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見えない未来に向かって
1.プロローグ

 いつ頃からだろう。咲本絵里さきもとえりに呼び出されるようになったのは。
 いつ頃からだろう。そこに佐野唯さのゆいも加わり激しさを増したのは。
 いつ頃からだろう。考えるだけ無駄だと思うようになったのは。
 ここは衛生的に最悪で臭気に満ちた汚い場所だ。そんな場所で上梨藍かみなしあいは床に倒れて顔を付けていた。もちろん好きでやっているわけではない。
「辞めて欲しかったら便器でも舐めな」
 そう佐野が言うと数ある個室の扉の一つを開いた。その先には白い和式便器が一つだけ置いてあった。
 床に倒れたままの上梨は佐野を一瞥してから咲本を見上げた。咲本は腕を組みながら上梨を見下ろしていた。
 視線が合い咲本の目つきがキツくなる。
「なに? なんか言いたいことでもあるの」
 上梨は咄嗟に目を下ろして、いや、と一言だけ返した。
 それが咲本の気に障ったのか、咲本は舌打ちをすると上梨の腹をサッカーボールのように思いっきり蹴った。上梨の顔は苦悶の表情を浮かべ、腹を押さえて転がり回った。
 苦しい。息ができない。辛い。死ぬ……。
 上梨の頭の中にはいろんな負の感情が一気に溢れ出た。
 咲本はその一撃に満足したのか鼻を鳴らすと身を翻す。
「そろそろ授業も始まるし行くよ佐野さん」
 佐野はまだ息の整わない上梨の髪を掴み顔を無理矢理上げさせた。
「このぐらいで済んで良かったな」
 佐野のつり上がった目が垂れ下がり、気持ちの悪い笑みを浮かべていた。佐野はその一言だけいうと、上梨の髪を離して咲本と一緒にトイレから出て行った。
 さっきまで騒がしかったトイレには水が滴る音と、上梨のか細い泣き声と、授業を知らせるチャイムの音だけが残った。

2.上梨とムギ

 1.

 テレビでは梅雨入り宣言を聞いたのだけど、心とは裏腹に外は晴天で風も無く上梨は他の生徒よりも一足早く下校していた。
 あのあとはどうしても授業を受ける気にならなくて保健室に行き気分が悪いと、保健の馬場先生ばばせんせいに告げた。その結果早退することとなった。
 咲本も佐野も同じクラスだからできるなら学校には行きたくないけど、父や母には無駄な心配はかけたくない。自分の娘が苛めに合っていると知ったらどう思うだろうか。考えたくも無い。
 帰る時間にはまだ早い。どこかで時間を潰して帰ろうか。しかし、下手にお店に行くと中学生の私は目立ってしまい補導されてしまうだろう。
 わざと遠回りしていつもは通らない小さな橋を渡り、人影もまばらな公園を通ってみた。公園の時計はまだ十五時で止まっていた。
 公園を出て当てもなく歩いた私は足下にあった石を何気なく蹴り飛ばした。
 転がる石に視線を追うと、左側に石の柱の上に座る狐の石像が目に入った。そこは賀川神社かがわじんじゃの入り口だった。山の中腹にある神社に行くためには、百段ある石の階段を上がらなくてはならないのは地元では有名だけど、そのせいか今では誰もこの神社に行く人はいない。
 人目に付かなくて時間が潰せる場所。一瞬でここだ。ここしか無いと思った。
 上梨は何かに惹きつけられるように石の階段に足をかけた。
 最初は軽快な足取りで登っていた上梨だが、中盤ほどでペースが落ちていき、しまいには膝が笑い出して立ち止まってしまった。
 なぜ三十段で神社を建てなかったのだろうか。上梨は先人達に疑問しか湧かなかった。
 一呼吸してからまた階段を上り始めた。汗が垂れて呼吸が乱れる。上を見てまだまだ残りの階段があると心が折れそうなので、下だけを見て歩き続けた。
 しばらくして階段の先が無くなったので顔を上げると、そこには神社の入り口である赤い鳥居が立っていた。
「やっと着いた」
 肩を上下に動かし息切れ切れに声を出すと、マラソンのゴールと言わんばかりに鳥居をくぐった。
 神社は誰も手入れをしていないようで、石畳の間からは雑草が自由に伸びている。石畳の左右の土にも雑草が生えて膝下まで生えている。この雑草が全部花だったらさぞかし綺麗なことだろう。
 上梨は行く手を阻む雑草を飛び越えながら社の前に行くと、予想以上に朽ち果てていた。床や壁はところどころ穴が空き、天井は雨漏りと見られるシミができていた。賽銭箱も大部痛んでいたがなんとか残っていた。
 上梨は何かあったときのために、いつも公衆電話用の十円玉を持ち歩いている。それを賽銭箱の中に投げ入れ手を叩き目を閉じた。
 神様お願いします。どうか私の願いを叶えてください。イジメの無い平和な学校生活を送りたいです。
 せっかくなので効果があるとも思えない神頼みをしてみることにした。
 たぶん私の願いは聞き入れられないだろう。だって本当に神様がいたら私は今頃幸せな生活を送っているもの。
 賽銭箱の後ろの社に上がる階段に腰を下ろした。
 私が今来た鳥居の向こうでは夕日が落ちて空は漆黒の闇に変わろうとしている。神社には明かりはないが特に怖いとは思わない。神様がいないなら幽霊もいない。それなら生きている人間のほうが遙かに怖い。
 日が完全に落ちて風が強くなり夏服の半袖の制服では肌寒くなってきた。
 上梨は両腕で体を抱くように回しながら社を見た。
 ……ちょうどいいところに社があるけど入ってもいいかな。
 情熱的な夕日とは真逆の冷たい風が上梨の体を徐々に冷やし、悩んだ末誘惑に負けた上梨は少しでも暖を取るために社の中に入ることにした。
 靴を脱ぎ階段を上がり社の扉に手をかけた。中になにがあるかわからないから、興味と恐怖で少し鼓動が早くなるのを感じた。
 滑りが悪く開きにくい扉を開くと、中は暗くて何も見えなかった。今は日が落ちてしまっているのだから当然か。
 埃の臭いが酷いので、誰も掃除にも来ていないのだろう。
 社の中に入り扉を閉めてから、壁に寄り掛かる形で座り込んだ。
 日が沈んだばかりだから、多分今は十八時過ぎ。あと一時間ぐらい経ったら帰ろう。
 上梨はうずくまり顔を俯かせながら今日の出来事を頭で無意識に考え、目に涙を浮かべると静かに瞼閉じた。

 上梨は右手で眠たそうに目を擦りながら、ぼんやり霞む意識を少しずつ覚醒させた。気付けば辺りには一寸の先も見えない闇が広がり、穴の開いた天井や壁から差し込む外の月明かりだけが上梨の今いる居場所を示していた。
「やだ……、どのくらい寝てたんだろう」
 泣き疲れて知らないうちに寝てしまっていたようだった。ここは神社なのになぜ神様はいなくて私を起こしてくれないのだろうか。この際神様なんて当ての無い存在でなくてもいい。犬でも猫でも、それこそ虫だって。
 母に怒られると思うと今からでも顔が強張る。父より母の方が怖くて、父は尻に敷かれている――、と今はそんなのはどうでもいい。
 上梨は急いで立ち上がり扉に手をかけると、外から話し声がすることに気付いた。
 扉に耳を付けて聞き耳を立ててみるが、いろいろな声が聞こえて何人いるか想像もつかない。
 こんな人気がないところ来る人間ってどんなのだろうか。頭を回転させて考えてみるも、私の頭の中には近寄りがたい人間しか浮かび上がってこなかった。
 上梨は無意識に距離をとろうと扉にかけた手を下ろし一歩下がった。
 ここがオンボロの神社だという事を忘れていた。上梨が着いた足が床を軋ませ、歯ぎしりのような音が盛大に聞こえてきた。
 それを合図にしたように、外の話し声がピタリと止んだ。
 マズイ……中に入ってくる。
 上梨は静かに後ずさりしながら狭い社の奥に逃げ込み、壁の方を向きながら頭を抱えてうずこまった。逃げ込んだと言っても社の中は何もないので、隠れる場所はもちろんない。頭隠して尻隠さずとはこの状況を予期した言葉なのだろうか。
 震える上梨をさらに驚かせるように扉が勢いよく開き、上梨は頭をぎゅっと抱えキツく瞼を閉じた。
「なんでこんなところに人間のガキがいるんだ」
 足音も無く近寄り後ろから聞こえてきた声は意外と子供のような高い声で、私は拍子抜けしてゆっくり後ろを振り向いた。
そこには声に似合った小さい体の人影が立っていた。月明かりに逆光で表情は見取れなかったが、しかし、明らかに私達人間とは違う物が付いていた。頭には尖った耳が二つ、お尻からは柔らかそうな尻尾が一本出ていた。
 だんだん目が慣れてきて顔を見ると鼻と口が伸びていて最初は犬かと思ったが、特徴的な尻尾に上梨は確信した。今目の前にいるのは狐だ。
 開いた口が塞がらず唖然としていると狐が一言。
「もうガキは寝る時間だぞ」
 上梨は喋る狐を見てまだ夢の中だと思い頬を思い切りつねってみた。
 ――痛い。ということは夢では無い。
 狐が喋るなんて聞いたこと無いし、動物で話せるのはインコぐらいでは無いのだろうか。上梨は狐をまじまじと見ながら、右手で顎を摩っている。それに、上から下へとよくよく見れば狐には毛が生えていなく、色は麦のような褐色でのっぺりとした体で、うっすらと体が透き通っていた。
 それは絵本やテレビでよく見る幽霊のようなものだった。
 まさか、本物の幽霊じゃ……、幽霊の存在を信じていなくても目の前にそれらしい存在があれば、それはもちろん怖い。
 上梨は驚き後ずさりをして、壁に盛大に頭を打ち付けた。
「おい、大丈夫か?」
 狐は心配してくれているようだったが、上梨の耳には何一つ聞こえてこなかった。
 上梨は手を合わせて意味も無くひたすら謝った。生きてきた中で一番の謝罪だったと思う。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「お前なにか悪いことでもしたのか?」
 予想外の返事に顔を上げてみると、やはりそこには狐がいた。
「いや、なにもしてないですけど……」
「じゃあ何に謝ってるんだ?」
 狐にそう聞かれると私自身なぜ謝ったのかがわからなくなってきた。怖いからとりあえず謝ったものの、私はなにも悪いことをしてないので謝ることもない。
 首を傾げて考えても答えはでなかった。
「何もしてないのに謝るなんて不思議な奴だな」
「私もアナタの存在が不思議なんですけど」
 上梨ははっとして口を手で塞いだ。思わず声が漏れていた。しかし、狐はためらいも無く私の質問に答えてくれた。
「俺か? 俺は狐の霊だ。他にはなにかあるか?」
 やはり思った通り狐の霊には間違いないようだった。狐の霊と言えば、狐憑きでたびたびテレビに出てきて、お茶の間を沸かせるが、この狐はテレビでよく見るような悪い霊ではないような気がする。根拠は何一つないのだが。
「なにも無いなら俺は行くぞ。やることがあるからな」
 狐はそう言うと社から出て行った。二足歩行で人間のように歩いているが、やはり足音は聞こえてこなかった。
 上梨は口を開き呆然と狐を見送ったが、顔を振りもう一度意識を覚ますと立ち上がり、狐の後を追って社の外に出た。
 外に目を向けるとそこには賽銭箱をテーブルに見立てて野菜や魚を置き、狸や熊が品定めして狐が店主のように売りさばく、私たちの世界でいうスーパーのような光景が広がっていた。うっすらと透き通る動物の姿を見ると、どうやら狐と同じ幽霊がこの賀川神社に集まっているようだ。
「まいどあり!」
 狐は大きな声をかけると、小さな狸は器用に両手で野菜を持ち、鳥居をくぐり階段を下っていった。
 動物が人の言葉を話して買い物をしている摩訶不思議な状況に、上梨の思考は止まり目眩がしてきた。
 扉に手をつきその場にへたり込むと、それを見てた狐が駆け寄ってきた。
「おい、どうした。気分悪いのか?」
 誰のせいだと思っているのか、この狐には腹が立ってくる。
 上梨が黙っていると狐が離れていき、賽銭箱の前に立つと他の動物達の霊に言い放った。
「悪いけど今日は店仕舞いにするよ。また明日来てくれ」
 狐の言葉に他の霊達からは、せっかく来たのに、なんだよもう、など文句の声が聞こえてきた。他には、わかったよ狐の大将、明日はもっと美味そうな魚を揃えておいてくれ、などいろいろな声が聞こえてきた。
 霊にも意識があり意見があるんだ。なんだが人間とあまり変わらないかも。
 そう思うと少しだけ気分が良くなってきた。
 そこに狐が現れて柄杓ひしゃくを突き出してきた。
「これ飲め。気分が良くなるぞ」
 柄杓の中を見ると透明で冷たそうな水が入っていた。
「……これ毒とか入ってないよね?」
 いきなり差し出されて飲むほど私も落ちぶれてはいない。そもそも得体が知れない奴から水を差し出されて、はいそうですかと飲めるわけもない
「そんなの入れるわけないだろ。いいから飲めよ」
 狐は私の口に柄杓を押しつけてきて、上梨は無理矢理水を飲まされてしまった。しかし、予想外の事が起きた。
「ん、なにこれ、美味しい」
 水はキンキンに冷えていて喉の奥から頭を突き抜けるような痛みに襲われるが、口当たりがまろやかでとても飲みやすかった。
「どうだ美味いだろ? この水はこの山の湧き水だからいろんな成分が混ざり合って最高なんだ。お前ら人間の水道水なんか目じゃないぞ」
「お水ありがとう」
 一息ついて落ち着き狐をもう一度見ると、狐は白い犬歯を見せながら笑みを浮かべていた。その顔に上梨の心に少しの余裕が生まれた。
「ところで狐さん、あなたの名前はなんて言うの?」
「俺の名前? そんなの無いよ。みんなは狐とか大将とか呼んでるけど、名前はないな」
 狐は手の代わりに尻尾を左右に振りながら答えた。
 その尻尾は稲穂のような形をして、月明かりに晒されたその色は収穫間近の麦のような金色の光を放っていた。
 上梨はその左右に揺れる尻尾を見て、狐にこう名付けた。
「ムギ……あなたのことムギって呼ぶね」
「はぁ?」
 狐は眉を竦めて上梨のことを変な目で見てくる。
「だって狐さんだと呼びづらいじゃない。だから、呼びやすいようにムギって名前をつけてあげる」
「あげるって何様のつもりだよ」
 ムギの言葉にはっとした。しばらく誰とも人らしい会話をしていなかったのと不思議な出来事の興奮で、上梨はムギに馴れ馴れしい態度をとってしまった。
 これは、さっきと違い私が完全に悪い。
「ごめんなさい」
 私が頭を下げるとムギは気にしてないと、そっぽを向きながら尻尾を振った。
「そういえば嬢ちゃんは帰らなくていいのか? もう丑三つ時過ぎてるぞ」
「え? 丑三つ時ってことは午前二時を過ぎてるって事?」
「まぁ、そうなるな」
 ムギは横目で私を見ながら素っ気なくだが答えてくれた。
 上梨は急いで立ち上がると、靴を履いて石畳を走り抜けてそのままの勢いで鳥居をくぐった。
 上梨は階段を二、三段降りたところで振り返り口元に両手を当てると、ムギに大きな声をかけた。
「そういえば、私の名前は上梨っていうの!」
 ムギは予想してなかった言葉に目を大きく見開いき、上梨は続けて次に繋がる言葉をかけた。
「また来るね」

3.ムギと私の活動

 1.

 あの夜、私が帰らないことを心配した母が捜索願を出していて、近所の人たちや警察のお世話になる大騒動になっていた。
 急いで帰宅した上梨に待っていたのは、安堵の涙を浮かべる母の姿と激高する父の姿だった。普段の様子だと母と父の行動は逆なのだが、この時だけはなぜか逆転していた。
 賀川神社によりお参りをしてそのまま寝てしまったと、ムギと出会った事実だけ省いて必死に説明すると、父からは一発の軽いビンタをもらい、次に母からは抱きしめられた。
 外は寒かったが、母と父からは太陽の光にも負けない暖かさを感じた。
 上梨はそのまま両親と共に迷惑をかけた人達に謝ることとなった。近所の大人達や警察は何事も無くて良かった、と建て前でもそう取り繕ってくれて丸く収まったので良かった。本当なら夜中に起こされ迷惑千万、文句の一つでも言いたいところだったろう。
 上梨は賀川神社の階段を登りながら三日前の夜のことを思い出していた。
 階段を登り切ると、そこには赤い塗装が剥がれた鳥居に雑草がはみ出している石畳、そして、穴だらけで痛々しい社が相変わらず佇んでいた。
 石畳の上を駆けて社の扉を開けた。しかし、そこには何も無い寂しい空間が広がっていた。
 ムギは幽霊だから昼間はいないのかな。
 上梨は大きく息を吸い込むと、試しに大きな声で呼んでみることにした。
「ムギー! いるなら返事してー!」
 私の声に驚いた鳥が木から次々と羽ばたいて飛んでいく。
 静寂が訪れた神社には私以外の気配は感じなかった。
「なんだいないのか……」
 私はまたムギに会いたいと思って来たのに夜じゃ無いと会えない。だけど、私は昼間しかこの神社には来れない。これじゃ、ロミオとジュリエットみたいなお互いに成就しない話のようだ。でも、会えないならしかたないよね。
 上梨は振り向き鳥居の向かうと、後ろの賽銭箱の裏からあの夜に少し仲良くなれた幽霊の声が聞こえてきた。
「誰かと思ったら嬢ちゃんじゃないか。本当にまた来るなんて」
 その声に振り向くと、ムギは籠を背負いその中には魚や山菜がたくさん入っていた。
「どうしたのそれ」
 籠から溢れんばかりの食料に上梨は興奮気味にムギとの距離を詰める。
「これか、これは今夜配る食料だよ」
「配る食料?」
 幽霊もお腹が減るのかな。
 上梨は頭をフル稼働させるも答えなど出るはずがない。上梨はが頭を小突いて唸っているとムギが答えてくれた。
「幽霊は別に腹は減らないけど、数少ない楽しみの一つなんだ。俺はここで幽霊相手に食べ物を配って宇迦之御魂神様うかのみたまのかみさまに認めて貰って、俺も神の一員のなるのが夢なんだ」
「ウカノ……、誰それ?」
 幽霊の世界の中では有名人なのだろうか。
「宇迦之御魂神様、ウカ様は稲荷神社の主催神で穀物や食料の神様だ。俺はまだただの狐の幽霊だけど、将来はウカ様の傘下の神様になりたいんだ」
「ウカなんとかって神様はわからないけど、ムギは神様になりたいんだね。食べ物を配ってると神様になれるの?」
 私にはこの世界はわからないことしかないけど、普通の幽霊が神様になれるのだろうか。
「どうだかな。ウカ様に会ったこともないし、隣町の神様が昔、頑張って活動すればなれるって言ってただけだからな。食物の神様だし食べ物を配ってたら目に入るかな、そう思って活動してるだけだからな」
 ムギの意気揚々に話す姿に上梨は困惑した。いるかもわからないしなれる保証もないのに何故頑張れるのか。
 これは頑張っている者には失礼な質問だと思う。だけど、上梨は聞かずにはいられなかった。
「ねぇ、なんでムギは確証の無い未来に頑張れるの? そこで何もなれなかったらただの馬鹿じゃん」
 上梨の両足に下ろされている手には力が入り拳は小刻みに震えている。ムギは目を細めて上梨の目を見据えた。
 ムギはゆっくり口を開き、白い牙が見えると静かに言葉を発した。
「――付いてこいよ。裏山入ったこと無いだろ? 案内してやるよ」
 小さくても仮にも相手は幽霊。上梨は何を言われるか怖くて冷や汗をかいていたが、予想外にムギは笑顔で返事をすると、ムギは籠に入っている大量の魚や山菜を社の中に置くと、上梨の手を引っ張り社の裏にある小道に入っていった。上梨よろけて倒れそうになるその姿は、公園の遊具を見て走り出す子供に引っ張られる母のようだった。
 上梨は自分の服を見直す。白い柄物のシャツにジーパン姿に上梨は、絶対汚さないことを心に誓った。白い衣服を汚したら汚れは落ちないし母の逆鱗に触れそうだ。
 左右どこを見渡しても木が生い茂り不安が押し寄せる。安心して山を登れるのは目の前のムギの笑顔があるからだろう。上梨はムギと繋いでいる手の反対の手を胸に近づけ、ムギに置いてかれないように必死に歩いた。
 だが、小さい山とは言え山は山、次第に上梨の呼吸が乱れていった。どんだけ体力があるのこの子は。上梨は質問しようと思ったが、よくよく考えれば幽霊に体力なんてあるのだろうか。ムギの笑顔を見てると聞くのも野暮な気がしてきたから、上梨は大人しく歩くことにした。
「着いたぞ」
 そこには小さな小川が流れていて、ムギは上梨の手を離すと、待てない子供のように勢い良く小川に飛び込んで行った。上梨は肩で息を整えてムギを見ていた。
 小川の幅は五メートルほどと小さく木々に覆われたこの場所は、自然のクーラーとでも言うのだろうか、辺りには心地良い冷たい空気が漂っていた。上梨は目を閉じ両手を広げ深呼吸していると、小川からムギが上がり身を震わせ水を落とした。
「ここの川の水は美味いから飲んでおけよ。飲まないと損だぜ」
「飲んで大丈夫なの? ばい菌とか心配だけど」
「お前が腹を壊してないなら大丈夫だろ。このまえ飲ませたのはここの水だぞ」
 私は小川の前にしゃがみ込むと、両手で水を掬い恐る恐る口に運んだ。
 あの時飲んだ水の感触が口に広がり喉の奥に消えていった。
 上梨が水に舌鼓を打っていると、ムギはいつの間にか小道に戻っていた。
「早く来いよ」
 上梨がその声に振り向くと、ムギはさらに上へ続く小道を走って行ってしまった。
 上梨は右手を出しムギを引き留めようとするが、その手ではムギに届くはずもないし留められもしなかった。
 上梨は急いでその場から立ち上がりムギを追ったが、体力的に有利で小さなムギはどんどん先に行ってしまい、最終的には見失ってしまった。
「どうしよう」
 知らない山に一人置き去りにされることがこんなに心細いとは思ってもみなかった。日常生活で聞く鳥の鳴き声も、風に揺らぐ葉のざわめきも、ここでは不気味な不協和音に感じられた。
 幸い大きな山ではないので帰り道には困らないが、勝手に帰ってしまってはムギが困るのではないだろうか。いや、でも、普段は一人で行動しているから私がいなくても問題はないだろう。そもそも私を置いて先に行ってしまうムギが悪いのだ。男の子ならちゃんとリードしてくれないと……、そもそも幽霊に性別ってあるのかな。
 上梨は脳内会議を済ませ自分を納得させると体を反転させて来た道を戻ろうとしたが、ふいにムギの顔が頭に浮かんだ。
 今勝手に帰ってしまったら、次神社に来た時にいないのではないだろうか。
 上梨は学校で苛められているせいか他人に優しくされることは少ない。優しさに慣れていないのだ。優しくしてくれたのがたとえ狐の霊であっても例外ではない。
 優しくされたから好きになったとかではなくて、ただ何故私に優しくしてくれたのかが不思議でしょうがないのだ。ここでそれがわかり学校で生かせれば苛められることも無くなるのでは無いのかと思い、ムギに興味を持ち今日またこの神社に来たのだ。
 ここで帰ったら何もわからないまま終わるかもしれない。それだけは避けたかった。
 上梨はまた体を反転させて見えないムギの姿を追った。
 かなり歩いたがムギの姿は見えない。どこまで歩けば良いのだろうか。
 ここで別な不安が脳裏によぎった。先にムギが山を下りていたらどうしよう。
 可能性は低いとは思うがゼロではない。
 不安に胸が押しつぶされそうになる。ムギは私に水をくれて優しくしてくれた。勝手に帰ったりしないはず。
 上梨はムギを信じて登り続けた。すると木々が無くなり開けた丘に出た。そこにはベンチのような座るにはうってつけの大きな石が置いてあり、それに座っているムギの姿があった。
 ムギに声をかけようと近づくと、ムギが上梨に気付かないで何かを無心で見ていることに気付いた。ムギが視線を向けるほうを見ると、そこには上梨の住む須川の町並みが広がっていた。
 商店街を行き交う車に横断歩道を渡る子供、電柱に登る工事のお兄さんや井戸端会議をするおばさん達、いろんな人がいて町がまるで一つの生き物のように忙しなく動いていた。その姿は飽きが来なさそうで一日中でも眺めていられそうだった。
 ムギは私の方に耳を向けてひくつかせている。どうやら私に気付いたみたいだ。それから町を眺めながら話を始めた。
「この姿になってからは生きてた頃と違っていろんなとこに行けるし悪戯いたずらし放題だし、しばらく遊んでたんだけど次第に飽きてきたんだ。
 そんな時だったよ。たまたま行った隣町の神社で紺色の神官装束しんかんしょうぞくを着て堂々と歩く神様を見たんだ。その姿からは自身が満ちあふれてて格好良くて俺もあの神官装束を着たいと思ったんだ。
 あれを見てからかな、俺が頑張ってるのは」
「服を着たいから頑張るって女の子みたいだね」
 上梨とムギは少し笑った。
「まぁ、大変だし神様になれないかもしれないけど何かをしないと結果は出ないんだ。先だけ考えて止まってたら死んでるのと変わらないぜ。自分の行動が結果として付いてくるし、それは無駄なことではなく経験として生きるから頑張れるのかな。
 嬢ちゃんは若いからわからないかもしれないが、絶対見えない先の事を考えて立ち止まってたら、それはとても損をしていてつまらないものだと思うぞ」
 上梨はムギの言葉に頭の芯を叩かれるような衝撃を受けた。
 私は咲本達とケンカするべきなのだろうか。先の見えない未来に怯えて生活するのはとても苦しいことだけど、ただ一つ見える未来がある。それは、ケンカしてもしなくても痛い目をみるのは明らかだ。
 痛いのは嫌だ。上梨は手を胸に当てて小刻みに震えた。
「寒くなってきたか。じゃあそろそろ下るか」
 ムギは私が震えているのを寒くなったと勘違いしたようだった。だけど、無駄な詮索をされなくて上梨の心は安堵の息をついた。

 2.

 自室の姿見鏡の前で上梨は手を前にかがめて、よし、と気合いを入れた。
 部屋から出て玄関に行き靴を履いていると、後ろからスリッパが床を駆ける音が近づいてきた。
「学校の体操服なんて着てどうしたの? なんか部活でも入ったの?」
「違うけど今日はすることがあるの」
 私はそう告げると玄関を後にした。
 ムギと山を登ってから三週間が経った。あれから毎週行って手伝いをしているのだけど毎回山に登って食料調達ばかりで大変……、いや、退屈だから今日は違うことをしようと思って学校の体操服を着て神社に行くことにした。
 しかし、そう思ってみたものの休日に体操服を着て町中を歩くのは変な感じがする。すれ違う人達は私を見て心の中で笑っているのではないだろうか。私は周りの目が気になりずっと下を向いたまま歩いていた。
 神社まであと少しというところで、道路を挟んだ反対の歩道から聞きたくない声で名前を呼ばれた。
「上梨じゃん。体操服なんて着てどこ行く気」
 声のするほうを見ると咲本がいた。咲本は白いワンピースに麦わら帽子という、夏の定番の服装でこちらに向いて立っていた。これで可愛くもなかったら対抗意識も燃やせそうなのだけど、顔も頭も良くてバスケ部でメンバー入りと文武両道なので困る。悪いところは性格ぐらいだろう。
「さ、咲本さん、おはよう」
 私は右手を上げて咲本に挨拶をした。頬が引き攣っているのが自分でもわかる。
「アンタ金無いから休みの日でも体操服なんか着てるんでしょ。貧乏が移るから気安く話しかけないで」
 咲本は私を下から上へと舐め回すように見ながら、汚い物でも見るかのような目つきで吐き捨てた。
「私は――」
 私は今日やることがあって体操服を着てるの、咲本さんみたいに遊びに行くわけじゃないし、貧乏が移るなら私に関わらないで。私もその性格が移るのが嫌だから。
 本当はこう言いたかったけど、気持ちとは裏腹に言葉はまったく出てきてはくれなかった。
 言葉に詰まり咲本を見続けていると、咲本の表情が変わった。
「なに、なんか言いたいことでもあるの?」
 咲本は眉間に皺を寄せ、道路を渡りこちらに来ようとしていた。
 捕まったらマズイ。
 上梨は神社までの道のりを一目散に走って逃げた。

 辺りは静かで風に葉が擦れる音だけが聞こえる中、上梨の息切れ切れの音が混じり不自然な音を作り出していた。
「どうしたんだ、そんなに息を切らせて」
 気付くとムギが柄杓に水を入れて目の前に立っていた。
 私はその柄杓を奪うように取り一気に水を喉に流し込んだ。
「ぷはっ」
 いつ飲んでもここの水は美味しくて生き返る。
「おい、今日は走って来たけど、なんか嬉しいことでもあったのか」
「いや、別に」
 ムギの勘違いがまた別の方向に働くと同時に私の中に一つの疑問が生まれた。狐は嬉しいと走るものなのだろうか。少し考えて、あえて聞かないことにした。
「それよりほら、今日は汚れてもいい服で着たの」
 私は両手を大きく広げて大の字になり、ムギにこれから汚れるぞという意思表示をした。
「なんだその色は、見てて痛々しいな」
「それはしょうがないでしょ!」
 上梨の学年の体操服の色は上下共に赤色なのだ。
 上梨は頬を膨らませてムギを睨み、ムギは悪い悪い、と左手で頭を掻いていた。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「ごめん。今日は一人で食料を取りに行ってくれる」
 ムギが山の方に向かおうとしたが上梨の一言で立ち止まり振り返った。
「どうしたんだよ。今日は食料を採るために汚れるんじゃないのか」
「違うの。ただ汚れるのは本当だよ」
 ムギは困惑した表情を浮かべているが、上梨の気合いの入った顔を見て微笑を浮かべた。
「わかったよ。なにが変わるのか楽しみにしてるぜ」
 ムギはそう言うと、柔らかそうな尻尾を振りながらいつもの小道の中に消えていった。
「よし」
 ムギがいなくなるのをちゃんと確認してから上梨は行動を開始した。
 おしりのポケットから軍手を取り出して手にはめると、石畳から出てしゃがみ込んだ。
 今日は社の周りの美化活動に努めようと思ったのだ。ムギと食料を取りに行ってても籠を持つだけだし、賀川神社に来る度に汚いと感じていたので、それなら私ができることをしよう。私の頑張りはここから始めようと心に決めた。
 ――痛い。
 黙々と草むしりをしていたのだが、そのうち手が痛くなってきて次に腰、次に足の裏とどんどん痛い場所が増えていった。
 立ち上がって伸びをしていると、なんだこりゃ、とムギの声がした。
「おかえりムギ」
 上梨はムギのほうを見て小さな声で言った。
 まだ三分の一しか終わっていないので、堂々とおかえりと言えないのだ。本当なら全部終わらせてムギを迎え入れる予定だったのだが。
 上梨は意気消沈していると、ムギから予想外の反応が返ってきた。
「一人でこんなに草を抜いたのか。凄いなお前」
「いや、全然終わってないし」
 私は肩を下ろしながら右手を振った。
「終わって無くても凄いと思うぞ。俺ならここまでできないもんな」
「そ、そうかな?」
 いやーと左手を頭の裏に回して、顔は自然と笑顔になる。上梨は褒められた気がして照れてきた。
「いけない。もうこんな時間」
 左手を下ろす時に時計を見ると十七時を過ぎるところだった。この前盛大に怒られたので、それからは腕時計をするように心がけているのだ。
「なんだ。もう帰るのか」
 ムギの尻尾はうなだれて拗ねた子供のように見える。
 上梨はしゃがんでムギの目線の高さに合わせると、また来週来るから、と伝えて立ち上がった。
「じゃあねムギ」
 上梨はムギに手を振って鳥居を抜け階段を降りていると、大きなムギの声が聞こえた。
「来週も絶対来いよ!」
「うん!」
 私もムギに負けないくらいの大きな声で答えた。

 3.

「ところで、俺も嬢ちゃんの学校に行ってみてもいいか?」
「はっ?」
「いや、だから嬢ちゃんが学校でどんな生活してるのか気になるから見てみたいんだよ。こんだけマジメなんだから学校でもさぞ人気者なんだろうな」
 草むしりをしている上梨の手が止まり目を見開きムギを見つめた。ムギの目は煌めき尊敬の眼差しを上梨に向けていた。それを見た上梨は言葉に詰まった。
 私は全く逆で友達もいなくて苛められてるからダメ……、なんて言えるわけないしどうしよう。
 上梨は絞り出すようなか細い声で言った。
「ダメ、絶対ダメだからね」
「なんでだよ」
「ダメったらダメなの!」
 私は立ち上がるとムギの返事を聞かないように耳を塞ぎながら走って賀川神社から出て行った。

 憂鬱な学校が始まって早二時間が過ぎて三校時の国語の授業が始まるところだった。時間が早く進むというのはなんて良いのだろうか。
 今日の一校時目は全校集会で二校時目は体育で移動だったので、今のところは咲本に呼び出されてはいない。平和は素晴らしいと思うのだが、咲本がチラチラ私の方を見ているので、次の休み時間には呼び出されるのだろう。そう考えると胃が痛くなってきた。
 上梨の席は運が良く窓際だからこの立地の良さを生かさせて貰おう。上梨は心を休ませようと窓の外を見ると、木の上に何か動物がいるのが見えた。
 それは頭に尖った二つの耳を生やして体は軽く透き通ってて、何よりあの柔らかそうな特徴的な尻尾。見間違うわけが無い、あれはムギだった。
 上梨は口を開き唖然として見ていると、ムギと目が合い、ムギは白い牙を見せて笑顔で手を振ってきた。その光景に私は思わず声を上げ立ち上がった。
「ムギ!」
 上梨のその行動とは逆に教室には静寂が訪れた。
 クラスの全員からの視線が私に注がれる。上梨の顔は恥ずかしさに熱を帯びていく。
「なんだ。居眠りでもしてたのか上梨。さっさと席に着け。ちなみに、今日の給食は麦飯じゃないからな」
 先生の言葉にクラスから笑いが飛び交った。穴があったら飛び込んでそのまま埋まりたい気分だ。
 私は静かに席に着いた。
 ――授業の終わりを告げる鐘の音がチャイムで電子音として鳴り響いた。それは、上梨の憂鬱な時間の始まりを意味していた。
 咲本に捕まる前に教室から出て逃げよう。そう思い席を立つと、そこにはもう咲本がいた。
「上梨さん、ちょっと良いかな」
 上梨の顔は恐怖に硬直する。
 そこからは、トイレに連れて行かれて殴られ蹴られるいつもと変わらない内容だった。
 最初は足だけだったけど、だんだんエスカレートしてきて今では顔と腕以外は暴行の対象だ。腕は夏だから目立つという理由だろう。
 いつもなら、トイレには上梨と咲本と佐野の三人だけだが、今日はそこに一匹の狐の幽霊も混ざっていた。
 ムギはトイレの角で静かにこちらを見ていた。咲本達にはどうやら見えないらしい。
 私が殴られると私もよりもムギが痛そうな顔をしていて、なんだかそれがおかしくて笑ってしまった。
「何笑ってるんだテメー」
 口角が上がった佐野からは怒声が飛び、咲本は舌打ちをすると一端トイレから出て行き、ややあって水が入ったバケツを片手に戻ってきた。
 上梨にはそれが意味する事が容易に予想が付いた。
「ちょっと冗談でしょ。止めてよ」
 上梨はあとずさりをするが、そこは狭いトイレだ。すぐに窓際まで追い込まれてしまった。
 咲本がバケツを下から振り水を掛ける。佐野はその隣でチンパンジーのように手を叩いて盛り上がっている。
 なんだかスローモーションで映像を見ているように、すべてがゆっくりに見えた。
 水が飛んできて反射的に顔を右下に背けると、そこには悲しそうな顔をしているムギの姿があった。
 私は咲本達に聞こえない小さな声で、ごめんね、と言うと同時に全身に水を浴びた。
 咲本達は笑い合ったあと声をかけてきた。
「全身ずぶ濡れだけど次の授業どうしようね」
 咲本は私の俯く顔を覗き込んできた。咲本の顔は、目は笑っているが口は閉じ作り笑いのような顔をしていた。いや、おそらく私を小馬鹿にしているのだろう。
 そのまま固まっていると授業を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「私達は行くからバケツ片付けといてね」
 咲本は手に持つバケツを投げ捨てると、佐野と一緒にトイレから出て行った。
 上梨は壁にもたれながら座り込んだ。トイレだけど今更座る事に抵抗はなかった。
 静寂が訪れると上梨の目からは涙が溢れ出て、小さく押さえようと口を抑えるも、泣き声はトイレに虚しく響き渡った。
「泣くほど辛いならどうして闘わないんだ」
 涙を拭き霞む視界を戻すと、隣で静かに憤った。
「闘わないとこの先どうなるかわからないぞ」
「だって、ケンカしたら後で酷いことされるかもしれないし……」
 上梨はしゃがんだまま手を前に回して体操座りのようになった。上梨の前にムギは立ち腰に手を当て叱責した。
「どうなるかわからない未来に何を望んでるんだよ! 確かにもっと酷いことになるかもしれない。でも、闘わないとわからないじゃないか」
 ムギが上梨の肩を持ち顔を近づけ、自然と目と目が近くなる。
「変えるのは未来じゃないんだ。カミナシ、お前が変わるんだよ」
「私が変わる?」
「そうだ。未来はわからないから酷くなるかもしれないし違うかもしれない。それはわからない。ただ、間違いなく変えられるのは自分自身だ」
 上梨は顔を伏せて考え込む。ムギが離れると、もう少しだけ考えてみる、と一言だけ言って立ち上がった。
「ありがとうムギ。私頑張ってみるよ」
「カミナシがいなくなったら俺が困るからな。別に心配してるわけじゃないからな!」
 ムギは私に手を向けながら言い放った。それはどう聞いても照れ隠しのようだった。
 その姿がなんだか可笑しくて、笑える状況ではないのだが、自然と笑みがこぼれ出た。
「ふふっ、そういえば、やっと名前で呼んでくれたね」
「なんのことだ。俺はずっと名前で呼んでたぞ」
 ムギが腕を組み顔を背ける。うっすらと頬が赤くなっているような気がする。
「よし、なんだか元気出てきたから私行ってみるよ」
「アイツら敵意むき出しだから気を付けろよ」
 上梨はムギに手を振りトイレから出た。
 教室に戻ると、もちろん授業はもう始まっていた。
「どうした上梨、ずぶ濡れじゃないか」
 数学の先生は私を見るなり驚き、思わず手に持っていたチョークが折れた。
 すると、教室の真ん中の方で声が聞こえてきた。
「ウチさっきトイレ行ってきたんですけど、上梨さん我慢できずにトイレでお漏らししちゃったみたいです」
 声の方を見ると、やはり咲本だった。咲本は私のほうを見ながら嘲笑しながらさらに一言付け加えた。
「だから、濡れてるそれは、おしっこだと思います」
 その言葉にクラスからはどよめきが起こった。全身濡れているだけに濡れ衣だと言いたいところだが、誰も私の言葉は信じないだろう。発言の信憑性はスキャンダルのある方が受け取られることの方が多い。
 クラスからは笑い声や私を見ながら話す者、全員が私を見ていた。咲本に苛められてる事を知ってても見向きもしないのに、こんなくだらない嘘には敏感に反応を示す。
 何も言い返せない上梨は悔しさに手を強く握り身を翻し廊下に飛び出した。

 あの後、いつもの保健室に行き馬場先生に出されたミルクティーを飲んでいると、担任の先生が体操服を持ってきてくれたので、それを着て放課後まで保健室で過ごした。
 馬場先生には、苛められているのか、誰がやった、といろんな事を聞かれていたが、私は口を開かず黙秘を続けた。
 やはり、報復が怖くて言い出せなかった。
 放課後になり部活も始まる時間になったので、教室には誰もいないだろうと思い鞄を取りに行くと、そこには咲本がまだいた。咲本は佐野と仲良さそうに話し込んでいる。
 上梨は教室の一番奥にある自分の席を見てやり場の無い怒りを覚えた。こんなところで窓際の優良物件のツケを払うことになるとは。
 上梨は息を飲んで教室に一歩踏み込んだ。咲本達の視線が一気に私を捉える。私がアイドルなら注目を浴びて嬉しい限りなのだが、こんな状況なら無視してくれた方が嬉しい。
「上梨じゃん。体大丈夫?」
 咲本はわざとらしく聞いてきた。
「おかげさまで、それより部活行かなくていいの?」
「私達は部活よりも友達の上梨が心配で待ってたんだよ」
 上梨はその言葉を聞いてゾッとした。
 今までは休み時間だけだったが、今日は放課後も私に用があることを示していた。その用の内容は言わずもがなだ。
 上梨は鞄を取らずに走って教室から出た。
 廊下を走って逃げているが、後ろからは咲本達が追いかけてくる足音が聞こえてくる。
 捕まったら終わりだ。だが、佐野は陸上部に入っていて足が速い。
 佐野なら出遅れたハンデももろともせずすぐに追いついて来るだろう。
 階段の中腹の差し掛かかりすぐ後ろに足音が聞こえて、もうダメだ、上梨の中に諦めの心ができると同時に、私の横に黒い影が入り込んだ。
 その影は上梨を追い越して、階段を転がり落ちていった。それは上梨を追いかけてきた佐野だった。
 上梨はその場に立ち止まり振り返ると、階段の踊り場から逃げるように消える麦色の尻尾が見えた。
 まさか……。
 上梨は足を押さえて倒れ込んでいる佐野を脇目に急いで階段を降りた。
 昇降口で靴を履いていると、階段からは咲本の悲鳴が聞こえてきた。
 その声に職員室から先生が飛び出していったが、上梨はそれを一目見ると学校から飛び出した。
 全速力で川が流れる橋を渡り、子供が遊び老夫婦が散歩している公園を抜けて、賀川神社までの道のりを最短距離で走りきった。
 賀川神社に行くための石の階段は何度も躓き転びそうになるが、なんとか登り切り荒い息を吐きながら鳥居をくぐると、そこには何食わぬ顔のムギがいた。
「おかえりカミナシ」
「ムギ、アナタなんてことしてくれたの」
 上梨の顔に焦りの色が見られた。
「私見てたよ。ムギが佐野さんを突き落とすとこ」
 上梨は怒りを顕わにしてムギに問い詰める。
「どうしてあんな事したの?」
「俺は心配でカミナシのこと見てたんだよ。そしたら、アイツら夕方になってもカミナシのこと追いかけて、階段からから突き落とそうとしてたから、逆に俺が突き落としてやったんだよ」
「だからって突き落とすなんて、下手したら死んじゃうんだよ」
 上梨はムギに近づき睨み付けた。すると、ムギからは驚愕の言葉を口にした。
「……あんなの死んじゃえば良いんだよ」
 上梨はムギの言葉に唖然とした。ムギは優しくて努力家で良い子なのに、上梨の中でこれまでのムギのイメージが音を立てて崩れていった。
 上梨の肩が震えて涙が溢れ出てきた。
「ムギの馬鹿!」
 引き留めるムギを差し置いて上梨は走って賀川神社から出て行った。

4.私の敵

 1.

 最後の期末テストが始まって数分、たくさんの問題を目にして早くもやる気をなくしていた。
「あっ」
 名前だけを書いてシャーペンを転がしていたら、勢い余って机から落ちてしまった。シャーペンはプラスチックの軽い音をたてて床に当たった。それでも、教室からは必死にシャーペンを走らせる音だけが充満していた。
 上梨はシャーペンを取る気にもならず机に突っ伏して顔を窓の外に向けた。窓の外は曇り空で、今にも雨が降りそうな厚い雲がかかっていた。
 ムギとケンカして一ヶ月ほどが経った。出会った頃の桜の木は所々まだ花が残っていたが、時間が経つのは早くて今では青い葉しか見ることができない。気付けば夏休み前の期末テストの時期が来てしまった。
 次の日聞いた話だが佐野は左足を骨折していた。命に別状がないのが幸いだが咲本に私が突き落として逃げたと言われ、午前中のトイレの件の仕返しということで私は容疑者のレッテルを貼られることとなった。
 やってない。そう一言だけでも言い返せれば良かったが、私には抵抗する気も起きなかったし、言い返した結果咲本にさらに苛められるという考えが脳裏によぎり、体が萎縮してしまった。
 ただ良かったこともあり、佐野が骨折したおかげでこの一ヶ月は苛められずに済んでいる。咲本は一人では行動できないようだった。
 一ヶ月前の過ぎたことだが思い出すと自然とため息が漏れる。その時、桜の木の下に誰かいることに気が付いた。
 その人は細い身を黒い装束しょうぞくまとい、右手には先端に輪がたくさん付いている錫杖しゃくじょうを持ち、頭がすべて隠れるように深編ふかあかさを被っている。時代劇に出てくる虚無僧こむそうのような姿のいかにも怪しい人物だった。
 普段は人を見ていることは無いのだが校舎の中にいて気が緩んでいたのかもしれない。その虚無僧をなんとなく眺めていると、不意に虚無僧の左手がゆっくり上がり私を指さした。
 その虚無僧の行動に上梨の背筋は鳥肌が立ち、心臓を鷲づかみされたのかのように胸が苦しくなった。
 なんなのあの変な人は。私に用がある?
 時計の針を眺めて気を紛らわせているが、虚無僧はかれこれ十分は同じ姿勢で固まっている。
 絶対普通じゃない。普通じゃ無くて思い付くのはムギしかいない。ケンカしてそのままだしムギが私に嫌がらせとして送った刺客か何かだろうか。
 学校が終わったら抗議しに行ってやる。
 そう息巻いているとテストの終わりを告げる鐘がなり、私のテスト用紙は白紙のままだったが、気にしないでそのまま提出した。どっちみち保健室にいることが大半なので、問題が解けるほど勉強できていないのだ。
 そのあとは掃除をして帰りのホームルームをやって下校になった。
 昇降口に行くとその虚無僧が立っていたが、他の人には見えないのかそこにいないのかのように素通りしていく。
 どうやらムギの線が濃厚のようだ。
 上梨は覚悟を決めて校舎から出た。顔を合わせないように下を向きながら素通りしたが、虚無僧の錫杖が揺れて金色の輪がシャンシャンと鳴る音が付いてきている。
 まだ振り返ると距離はあるけど、その不気味な姿に私はなんだか怖くなって走り出した。
 橋を渡ったとこまでは他の生徒もいたから良かったが、その先になると人通りも少なくなって、公園の中では周りに誰もいなくなった。
 公園の中は夕方のせいか暗い雰囲気で吹く風も冷たく感じた。
 誰かいないの?
 上梨は不安に駆られて右に左と顔を振り人の姿を探しているが、遊具には子供の姿が、グラウンドにはサッカーをする少年の姿が、公園から見えるアパートの二階には洗濯物が干してあるが主婦の姿が、人の影がすべて消えていた。
 なんでこんな時に誰もいないの。走りながら後ろを確認すると虚無僧の距離も縮まっていた。
 恐怖に息が詰まりそうになる。
 賀川神社でも、ムギと登った山でも転ばなかったのに、恐怖に足がもつれて上梨は転んでしまった。私が必死にドジっ子をアピールしてもこの虚無僧には意味をなさないだろう。
 上梨は虚無僧を見ながら後ずさりすると、虚無僧は歩きながら近づいてきて左手を伸ばしてきた。
 あ、もうダメだ。
 時間にしてみれば一瞬のことだったと思うが、私の頭には人生のダイジェストが流れた。
 最初に両親の姿が浮かび次に小学校の楽しい思い出が流れた。中学校は苛められてたけど、最近はまぁまぁ、楽しかったな。あれ、なんで楽しかったんだっけ?
 ふと、人のように二本の足で立つ狐の後ろ姿を思い出した。その狐は器用に二足歩行で歩き人の言葉で話し、怒る時は腰に手を当てて眉を顰める。逆に笑う時は白い犬歯を見せて大きな口を開ける。
 私は目を力いっぱい閉じて大きな声で名前を呼んだ。
「ムギー!」
 次の瞬間、ムギの後ろ姿が私の視界に現れた。
「なんだテメーは、俺のカミナシになにするつもりなんだよ」
 ムギが来てくれたからか安心からかわからないが、自然と涙が溢れて視界がぼやけた。
「ムギー」
 さっきのムギとは違って泣き声混じりの呼び方で、私は情けない声になっていた。
「カミナシ、なんだコイツは」
 ムギは虚無僧から目を離さないようにしながら私に問いかけてきた。
「わからないの。気付いたら学校にいてムギの仕業だと思ってムギのところに行くところだったの」
「俺にはこんな知り合いいないぞ」
 ムギはぶっきらぼうに答えた。
「立てカミナシ。神社まで走るぞ」
 ムギの言葉に立ち上がり、賀川神社までの道を走った。
 振り返るとムギは虚無僧の方を見て牽制けんせいしながら付いてきている。虚無僧は走るというより、ムギと同じく地面の上を滑るように追いかけている。
 ムギと同じ幽霊なのだろうか。
 上梨は階段も駆け上がると鳥居を抜けて社の前の賽銭箱の前にムギと並んで立った。
「ここまでくれば大丈夫のハズだ。神社の敷地の中は聖地だから悪霊の類いは入ってこれない」
「やっぱりあれは悪霊だったの?」
「さぁな。ただ霊力はかなり高いぞ」
 上梨とムギは鳥居の方を向き視線を固定させたまま話していた。鳥居の向こうの階段からは錫杖の音がまだ鳴っていたので目が離せなかったのだ
 虚無僧の深編み笠が見えてきた。
 虚無僧は鳥居の前に立ち止まった。上を見て鳥居を確認している様子だった。
 入ってくるな、と私とムギが固唾を飲んで見守る。しかし、願いは聞き入れられなかった。
 虚無僧はゆっくり鳥居の真ん中をくぐって境内に入ってきた。虚無僧は石畳の上を歩き、私とムギから数メートル離れたところで立ち止まった。
「いやーまいったね」
 ムギは苦笑いをしている。その顔には焦燥が見て取れた。
「おい、お前は何しにここに来たんだ?」
 ムギが虚無僧に問いかける。だが、虚無僧からは返事は無い。
 お互い硬直状態が続いていたが、その均衡を破ったのは虚無僧の方だった。
 今まで虚無僧は動きがゆっくりだったが、ここに来ていきなり移動速度が上がり一気に上梨の前に立つと、右手に持つ錫杖を振り落としてきた。
 上梨はとっさの事に反応できず、その杖が頭上に降りてくるのをただただ眺めていた。
「あぶねぇ!」
 ムギが大きな声を出して上梨を突き飛ばした。地面に転んでしまったがそのおかげで錫杖を避けることができた。
「いったいなんなの――」
 次の瞬間、上梨の視界には衝撃的な映像が流れ込んだ。私を庇ってくれたムギが杖に薙ぎ飛ばされたのだ。
 上梨はすぐに立ち上がりムギを抱えると、裏山に逃げ込んだ。
 虚無僧にとっては時間稼ぎにはならないかもしれないが、上梨は右往左往しながら精一杯見つからないように逃げた。
 木陰に隠れて座り込むと、ムギの状態を見た。だけど、幽霊のせいか血も打撲の痕も無いから、痛いのか辛いのかが全くわからない。
「大丈夫?」
「あぁ、なんとかな」
 ムギは私から離れると首を曲げてポキポキと鳴らした。
 ムギはどこか遠くを見てから一息つくと、私に突然の別れを告げた。
「カミナシ、お前とはこれでお別れだ。俺がここはなんとかするからお前は逃げろ」
「えっ……、ちょっと何を言ってるの」
「これは俺と関わっちまったから起きた問題だ。俺と関わっていなければカミナシは平和に過ごせていたハズだ。言っちまえばこれは俺の責任だ」
 私にはムギの言っている言葉が理解できなかった。
「私はムギのせいだなんて思ってないよ。こんな別れ方なんて嫌だよ。ずっと一緒にいてよ」
 私の目からは涙が溢れ出た。
「悪いな。俺は弱いからお前を守れそうにない。多分ここに二度と近づかなければ奴は現れないだろう」
「そんな確証ないじゃない」
「無いけど、俺のほうがこっちの経験は長いんだぜ。おっと、奴が来やがったな」
 草木が揺れて虚無僧の居場所を知らせる錫杖の音が近づいてきた。
「じゃあ、俺が囮になって上の丘に行くから、少ししたら山を下って帰れよ。少しの間だったけど楽しかったぜ」
 ムギはそう言うと、わざと目立つ為にかけ声を出して上に登っていった。
 上梨は右手を出してムギを捕まえようとしたが、右手は空を切りムギに触れることは叶わなかった。
 しばらく上梨はうずくまり泣きじゃくっていたが、このままここにいたのではムギの行動が無駄になってしまう。そう思った上梨は涙を拭き立ち上がり山を下り始めた。
 転ばないように一歩一歩しっかり踏みしめ、草木をかき分けて下った。
 小道から出て社の前に立つと、ムギと過ごした思い出が溢れだしてきた。
 ムギと初めて会った社。ムギと過ごした裏山。ムギの為に綺麗にしてる境内。すべてムギがいないと始まらなかった思い出だ。
 上梨は裏山を振り返り見上げた。
 ムギを助けに行かなくちゃ。
 言葉と裏腹に足が竦んで動かない。あの虚無僧の前にまた自分から行くのだから当然のことか。上梨は自分の足を叩いて気合いを入れた。まだ震えが止まらないけど、早くしないとムギが死んじゃう。上梨はもう一度裏山に駆け込んだ。
 途中で転んで足を切って膝から血を流しても、枝に顔を引っ掛けて擦り傷を作っても気にしないで走った。すべてはムギの為に。
 賀川町を見渡せるムギの特等席の丘に着くと、虚無僧に首根っこを掴まれたムギが視界に入ってきた。
 上梨は走ったまま虚無僧に殴りかかった。
 虚無僧は私に殴られる寸前で避けてムギを離した。
「バカヤロー、なんで戻ってきた!」
 ムギは私に激昂した。
「あの時ムギは私を守りたかったんだよね」
 上梨は一ヶ月前の階段の件を思い出しながら話した。
「ごめんね気付けなくて。でも、今はあの時のムギと同じで誰かを傷付けても私はムギを守りたい」
 ムギは目を見開きただ黙って聞いていた。
「私はムギを守る。だから、ムギは私を守って」
 上梨はムギだけを見て話した。
「私なんでもするから!」
 私は自分の胸を叩いて言い切った。
「へっ、そりゃ助かる。ちょうど体が欲しいと思ってたんだ。怪我するかもしれないし嫌な思いもするかもしれなけど、一撃で必ず決めるからカミナシの体借りても良いか?」
 ムギは臆することなく聞いてきた。私の返事はもちろん決まってる。
「うん」
 上梨は笑顔で答えた。
 ムギはゆっくり上梨に歩み寄ると、そのまま上梨の体の中に溶けて混じり合うように入っていった。
 上梨の頭からは耳が二つ生えて、お尻からは尻尾が生えてきた。ムギの特徴を受け継いだその体は嘘のように軽く、触れ合うよりもずっと近くにムギを感じられた。
 上梨と虚無僧は対峙している。その距離は十メートルほど。上梨が身構えると虚無僧も錫杖を出し身構えた。
「これが本当の狐憑きってやつさ」
 上梨の口を使いムギが言葉は発していた。その説明的な台詞は、虚無僧に向けられたものなのか、それとも上梨に向けられたものかはムギにしかわからなかった。
 冷たい風が吹き綺麗な夕焼けが降り注いだ。太陽の光が虚無僧の顔にかかった瞬間に勝負は動いた。
「行くぞカミナシ」
 ムギの声が聞こえて上梨は心も体もムギに預けた。
 次の刹那、上梨の体は人間の瞬発力を超えてわずか左足の一歩で虚無僧との距離を詰める。驚いた虚無僧は錫杖を振りかざした。
「はぁっ!」
 そのままの勢いで虚無僧の右手を殴り、錫杖もろとも虚無僧の右手を折った。
 虚無僧は左手で右手を抑えて、上梨は数歩後ろに下がり虚無僧との距離を計った。
 上梨の体が小刻みに震え始めた。非常に短い時間だがムギとの融合に限界が訪れたのだ。
 ムギが上梨の中から抜けると、耳も尻尾も消えて無くなった。すると、瞬く間に激痛に襲われた上梨は倒れ込んだ。
 距離を詰める一歩で左足が壊れ、虚無僧を殴った右手は砕けて血が出ていた。
 あまりの激痛に意識が朦朧としてくる。
 霞む視界の中虚無僧が立ち上がりこちらに寄ってくる。
「ごめんなカミナシ、一撃で決められなかった」
 ムギは一言謝ると私の前に立ち大きく手を広げた。こんな時だが最後まで私を守ってくれてたムギには感謝の気持ちでいっぱいだった。
 虚無僧とムギの距離は目と鼻の先になる。
「ちょっとどいてくれる」
 初めて虚無僧は声を発した。その声は若い女性を連想させる声だった。
 虚無僧が一瞬消えたかと思うとムギを通り過ぎて上梨の隣にいた。ムギは反応できずに立ち尽くしている。そして、虚無僧は左手を上梨にかざすと、私の体が光り始めた。
「テメーなにしやがる!」
 ムギは振り向きざまに虚無僧に殴りかかったが、その時にはもう虚無僧と上梨達には十分な間合いができていた。ムギが虚無僧に向かって行くのを上梨は引き留めた。
「待ってムギ。私の傷が治ってる」
 光が消えた上梨の体は右手と左足はおろか、膝の切り傷や顔の擦り傷も治っていた。
 ムギは上梨を見て一驚していると、虚無僧が深編み笠を取り始めた。
「いやーごめんね。怪我させるつもりは無かったんだけどさ。予想以上にアナタ達強くて」
 深編み笠を取った虚無僧は若い女性だった。小さく綺麗な顔立ちをしている女性は二十台後半ぐらいだろうか。しかし、上梨とは違うものがあった。それは、さっきの狐憑きのように、頭から二本の耳とお尻からは尻尾が出ていたのだ。
「まさかアンタは……」
 ムギの顔に緊張が走る。
「私? 私は宇迦之御魂神。名前は長いからウカ様って呼んでね」
 一瞬間があってからムギと上梨は叫んだ。
「えー! どういうこと」
「今日はそこのムギちゃんが賀川神社の神様に相応しいか試験をしに来たの。本来神様になるためには人間のパートナーが欲しい決まりなのよ。そのパートナーは上梨さん、アナタね」
 ウカ様はどんどん説明を続けている。
「このパートナーとの関係は平等でなくてはならない。どちらかが威張ってるようじゃパートナーとは言えないわ。今回はお互いの関係性と困難に打ち勝つ力を見させて貰ったわ」
 ウカ様は左手を自分の右手にかざし、上梨の傷を癒やしたように自分の傷を癒やしながら話す。
「もちろん合格よ。今日は合格した褒美にムギちゃんには神官装束をあげるね」
 ウカ様がムギに両手を差し出すように言うと、ムギはそれに従い両手を出した。すると、ムギの両手が光り折り畳まれた紺色の神官装束と長いしゃく立烏帽子たてえぼしが現れた。
 ムギの目が輝き口角が上がる。あの表情を見れば、あの神官装束にどんだけの価値があるのかは容易にわかる。
 上梨は立ち上がりウカ様に近寄りお礼を言った。
「ありがとうございますウカ様」
「いや、怪我させたのはウチのせいだし」
「そうじゃなくて、ムギの頑張りを認めて貰って神様にしてくれたことです」
 キョトンとした顔でウカ様は上梨を見ると、口元を抑えて笑い出した。
「あはは、上梨さんは面白い子だね。ムギちゃんの頑張りはずっと見てたよ。ムギちゃんは二百年以上頑張ってたけどパートナーに恵まれなかっただけだからね」
「に、二百年……」
 上梨はムギを見て衝撃の事実に困惑する。子供みたいに飛び跳ねているのにお爺ちゃんよりもずっとお爺ちゃん。
「それじゃウチはもう行くね」
 ウカ様の体が空に浮きどんどん体が透き通っていく。
「それと上梨さん。アナタは自分の敵である恐怖心に勝ちここまで来ました。アナタなら現状を打破できると思いますよ」
 ウカ様の言葉に思い当たる節がある。上梨はウカ様の目を見て力強く頷いた。
 上梨とムギはウカ様を見上げながら再度お礼を言った。
「ありがとうウカ様。これからも神様として頑張るよ」
 ムギは笑顔でウカ様に手を振っていた。
 ウカ様は笑顔で手を振り返すと完全に姿は消えて無くなった。
 あたりはもう暗くなっていて一気に静寂が訪れた。
「なんだか狐に化かされた気分だね」
「化かされてあってたまるか」
 上梨の言葉にムギは袴を抱きしめながら応えた。
 上梨はウカ様の最後の言葉を胸に抱きしめながら覚悟を決めた。
 大丈夫。ウカ様の言うとおり私の敵はもう倒したんだから――

 2.

 体操服姿の上梨は今、賀川中学校の体育館裏にいる。
 体育館に入る一段だけの階段に腰をかけて顔をあげる。絶好のお昼寝日和の青い空には、綿菓子のような白い雲が流れている。お昼ご飯はあえて少なくしたから、この雲がとても美味しそうに見えてくる。
 左から二人の足音が近づいてきたのに気づき、その方に顔を向けた。
「アナタ佐野をここに呼び出してどうするつもりだったの?」
 そこには上梨とは違い制服姿の咲本と佐野の姿があった。咲本は腕を組み咲本を鋭い眼光で睨み付け、佐野は咲本の後ろに隠れるように立っていた。
 今朝佐野の下駄箱の中に、お昼の休み時間に体育館裏に来るように手紙を入れておいた。端から見ればそれは果たし状だし、私はそのつもりで入れたのだ。
「咲本さん達は良い子でいたいんだよね。だから、今回までは私が悪い子になってあげる」
 咲本と佐野は私の言葉の意味が理解できずに怪訝そうな顔を浮かべている。
「だって咲本さんを呼んだら佐野さんも付いてこなくちゃならなくて、松葉杖が取れたばかりの佐野さんが可哀想じゃん。でも、逆に佐野さんを呼べば咲本さんは佐野さんを守る形で一緒にここに来れる」
 上梨は咲本に指をさして言い放った。
「私が本当に用があるのはアナタ、咲本さんだよ」
 咲本の顔が引き攣る。
「なに、私とケンカするつもり?」
 咲本の声はうわずっている。私は深呼吸をすると一言だけ返した。
「そうだよ」
 言い切ると同時に上梨は走り出して咲本の左肩を右手で思いっきり殴った。咲本の顔は苦痛に歪み後ろに後ずさった。
「ケンカしやすいように私から手出してあげたんだから、ほら、早く来なさいよ」
「……アナタ本当に上梨?」
 咲本は一筋の汗を頬に伝わせながら上梨に問いかけた。
 私はムギと一緒にウカ様に立ち向かい、闘い困難を乗り越えることだけで手に入れることができる未来があることを知った。ウカ様は恐怖に勝ったと言っていたが、だからと言って恐怖が消えることはない。本当は今にも逃げ出したいくらい怖いけど、私は楽しい未来を手に入れるために、今怖い思いをすることを選んだ。
「なに言ってるの咲本さん。私は私だよ」
 もちろん、今の私はムギの力は借りていない。ムギの力を借りて闘っても、それでは何の意味も無いのだ。自分の力で闘うことに真の意味があることにも、私はしっかり理解はできている。
「私を苛めてて自分はやられる覚悟が無いなんて言わせない。そっちが来ないなら、私から行くよ」
 上梨はまた距離を詰めて咲本に殴りかかる。足を蹴り腹を殴ったとこで咲本が吠えた。
「調子に乗ってんじゃねーぞ上梨!」
 その声に合わせるように咲本の反撃が始まった。
 咲本の拳が私の顔を捉えて視界が揺らいだ。数歩下がると口の中に違和感を覚えて手に異物を出す。それは、歯だった。
 そこからは私も頭に血が上り咲本に殴りかかった。お互いに殴り殴られ顔を腫らし、取っ組み合い地面に転がったり、素人丸出しの泥仕合のような展開になった。そんなケンカでも興奮する観客もいるようで、佐野はずっと咲本の応援をしていた。
 しばらく経ってお互いに距離を取った。衣服は乱れ髪もぼさぼさしている。気付けば咲本のツインテールは片方だけ解けてサイドテールになっていた。
 上梨は肩で息をしているのを整えながら、そこで今までの疑問を投げかけた。
「……なんで私を苛めるの?」
 その問いに咲本は唇を噛み締め私を睨んだ。
「アナタが――したからよ」
「え? 今なんて」
 私は聞き取れずもう一度聞き直した。頭を殴られているせいで耳鳴りが酷くて、大きな声じゃないと聞き取れないのだ。
「だから、アナタが羽生君はにゅうくんの告白を断ったからよ」
 咲本の言葉に少し前の記憶が蘇った。
 中一の冬に同級生の羽生隼人に告白されたのだ。私は別になんとも思って見てなかったから驚いたものの、丁重に告白を断ったのだ。彼は確か咲本と同じバスケ部――。
 そこではっとして咲本を見直した。
「そうよ。私は羽生君が好きだったの。でも羽生君はアナタが好きだって知ってたから私は身を引いたの。なのにアナタは」
 咲本の握り締めている拳が震えている。
「アナタは知らないでしょう。あの後に羽生君が泣いていたのを、羽生君がどんだけ辛い思いをしたのかを。だから、私はアナタに同じ辛さを味合わせようと思った」
 上梨は驚愕した。ずっと私が咲本に悪いことをしてしまい、それで苛められていると思っていたのに、原因は違うところにあり咲本の身勝手な理由だったなんて。
「そんなことで……」
「そんなことですって」
 上梨の一言が咲本の逆鱗に触れたようで、咲本は口を噛みしめると飛びかかってきた。
 咲本の拳が私の脇腹を捉えて、上梨は立っていられなくなり膝を付いた。
「私の勝ちみたいね」
 咲本は勝ち誇った顔で上梨を見下ろしていた。上梨は咲本のお門違いな言葉に自然と笑いがこみ上げてきた。
「なにが可笑しい」
「だって勝ち負けって。私はやられた分をやり返してるだけで、勝ち負けはどうでも良いよ。ただ、私を苛めるとまたこうしてケンカすることになるって思ってくれれば良いかな」
 上梨の言葉に咲本の顔が厳しいものになり、膝を付く上梨に咲本は足を振り下ろしてきた。
 咲本の足は上梨の肩を捉えたが、上梨はそれを両手で捕まえた。咲本は、離せ、と身をばたつかせている。
「やぁ!」
 上梨は痛い脇腹に気合いを入れてそのまま立ち上がった。すると、足を持たれたままの咲本は為す術無く地面に倒れ込んだ。
 そこからは上梨の独擅場どくせんじょうだった。咲本に馬乗りになると顔を殴り続けた。数発殴ったところで咲本が動かなくなったので、上梨は咲本から降りて、咲本を見て立ち尽くしている佐野の前に行った。佐野の顔が強張った。
「佐野さんもよくもやってくれたね」
 そこまでは笑顔で言って、途中で眉を眉間に寄せ咲本をチラッと見てから、佐野を睨み言った。
「あんまり度が過ぎると佐野さん、アナタもやっちゃうよ?」
 佐野は咲本の言葉に息が詰まると、振り返り走って逃げて行った。
「ちょっ……、もう、咲本さんを連れてってよ。ていうか、もう走れたのね」
 上梨はの咲本に近寄ると頬と軽く叩いた。ダメだ。完全に意識を失っている。
「このままにするのは可哀想だよね」
 上梨は咲本の肩を持ち立たせると、そのまま肩を貸して歩いた。
 意識を取り戻した咲本が小さい声で言った。
「覚えてなさいよ。絶対仕返しするから」
「その時はまたやり返すから」
 私は笑顔で返した。
「咲本さんは可愛いんだから、私に構う時間をもっと自分の為に使ったほうが良いと思うよ。私を苛めてても羽生君は振り向いてくれないよ」
 ややあって、咲本から返事が無いので咲本の方を見ると、咲本を唇を噛み締めながら静かに涙を流していた。その涙は負けて悔しいからなのか、それとも羽生君を思い出して悲しいからなのかは、私にはわからなかった。ただ、一言、ごめん、とだけ謝っておいた。
 人目を避けてなんとか保健室に着いた。扉を開けると保健の馬場先生が目を大きくしながら近寄ってきた。
「いったいどうしたの」
「咲本さんとケンカしました」
 上梨は目を逸らせることなく、馬場先生の目をまっすぐ見据えて話した。
「私から咲本さんにふっかけてケンカになりました。でも、悪いことをしたとは思ってません」
 馬場先生は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しい顔になり目を閉じると、そう、と一言だけ答えた。

4.エピローグ

 あのあと、上梨と咲本は病院に運ばれて精密検査を受けた。咲本は鼻を骨折していて、上梨は肋骨にヒビが入っていた。思い当たる節はおおいにある。
 病院に連れて行かれる馬場先生の車の中で、私が苛められている事を知っていたと、そう告げられた。ただ生徒の問題に先生が首を突っ込むのはタイミングが難しいらしく、できるだけ現行犯で咲本を捕まえたかったようだ。
 そのこともあり、ケンカの事は指導しなくてはならないが、大事にはならないように取り計らうと言われた。
 上梨は病院で処置を受けたあと、そのまま家に帰されたが、いてもたってもいられなくて家から飛び出した。行き先はもちろんムギのところだ。
 上梨は痛む脇腹を押さえながら賀川神社の道のりを走った。
 階段の脇には狛犬の代わりに狐の置物。その置物の間を通り石の階段を一段一段踏みしめながら登っていく。この一段一段には思い出が詰まっている気がする。
 階段を登り赤い鳥居の前に立つ。
 大きく息を吸って吐き、一間あってから鳥居をゆっくりくぐった。
 左右を見ると少しずつ伸びている雑草が目に入る。ずっと草むしりしてなかったから、また抜かなくちゃ。
 顔を正面に据えると、最初の頃と変わらないボロボロの社があった。
 この社で寝ちゃったからムギと会えて、いろんなことを経験して、そして、ムギは夢を叶えて私は困難を乗り越えることができた。思いにふけっていると、聞き慣れた子供っぽい高い声が後ろから聞こえてきた。
「よう、カミナシ」
 私がその声に振り向くと、ムギは目をぎょっとさせた。
「どうしたんだその顔は」
 私の顔は咲本とのケンカで絆創膏だらけになっているのだ。そのことを忘れていた。
「私あの子とケンカしたんだ」
 上梨は自分の顔を指さしながら満面の笑顔で答える。
「そうか。あとは大丈夫そうだな」
 ムギは微笑しながら返した。
「うん。あっ、早速着たんだね」
 ムギは昨日ウカ様に貰った紺色の神官装束を身に纏い、頭には立烏帽子を乗せて手には笏を持っていた。
「似合うかな」
 ムギは両手を広げると、紺色の袖を振り回り出した。
「格好いいよムギ」
「そうかな」
 ムギは頭をかき頬を赤らめながら照れている。
「そうだ。お祝いしないとね」
 私は両手を叩くと、思い出したように言った。
「それなら宴は人数が多い方が楽しいから、夜からやろうぜ」
 上梨は少し考えてから返事をした。
「ケンカしてその日の夜も出歩くって、私不良かな?」
 上梨はムギに問いかけた。
「不良っていうのはよくわからないけど、カミナシは俺の大切な相棒だぞ」
 ムギが面と向かって言うと、上梨は頬を桜色に染めた。
「よし、そう決まれば早く行こうぜ」
 ムギは上梨の手を引き走りだした。上梨はムギに引っ張られ転びそうになるが立て直した。
 ムギの手は小さいが力強く、私にたくさんの力を与えてくれる気がした。
 上梨とムギは丘を目指し、社の裏のいつもの小道を笑顔で登り出した。
たてばん L2TtHY/jcg

2016年04月11日(月)22時43分 公開
■この作品の著作権はたてばんさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
使用した神話:日本神話
使用した神様:宇迦之御魂神
作者コメント:一年ぶりの執筆と一年ぶりの企画参加に熱が入り、規定枚数を大幅に超えてしまいましたが、削りまくってなんとか規定内に収めることができました。
 この物語は、何事も頑張るから良いことがある、そういう想いを込めて書き上げました。
 気軽に読んでください
 最後に、辛口感想を希望します。

2016年06月01日(水)23時48分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 茉莉花さん
 読んでいただきありがとうございます。

★一人称と三人称がまざっていること

☆読みづらくなってしまいすみませんでした。一人称の文章に自信が持てなく書き直した結果、あのような中途半端な人称の文章になってしまいました。

★一つの文章に複数の目線や複数の行動が入っていること

☆指摘されるまで全然気にもしてませんでした。
 細かい場所も気を付けるように心掛けます。

★>なぜ三十段で神社を建てなかったのだろうか
なぜ具体的な数字を出したんでしょう?

☆特に理由はありませんが、そのぐらいなら学校の校舎と同じぐらいかと思ったので、その数字にしました。

★>神社は誰も手入れをしていないようで、石畳の間からは雑草が自由に伸びている
ん?
>百段ある石の階段を上がらなくてはならないのは地元では有名
なんですよね?
管理する人がいてもいい気はしますが?

☆百段ある階段を上がる神社の存在が有名なのと、その神社が繁栄しているかは別問題と考えてください。
 有名な会社が倒産するのと同じで、有名だけど朽ち果てている感じです。

★>私が今来た鳥居の向こうでは夕日が落ちて空は漆黒の闇に変わろうとしている
うむむ……三時に早退して、石段を上がって、日没ですか??
梅雨入り前(六月上旬)の日没時刻は18:55ですが、神社の100段の石段を上がっただけで4時間経ったということですか?

☆日没に関しては自分の調査不足です。
 ウィキペディアで梅雨を調べたところ『五月~……』と書いてあったので、執筆当時の日没を描写してました。

★>情熱的な夕日とは真逆の冷たい風が上梨の体を徐々に冷やし、悩んだ末誘惑に負けた上梨は少しでも暖を取るために社の中に入ることにした。
ん??
展開のために必要なのだとは思いますが、日没も過ぎているんだから家に帰っても怪しまれない時刻だと思いますよ?
時間つぶしのために神社に寄ったんですよね?
もう少し何か、入らなければならない理由か、帰りたくない理由を付け加えるといいのかなと思いました。

☆上梨は咲本に顔面を殴られていたため帰るのを躊躇っていた。
 削る前の一章には描写があったのですが、一章をプロローグに変えたので付け加えるのを忘れていました。

★>ここは神社なのになぜ神様はいなくて私を起こしてくれないのだろうか
ここの前に「たぶん私の願いは聞き入れられないだろう。だって本当に神様がいたら私は今頃幸せな生活を送っているもの」と、神を信じていない発言がありますが、「私」は神を信じているのですか? いないんですか?

☆自分に都合のいい存在は信じています。

★>上梨が着いた足が床を軋ませ、歯ぎしりのような音が盛大に聞こえてきた
うーん……読みにくい。
これ、「上梨が着いた」を削ったほうがずぱっと見えると思いますよ。
あと、係り受けが微妙にミスしている気も……?
「盛大に聞こえてきた」という受け身ではなく、「盛大に鳴った」だと思いますがどうでしょう?
今のままだと「足が床を軋ませ音が聞こえてきた」という流れなので「足が床を軋ませ音が鳴った」のほうが分かりやすいはず。(凝るのであれば「足が床を軋ませ悲鳴を上げた」とか、改変レベルになりますが「床が歯ぎしりのような苦鳴をあげた」とか。さらにいわせてもらうと、ここで暗喩の「ようだ」を使わず「床が苦鳴をあげた」まで削るとか……)

☆もともと一人称で書いていたので『聞こえてきた』という受け身で書きました。
 鳴ったや悲鳴のほうがスッキリしていて読みやすいですね。

★>壁の方を向きながら頭を抱えてうずこまった
うずこまる……方言の可能性がありますね。

☆これって方言だったのですね。
 全然知りませんでした。

★>狐は眉を竦めて上梨のことを変な目で見てくる
眉を竦める?
オリジナルの表現でしょうか?

☆竦めると顰めるを間違えました。

★>「学校の体操服なんて着てどうしたの? なんか部活でも入ったの?」
ふむ?
休日か何かの設定ですか?
(見落としでしたら申し訳ないです)

☆一応休日というワードは出していたのですが、気付かれないなら書いていないのと同じですね。
 母親との会話があるので、そこで『今日は学校は休みなのに、体操服なんて着てどうしたの?』と、説明混じりの会話をすれば良かったですね。

★>本来神様になるためには人間のパートナーが欲しい決まりなのよ。そのパートナーは上梨さん、アナタね
うむむ……。唐突。
結局ムギが行っていた作物を配布するという行為は意味がなかったんですか?

☆配布自体には意味はありませんが、ウカ様に発見されやすくなるというメリットがあります。
 本当は意味を持たせてもっと書きたかったのですが、枚数オーバーで無理でした。

 たくさんの指摘ありがとうございました。
 次はここまで指摘されないように気を付けながら執筆します。

 次も間違えばかりでしたら、厳しい批評をよろしくお願いします。
 感想ありがとうございました!
 

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2016年06月01日(水)20時53分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 99kgさん
 読んでいただきありがとうございます。

★憑り殺すならまだしも妖怪幽霊から毒を渡されるというのも不自然な。普通は自分もそっちの世界に行ってしまわないか? という心配でしょうか。それも毒と言えばそうなんですけど「はい、毒です」という返答になるはずもない。
用心しない事は落ちぶれる事でせうか。
若干「?」と感じる所は主人公の感性だと言ってしまえばそれまでなのですが、やはり感性の違いを感じてしまうと主人公と心が離れてしまいますからね。

☆確かに幽霊から毒を渡されるなんて聞きませんね。指摘されて気付きました。

★やはりこの後は狐と合体して悪と戦う変身ヒーローになるんでしょうか。

☆次は狸の悪霊と戦って――、となる予定はありません。
 この物語はここで終わりなのでこの先は特に考えていません。
 変身ヒーローも良いのですが、シリーズ物が苦手で物語の先が考えられないのです。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年06月01日(水)20時44分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 つとむューさん
 読んでいただきありがとうございます。

★ムギは狐の霊なので、咲本達には見えない、ということは理解できるのですが、
それならば、なぜ突き落とすことができるのだろう? と思ってしまいます。
この辺り、もう少し設定に関する説明があっても良かったのではと思います。
上記の虚無僧の件も、虚無僧が人であるならば、ムギが上梨の体を借りることは納得できるのですが、
実は虚無僧は人ではなかったという結末だったので、
それならば上梨の方がムギに乗り移って戦うべきだったのはないかと思わなくもありません。

☆『ムギは触りたい物には触れるが、基本的に物体は透ける』という設定があり、上梨と山を登った時にその説明をしたかったのですが、枚数オーバーで説明したストーリーごと削ってしまいました。
 虚無僧はあくまでムギの敵なので、ムギをメインにした戦い方にしました。

★上梨がイジメを受けていた理由は、個人的には少し納得がいきませんでした。
上梨が受けるイジメは、学校中でうわさになるほどの内容だと思います。
それならば、羽入君が助けようとするのではないでしょうか?
これまでストーリーに全く関わりの無かった羽生君がイジメの原因と突然言われて、
完全に置いてきぼりを食らってしまいました。
やはり、序盤から伏線として、羽入君は登場させておくべきだったと、個人的には思います。

☆羽生君を最初から登場させて、上梨とのぎこちない描写を入れて伏線にするべきでした。

★人称ですが、どう見ても一人称っぽいのに、「私」ではなく「上梨」と書いてあって、
とても読みにくかったです。
「上梨」を「私」に変えるだけで、各段に読みやすくなると思います。

☆最初は一人称で書いていたのですが、一人称の文章に自信が持てなくて『私』を『上梨』に書き換えたので、中途半端な人称の文章になってしまいました。

★枚数ですが、ルール上50枚までのところを70枚になってしまっています。
この対策としては、内容を削るのではなく、プロットから立て直しをするべきだったと
個人的には思います。

☆自分もこれはプロットから立て直しするべきだと反省してます。
 今まで一万文字前後しか書いたことがなく、まさかここまで文字数が行くとは思ってませんでした。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年06月01日(水)20時30分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 いりえミトさん
 読んでいただきありがとうございます。

★物語中盤から後半にかけて、設定が唐突に登場したと感じるところがいくつかありました。
 「人間のパートナー」のくだりや、咲本たちが上梨をいじめている理由となった羽生君などです。
 そのあたりは、序盤で伏線があるとよかったのではと思います。

☆羽生君やウカ様を事前に登場させて物語に絡ませるべきでした。
 これだとご都合主義に見えますね。

★文章面で、一人称と三人称が混用されているのも気になりました。
 三人称に少しだけ一人称を挟む手法はプロの作品でも見られますが、本作の場合そういう手法とは違い、三人称になったり一人称になったりという感じだったので、人称はどちらかに統一した方がよかったのではと思います。

☆最初は一人称で書いていたのですが、一人称の文章に自信が持てなく三人称に書き換えました。
 そのせいで中途半端な人称の文章になってしまいました。
 次回はその点に気を付けます。

 感想ありがとうございました!
 

nice206
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2016年06月01日(水)20時10分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 たかセカンドさん
 読んでいただきありがとうございます。

★ラストの咲本達との対決のシーンですが、妙に綺麗? に終わってしまったなぁ。という印象を抱きました。
負傷具合は壮絶ですが……。
二人とも欲求不満が溜まっているのなら、もっと汚い言葉で罵って、ぼろぼろのぐっちゃぐちゃな喧嘩をしても良いのかな? とは思いました。たとえ女の子だとしてもです。

☆この喧嘩のやり方は、どちらかと言うと男の喧嘩に近かったですね。
 女の子同士なので、言い合いを入れたほうがしっくり来ましたね。
 この喧嘩はここで終わりだと思い書いたので、綺麗に締めてしまいました。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月29日(日)21時20分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 たぬきさん
 読んでいただきありがとうございます。

★統一性がある方が良い話だったのではないかと思います。
 彼女が美化活動やムギの手助けをしていく中で学んだこと(心身ともに鍛えられたこと)が、後にいじめを解決していく手助けになる、という話が欲しかったのかもしれません。
 そうなっていたような気もしますが、途中でバトルに突入したのでなんだか序盤のしっとりとした雰囲気が熱血になってしまって気が散ってしまったのかもしれません。

☆やられたらやり返す、という個人的な思想が反映してバトル物に変わってしまいました。
 この雰囲気ならバトル要素は要らなかったですね。

★ 主人公が突き落とされそうになったところで、ムギが逆に相手を突くシーンがありました。その後二人は仲違いしますが、その際のセリフがすこし強い気がします。「あんなの死んじゃえばいい」とサラッと言えるような者が神に選ばれて大成するのも物語としては違和感がありました。
 「自分がしようとしたことの報いを受けた」など、柔らかな言い回しの方が好みかもしれません。
 主人公自身も「自分が何もしなかったことの報いを受けてきた」と、これまでの言い出せない自分を振り返る材料にもなりますし。

☆言い回しが直球過ぎました。
 同じ意味合いでも言い方を変えるべきでした。

★ そしてその直後くらいに虚無僧とのバトルが始まりますが、そこまでに心の整理をする“間”が欲しかったかなと、個人的には思います

☆モヤモヤしている時に事件が起きた方が仲直りさせやすいと思い、すぐにバトルに移りました。
 日常の描写でも良いので間を入れた方が良かったですね。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月29日(日)21時01分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 wさん
 読んでいただきありがとうございます。

★今でこそ投稿サイトだけならピクシブもあるしなろうもあるしカクヨムもオープンしたのですが、どうしてもそちらの方は褒めるだけのご贈答用の感想になってしまいます。そんな中で、面白いなら面白い、つまらないならつまらないと率直な感想をもらえるラ研企画のような場は貴重なものです。
シャッフル制のような良い方向への変化は大歓迎ですが、持ち点制のような衰退を招く魔改造は勘弁してほしいです。
ということで、いつも通りではあるのですが、真剣勝負で感想を書かせていただきます。

☆Wさんの言うとおり、率直な感想がもらえるラ研企画のような場所が好きで、今回参加させていただきました。
 持ち点制は前回の冬企画でしたっけ? 仕事が繁忙期で書く暇がないので参加は見送りましたが持ち点制の魔改造の話は耳にしました。いまだに持ち点制の意味がわかりません。

★引用したところを見れば分かりますが、まずそもそも一人称なのか三人称なのか、ブレています。今回の企画で人称ブレなんてものを起こしている作品は、本作だけだったのではないでしょうか。
本作品は、基本的に三人称で、ところどころ一人称が混ざってしまった、という形のようですが、読んでみた限りでは、一人称の方がふさわしい作品だったと思います。人称選択の時点で間違っている。

☆最初は一人称で書き終えたのですが、一人称の書き方に自信が持てなく『私』を『上梨』に書き換えて、上梨の気持ちの場所だけ『私』にしてあるのでブレてしまいました。
 最初から書き直さないほうが良かったですね。

★作中の細かいことも、設定が後出しというか、その時になって必要な設定を後から付け加えていると感じる場所がいくつかありました。

☆指摘された場所は全て後付けです。
 その設定を生かした話を作れれば良かったのですが、そこまで気が回りませんでした。
 次はそのことに気を付けて話を作ります。

 真剣で曲がらない感想身に沁みました。
 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月29日(日)20時38分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 七月鉄管ビールさん
 読んでいただきありがとうございます。

★神社の草むしりの場面。
 状況は違いますが神社の草むしりの場面を書こうとして駄目で断念したことがあります。
「これは俺が書きたかったなあ」
 などと羨望しつつ、ここ良いなあ、と思っております。

☆自分は夏に結構草むしりしてるんで、このシーンは書きやすかったです。
 羨望だなんて……、ありがとうございます。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月29日(日)20時33分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 キーゼルバッハさん
 読んでいただきありがとうございます。

 細かく分析された感想をありがとうございます。
 自分で作ったプロットよりも緻密で凄いです。

★地の文において基本的に三人称で書かれていますが、時に一人称
 にもなっていたりして、読んでいて混乱してしまう場面が多々ありました。
 また、物語の展開においても、特に終盤の宇迦之御魂神が出てくる場面が
 ありますが、伏線もあまりなく、突然のことでしたので、少々ご都合主義
 のように感じてしまいました。

☆最初は一人称で書いていたのですが、自信がなく三人称に書き直したため、中途半端な人称の書き方になってしまいました。
 枚数を削る前は中盤にウカ様が出てくるのですが、そこを削ってしまったのでご都合主義が目立ってしまいました。
 別の場所を削ったほうが良かったですね。

★世界観に関しては、現代の日本を舞台に日本神話に登場する、神や霊が
 存在するという世界観で、いじめという問題を背景にちょっと不思議な
 存在に導かれるという、ありそうな現実という感じで面白かったです。
 ただ、こういった世界観はありふれているので、オリジナリティは薄い
 かな? と感じました。

☆自分はファンタジーの世界を作るのが苦手なので、どんな作品を書いても『ありそうな現実』を書いてしまいます。
 オリジナリティある世界を書けるようになるのが課題ですね。

★、話の内容や、主人公の性格が暗いため物語のテンポが悪く、またそれでいて
 緩急も少ないので、読んでいて少し退屈になってしまう場面もありました。
 そして、キャラに対してですが、感情が一定しているという印象でした。喜怒哀楽
 が少ないため、個人的に物語自体やや淡白に感じてしまいました。
 こういった話は、読者を感動させてナンボだと思うので、もっと精神的に揺さぶりを
 かける展開があってもいいと思いました。

☆いじめられっ子が主人公なので、なるべく明るい雰囲気を出そうと頑張ったのですが、終始暗い感じになってしまいました。
 感情やテンポも緩急を意識しましたが、まだ足りませんでした。
 もっと精神的な揺さぶりをかけられるように精進します。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月24日(火)22時07分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 ハイさん
 読んでいただきありがとうございます。

★全体にそつのない三人称で書かれているのですが、一部だけ完全な一人称でしばらく書かれている部分があったり、後半のラスト近辺は誤字というかブラッシュアップ忘れみたいな文があったりしました。

☆もともと一人称で書いていたのですが、一人称の文体に自信がなくて、私を上梨に変えたので中途半端な人称になってしまいました。
 ブラッシュアップ忘れは推敲不足でした。

★こちらも全体に丁寧に書かれているのですが、上梨さんが途中、トイレでムギとの会話で気持ちが切り替わる部分がありますが、流れが急すぎて、どこに気持ちが切り替わるポイントが? と首を傾げました。
また、ムギのパートナーとなったあとの咲本らへの仕返しの仕方は、因果応報とはいえこの話の帰着点としてはちょっと暴力的過ぎやしないかな、と。
そういう意味では、神様の試験もちょっとどうなのかなと感じました。

☆枚数を削る前だと中盤にもう一章あり上梨とムギがもっと仲良くなるシーンがあります。
 親密度が上がったところに上梨が苛められているのを目の当たりにしたムギは、友達が苛められたと感じて気持ちが切り替わりました。
 ただ、自分でもこの気持ちの切り替えは無理あるなぁ、と思っていました。
 やられたらやり返す。咲本への仕返しは自分の気持ちが強く出てしまいました。
 いきなりバトル物になったので変になりましたね。

★上梨……神無し?

☆そこに気付いてもらえたのはハイさんだけです。
 もともとは『神無し神頼み』というタイトルを付けていて、上梨という少女が神なんていないとわかりながらも神頼みをして――、という流れでした。

★お話の雰囲気は良かったんですが、期待していた展開とはちょっと違うな〜、って印象でした。
いや、単に私が変に期待していたってだけだろ、とは思いますけど。
バトルもの的な話じゃなくて、テンプレですがムギとの出会いで上梨が前向きに頑張れるようになる。
っていうハートフルな話を期待していたんですよね。うん。
予想外の展開といえばそうなのですが、上梨とムギのやりとりが見ていて微笑ましかったので、そっち方向に話を伸ばされた方が良かったと、私は思うのですけれど?

☆展開の方向を完全に間違えました。
 しかし、自分の経験上、苛めを解決するには相手をぶっ飛ばさないとならないと思っています。
 次は話に合う展開にしたいと思います。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月24日(火)21時44分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 ささしろさん
 読んでいただきありがとうございます。

★公園にいるときが一五時。神社に入って神頼みして日没。そのあと「たぶん一八時過ぎ」という文章が出てくるんですが、百段の階段を考慮に入れても、ちょっと時間経つの早すぎるかなと思いました。一五時という情報がない方が、違和感はなくなると思います。

☆指摘されるまで全然気付きませんでした。
 確かに時間が経つのが早すぎですね。

★上梨を苛めている理由が明かされるのですが、ちょっと唐突感がありました。伏線や情報があるともっと納得できたと思います。せめて前の方で「中一のときに告白されたことがある」みたいな文章が欲しかったです。読み過ごしていたら本当すみません。
あと「咲本に馬乗りになると顔を殴り続けた」というところは、私的には少しやり過ぎかなと思いました。

☆上梨は告白を気にしていない設定で一人称で書いていたので、情報が上手く出せませんでした。
 初期で羽生を登場させて、ぎこちない二人の描写を入れておけば良かったですね。
 いじめられっ子もそうだと思いますが、気の小さい人は反撃が怖くて必要以上に攻撃します。
 なので、上梨には必要以上に攻撃させました。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月24日(火)21時30分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 兵藤晴佳
 読んでいただきありがとうございます。

★狐のムギ君がちょっとズレているのは仕方がないことですが、それがかえってコミカルです。
ネーミングは……もしかして高千穂遥『ダーティペア』の、あの黒豹っぽいクァールの「ムギ」でしょうか?

☆すみません。『ダーティペア』がどのような作品なのかわかりません。
 ネーミングは何かで、狐の尻尾は稲穂のような形をしている、と読んだからです。
 今度『ダーティペア』を読んでみます。

★虚無僧が手にするのは、尺八です。固い節のある竹で作られた笛なので、お侍が武者修行の一環として虚無僧になるときは護身用の暗器となりました。

☆尺八なのは知っていましたが、錫杖の方がカッコいいという、自分の主観で変えました。

★いじめの訴えに対して、教員はいかなる理由があっても黙認することはありませんし、やったら大問題になります。むしろ、おかしいと思ったら過剰なくらいに行動を起こすのが現実です。

☆自分の担任は生徒を苛める側だったので、先生は『無関心』というイメージが先行してしまいました。
 生徒にとって悪の先生の方が少ないですよね。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月19日(木)21時45分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 ピューレラさん
 読んでいただきありがとうございます。

★上梨さんの心理を丁寧に描いてあるところ。

☆この作品はもともと一人称で書いていたので、上梨の心理描写ばかり書いてあります。
 一人称の書き方に自信が持てなくて中途半端に三人称に書き直したので、変な文章になっています。

★イジメを取り扱っているのに、暗くなりすぎていないところ。

☆メインは上梨がムギに感化されて成長をしていく、ですので、イジメ自体が少なくなったからだと思います。
 推敲前の枚数オーバーだとイジメの描写が多くて暗い雰囲気になってしまっていたので、結果としては良かったと思います。

★ちゃんとイジメた相手を殴ったところ。

☆やられたらやり返す。これだけは外せないと思い喧嘩させました。
 痛みを分かち合わないと相手の気持ちはわからないと思うので、お互いに殴られ傷だらけにしました。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月19日(木)21時28分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 ミチルさん
 読んでいただきありがとうございます。

★とにかくムギが可愛くて、カッコ良かったです! 神様になるのは大変だと思いますが、頑張ってほしいです。
 ムギのおかげで上梨がいい意味で強気に成長する場面が好きでした。自分をいじめる相手に立ち向かえる姿はカッコイイです。

☆ムギに感化されて成長する上梨を描きたかったので、それが伝わったようで嬉しく思います。

★そんな優しい作品だと、佐野の骨折はやりすぎだと思わなくもないですが、不可抗力ともいえますし……悩ましいです。

☆上梨のせいではなく、なおかつ咲本から見て一人で佐野が怪我できる場面を考えた時に、階段から落とすしかないと思い骨折にしました。
 自分は校舎の階段で蹴り落とされたことがありますが、打ち所によっては死ねる衝撃を受けました。骨折で済んだ佐野は幸せ者だと思います。

 感想ありがとうございました!
 

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2016年05月17日(火)22時13分 たてばん L2TtHY/jcg作者レス
 始めに、感想を頂いた方、読んで頂いた方、企画開催者のクミンさん、ライトノベル研究所のうっぴーさん、ありがとうございました。
 参加数は少なかったですが全体的に感想数が多くて、楽しい企画になったと思います。

 この作品は一年ぶりで、しかも、まだ四作品目の短編だったので文章力に自信がなく、一人称を推敲で三人称に書き換えました。
 そのため中途半端に一人称と三人称が混ざってしまいました。

 枚数も八十二枚になり、そこから十二枚削りました。
 今まで字数不足はありましたが多すぎたのは初めてで、削ることの大変さを身を以て体験しました。

 時間はかかると思いますが、しっかり一人一人返事を書きますので、もうしばらくお付き合いください。
 

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2016年05月04日(水)20時42分 茉莉花-10点
作者の方へ 1ページ目です。(長くなったので分割します)

茉莉花と申します。
貴作拝読しました。

王道のストーリーラインで読後感がとてもよかったな、と感じる作品でした。
冒頭三行はいいな、と思いました。
意図的だと思うのですが、引き込ませようという意志が見えました。

ただ、ですね……主に文章の面で大きく損をしている感じに見受けられました。
どんなにいい展開・魅力的なキャラクターにしてもこの文章だと読みづらいな、と思ってしまいました。

ざっくり言うと
1 一人称と三人称がまざっていること
(章ごとに人称が変わるのだったらまだいいと思います。ただしこの作品は同章で頻繁に「上梨」と「私」が変わっているので気になりました。一度、三人称でできること・一人称でしかできないことを整理し、どちらで書くのか徹底したほうがいいのではないでしょうか?)

2 一つの文章に複数の目線や複数の行動が入っていること
例を挙げると…
>ムギは予想してなかった言葉に目を大きく見開いき、上梨は続けて次に繋がる言葉をかけた
こういう部分ですね。
前半はムギの行動で、後半は「私(上梨)」ですよね?
一つの文章に一つの主語にしたほうが読みやすいと思いました。
あと……
>賀川神社に行くための石の階段は何度も躓き転びそうになるが、なんとか登り切り荒い息を吐きながら鳥居をくぐると、そこには何食わぬ顔のムギがいた。
こういう部分。
一文中に行動がいろいろ入っているとどこが重要なのか分からなくなり、読みづらさを感じてしまいます。

3 係り受けのミスが見られたこと
(後述します)

このくらいかな……。
一回原稿を音読するといいかもしれないですね。

内容については2までは割と細かく読みました。
3以降はちょっと流し読みになってしまったかもしれないです。
2までですがちょっときつめに書いたのでご覧いただければうれしいです。
(ほんとはラストまでしっかり読んで誤字脱字・誤用までやれればよかったんですが……)
※誤字脱字は全体で50~60カ所ほどありましたが、点数には含めていないです。



>上梨は咄嗟に目を下ろして、いや、と一言だけ返した
セリフの一番目、大事なはずなんですが「いや」だけだと感情や性格が分かりませんでした。非常にもったいなかったなと思っています。


>なぜ三十段で神社を建てなかったのだろうか
なぜ具体的な数字を出したんでしょう?


>神社は誰も手入れをしていないようで、石畳の間からは雑草が自由に伸びている
ん?
>百段ある石の階段を上がらなくてはならないのは地元では有名
なんですよね?
管理する人がいてもいい気はしますが?


>賽銭箱も大部痛んでいたがなんとか残っていた
朽ち果てていることの描写なので、「なんとか残っていた」とプラスの表現にするよりは
何とか残っていたが大分傷んでいた
としたほうが老朽化の印象が強まると思いました。
(※誤字は修正しました)


>それを賽銭箱の中に投げ入れ手を叩き目を閉じた
「-を、-を」と続くので若干まどろっこしいかも?
祈った、くらいでもいかもしれないですね。


>せっかくなので効果があるとも思えない神頼みをしてみることにした。
この前に「手を叩き目を閉じた」と、祈ったことが書かれているので、若干引っかかりました。


>私が今来た鳥居の向こうでは夕日が落ちて空は漆黒の闇に変わろうとしている
うむむ……三時に早退して、石段を上がって、日没ですか??
梅雨入り前(六月上旬)の日没時刻は18:55ですが、神社の100段の石段を上がっただけで4時間経ったということですか?


>情熱的な夕日とは真逆の冷たい風が上梨の体を徐々に冷やし、悩んだ末誘惑に負けた上梨は少しでも暖を取るために社の中に入ることにした。
ん??
展開のために必要なのだとは思いますが、日没も過ぎているんだから家に帰っても怪しまれない時刻だと思いますよ?
時間つぶしのために神社に寄ったんですよね?
もう少し何か、入らなければならない理由か、帰りたくない理由を付け加えるといいのかなと思いました。


>日が沈んだばかりだから、多分今は十八時過ぎ。あと一時間ぐらい経ったら帰ろう。
いやいや(苦笑)
きちんと調べました?


>外の月明かりだけが上梨の今いる居場所を示していた
今いる居場所……ちょっともたつく感じ。
「今の居場所」もしくは「居場所」だけでもいいかもしれません。


>泣き疲れて知らないうちに寝てしまっていたようだった。
「目に涙を浮かべると静かに瞼閉じた(原文ママ)」なのでそこまで体力を使うような泣き方はしていないように感じました。


>ここは神社なのになぜ神様はいなくて私を起こしてくれないのだろうか
ここの前に「たぶん私の願いは聞き入れられないだろう。だって本当に神様がいたら私は今頃幸せな生活を送っているもの」と、神を信じていない発言がありますが、「私」は神を信じているのですか? いないんですか?


>こんな人気がないところ来る人間ってどんなのだろうか。頭を回転させて考えてみるも、私の頭の中には近寄りがたい人間しか浮かび上がってこなかった。
個人的には、ここの発想の結びつきが腑に落ちませんでした。


>上梨が着いた足が床を軋ませ、歯ぎしりのような音が盛大に聞こえてきた
うーん……読みにくい。
これ、「上梨が着いた」を削ったほうがずぱっと見えると思いますよ。
あと、係り受けが微妙にミスしている気も……?
「盛大に聞こえてきた」という受け身ではなく、「盛大に鳴った」だと思いますがどうでしょう?
今のままだと「足が床を軋ませ音が聞こえてきた」という流れなので「足が床を軋ませ音が鳴った」のほうが分かりやすいはず。(凝るのであれば「足が床を軋ませ悲鳴を上げた」とか、改変レベルになりますが「床が歯ぎしりのような苦鳴をあげた」とか。さらにいわせてもらうと、ここで暗喩の「ようだ」を使わず「床が苦鳴をあげた」まで削るとか……)


>マズイ……中に入ってくる。
うーん……思考内なので強い指摘ではないのですが、はじめに考えるのって「気が付かれたかどうか」だと思うんですが……。なぜ中に入ってくるレベルまで考えたのかな、と違和感を覚えました。
というか、お社の中って聖域だから滅多に入ろうとはしないと思うんですが……?


>壁の方を向きながら頭を抱えてうずこまった
うずこまる……方言の可能性がありますね。


>足音も無く近寄り後ろから聞こえてきた声は意外と子供のような高い声で、私は拍子抜けしてゆっくり後ろを振り向いた。
「私」が主体なので、「足音も無く近寄り」というのが少し引っかかりました。
あと、「意外と」というのはどういうことなんでしょう? 何かを予想していて、それが外れて「意外と」ならわかるんですが……。
あと、ここの人称一人称になっていますが、できればどちらかに統一したほうがいいなと思いました。


>そこには声に似合った小さい体の人影が立っていた
文頭一字あけをお願いします。


>予想外の返事に顔を上げてみると、やはりそこには狐がいた
狐なんですか?
人型の幽霊みたいなものですか?
人型、ということを強調したいのであれば「狐」と書くより人型であることを強調させた方がいいかもしれません。


>上梨は手を合わせて意味も無くひたすら謝った。生きてきた中で一番の謝罪だったと思う。
ここの恐怖が「いや、なにもしてないですけど……」この台詞で薄らいでしまった印象です。若干唐突感がありました。
恐怖から安心という流れを効果的に読んでみたかったです。


>二足歩行で人間のように歩いているが、やはり足音は聞こえてこなかった
なぜ「やはり」なんです?


>顔を振りもう一度意識を覚ますと立ち上がり、狐の後を追って社の外に出た
え? 外の声におびえていたのでは?

 

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2016年05月05日(木)16時08分 茉莉花
(2ページ目です)

>私たちの世界でいうスーパーのような光景が広がっていた
一人称であればこのままでもいいのですが、三人称だと「私たちの世界でいう」が蛇足かもしれません。


>それを見てた狐が駆け寄ってきた。
「見てた」で「い抜き」がありますがOKですか?


>誰のせいだと思っているのか、この狐には腹が立ってくる
ん??
この「私(上梨)」の思考の在り方がうまく読み取れませんでした。
へたり込んだのを助けられたんですよね?


> 狐の言葉に他の霊達からは、せっかく来たのに、なんだよもう、など文句の声が聞こえてきた。他には、わかったよ狐の大将、明日はもっと美味そうな魚を揃えておいてくれ、などいろいろな声が聞こえてきた。
ここまで細かく書かなくても……という気もしました。


>狐は私の口に柄杓を押しつけてきて、上梨は無理矢理水を飲まされてしまった。
こういう部分の人称ミス、かなり痛いですよー。お気を付けください。
あと、係り受けのミスもあるのかな……。


>狐は眉を竦めて上梨のことを変な目で見てくる
眉を竦める?
オリジナルの表現でしょうか?


>ムギは予想してなかった言葉に目を大きく見開いき、上梨は続けて次に繋がる言葉をかけた
二重主語。
推敲の際に気を付けるといいかもしれません。
(ここ以外にも散見されました)


>だけど、私は昼間しかこの神社には来れない
「ら抜き」がありますがOKですか?


>これは頑張っている者には失礼な質問だと思う。
これ、を示すものが後に来ているので読みにくさを感じました。


>上梨の両足に下ろされている手には力が入り拳は小刻みに震えている
ここの姿勢がうまく読み取れませんでした。
読点で調整するといいのかな……。


>上梨よろけて倒れそうになるその姿は、公園の遊具を見て走り出す子供に引っ張られる母のようだった
ここの「上梨」は、なくてもいいんじゃないかなぁと思いました。


>ムギの笑顔を見てると聞くのも野暮な気がしてきたから
「い抜き」がありますが、このままでOKですか?


>その姿からは自身が満ちあふれてて格好良くて
「い抜き」がありますがOKですか?


>「学校の体操服なんて着てどうしたの? なんか部活でも入ったの?」
ふむ?
休日か何かの設定ですか?
(見落としでしたら申し訳ないです)





ここからは3と4の主に内容で気になった部分です。

>ムギとケンカして一ヶ月ほどが経った。出会った頃の桜の木は所々まだ花が残っていたが、時間が経つのは早くて今では青い葉しか見ることができない
ムギと出会ったのは梅雨前(六月上旬ごろ)ではないでしょうか?
>テレビでは梅雨入り宣言を聞いたのだけど、心とは裏腹に外は晴天で風も無く上梨は他の生徒よりも一足早く下校していた。
ここですね。
この梅雨入り宣言が出されたころなので、桜はもう散っているのではないかなぁという気がします。


>ただ良かったこともあり、佐野が骨折したおかげでこの一ヶ月は苛められずに済んでいる。咲本は一人では行動できないようだった。
「そろそろ授業も始まるし行くよ佐野さん」
という言い方からはむしろ咲本のほうが主導のように思えました。
 

> ムギはどこか遠くを見てから一息つくと、私に突然の別れを告げた。
>「カミナシ、お前とはこれでお別れだ。俺がここはなんとかするからお前は逃げろ」
セリフの中身を先に地の文で言うというのが引っかかりました。


>ムギはゆっくり上梨に歩み寄ると、そのまま上梨の体の中に溶けて混じり合うように入っていった
ここ、もう少し丁寧に書いたほうがいいかもしれないですね。
「そのまま」だけだとちょっと抽象的だし、「私(上梨)」の気持ちがうまく伝わってきづらかったかな、と思います。
割と重要そうなシーンなのにもったいないなと思ってしまいました。


>本来神様になるためには人間のパートナーが欲しい決まりなのよ。そのパートナーは上梨さん、アナタね
うむむ……。唐突。
結局ムギが行っていた作物を配布するという行為は意味がなかったんですか?


>「それと上梨さん。アナタは自分の敵である恐怖心に勝ちここまで来ました。アナタなら現状を打破できると思いますよ」
 ウカ様の言葉に思い当たる節がある。上梨はウカ様の目を見て力強く頷いた。
うーん……展開が……早すぎな気がします。
前半が長いのかも??


>馬場先生は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しい顔になり目を閉じると、そう、と一言だけ答えた。
うーん……保健であろうと教員がこういう態度をとるのかなぁという気がします。
主人公に優しい人物になってしまっていて、リアリティが薄くなってしまった感じ。


以上です。


すでにさんざん言ってきましたが、よかったところ、気になったところをまとめると

・よかったところ
・ストーリーラインがシンプルで分かりやすかった。
・キャラクターがきちんと立っていて魅力的だった。
・テーマ性がはっきりしていた。

・気になったところ
・人称がぶれており、それぞれの特性をきちんと生かせていなかった。
・一文中の視点移動、要素(行動)の多さ、係り受けのミスが目立った。
・季節や保健の先生の対応、突然現れた羽生の存在、賀川神社の神様の条件等、矛盾や説明不足・疑問を感じる部分が多かった。

こんな感じです。
設定のミス等はこの作品だけのことなのですが、文章の表現力については他にお書きになる作品にも影響を与えてしまう、基礎となる部分なので、ここを重点的に鍛えるとものすごく伸びるのではないかなと思いました。

色々暴言に近い発言もあったかもしれません。
ご容赦いただければ幸いです。

それでは執筆お疲れ様でした。

 

nice227
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2016年04月27日(水)23時39分 99kg30点
全体的には面白かったです。
突然幽霊が出てきてお友達、というのは唐突な気もしますが、それまでに主人公の境遇が描写されているのでそれほど不自然でもない。
ただその構成は冒頭にいじめのシーンがくるリスクがある、という所でしょうか。

物語の雰囲気とは違った印象を始めに与えてしまうのかもしれません。

>「……これ毒とか入ってないよね?」
憑り殺すならまだしも妖怪幽霊から毒を渡されるというのも不自然な。普通は自分もそっちの世界に行ってしまわないか? という心配でしょうか。それも毒と言えばそうなんですけど「はい、毒です」という返答になるはずもない。
>いきなり差し出されて飲むほど私も落ちぶれてはいない。そもそも得体が知れない奴から水を差し出されて、はいそうですかと飲めるわけもない
用心しない事は落ちぶれる事でせうか。
若干「?」と感じる所は主人公の感性だと言ってしまえばそれまでなのですが、やはり感性の違いを感じてしまうと主人公と心が離れてしまいますからね。


用心深い割にはあっさりと心を許しすぎているかな。


さすがに虚無僧は神様だろうと予想できる。装束着ているのに、むしろその可能性に辿り着かない事が不思議でした。

やはりこの後は狐と合体して悪と戦う変身ヒーローになるんでしょうか。
 

nice223
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2016年04月27日(水)00時36分 つとむュー
GW企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

>「俺か? 俺は狐の霊だ。他にはなにかあるか?」

イジメを受けている女子高生が、狐の霊と出会い、
共に難関に立ち向かうという、胸が熱くなるストーリーでした。

>怪我するかもしれないし嫌な思いもするかもしれなけど、一撃で必ず決めるからカミナシの体借りても良いか?

ムギが上梨の体を借りて虚無僧と戦う、という展開はとても良かったと思います。
戦う大切さを上梨が実感し、それを実行に移すという流れをスムーズに受け入れることができました。
しかし、本作では人と人外との接点に関する設定が甘く、
あまり納得できない部分もありました。

>ムギはトイレの角で静かにこちらを見ていた。咲本達にはどうやら見えないらしい。
>「私見てたよ。ムギが佐野さんを突き落とすとこ」

例えば、この部分です。
ムギは狐の霊なので、咲本達には見えない、ということは理解できるのですが、
それならば、なぜ突き落とすことができるのだろう? と思ってしまいます。
この辺り、もう少し設定に関する説明があっても良かったのではと思います。
上記の虚無僧の件も、虚無僧が人であるならば、ムギが上梨の体を借りることは納得できるのですが、
実は虚無僧は人ではなかったという結末だったので、
それならば上梨の方がムギに乗り移って戦うべきだったのはないかと思わなくもありません。


>「どうだ美味いだろ? この水はこの山の湧き水だからいろんな成分が混ざり合って最高なんだ。お前ら人間の水道水なんか目じゃないぞ」

湧き水については、作中で文字通りいい味を出していたと思います。
これはとても良かったです。


>「だから、アナタが羽生君の告白を断ったからよ」

上梨がイジメを受けていた理由は、個人的には少し納得がいきませんでした。
上梨が受けるイジメは、学校中でうわさになるほどの内容だと思います。
それならば、羽入君が助けようとするのではないでしょうか?
これまでストーリーに全く関わりの無かった羽生君がイジメの原因と突然言われて、
完全に置いてきぼりを食らってしまいました。
やはり、序盤から伏線として、羽入君は登場させておくべきだったと、個人的には思います。


人称ですが、どう見ても一人称っぽいのに、「私」ではなく「上梨」と書いてあって、
とても読みにくかったです。
「上梨」を「私」に変えるだけで、各段に読みやすくなると思います。


枚数ですが、ルール上50枚までのところを70枚になってしまっています。
この対策としては、内容を削るのではなく、プロットから立て直しをするべきだったと
個人的には思います。
ということで、誠に申し訳ありませんが、今回は点数無しでよろしくお願いいたします。

いろいろと書いてしまいましたが、ムギと一緒に戦う上梨が胸熱な作品でした。
拙い感想で申し訳ありません。
今後のご活躍を期待しています。
 

nice220
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2016年04月26日(火)00時09分 いりえミト10点
 『見えない未来に向かって』拝読しました。


 いじめの描写は真に迫るものがあり、胸に来ました。
 一方で、上梨とムギの交流には心温まるものがあり、全体として主人公の心理が丁寧に描写されている作品だと感じました。
 「変わる」ことをテーマにした、希望の持てる物語だったと思います。

 ただ、物語中盤から後半にかけて、設定が唐突に登場したと感じるところがいくつかありました。
 「人間のパートナー」のくだりや、咲本たちが上梨をいじめている理由となった羽生君などです。
 そのあたりは、序盤で伏線があるとよかったのではと思います。

 また、文章面で、一人称と三人称が混用されているのも気になりました。
 三人称に少しだけ一人称を挟む手法はプロの作品でも見られますが、本作の場合そういう手法とは違い、三人称になったり一人称になったりという感じだったので、人称はどちらかに統一した方がよかったのではと思います。


 短いですが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。

 

nice216
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2016年04月24日(日)00時10分 たかセカンド20点
こんばんは。
「見えない未来に向かって」を読ませていただきました。

感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。
納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。


完成度が非常に高い作品だと思いました。
文章も上手く、スラスラと読み進めることができました。雰囲気も抜群です。

各キャラも個性的で、特にムギが深い所まで掘り下げられ、キャラクターとして非常に立っていると感じました。

ただ、完成度が高い作品とは思ったのですが、その反面、ガツンと来るエピソードなり、台詞なりが無いのが気になりました。
良いお話とは思ったのですが、「きっとこうなるんだろうなぁ」という先読みができてしまいました。

後、ラストの咲本達との対決のシーンですが、妙に綺麗? に終わってしまったなぁ。という印象を抱きました。
負傷具合は壮絶ですが……。

二人とも欲求不満が溜まっているのなら、もっと汚い言葉で罵って、ぼろぼろのぐっちゃぐちゃな喧嘩をしても良いのかな? とは思いました。たとえ女の子だとしてもです。

そうすれば、二人、それぞれの葛藤が表現できるのではないか? と感じました。

骨折するほどの大けがをしているならなおさらだと思いました。

ラストは主人公の成長、問題の解決等、きっちりと纏められていました。

いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。

以上となります。

このたびは有難うございました。
 

nice207
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2016年04月23日(土)23時25分 たぬき nY39lNOBNk10点
出だしの重さから、救いのある展開に入っていく安心感を経て、たどり着いたバトルモノ! そして喧嘩で解決するというのも豪快でしたが、ちょっとついていけてない感じでした。
 ムギがいじめっ子を突き落とした辺りは結構どうなるのか期待した部分もありましたが、主人公がウジウジしすぎていて、見ているとなんだかもどかしい。そうじゃないだろといいたくなる感じが狙いであるならば、それはよく出ていました。

 不満点としては、憑依バトルに突入したのと、いじめっ子の動機があまり好みではなかったです。

 統一性がある方が良い話だったのではないかと思います。
 彼女が美化活動やムギの手助けをしていく中で学んだこと(心身ともに鍛えられたこと)が、後にいじめを解決していく手助けになる、という話が欲しかったのかもしれません。
 そうなっていたような気もしますが、途中でバトルに突入したのでなんだか序盤のしっとりとした雰囲気が熱血になってしまって気が散ってしまったのかもしれません。

 主人公が突き落とされそうになったところで、ムギが逆に相手を突くシーンがありました。その後二人は仲違いしますが、その際のセリフがすこし強い気がします。「あんなの死んじゃえばいい」とサラッと言えるような者が神に選ばれて大成するのも物語としては違和感がありました。
 「自分がしようとしたことの報いを受けた」など、柔らかな言い回しの方が好みかもしれません。
 主人公自身も「自分が何もしなかったことの報いを受けてきた」と、これまでの言い出せない自分を振り返る材料にもなりますし。

 そしてその直後くらいに虚無僧とのバトルが始まりますが、そこまでに心の整理をする“間”が欲しかったかなと、個人的には思います。
 

nice233
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2016年04月23日(土)09時26分 w-30点
まず、前置きみたいのがちょっと長くなりますがご了承ください。
作者コメントによると、執筆も企画に投稿するのも一年ぶりで、お帰りなさいませご主人様モードだとか。
企画にカムバックする人って、けっこういるものです。別のところでも言ったことがあるのですが、前回の冬企画で優勝したいりえミトさんも、その前の秋企画で優勝したへべれけさんも、その秋企画に出ていたmayaさんも戻ってきた人です。
ラ研企画って、なんだかんだいって良いものだから、だと思います。ネームバリューとか関係なしに純粋に作品を評価してもらえるし、少なくても10個近くの感想がもらえる。今でこそ投稿サイトだけならピクシブもあるしなろうもあるしカクヨムもオープンしたのですが、どうしてもそちらの方は褒めるだけのご贈答用の感想になってしまいます。そんな中で、面白いなら面白い、つまらないならつまらないと率直な感想をもらえるラ研企画のような場は貴重なものです。
なので、ラ研企画は、「ちょっとまたラ研の企画に参加してみようかな」と戻ってみようと思った人が戻って来られる場であり続けてほしいと思っています。だから、シャッフル制のような良い方向への変化は大歓迎ですが、持ち点制のような衰退を招く魔改造は勘弁してほしいです。
今回のGW企画に関しては、ゴールデンウィークという表題とは全然かけはなれた謎日程が、電撃公募の締め切りやらカクヨムコンテストの締め切りとかぶってしまったこともあり、出展はたった14作品ときわめて寂しい形となってしまいました。
まあその分、感想の方が量と質で盛り上がれば良いと思います。
ということで、いつも通りではあるのですが、真剣勝負で感想を書かせていただきます。
思ったこと率直に書きます。



ということで、ここからが感想の本体となります。
本作品、最後まで読了したのですが、嘘いつわり無く言えば、あまり良いとは思えませんでした。
今回14作品出展で、自作以外だと13作品なのですが、12作品は読みました。1作品は途中で挫折してしまいました。ただ、その作品は駄目というよりは私の肌に合わなかった感じでした。なので、残りの読了12作品の中で、ということになりますが、残念ながら私の目から見たら本作品が最下位です。
なぜかといいますと、全てにおいて、ゆきあたりばったりだと感じたためです。

 上梨はムギだけを見て話した。
「私なんでもするから!」
 私は自分の胸を叩いて言い切った。
「へっ、そりゃ助かる。ちょうど体が欲しいと思ってたんだ。怪我するかもしれないし嫌な思いもするかもしれなけど、一撃で必ず決めるからカミナシの体借りても良いか?」
 ムギは臆することなく聞いてきた。私の返事はもちろん決まってる。
「うん」
 上梨は笑顔で答えた。

↑引用したところを見れば分かりますが、まずそもそも一人称なのか三人称なのか、ブレています。今回の企画で人称ブレなんてものを起こしている作品は、本作だけだったのではないでしょうか。
本作品は、基本的に三人称で、ところどころ一人称が混ざってしまった、という形のようですが、読んでみた限りでは、一人称の方がふさわしい作品だったと思います。人称選択の時点で間違っている。
全編通じて、主人公の見ているシーンだけで成立しているようですし。また、最初はいじめられている主人公の痛みや苦しみ、そこからムギと出会ってムギを大切に思う気持ち、虚無僧と戦う時の恐怖感、そしていじめっ子なんかよりも遥かに強大な敵と戦ったことによって、いじめっ子と向き合おうとする勇気、といった部分を一人称によって読者に共感させた方が効果的だと思いました。
また、それと若干関連するのですが、冒頭シーンがいまひとつ共感できず、物語に入り込めませんでした。冒頭の三人称の描写が、主人公とは距離をおいた突き放した書き方なので、いじめられている主人公に共感できなかったためです。
そして、章立てもゆきあたりばったりです。

1.プロローグ
2.上梨とムギ
3.ムギと私の活動
4.私の敵
4.エピローグ

↑4が二回あります。また、2と3と4は更に小分けにされているのですが、2に関しては2-1しかありません。だったらこれ、小分けにする必要は無いのではないでしょうか。

あと、作中の細かいことも、設定が後出しというか、その時になって必要な設定を後から付け加えていると感じる場所がいくつかありました。メモを取りながら読んでいたわけではないので、あまり覚えていないのですが。
いつも公衆電話用の十円玉を持ち歩いている。
のところ。中学生なので、携帯やスマホを持っていない、という設定は問題ないと思います。しかし、公衆電話自体がめっきり減ってしまっているなかで、公衆電話用の十円玉を持ち歩いているというのは違和感がありました。
それからは腕時計をするように心がけているのだ。
ここもそうです。時間を気にするために新しく腕時計を買った、という流れならともかく、腕時計をするようになった、というのはしっくり納得できませんでした。既に持っているのに、使っていなかった、ということになるからです。持っているなら既に使っているんじゃないですかね。当然、親に買ってもらったものでしょう。あまり裕福な家庭ではなさそうですが、親に心配はかけたくないと思っている主人公ですから、せっかく買ってもらった腕時計をそれまで使っていなかったというのは妙に感じます。
主人公が二人に、部活に行かなくていいの、と言うシーン。
今まではちゃんと部活に行っていて、いじめは休み時間だけだった。それが、この時から部活をサボってまで放課後も、となった納得できる理由が無いです。そのため、佐野が怪我をするシーンを出すため放課後もいじめを始めたというふうに見えてしまいました。これだったら、二人は屋外スポーツの部活に入っているが、今日は大雨のため練習が中止になったため、いじめをすることにした、とした方がいいと思いました。
佐野が階段から突き落とされて怪我するシーン。
命に別状がないのが幸いだが咲本に私が突き落として逃げたと言われ、午前中のトイレの件の仕返しということで私は容疑者のレッテルを貼られることとなった。
この文章の、午前中のトイレの件の仕返し、という部分がよく分からないというか、つじつま合っていないように思います。
主人公がいじめられた理由が明らかになるシーン。
確かに、いじめられ始めたのには、なんらかの理由はあるでしょうから、主人公がバスケ部の男を振った、ということでいいと思います。しかし咲本がバスケ部だったという情報も初めて出てきましたし、やはりゆきあたりばったり感が強いです。なので、放課後いじめが始まった場面で主人公が、「部活に行かなくていいの」と聞いた時に咲本に「あんたのせいで今更バスケ部のヤツと顔を合わせにくくなったんだよ」と言わせておけば、伏線にできると思います。
あと、他にも色々あったと思いますが、覚えていないので省略します。
これらのミスは、直せば済むことなので、第一稿としてだったら問題ないと思います。しかし完成作品としてこれを出されたら、出直してこい、と言われても文句言えないですね。
まずは、きちんとプロットを作った方が良いかと思います。一人称にするのか、三人称にするのか。大まかな構成はどうするのか。
第一稿の執筆においては、勢いが大事だと思います。細かなミスなどは後から直せばいいと思います。しかし完成稿の段階では、きちんと推敲をするべきでしょう。ここは完成稿を評価する場所ですし、投稿日時からいっても、推敲する時間はあったはずです。
作者コメントに、この物語は、何事も頑張るから良いことがある、そういう想いを込めて書き上げました、とありましたが、そういうテーマ的なもの、作者の書きたい想いがあるのはとても良いことだと思います。そういった想いを形にするというのは、プロットとか推敲とか技術力があってのことだということです。
感想は以上です。執筆おつかれさまでした。

 

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2016年04月21日(木)23時06分 七月鉄管ビール xn8ZkIqS3k20点
 神社の草むしりの場面。
 状況は違いますが神社の草むしりの場面を書こうとして駄目で断念したことがあります。
「これは俺が書きたかったなあ」
 などと羨望しつつ、ここ良いなあ、と思っております。

 鉄板で手堅い。
 読者として不満はありません。
 ケチをつけるとすれば、不満がないことでしょうか。

 執筆おつかれさまでした。
 

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2016年04月21日(木)00時00分 キーゼルバッハ10点

キーゼルバッハと申します。読まさせていただきましたので感想を。

(設定)
 中学生の上梨藍は、いつも学校で咲本絵里と佐野唯にいじめられていた。
 その日も二人にいじめられ、学校を早退するも、家族に心配かけたくない
 という思いから、家には帰らずフラフラと自分の住む街をさまよう。
 そんな中、とある古びた神社に目が止まり、何となく入って見ることにした。
 そこで、彼女は運命の出会いを果たすことになる……。というような内容
 でした。ストーリーの主軸としては、主人公である上梨藍とムギの出会い、
 葛藤、成長を描いており、枚数の多さにともなって読み応えのある作品
 となっています。
 しかし、地の文において基本的に三人称で書かれていますが、時に一人称
 にもなっていたりして、読んでいて混乱してしまう場面が多々ありました。
 また、物語の展開においても、特に終盤の宇迦之御魂神が出てくる場面が
 ありますが、伏線もあまりなく、突然のことでしたので、少々ご都合主義
 のように感じてしまいました。

(キャラ)
 
 上梨藍  :この物語の主人公で、中学生の女の子。
       性格的にはおとなしめ、いじめを受けているせいか、内向的
       で自虐的な性格になっている。
       しかし、ムギと出会い、少しずつ自分の中の意識が変わっていく、
       最終的にはいじめっ子の二人を倒した。
       基本的に三人称で、物語は展開するのですが、時折一人称の
       様な地の文もあり、正直混乱してしまいました。どちらかに
       統一して欲しかったと、個人的に思いました。
       また、主人公が内向的な性格ですので、序盤は物語の雰囲気
       も暗くなっています。それから徐々に、主人公である上梨藍
       の意識も変わっていくのですが、それでも雰囲気が暗く、
       テンポも遅く感じてしまいました。物語の起承転結の起伏も
       それに伴い、あまり感じられなかった印象です。

 ムギ   :上梨藍がたまたま訪れた賀川神社に現れた、狐の霊?
       フレンドリーな性格で、人間である上梨藍についても、
       物怖じすること無く、当たり前に接した。
       終盤、上梨藍と協力して憑依し、一瞬だけではあるが、
       強力な力も使った。
       暗い雰囲気の作品に、アクセントとして重要な役割を
       果たしているキャラクターだと思いました。
       しかし、中盤上梨を追いかけてきた佐野を、階段から
       突き落とす場面は、ちょっと動機が分かりづらいかな、
       と思いました。いじめをやめさせたいのなら、その前の展開
       で、いじめられている上梨のことを見ていた時に何かしら行動
       を起こせばよかったのにと思いましたし、急に直接的な
       行動を取ったので、少し違和感を感じました。階段から
       突き落とす前に、それに繋がるようなムギに対しての伏線
       が欲しかったなと思いました。
      
       
 咲本絵里 :主人公である上梨藍のクラスメイトで、いじめの主犯格の
       人物。
       執拗に上梨を呼び出しては、佐野とつるんで暴行を加えたり、
       水をかけたり、大勢の人の前で上梨に恥をかかせたりしていた。
       終盤、上梨と殴り合いながら、いじめの理由を告白する展開は、
       良かったと思いました。
       ただ、いじめの理由的に、まるで親の敵のように暴行を加えて
       いるこのいじめには、少々違和感を覚えました。恨みというより、
       嫉妬で行動しているので、もっと陰湿的ないじめ、例えば、
       靴を隠す、画鋲を入れる。筆箱を隠す、教科書に落書をしたり、
       破ったりする等でも良かったのではと思いました。
       わざわざ、大きな問題になり、自分の立場も危うくなって
       しまう可能性が大きい直接的な暴行を、自分の好きな人を振った
       からという理由だけで行うのは、個人的に違和感を感じて
       しまいました。
     
       
 佐野唯  :上梨藍の中学のクラスメイトで、咲本と一緒に上梨をいじめ
       ている。主人公である上梨藍をいじめている理由については、
       作中で明確に書かれていないのですが、恐らく咲本と一緒?
       陸上部に入っていて足は早く、走って逃げた上梨を追いかけ
       階段手前で追いつくも、ムギによって転ばされ、階段から
       落ちて左足を骨折してしまう。
       彼女についての印象は、咲本より薄く、いじめる理由についても、
       明確にわからないため、どこか宙に浮いたようなキャラに感じて
       しまいました。どこか影が薄く感じてしまいます。
       もう少し、このキャラについての掘り下げと物語についての絡みが
       欲しいと思いました。
        

 虚無僧(宇迦之御魂神)

      :上梨藍の前に突如現れた、細い身を黒い装束しょうぞくで纏まとい、
       右手には先端に輪がたくさん付いている錫杖しゃくじょうを持ち、
       頭がすべて隠れるように深編ふかあみ笠かさを被っている謎の
       人物。学校から上梨を追いかけ、賀川神社まで追い詰める。
       本来、不浄なものは入れない神社の鳥居を、くぐり抜けて入ってきた。
       しかし、その正体はムギがずっとなりたいと憧れていた宇迦之御魂神
       である。ムギが神になるには、人間のパートナーが必要であり、
       その絆と力を試すために現れたのだ。
       宇迦之御魂神が最初、主人公の前に現れた場面の展開において、
       どうしてムギではなく、上梨の前に現れたのか、疑問に感じま
       した。ムギが神にあがるための試験であるなら、最初に人間の
       神梨ではなくムギの方に現れるのでは? と個人的に思いました。
       また、どうして宇迦之御魂神が突如主人公の前に現れたのか、一体
       どういう役割を持っているどういう存在なのか、また宇迦之御魂神
       についても、どういう人物なのか、描写が欲しかったという印象です。
       どことなく、ただ主人公とムギを絡ませて、戦わせるための人形
       のように感じてしまい、ご都合主義感が拭えませんでした。



(世界観)
 
 世界観に関しては、現代の日本を舞台に日本神話に登場する、神や霊が
 存在するという世界観で、いじめという問題を背景にちょっと不思議な
 存在に導かれるという、ありそうな現実という感じで面白かったです。
 ただ、こういった世界観はありふれているので、オリジナリティは薄い
 かな? と感じました。

(文章)

 文章は、正直私にとっては読みにくかったです。
 基本的に三人称形式で書かれているのですが、途中、主人公の上梨が
 地の文で喋ったり、考え込んでいたりする一人称もあって、違和感と
 読みにくさを覚えました。また、キャラに対する描写も比較的少なく、
 あまり個性を感じられなかったという印象です。

(テーマ)

 現代日本をベースに、中学生の女の子が日本神話に登場する神や霊と
 ひょんなことから、繋がりを持ってしまったストーリーということで、
 十分企画のテーマに沿った作品だと思いました。
 ただ、物語の展開的にいじめや、人の成長を中心に書かれていますので、
 神話との絡みが若干薄かったかな? という印象です。
 
(総評)

 基本的なストーリーについては、キャラの成長を主軸に書かれているということ
 で、非常に読み応えがあり、読後感もハッピーエンドですっきりとしたものでした。
 ただ、地の文について三人称だったり、一人称だったりと視点がぶれているので、
 個人的に非常に感情移入がしにくかったです。そういった意味では、残念という
 印象です。
 また、話の内容や、主人公の性格が暗いため物語のテンポが悪く、またそれでいて
 緩急も少ないので、読んでいて少し退屈になってしまう場面もありました。
 そして、キャラに対してですが、感情が一定しているという印象でした。喜怒哀楽
 が少ないため、個人的に物語自体やや淡白に感じてしまいました。
 こういった話は、読者を感動させてナンボだと思うので、もっと精神的に揺さぶりを
 かける展開があってもいいと思いました。
 
それでは、GW企画お疲れ様でした。また機会がありましたら、読ませていただけると嬉しいです。

キーゼルバッハでした。
 

nice221
pass
2016年04月20日(水)09時39分 ハイ10点
『見えない未来に向かって』
拝見致しましたので、感想をおいていきます。



●文章

全体にそつのない三人称で書かれているのですが、一部だけ完全な一人称でしばらく書かれている部分があったり、後半のラスト近辺は誤字というかブラッシュアップ忘れみたいな文があったりしました。
特にそれで減点、ということはしませんでしたが、一応。


●人物とストーリー

こちらも全体に丁寧に書かれているのですが、上梨さんが途中、トイレでムギとの会話で気持ちが切り替わる部分がありますが、流れが急すぎて、どこに気持ちが切り替わるポイントが? と首を傾げました。
また、ムギのパートナーとなったあとの咲本らへの仕返しの仕方は、因果応報とはいえこの話の帰着点としてはちょっと暴力的過ぎやしないかな、と。
そういう意味では、神様の試験もちょっとどうなのかなと感じました。


上梨……神無し?


●まとめ


お話の雰囲気は良かったんですが、期待していた展開とはちょっと違うな〜、って印象でした。
いや、単に私が変に期待していたってだけだろ、とは思いますけど。
バトルもの的な話じゃなくて、テンプレですがムギとの出会いで上梨が前向きに頑張れるようになる。
っていうハートフルな話を期待していたんですよね。うん。
予想外の展開といえばそうなのですが、上梨とムギのやりとりが見ていて微笑ましかったので、そっち方向に話を伸ばされた方が良かったと、私は思うのですけれど?


なお、辛口感想を希望されてますが、そういうのは書きなれてないので、脳内補正でお願いします。


まあ、そんなところで。
執筆お疲れ様でした。
 

nice209
pass
2016年04月17日(日)14時07分 ささしろ10点
はじめまして。未熟者ですが感想を書かせていただきます。こういうの不得手なもので、おかしなこと言っていたらごめんなさい。

ストーリーはよかったと思います。上梨とムギの関係の変化が丁寧に書かれていたこと。物語の起伏が富んでいたこと。たのしく最後まで読めました。

ただ、個人的には「ん?」と思ってしまったところがあって、深く物語に入りこむことができませんでした。作者様の参考になればと思い、書かせていただきます。

 2章の1。
公園にいるときが一五時。神社に入って神頼みして日没。そのあと「たぶん一八時過ぎ」という文章が出てくるんですが、百段の階段を考慮に入れても、ちょっと時間経つの早すぎるかなと思いました。一五時という情報がない方が、違和感はなくなると思います。

 4章の2
上梨を苛めている理由が明かされるのですが、ちょっと唐突感がありました。伏線や情報があるともっと納得できたと思います。せめて前の方で「中一のときに告白されたことがある」みたいな文章が欲しかったです。読み過ごしていたら本当すみません。
あと「咲本に馬乗りになると顔を殴り続けた」というところは、私的には少しやり過ぎかなと思いました。

文章上でも人称のぶれなど引っかかるところがありました。地の文で丁寧に心情や風景を描写している分、もったいないなあと思いました。作者様のコメントに「削りまくって」とあるので、それが原因かもしれません。もちろん好きな表現もあります。

>急いで帰宅した上梨に待っていたのは、安堵の涙を浮かべる母の姿と激高する父の姿だった。普段の様子だと母と父の行動は逆なのだが、この時だけはなぜか逆転していた。

上梨の母と父がどういう人間なのかが数行でわかるいい文章だと思いました。
 

nice205
pass
2016年04月17日(日)11時43分 兵藤晴佳20点
拝読いたしました。

いじめの底から自力で立ち上がる少女の物語。
自ら行動を起こし、誰かの助けになることで自分も成長していくという王道を行っています。

狐のムギ君がちょっとズレているのは仕方がないことですが、それがかえってコミカルです。
ネーミングは……もしかして高千穂遥『ダーティペア』の、あの黒豹っぽいクァールの「ムギ」でしょうか?

この尺で、いじめの三人組を描き分けるのはきつかったかと思います。
オチは、ちょっと伏線が必要だったでしょうか。

最後にツッコミ。
虚無僧が手にするのは、尺八です。固い節のある竹で作られた笛なので、お侍が武者修行の一環として虚無僧になるときは護身用の暗器となりました。
いじめの訴えに対して、教員はいかなる理由があっても黙認することはありませんし、やったら大問題になります。むしろ、おかしいと思ったら過剰なくらいに行動を起こすのが現実です。

 ともあれ、よく構成された作品を楽しませていただきました。
 

nice210
pass
2016年04月17日(日)01時58分 ピューレラ40点
こんばんは。

【好きだった点その1】
上梨さんの心理を丁寧に描いてあるところ。

ストーリー展開に合わせて、キャラクターの心理描写が描かれているのではなく
キャラクターの心理描写を大事にしつつ、ストーリーが進んでいくという感じだったので
とても入り込みやすかったです。

【好きだった点その2】
イジメを取り扱っているのに、暗くなりすぎていないところ。

ちゃんと上梨さんの辛い気持ちを描いてあるのに、そこのダークな部分に引きずられる事なく
物語が進んでいくところが良かったです。

【好きだった点その3】
ちゃんとイジメた相手を殴ったところ。

この作品を読む数日前に2016年4月号の文學界に掲載されていた
最果タヒさん【十代に共感する奴はみんな嘘つき】という作品を読みました。

この作品もある男子生徒を振ったことによって、その男子生徒のことを好きだった少女から
イジメられるという展開がある小説なのですが
こちらは、「殴ろう」と小説の最後で主人公が思っているものの
そこまでは描かれず終るのです。

ですが、こちらの作品はちゃんと殴るところを描いてくれて
だからこそ上梨さんと一緒に前に進めたように感じられました。


 

nice204
pass
2016年04月14日(木)16時31分 ミチル30点
 こんばんは、御作を読了いたしました。
 とにかくムギが可愛くて、カッコ良かったです! 神様になるのは大変だと思いますが、頑張ってほしいです。
 ムギのおかげで上梨がいい意味で強気に成長する場面が好きでした。自分をいじめる相手に立ち向かえる姿はカッコイイです。
 そのいじめっこも根が悪くないというのも、御作の憎めない所です。いい意味で予想を裏切られました。

 そんな優しい作品だと、佐野の骨折はやりすぎだと思わなくもないですが、不可抗力ともいえますし……悩ましいです。
 

 楽しみました。これからも執筆を頑張ってください!
 

nice228
pass
合計 14人 170点

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