退治は降ります」と言われてしまっても困りますし、あるいは「てめえらうるせえ気に入らねえ」と逆ギレされて暴れられて村に損害が出ても困ります。 これが、村人みんなの前で告発が行われたのなら、村長副村長の対応ももっと厳しいものになっていたかもしれません。が、実際には村長と副村長しかいない場だったので、大人の対応をした方が得策だと考えたわけです。村長も副村長も「大人」ですから。 じゃあレューンたちに一切ペナルティが無かったかというと、そうでもありません。その後の交渉で、本来ならばもっと上手に出ることができたところを、やや譲歩せざるを得ない形になっています。ただ、これだけでは分かりにくいのも事実ですので、少しではあるが報酬を減額された、という形にしたほうがいいかもしれないと思いました。 字数オーバーらしいので、このへんで一回切ります。
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2016年05月10日(火)21時45分 | w | 作者レス | ||||
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感想ありがとうございました。 レスはゆっくり返していきます。 気長にお待ちください。
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2016年05月09日(月)19時57分 | ナマケモノ | |||||
いつもお世話になっております。ケモノです。本作を読ませていただいたので、感想を書かせていただきます。企画開催中に読ませていただいた作品なんですが、けっこう自分の中ではお気に入りだったりします。 細かい中華ファンタジーを想起させる描写とか、漢詩の独特の使い方とか独創的で作りこまれた世界観がなんとも魅力的でした。とくに漢詩方術士の設定は他の作品で参考にしたいと思ったぐらいです。 反面、神話との関わりは薄い作品だと思いました。できれば、前回のアトランティスで使った北欧ネタを個人的には持ってきて欲しかったです。でも、ラストで朱雀がやってくる場面はすごく好きです。
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2016年05月06日(金)15時19分 | T.K | -10点 | ||||
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予定はなかったのですが、期間が延長されて時間ができたので感想を残したいと思います。 学の無い私には漢詩というものが本当にこの世に存在するのかどうかも分かりません。 信憑性のほどを調べる必要性も感じません。 読解できる部分の出来から察しても、「漢詩だけはちゃんと出来る人なんだ」と都合のいい解釈をしてあげる義理もございません。 理解できない部分は無視して見える所だけで総評する事には異論はないかと思いますので、コメントにもある通り忌憚のない点数をつけさせて頂こうかと思います。
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2016年05月04日(水)17時37分 | つとむュー | |||||
GW企画の執筆、お疲れ様でした。 御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。 >黒い雄牛を指さしながらレューンが唱えたのは、一句あたり七文字で四句から成る七言絶句の漢詩だった。 漢詩を唱えて、いろいろなことを解決する漢詩方術士が登場するストーリーでした。 このアイディアは、なかなか面白かったと思います。 >今までにも何度も言ったことあるけど、漢詩には平仄を合わせるという規則があるんだ 漢詩にもいろいろとルールがあることを知り、 勉強になりました。 しかし、次の2点が大きな原因で、 残念ながらあまりストーリーを楽しむことができませんでした。 1)世界観や漢詩方術士の説明が不十分で、不明な点が多すぎる 2)漢詩に疎いので、提示された漢詩の良し悪しがわからず、置いてきぼりにされてしまった まず、世界観についてですが、 この世界は、「鳳凰が現実に存在する世界」なのか、 もしくは「鳳凰は漢詩方術士しか出すことができない世界」なのかが分かりませんでした。 レューンが、真っ先に漢詩方術士の関与を疑ったので、 後者の世界なんだなあと薄々感じておりましたが、 読み進めていくうちに、どうやら亡霊が普通に存在する世界であることがわかり、 それならば鳳凰だって、漢詩方術士の関与がなくても普通に存在していてもいいんじゃないかと感じました。 >今回の事件の犯人はあなただろう、副村長。あなたが方術で炎の鳳凰を出しているんだ 一番不思議だったのはこのシーンです。 もしこの推理が正しければ、副村長を拘束すれば鳳凰は出なくなるわけで、 事件の解決には漢詩方術士なんていらないよ、と言っているようなものです。 漢詩方術士だから雇ってくれと最初に頼んでいるのだから、 さすがにこの推理はないんじゃないでしょうか? (化け物退治の専門家が呼ばれたのに、「犯人は人間だ」と言ってしまったら用無しになりますよね?) 次に、漢詩方術士についてです。 >帝都で科挙の漢詩方術士部門に及第して翰林院に入るのが壮大な夢ではありましたが、地方都市で行われる一次試験にすら合格した者もおりません。 この説明から、「科挙に合格すると翰林院に入ることができて、そこで修行して初めて詩方術士になれる」と思っていました。 しかし、読み進めていくと、一次試験に合格できなかった者でも漢詩方術が使えるという。 ここで、設定がよくわからなくなってしまいました。 >まあ私も、試験を受けたことはありませんが、地方一次試験くらいは余裕で合格する実力があると自負していますけど 試験を受けていないレューンが、漢詩方術士として生活できているのも大きな謎です。 やはり漢詩方術士についても、もっと詳しい説明が必要だったんじゃないかと思いました。 2)の漢詩については、完全にこちらの実力不足なので、 ごめんなさいと言うしかありません。 枚数は、ルールが50枚までのところ69枚でした。 これは、ルールをあまり強く意識されていなかったためか、 もしくは立てられたプロットが50枚以内に収まるものではなかったのか、 どちらかだと個人的には思います。 真相がどちらかなのかは判断できませんので、大変申し訳ありませんが、 今回は点数無しでご了承いただけましたら幸いです。 いろいろと書いてしまいましたが、漢詩を詠唱するというアイディアが独特な作品でした。 拙い感想で申し訳ありません。 今後のご活躍を期待しています。
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2016年05月07日(土)00時37分 | 茉莉花 | |||||
作者の方へ 茉莉花と申します。 貴作、拝読しました。 大変申し訳ないのですが、一身上の都合により感想を削除させていただきます。 wさんのせいではないです。 レスもお気遣いなきよう。 今後のますますの創作活動をお祈りしています。
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2016年04月28日(木)21時29分 | たぬき nY39lNOBNk | 10点 | ||||
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※この感想は間違いだったようです、すみません。
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2016年04月26日(火)22時09分 | いりえミト | 20点 | ||||
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『漢詩方術士レューン』拝読しました。 漢詩を詠唱して方術を使うというアイデアが面白かったですね。私は漢詩についてはまったく分からないため、作中のブ・ホゥラ同様に細かい部分は理解できませんでしたが。 キャラも魅力的で、レューンとブ・ホゥラのボケツッコミのようなやり取りがよかったです。 レューンが推理ミスするシーンなんかはかっこ悪いんですけど、完璧すぎないところがまた魅力になっていると思います。 ストーリー面もよかったと思います。 創作を題材にしているため、小説書きとして共感する部分や考えさせられる部分もあり…。あと、高校のとき習った「山月記」を思いだしました。 気になった点としては、鳳凰の正体が明かされるシーンがあっさりしていて、やや盛り上がりが弱いかなということです。 このシーンでは「思いこみはいけない」という村長の言葉がブーメランになっている部分があるので、「もしかしたら村人たちも思いこみをしているのかもしれない」という感じでレューンが鳳凰の正体に気がつく流れにしてもよかった気がします。 全体としては、大きなインパクトこそない印象でしたが、安定した面白さがある作品だったと思います。 短いですが、以上です。 執筆おつかれさまでした。
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2016年04月24日(日)19時47分 | たかセカンド | 20点 | ||||
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こんばんは。 「漢詩方術士レューン」を読ませていただきました。 感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。 納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。 まず、漢詩方術士と言う設定が珍しく、良く練っているという印象を受けました。 文章や展開にも違和感なく読み進めることができました。 中華風異世界ファンタジーも私自身はあまり読んだ記憶がないため、興味を持つことができました。 世界観は細部まで描かれていたと思います。 ただ、あまりなじみの無い設定からか、やや説明が長く分かりにくい印象を受けました。 特に長いセリフに入ると、テンポも少し悪くなってい、すんなりと頭に入って行かない部分もありました。 後は、長いシリーズの一つのお話と言う印象を受けました。 そう思ってしまったのは、綺麗に纏まっているのですが、ブ・ホゥラもレューンもこの出来事の中で何を思い、何を学んだかが明確にされていなかった点にあるかと思います。 ひょっとしたら、作者様はこの作品を長いシリーズの一つと言う位置づけで書かれていたのかも(間違っていましたら申し訳ありません)しれませんが、やはり登場人物たちには何らかの成長が描かれていた方が、終わりもしっくりきたのかもしれません。 いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。 以上となります。 このたびは有難うございました。
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2016年04月24日(日)08時02分 | ロー | -30点 | ||||
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普段企画には参加しないのですが、たまたま見ていたら導師リジィオという単語を見て思わず読んでしまいました。 冴木忍さんのファンで中でも導師リジィオが好きです。 だがこの内容は無いわ。導師リジィオは術に関する説明は一切していないですよね。それはなぜか、を考えてみてほしいです。 それを除いても拙すぎる。
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2016年04月26日(火)22時54分 | たてばん L2TtHY/jcg | 10点 | ||||
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執筆お疲れ様でした。 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残します。 《文章》 読みやすい文章だったのですが、 >「そ、その鳥は?」 >「そうさ。風よりも熱い翼、炎より速い心を持つ朱雀さ」 のように淡々と物語が進んでしまっている印象を受けました。本来ならここは台詞の間に鳳凰の驚きの描写が入ると思います。 これは印象に残ったとこの例ですが、探せば地の文が足りない場所が結構あると思います。 > 唐詩方術というのは漢詩方術の別称だ。 村の人が唐詩方術と声をかけているなら、村長を含めた村人は全員が唐詩方術と呼ばないとおかしいと思います。 主人公達は旅人なわけですから、この呼び方は村の方言のようなものですよね? 唐詩方術という呼び方を使わないなら、最初から漢詩方術だけにしといた方がまとまると思います。 あと、牛を眠らせた漢詩のどこがダメだったかの説明ですが、まったく理解できませんでした。 詳しく書きすぎて何がなんだかわからないので、もっとざっくりとした説明の方が良いと思います。 オチの後の無駄な空白も消したほうが良いです。 《設定》 舞台が中華で、それに合う漢詩で詠唱というのは良かったです。 敵なのですが、最初は妖怪、中盤は漢詩方術、最後は幽霊と姿を変えすぎだと思います。 敵も主人公の言うこと聞いて地面に降りてきたり、いきなり現れたりと都合良すぎです。 この物語は詠唱で敵を倒すのが売りだと思うのですが、敵の正体を知ることに力を入れすぎだと思いました。そして、その割には行き当たりばったりの展開で謎解きすらありません。 バトル物を書きたいのか推理系を書きたいのかでこの作品は変わると思います。 推理ならこの物語通りでラストは主人公の無双で良いですし、タイトルにある漢詩方術を全面的に使うなら、強い敵に苦戦する描写が欲しいです。 次に、この主人公は試験を受けてないそうですが、なぜ漢詩方術士を名乗っているのですか? それなら、漢詩方術士になるために武者修行の旅に出ていると言った方が筋が通りそうです。 《構成》 冒頭の牛をサクッと倒しちゃって次に進んだ方が良いと思いました。 いきなり本編が始まったのかと思うような力の入れ方です。 冒頭を削ったぶんでもっと現地調査のシーンを増やして、敵の正体を暴く展開に繋げれば物語として良くなると思います。 《総評》 初めて詠唱が出てくる作品を読みましたが、なんだか知的な主人公が格好良くて憧れますね。 なんだかんだ言って楽しく読ませてもらいました。 未熟者の身でいろいろと口出ししてすみません。 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
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2016年04月23日(土)23時36分 | たぬき nY39lNOBNk | 10点 | ||||
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鳳凰をしとめるのは、主人公だけでよかったのでは無いかという疑問が……(これも平仄をそろえるためなのだろうか) コミカルなキャラクターと前向きなストーリーで、楽しく見ることができました。 ただちょっと行き当たりばったりというか、そうじゃないだろ、と主人公に言いたくなるような場面があり、気になりました(村長につめよるところとか) あと、漢詩は素敵なのですが、ルビが欲しかったですね。
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2016年04月23日(土)12時47分 | シュバルツシルト | -30点 | ||||
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漢字ばかりで読みにくい。 人物が何を言っているのか分からない。
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2016年04月28日(木)00時44分 | 99kg | |||||
冒頭、登場人物が分かりにくい 導師リジィオを出されてレューンが少女だと後から説明つけられて困惑。最初の台詞から想像するのはムリです。 キャラそのものは好きなのですがやり取りについていけなかった。 夜中に起きて漢詩の事を語るシーン。 状況的に考えればここは真犯人が分かった、とか事の真相が分かった、という流れを期待する。 結局昼間の失敗の事を長々と語る。 どうでもええわ。結局何なんだ。となった。 実際ここでは何も進展しない。一応伏線なんですが、「知っている。あえてやったんだ」となって結局何なの? となった。 レューンの位置付けが分からない。 十三歳で方術士を名乗っているが試験に合格したわけでもない。 しかしプロとして報酬も貰う。モグリの方術士なのか? その実態は失態ばかり。村長もよく契約を続けた。どう見ても方術かじっただけのただの子供か詐欺師です。 方術を扱うには適正が必要なんですかね? 適正ないと勉強しても無駄なんでしょうか。それとも努力で何とかなるもんなんでしょうか。 それならまず適正があるかどうかで方術士は決まるので、村長宅に本が沢山あったり試験があったりする事と符合しない。 国家方術士、みたいなもんでしょうかね。それでも方術士は方術士ですから話的にはしっくりこない。 ラスト、サイジュに主張させている事はさっぱり分からない。 科挙の審査と言うものは決められた水準に基づいてされるものではないのですか? 詩の出来、好みによって各々の審査員が好き勝手に合格者を決めるのでしょうか? そもそも漢詩方術というものは、漢詩のルールに基づいて唱える事で力を発揮するはず。間違えばその効果も減退するんですよね? どのぐらいの効果があるのか、どのぐらい強いのか、なんていうのはハッキリ出せると思うのですが(オリンピックの競技や国家試験でこんな論争聞いた事が無いです)。 漢詩の間違いうんぬんよりも、効果測れば一目瞭然のはず。 それが同じに見えて、結果が納得できない、というのは方術士としての基礎が出来ていない。 そんな奴でも鳳凰出しちゃうわけで。方術ってそんなに簡単に扱えるもんなんですか? 漢詩という難しい術式を盛り込んでいるのに対して、使う者があまりに幼稚過ぎる、という矛盾を感じてしまう。 「サイジュとはこういう考え方をする人物です」ではなく「何か分っていないんだけど、こう言えと言われて言わされているだけの人物」にしか見えないです。 その内約は、 同じ会場、同じ試験官で審査されて落ちて。 それを指摘されたら今度は別の会場審査の話を持ち出して。 でも順位によって決められるのではない、というのは本人も知っていて……、 じゃあ何でそんな事言い出したんだ??? ここまでならサイジュは落ちた事実が受け入れられずに発狂して支離滅裂な事を言っているだけの怨念の塊ですが、 レューンが整合性を考えるのが不毛って言っちゃってますよね。サイジュの思い込みではないんですよね(サイジュがそこを言及した理由はさっぱりですが)。 他の試験会場との整合性は無いんですよね?(あるならそれを説明すれば成仏しますから) 見てもいない人、は見てみたら結果変わるかもしれないんですよね? 実際の国家試験は会場ごとに審査基準違わないですよね? 整合性取れてないと話になりませんよね? つまり方術の試験はそういうものではないんですね。 方術は漢詩ですが、国語の試験のように点数をつけてないんですね。小説新人賞のようにレーベル、下読みの個々の基準、好みによって点数をつけるものなんですね。読者投票のように時には素人が判定しているのかもしれませんね。 過去と同じ漢詩だと効果が薄いというメカニズムも理解不能なので、試験官が単に新しい詩をみたい、というだけの話でしょうか。 厳正な判断がされているというのが何を根拠にそう言っているのかが分かりません。 そうすると、そんな試験合格になぜ固執するのかも分かりません。実際レューンは試験受けてないですしね。 落ちたからといってそれが自殺の動機だと推理する心理が分からない(小説の新人賞に落ちて自殺、ってそれは落ちたからではなく元々精神が病んでるのが原因です)。 都で仕事しやすくなるブランドなのかもしれませんが、それは街の人達が方術に対する意識が低いから成立していると思われます(実際村長も子供に依頼しちゃいますし)。 そうでないなら試合すればいいだけですからね。 サイジュも結果に納得いかないならハクに力比べ申し込めば済む話です。 それとも方術同士の戦いが禁止されているのでしょうか(そんな説明ないですけど)。 暴力規制が進んでボクシングのチャンピオンがシャドーの美しさで判定されるようになったら簡単に廃れてしまいますよね。チャンピオンの称号誰も欲しがらないです。 東大の入試や医師免許が読者選考によって決められる意識の低い世界(実はレューンはその組織)に警鐘を鳴らす話、というのなら成立はするのですが、サイジュが敗れるので正義が悪に完全敗北する悲劇になってしまいます。 しかも両者のレベルに違いが感じられない。たまたま直前に同じミスしていたから勝てた、というだけです。しかも基礎。 考えれば考えるほどにワケが分からなくなって、無理矢理解釈するなら、 結局方術というのは生まれ持っての才能に左右される。漢詩がどうのこうのというのは単なる発動の手順に過ぎず、それを覚えられるかどうかでしかない。 でなければ十三歳で稚拙なレューンが鳳凰を凌駕する方術を発動させてしまいますから、村長どれだけ頭悪いんだ、という事になってしまいます。 その希少な才能保持者を更にふるいにかける試験って結局なんなの? 教育制度もないようですし。 順位を決めるものではないのだから、方術使えれば方術士でいいのではないか? 実は試験は異能力者をあぶりだして一箇所に閉じ込める為の制度なのか?(サイジュは放っておいても害がないから落ちたのか) 誰もそれに気が付かない。あるいはレューンは気が付いているから試験を受けないのか。でもそれを放置しているのなら酷い話だし、そもそも下手すぎる。 なので真相は、 方術の使える異能力者を危険分子としてあぶり出し、管理する為の制度が方術試験で、漢詩はそれを隠す為のカムフラージュ。 実は「漢詩」というのは「監視」にかけてあるのです。 そしてその黒幕がレューン。 実は最強の方術使いで、自分を脅かす人間の芽を摘み取る為に試験制度を敷き、自身は実力と身分を偽って旅をしている。 試験合格者は中央都市で国の為に働いている、と信じられているが実際は機械に繋がれてエネルギー源にされているか消されているのでしょう。 サイジュは基礎が出来ていなかった為に無害と見なされ、方術を認知させる宣伝を兼ねて開放(落ちた)されたが、怨念化した彼に真相をバラされそうになったからレューンに消された。 説得を試みるフリをしてどれだけ真相に近づいたか探りを入れたら、思いの外近かったので突然実力行使。それまでに似つかわしくない力を発揮して鳳凰を凌駕。 でもそのままでは正体がバレてしまうから術を解いてブ・ホゥラに譲った。そして強がっているだけの子供のフリに戻る。 (サイジュは死んで人外の存在になって真実に近づいたのか? 世界に危機は感じても、ぼんやりとしか感じ取れないから支離滅裂な言動になった!?) 何も分からないフリをしながら、真相に近づいた者や、正そうとする者を人知れず始末する影の支配者。 だがその外見は13才のあどけない少女。自分の都合の悪いものを排除して理想の世界を作ろうとする少女の、はたしてその正体は!? 道中の行動や言動から察するに共に旅するブ・ホゥラもその事を知らないのでしょう。 彼女に罪悪感はあるのか、それとも次第に心を痛め始めるのか!? 最後はブ・ホゥラと戦うのか!? そう考えると成立したような気がします。何か面白そうな世界になってきました。 私はよく分からない物を分からないまま読み流す事が出来ず、何とか自分の中で成立させようとするタイプなもので、こんな想像をしてみましたがはたして!? 点数は私の想像した世界なので……、という事になりますが、レューンのキャラクターは非常に好きです。
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2016年04月22日(金)21時54分 | 兵藤晴佳 | 20点 | ||||
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漢詩を用いた呪術合戦という発想は斬新です。 日本なら、禍々しい響きの呪い歌が飛び交うおどろおどろしい作品になるところですが、漢詩特有の凛然とした響きが、中華風の世界観と相まって、爽やかな雰囲気を醸し出しています。 ただ、本当に残念なのは、TRPGのリプレイをそのまま小説にしたような分かり易さです。分かり易すぎて、引っかかるものがありません。「ああ、このへんでラスボスが出てきてバトルがあって……」と見当がつくのは本当にもったいない。これが犯人捜しの推理ものに徹するのなら問題ないのですが。 あるいは、ラスボスの心の闇が中盤にどっぷりあふれていれば、その正体への興味が高まったでしょう。それがどんなに小物でも。 圧倒的な力を持つ主人公が、明らかに下らない悪役を一方的にぶちのめしても、話がウソっぽくなるだけです。 もし、読者が悪役に感情移入して「ああ、この気持ち分かる」「俺はこいつだったかもしれない」と思えるように書けば、対決にリアリティが生まれたのではないでしょうか。 さらに細かいことを言えば。 専門的知識がちりばめられているのに、漢詩が、今一つです。 レューンの最後の詩は、どうも第7・8句でまとまっているようには思えません。 文法的にも、「漢詩が思いつく」は、「漢詩を思いつく」の間違いじゃないかなあという点がのっけに引っかかってなりませんでした。 セリフも説明臭く、作者が読者に分からせたいことをを登場人物の口に突っ込んでしまった感があります。それならむしろ、地の文で書いてしまえばよかったのではないかと思います。 漢詩の蘊蓄満載で、構成が整理された丁寧な文章の作品なのに、胸に迫るものがなかったのが本当にもったいなかったと思います。
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2016年04月20日(水)20時50分 | ピューレラ | 40点 | ||||
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こんばんは。 気になった点としては、村長も村長の息子も濡れ衣に対して あまりにもアッサリと許していた点です。 それがあったので、何かあるのでは?と勘ぐってしまいました。 【好きだった点その1】 設定や世界観がよく練られた作品だなと感じられたところ。 読んでいて、漢詩のところは難しいなと思いつつも きちんと作られているので物語に入り込む事が出来ました。 【好きだった点その2】 レューンとブ・ホゥラのコンビ。 「どう発音するのだろう?笑」と少し戸惑いましたが 二人のコンビは好きでした。 レューンはキノの旅のキノのようなイメージを勝手に持って読んでいました。 【好きだった点その3】 この物語全体が好きです。何だか褒めているところが多くて 上手く伝えられてないかもしれないですが一番言いたいのは 「このコンビの続編が読みたいです」というぐらい、この作品が好きだという事です。
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2016年04月21日(木)01時36分 | おいげん | 20点 | ||||
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御作、拝読させて頂きました。 早速、感想を述べたいと思います。 ◆良かった点 ①工夫された術式の仕様 世の中に出ているエンタメは、どこかしらメジャーな部分から引っ張って来て、切り貼りをしている印象が有ります。御作では、中華風のスペルを独自解釈で、一つの様式として昇華させたものだと感じました。発想と努力と韻の良さは特筆すべき点です。 ②安心感のあるペア 古き良き作品ですが、『シティーハンター』を見ている感じでした。役目と性別は違っていますが、与えられたキャラ性の中で、充分に活躍出来ていたと思います。 ③無理のない展開 短編故、起承転結ないし序破急の中盤をすっとばす方も多いのです。御作は、立て板に水を流すかのような、読んでいてひっかかりを覚えない設計・構成になっていると感じました。 ◆気になった点 @漢詩の術 術の理論を説明しているシーンがありますが、多分食いつきが悪くなる箇所だと思い、指摘させて頂きます。理由として、 1.日本人は漢詩を日常的に用いないから知識が少ない。 2.その上で、ルールを説明されても、「お、おう」で終わってしまう。 3.それらを前提としたうえで、作中で当たり前のように使われ、登場人物に納得させるような場面を作っても、読者がおいてけぼりになる可能性が高い。 ということが考えられます。 小説を読んでいて、興味の湧くことに対して、積極的に調べようとする人は多くいるかと思います。御作はオリジナリティーに富んでいるのですが、読者を選んでしまうかもしれません。 執筆お疲れ様でした。また、忌憚のない感想、言葉選ばずで申し訳ありませんでした。 4/19 おいげん
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2016年04月17日(日)22時57分 | 七月鉄管ビール xn8ZkIqS3k | 20点 | ||||
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「ギャハハハ、ほんとに漢詩載っけてる! 不利。企画じゃ絶対不利だよ!! 喰わず嫌いされかねない。 こんなことすんのあの人かな。 でもすげえな。漢詩つくれんだ」 などと、教養のない私は感服しました。 この作品の魅力は呑気さにあると思います。 細かいお金の話がでてきたり、早とちりがあったりと、少女と大男の珍道中の香りがします。 また、御作でこういう描写があります 『農夫の男が先導する形で、三人は村へと向かって行った。元々村で飼われていたのだろう、黒毛の雄牛もまた、三人に従うようにして後ろをついて歩いてきた。』 さっきまで暴れていた牛がゆっくりとついていく様に、自然と口元が緩みました。 御作の目玉である漢詩ですが、これも作品の良い意味でのだらしなさを構成している要素だと思います。 平仄といわれても何のことだかさっぱりわかりませんが全然問題ありませんでした。 漢詩という物はそれだけで趣があります。 暴れ牛の件で漢詩の解説を読んでいるとのんびりとした気持ちになりました。 終始この調子で戦闘中も漢詩の詠唱と解説がなされるため、間延びした感じが独特の空気を作っています。 この点、評価の分かれるところだと思います。 この作品に、他の方からどのような評価がなされるか、非常に興味があります。 意欲的な実験作の執筆おつかれさまでした。
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2016年05月05日(木)17時39分 | ハイ | -10点 | ||||
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拝見しましたので、感想をお納めください。 まず、いきなり言わせていただきまして、 どうなのかな、これは、って感じでした。 いや、作品全体に作者さんの熱意が満ちていて、同じ作者としては大変勉強になる作品ではあるのですが……。 読者としては、読了が若干辛い作品でした。 まず、例を挙げるなら。 >春風駘蕩靄余暉 春風、駘蕩たいとうとして余暉よき靄あいたり 睡眠深閨未解囲 睡眠 深閨しんけいにて未だ囲いを解かず 莫厭重遊於短夢 厭いとう莫なかれ、短き夢に於いて重ねて遊ぶを 陶磁高枕入霞微 陶磁の高枕、霞に入いりて微かなり ●などの漢詩描写であるとか。 >夢は、戦の場である辺境の城に懸かっている月をめぐって離れない。 しかし、陣形を保ち進軍する時にわき起こる土煙の雲は、これはもう、やむ時なのだ。戦争は終わりだ。 重陽の節句というのがある。高い所に登って遠い故郷の方を見て懐かしむ日だ。その日に、茱萸という赤い木の実を身に飾って厄除けとしたり、菊酒を飲んで長寿を願ったりする。故郷に帰ろうではないか。 郷里に帰って、すなわち、詩でも吟じながらのんびりと過ごし、戦いで傷ついた心と体を癒そう。 という意味だ。つまり戦いが終わって傷を癒す方術である。 ●その漢詩の説明をされているところなど、非常に辛かったです。 理由としては、第一に興味が持てないこと。 「おお、これどんな意味の詩?」って感じに読み進めたくなる、そんな気持ちが浮かばなかったんですよね。正直なところ、漢詩ってだけで目が滑りました。 いや、無理! と。 また、平仄についても重要な要素であろうと思われるものの、中盤に進むまで説明がされないので、かなりやきもきすることになりました。 そしていざ説明が始まったのですが、 >「そうだよ。二四不同といって、二番目の文字と四番目の文字の平仄は同じではいけないんだ。二六同というのもあって、二番目と六番目の文字は同じ平仄である、という規則さ」 「理解できん。なあ。もう寝ていいか?」 「どうせ目が覚めてしまったのなら、もう少し聞いてよ。理解しなくても聞き流すだけでいいから」 「さっき、起こしてごめん、とか言っていたのは、なんだったんだよ」 「まあそう言わないで聞いてよ。第二句目に注目してみると、第四字は閨、第六字は解だ。二四不同だから、二字目と四字目の平仄は別々でなければならない。二字目が仄の眼だったら四字目の平の閨とは別々になるから問題なかった。でも二字目で平の眠を使っちゃったから、二四不同の規則から外れてしまった」 ●何となく理解は出来ましたが、なるほど! というほどではなく、なんかよくわかんないけど、難しいこと言ってる……と、やはり若干の拒絶感が(汗) このあたり、作者さんは大変に勉強家だとは思うのですが、一般的な読者がこれだけの情報量を受け止められるか、という点についてははなはだ疑問でした。 いや、まあ、絶対にいないとはいいませんが、 少なくとも私は無理でした。 他、色々突っ込みたいところがあって。 >ここにきてようやくレューンは、事態の割り符が合わないことに気付き始めた。 「じゃあ、去年まで二人いた漢詩方術士のもう一人って、副村長でないなら、誰なんだ?」 >もし副村長が去年までいた漢詩方術士の一人だとしたら、去年までは漢詩方術を使えたけど、突然使えなくなったことになる。、それはあまりにも不自然だ。 >そうか! 村長の息子か! ●のちに指摘されてますが、思い込みで行動しすぎですよねw このあたりの流れは終始、いやいやいや! ちょっと待て! と画面に向かって突っ込んでました。 他にも、思い込みじゃないか? と思うような妙な点はあって。 >「で、問題は、本当の犯人が誰か、ってことだ。そうだろうレューン」 ●まず、鳳凰ってのが漢詩方術士によって呼び出される存在という前提が説明されてません。 読者的には、鳳凰が登場した時点で、そういう生き物が自然に存在するもの、と思っている人もいるわけで。私もそう思って読み進めていました。 なので、どうして漢詩方術士が犯人と限定してんだろう? と、これまた疑問でした。 ですから、このあたりの世界観を説明するか、鳳凰は術士により呼び出されるもの、という説明がどこかで必須だったのではないかと思います。 >「自殺したサイジュという人が、この世に未練を残して亡霊になった、というそれは矛盾していると思う」 いつもよりも更に低い声だった。 「自殺っていうのは、この世に絶望して、この世にもう居たくないと思ったから、自殺したってことだよね。それなのに、この世に未練があって亡霊になって出てくる、というのは矛盾していないかい」 ●これもちょっと首をかしげました。 わからなくもないけれど、自殺ってのは常に未練と逃避とが同居して発生する行動だと思うわけで。 後々の展開を考慮しての発言だとは思うのですが、私的には「自殺者の霊、全否定?!」と反発してしまいました。 ●最後に もし、何か一つにアドバイスを絞るなら、もう少し読者の許容量を考えて欲しかったかな、というのが私からの意見です。 今回、読むので手一杯に近かったので。 ともあれ、熱意は誰にも負けない作者さんだと思うので、今後頑張っていただきたいな、と応援しています。 なお、今回より評価なしは感想にカウントされないとのことなので、様々な点を鑑みて、素直な気持ちで点数を入れさせていただきました。 ご理解のほど、よろしくお願いいたします。 それでは、執筆ご苦労様でした!
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合計 | 15人 | 80点 |
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