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星の都のストク・イン
 ええ、ライトノベル研究所GW企画作品『星の都のストク・イン』をご覧くださいましてありがとうございます。
 なんだか聞き慣れない名前の出てくる、SFのような落語のような怪しげなお話でございますが、400字詰原稿用紙で50枚かそこらでおつきあい願います。

 さて、A long time ago in a galaxy far, far away……とくれば『スター・ウォーズ』でございますが、これも別の時空のお話でございます。
 便利なもので、こう前振りをしておけば、どんな無茶苦茶もたいていのお客さんは許してくださいます。
 全く、ありがたいことで。

 ここにも、私共の住んでおります宇宙とは別の宇宙がございまして……。

「クレルヴォでごぜえやす、遅くなりまして」

 石造りの真っ白で大きな御殿の、真っ白な広間の隅っこで。
 一人のがっちりした身体の若者が、白い髭を長く伸ばしたお年寄りの前にひざまずいております。
 かつては悪がはびこって争いに満ちていた「宇宙」をひとつにまとめた偉いお方で、お名前をワイナミョ・イネンと申します。
 二つ名は、「強固なる不滅の賢者」。
 若い頃には右手に剣、左手には何と申しますか、理力フォースと呼ばれる、まあ魔法とでも言いましょうか、不思議な力であっちこっち飛び回っては、暗黒皇帝だ地底大将軍だと成敗して回っていたんだそうで……。
 そんな具合に宇宙をまとめてからは、下々からはもう神様のように扱われますので、「それでは本当に神様になろう、もう一切何もしないよ」と国の取り仕切り一切をご家来衆に任せて隠居してしまいました。

「おぉ、クレルヴォか」

 このワイナミョさんの下働きでございまして、それはもう筋肉隆々の20歳過ぎ。
 その怪力たるや、そこらの重機やユンボなど比べ物にはならないほど。
 力仕事をさせたらこの宇宙で右に出るものはおりません。
 では他の仕事ではどうかといえば、それは言わない方が……。
 身なりをあまり構わない、レンガ色の無精髭ぼうぼうのいかつい男でございます。

「朝から御殿入り口のガーゴイル倒れましたんで直しに行っとりまして、帰って来たら妹のイルマがご隠居からの使いがあったと慌てとりましたんで」

「おお、ガーゴイルが。ワシは気づかなんだがイルマは無事であったか?」

「へえ、おかげさまで妹には何のお咎めもなく」

「なんじゃ、ガーゴイルが倒れたのはまたアレか」

「毎度のことで面目次第もごぜえやせん」

「なんの、最後の戦でお前たち兄妹だけになったのを、ワシが面倒見ておるのではないか、何を咎めることがある」

「では、妹のアレではないので」

 アレと申しますのは、このクレルヴォの妹イルマの悪い癖でございます。
 姿かたちは幼い赤毛の女の子でございますが、年の頃は娘盛りの16、7歳、頭が切れて手先も器用。
 世間からは「永遠の匠」と呼ばれて、毎日のように怪しげな機械をいじっては、しょっちゅう大爆発を起こしております。

「何やら徹夜でワシのような」

「お前がワシというな、まだ若いではないか」

「いえ、何やら大きくて翼のあるものを宿舎の地下室でコトカとか呼んでおりましたので」

 鷲はコトカ、因みに鷹はハウッカとも呼ばれております。

「しょうがないのう、いや、実は骨折ってもらいたいことが」

「承知しました、で、どいつの骨を」

「いや、喧嘩してこいというのではない」

 亡くなった両親が戦に明け暮れる部族の出身でございまして、その血を思いっきり引いております。
 人は育ちと申しますか、三つ子の魂百までと申しますか、神にも等しいこのご隠居でも如何ともしがたいことはありますようで……。

「レミンカのことじゃ」

「若旦那?」

 育ちのせいかクレルヴォが「若旦那」と呼ぶのはご隠居の息子、即ちこの世界を継ぐお方でございます。
 名前をレミンカ・イネンと申しまして……。

「20日ほど前からふとした風邪が元で寝込んでしまいよった」

「お医者には?」

「何の病かもさっぱりわからん」

「ちょっと待ってください? あの、若旦那が?」

「レミンカじゃが」

「あの、むらっ気が多くて喧嘩っ早いレミンカ・イネン様」

 血の気も恋も多いイケメン若様、とでも申しましょうか。

「それはお前もじゃ。この間も街で大喧嘩、隠居の身では後始末にも限度というものがある」

「いや、それは妹のイルマを大事にしろと、チャラけた彼氏にちょっと靴下を……」

「今は脱がんでよい。落ち着け……脱ぐな、脱ぐなよ!」

 この靴下も、「永遠の匠」イルマの手作り。
 ついた二つ名が「青き靴下の息子」。
 実はこれがないと、戦闘部族の血がたぎったときにとんでもないことになるのでございますが、それはともかくイルマも年頃の娘。
 いらぬ虫がつかないか、クレルヴォもただ一人の肉親として毛深い胸を痛めております。

「あれでまた男を逃したな。嫁き遅れたらどうする」

「メカ一筋で男の良しあしも分かりやせん。いい加減な男が騙そうとしようもんなら」

 満面に朱を注いで両の腕を左右にぶんぶん振るだけで、脇の下でかぽーんかぽーんと音がいたします。

「心配ない、そのときはワシが面倒みる」

「チョーシこいてんなよジジイ!」

 奥方は早くに亡くなって独り身を貫いてはおりますが、隠居してからはちょっと前まで有閑マダムから深層の令嬢、市井の美少女に至るまで浮名を流していた、なかなかファンキーなご隠居でございます。
 いらぬ心配をしたクレルヴォが、あろうことか「不滅の賢者」に見境もなく突進してくるのを抑えていこの力。
 ご隠居の理力フォースが作り出したバリアーと申しますか、見えない壁でございます。

「確かにレミンカは容姿端麗で腕も立つ。そのうえ、フォースもただものではない」

「だから困ってるんでごぜえやせんか? 女癖は悪い、ご隠居譲りのフォース鼻にかけてまあやりたい放題。ご隠居も大変で」

 ようやく落ち着いたクレルヴォがつい漏らした本音には、ご隠居もむっとしたようで。

「お前なんべん片棒担いだ? 息子の後始末はお前の後始末でもある。幼いころから戦続きであまり手をかけてやれなんだが、まあ子どもの頃から仲良く遊んでは仲良く悪さをして大きくなったものよ」

 そういうお顔がほころんでいるのは、ご隠居のお人柄と申しましょうか。
 クレルヴォも、脇道へそれた話を自ら元に戻しました。

「左様でごぜえやしたか。お医者もダメなら葬儀の段取りを」

「待て。せがれはまだ生きておる」

「どうもこうもなりませんな」

「どうもこうもならんのはお前じゃ」

 今度はクレルヴォが臍を曲げたようでございます。

「そういうことでごぜえやしたら、賢いイルマにでも」

「使いのついでにイルマに聞き合わせてみた」

 息子のことをよく知っているのは良い父親だ、という諺があるそうでございますが、これは「そんなことはあり得ない」という意味なんだとか。
 このご隠居、「不滅の賢者」と呼ばれても息子のこととなると全く知恵が回らないようで。
 これを見よ、と投げてよこしたのはポータブルDVDプレイヤーほどの小さな箱でございます。
 蓋を開けてみると、長い赤毛をを乱雑なポニーテールに括った眼鏡娘の立体映像ホログラムが現れます。
 これも、イルマお手製でございましょう。
 この娘が申しますには……。

「お医者さまでもポホヨラの湯でも治んないわけでしょ? 鬱ね、鬱。心に思いつめてることがあるのよ。聞き出して叶えてやることね。じゃ」

 口の利き方を知らない娘でございます。
 この兄にしてこの妹ありと申しますか。

 ところでポホヨラと申しますのはたいへん風光明媚な星で、最後の戦で乳飲み子を抱えて独立を守ったロウヒというシングルマザーの女帝が治めております。
 その地の美しさときたら、宇宙のあちこちで歌われるくらいで。

  ポホヨ~ラ~よい~と~こ~いち~ど~はおい~で~
  ロウヒ~の母~さ~ま~良いお~ひ~と
  あ~こりゃこりゃ……

 失礼いたしました。
 
 さてクレルヴォが蓋を閉じようといたしますと、妹のホログラムがこれを強引にこじ開けて申します。
「言い忘れたけど、話を聞く限りじゃ保ってあと5日……何とかしてよ、お兄ちゃん!」

 要件が済んだところで蓋は勝手に閉じてしまいました。どういう造りかよく分からない辺りが「永遠の匠」でございます。

 そこでご隠居、頭を深々と下げまして……。

「ワシが何を聞いても答えんのじゃ。そこでクレルヴォ。子どもの頃から仲良く遊んだり悪さをしたりしてきた仲なら言いやすかろう。頼む、レミンカに死なれてはせっかく治めた世界がまた争乱の底に沈む」

 無精髭のクレルヴォがボトボト涙をこぼしておりましたのは、妹のホログラムにおちょくられたのが情けないからではございません。
 清らかな川での幼いイルマと3人、丸裸の水遊び。
 お忍びで抜け出した街角での、悪ガキどもとの大喧嘩の数々。
 クレルヴォが足を引っ張った、レミンカ様の初めてのナンパ……。
 竹馬の友と申しましょうか、身分は違えども共に育った年月のことが一遍に思い出されてまいりましたので。

「何でもないことでごぜえやす」


 鼻水と涙を毛深い拳でぐしぐし拭いながら駆けて参りましたのは、御殿の奥にあるお世継ぎの居室でございます。

「若旦那? 若旦那? こんな広うて暗いお部屋のどこにおいでで?」

 薬の臭いがつーんと鼻を突く陰気な部屋の奥から、若者の声がいたします。
 病ですっかりよれておりますが、それでもただのお人ではない気品が感じられるのは、生まれお育ちのおかげでございましょう。

「来るなと言い置いたはず! 誰だ、無礼な!」

「クレルヴォでごぜえやす!」

「おお、待っていたぞ」

 この国で一番偉いお人の息子のところへ下働きの者がずかずか上がり込めるというのは、幼いころから気心の知れた間柄だからこそ。

「もう心配で心配で!」

「心配なら大きな声を出すな、僕は病人だ」

「それでも有り難いのは、クレルヴォなんぞを頼ってくださいましたこと。『不滅の賢者』にさえも言えないようなことを……」

「うるさい、人の話を聞け」

「へえ、それで話とは」

「そのナイフで、僕の胸を突き刺してくれ」

「こうでございますか」

 単純な男でございます。
 枕元のテーブルに置いてある果物、そこに添えてあるナイフを逆手に持ったかと思うと若旦那の胸にブスッ!
 ……と思えばベッドの上は空。
 ナイフは絨毯の上に音もなく落ちます。

「わ、若旦那! 若旦那!」

 今にも死んでしまいそうな声を立てているのはクレルヴォのほう。
 若旦那はと申しますと、いつの間にか背中に回って首を裸締めにしております。
 病んでいるとは申しましても、さすがは音に聞こえた武術の達人でございます。

「いかん、つい締め落とすところだった」

「ぜ~、は~、元気じゃごぜえやせんか」

「いや、命が危機にさらされると身体が勝手に」

「そうでごぜえやすか、では」

 その辺にいかつい鎧兜一式が飾ってございまして、手には大きなポールアックスが握られております。
 筋肉隆々たる大男がそれをひっつかんで一振りいたしますと、たちまち旋風が巻き起こります。
 若旦那は長い黒髪をゆらめかせ、大きくのけぞるや紙一重でかわします。

「何をする!」

「いや、死にかかれば元気になると先ほど」

「死んだら意味がない!」

 のそのそとベッドに潜り込んだ若旦那、何事もなかったかのように病人に戻ります。

「クレルヴォ、おまえにだけ教えてやる。笑ったら死ぬからな」

「お話によりますが」

 そこで若旦那の目がカッと見開かれますと、クレルヴォのいかつい体はふわりと宙に浮きまして、天井に叩きつけられます。

「笑いません、そんな怖い顔して、死んでしまうなんて、あ、痛い、笑いません……」

「何を隠そう」

 若旦那がころりと寝返りを打ちますと、クレルヴォは大の字のまま床に激突いたします。
 その様子がよほど可笑しかったのか、若旦那の声も多少震えております。

「笑うなよ」

「笑ってるのは若旦那のほうではごぜえやせんか?」

「ならば死ね」

 ベッドの上に起き上がった若旦那の手に握られているのは剣の柄。
 ぼうん、とそこから暗闇の中で伸びる光は、なんと申しますか、らいとせいばあ? 
 とにかく、その手の光る剣でございます。

「聞きます! お願えでごぜえやすから、どうかその、らいとせいばあを」

「うむ、20日ほど前のことだ」

 ぷしゅう、と光の剣が柄におさまりまして、改めてシーツにくるまって背中を向けた若旦那の告白が始まります。

「ポホヨラへ行った」

「ポホヨラ! 存じておりやす。ポホヨ~ラ~よい~と~こ~いち~ど~はおい~で~、ロウヒ~の母~さ~ま~良いお~ひ~と、あ~こりゃこりゃ……」

「うるさい」

 クレルヴォの巨体が理力フォースに押されまして、部屋の壁にガツンとぶち当たります。

「……続きを」

「海辺のテラスで一服したところ、お付きの方を伴ってやってきたのが20歳ばかりの美しい娘だ。僕がついうっとりと」

「いつものように」

「いっぺん死ぬかやっぱり」

 背中で凄まれるのも恐ろしいものでございます。

「らいとせいばあはご勘弁を」

「……見とれていると、彼女もニコッと」

「そうやっていつも女の子ひっかけては惚れたの腫れたのひっついては離れるの、相手に男がいたらいたで切った張ったの大喧嘩、おかげでこのクレルヴォも」 

 積もりに積もった日ごろの恨みつらみをこんな風に並べ立てられるのは、幼馴染なればこそ。
 普通の人ならただでは済むまい悪態の数々を聞いているのかいないのか、若旦那の恋物語は続きます。

「その場を立ち去るときにふわありと落ちたのが真っ白なハンカチ。もしもし落ちましたよと拾って届けに駆け寄れば」

「おっじょおさん、ハ~ンカッチが落っちましたよ」

「……白く美しい指でそっとつまんで懐へ」

「ああ~、あなたの~ハンカ~チ~に~な~り~たいわ~」

 歌うクレルヴォがごろごろごろ~っと転がって、先ほどの壁にど~んとぶち当たりますと、ベッドの上ではシーツにくるまった若旦那のレミンカ様が、それを真っ青に燃える目で睨みつけております。

「お付きの方に一枚のメッセージカードを出させて」 

 目を回すクレルヴォに、重々しい声で話を続けます。

「ガチョウの羽の形をしたペンで何やらさらさらっと書いて僕に手渡すと、幻のようにその場から消えた」

「フォースの力で?」

「夢のないことを言うな、僕がメッセージカードをうっとり見ているうちに、足早に立ち去ったのだ」

 そう言いながら心はその時にまで遡っておりますようで、目はどこを見つめているのやら。
 こうなるとこの若旦那、クレルヴォの手には負えません。

「……何が書いてありましたんで?」

 恐る恐る尋ねてみますと若旦那、急に居住まいを正しまして、猫背になった背筋をしゃんと伸ばします。

「セヲハヤミ イワニセカルル タキガワノ……」

「あぁ、なにかのフォースの呪文?」

「お前な……」

 クレルヴォの無知に深々と溜息をついた若旦那、そこは気を取り直しまして、幼馴染をゆっくりと諭します。

「これは遠い昔、宇宙のどこかでストク・インという尊いお方が歌った詩の前半、カミノクだ。シモノク、つまり後半は『ワレテモスエニ アワントゾオモウ』がわざと書いてない」

「そそっかしいですなあ」

「お前と一緒にするな」

「そうでなければ、若旦那がカードに気を取られている隙に」

「犬や猫じゃあるまいし。いつかきっとお会いしましょう、という部分だけが伏せてあったのだ。そう思うと、居てもたっても居られなくなってなあ……」

「じゃあお会いになったら。いつものことでごぜえやしょう」

 そんな軽口を叩きながらも身構えておるのですから、何ともはや学ばない男でございます。
 ところがこの若旦那、クレルヴォの無礼に怒りのフォースを放つかと思いきや、は~っと深い溜息をついたものでございます。

「どこの誰かもわからんのだ。ただ、その顔だけが目の前に浮かんでくるのだよ、ほらクレルヴォ、ブサイクなお前でさえ、その娘に見える……」

 それもそのはず、クレルヴォのいかつい身体には、思わず知らず若旦那のフォースが映し出すその娘さんの姿が、例のホログラムの如く重ねられております。
 ごわごわの髪にエラの張ったしかく~い顔には、ふうわりとしたプラチナブロンドに優し気な顔立ちをした青い瞳のお嬢様が、これまた光り輝くような白いワンピースで微笑んでおります。
 ベッドの上から両の手を差し伸べて迫る若旦那には、さしもの筋肉隆々たるクレルヴォも一歩引かざるを得ません。

「勘弁して下せえ、気色の悪い」

 そう言いながら、この国のお世継ぎレミンカのもとを達者な2本の足でたったか逃げ出したクレルヴォ、そのままワイナミョご隠居の下へと向かいます。

「こんなこったろうと思ったんだよ、いい加減にしろあのボーヤ……」

 御前に出るが早いか、ご隠居は老体に鞭打って、「どうであったか」とクレルヴォに駆け寄ります。
 話をつぶさに聞くや、なるほどと手を叩きました。

「そうかハンカチ拾うとはせがれも古い手を」

「ご隠居も身に覚えが」

「そうそう、いい女を見かけると、ハンカチでも財布でも、落ちてもおらんものを……」

「いや、財布はそのまんま持っていかれたら」

「そこでさりげなく中身を見せて、ああ奢ってもらえそうだな、と思わせるのじゃ」

「ご隠居も隅に置けませんな、このエロジジイ」

「今なんか言ったか」

「いや、というわけで、そのストッキングとかいう」

「……ストク・インではないか?」

「そうそう、そのミスター・ストック」

「もうよい、その歌なら、セヲハヤミ イワニセカルル タキガワノ……」

「そう、その先が書いてない」

「ワレテモスエニ アワントゾ オモウとは、今はこうしておいとまいたしますが、いつかきっとお会いしましょうという……」

「さすが、血は争えませんなあ」

「そうじゃワシの息子なら、って何か言ったか?」

「あっしの顔がそのお嬢さんに見えると」

 そこでご隠居、さあっと色めき立ちます。
 当然でございましょう、お世継ぎのお相手になるかもしれない娘さんでございます。

「どんな顔じゃ」

「こんな……」

 エラの張った男とご老体、えらく暑苦しいカラミになったもので。

「うっぷ、お前の顔ではない、現物を」

「ご隠居、若旦那みたいなフォースはご勘弁を……代わりに私の」

「何をするか」

 またしてもクレルヴォ、石造りの大広間をごろごろごろ~っと吹っ飛ばされまして、今度は勝手に開いた大扉の向こうへ放り出されました。
 老いたりとはいえご隠居、なかなかのフォースでございます。
 さて、クレルヴォとはいいますと、しばらく経って息せき切って戻ってまいります。

「ただいまここに」

「どこにおったのじゃ」

「そこの扉、ぽおんと出てからはなあんにも覚えがごぜえやせん。気が付いたら御殿の外で行き倒れと間違われて、人だかりができておりやした」

「迷惑な奴よのう」

 自分でやっておいて無責任な話でございますが、これも親子で。

「つまり、その娘を妃に迎えればよいのじゃな。探してまいれ。イルマが申すには、あと5日ではないか」
「面目次第もごぜえやせん、妹がいらんことを」

「いや、せがれが死んでは元も子もない、この世界を継ぐ者がおらんようになる。早うまいれ」

「そう言われましても、どこを探せば」

「全宇宙回って探して来い!」

 無茶ぶりもいいところで、クレルヴォもぶつくさ言いながら、御殿に仕える人たちの宿舎で共に暮らす妹のもとへと帰ってまいります。

「そういうわけで、どこをどう探したらいいのやら」

「無理ね」

 午後のお茶なんか飲みながら、たった一人の肉親の災難を虚ろな眼で言って捨てる薄情な妹でございます。

「簡単に言うがな、ただのご隠居の頼みじゃあない、不滅の賢者だぞ、不滅の……」

「その不滅の賢者にできないことを、何でお兄ちゃんができるかなあ」

 自分で作った甘ったるいクッキーを一口かじって、兄にも勧めます。

「まあ、糖分取って」

「そんなもん食う気になれるか、考えてもみろ、最後の戦で右も左もわからんうちにオヤジオフクロ死んでしまってなあ、ご隠居が拾ってくれなかったら俺たちゃどうなっていたか」

 大の男が仁王立ちのまま、ず~っと鼻水すすり上げますと、大粒の涙がぼたぼたあ~っと床に落ちます。

「お兄ちゃん、そこどいて暑苦しいから」

「若旦那も、こんなどこの馬の骨ともしれんブサイクと子供の頃から……」

「自覚はあったんだ」

 まぜっかえすイルマでございますが、眼鏡の向こうには何やらキラリと光る粒がございます。

「ご恩返しをしようにも、そのお嬢さんがどこの誰かも分からんでは」

「全宇宙回って探すのね」

 眼鏡をはずして目の下をそっと拭いながらつぶやきますと、兄は身体を固~く強張らせてぶるぶる震えだします。

「ご隠居とおんなじような無茶を」

 涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして泣く兄からしばらく顔を背けておりましたイルマ、思い切ったようにすっくりと立ち上がるや。

「ついてきてよ」

 お茶を飲んでいたテーブルの下に潜り込んで何やらごそごそやっております。
 クレルヴォがしゃがみこんでみますと、そこには四角い大きな穴。
 これが例の「地下室」なのでございましょう。
 セメントか何か固めて作った階段が続いていく先の暗闇から、妹の声が聞こえます。

「その汚い顔拭いてからね。コトカに乗せてあげるわ」

 洗面所で顔をばしゃばしゃやってから机の下に屈みこみ、ひいやりと冷たい空気の階段をどこまでも降りてまいりますと、ぼんやりとした明かりの中に何やら大きな鳥のようなものの姿がございます。
 これが、コトカ。
 クレルヴォの妹イルマ、「永遠の匠」の作った機械の大鷲でございます。
 その両脚がつかんでいる魚のようなものは、水上に降り立つための「浮き」かとも思われます。

「どう? 音の何十倍も速く、時空を超えて別の星へも一瞬で飛べるわ」

 ところがクレルヴォ、力はあってもそれほど器用ではございません。
 どのくらい不器用かと申しますと、太いワイヤーは力任せにちょ~ちょ~結びができましても、針の穴には糸が通せません。

「しかし俺では操縦が」

 不安そうな兄の声など、妹には聞こえておりません。

「しかも超高性能の人工知能を持つ完全自立型」

「あと5日だぞ」

 ああいえばこうと愚図るクレルヴォも、やる気になったイルマに太刀打ちできるものではございません。

「これに乗れば5日間で充分、ポホヨラの周辺を探して回れるわ」

「探すところが広すぎる」

 クレルヴォにしてはもっともな言い分。
 ポホヨラの周りには、人が住む星がいくつもございます。

「現場100回! そんなにきれいな人だったら、最初に出会ったポホヨラで覚えている人がいてもおかしくはないわ」

 血の巡りの悪い兄も、ようやく得心が行ったようで。

「よく分かった。それなら、ハッチを開けてくれ」

「……ハッチ?」

「このコトカに乗って、飛んでいかんと」

 机の下の小さな穴では、飛ぶどころか出ることもままなりません。
 イルマもしばらく考えておりましたが。

「あああああ! 出口がない! 忘れてた!」
 
 仕方な~くクレルヴォ、ご隠居に5日のお暇を頂戴いたしましてポホヨラへと参ります。

 それでは皆さん、ご一緒に!

  ポホヨ~ラ~よい~と~こ~いち~ど~はおい~で~
  ロウヒ~の母~さ~ま~良いお~ひ~と
  あ~こりゃこりゃ……
 
「ただいま」

「見つかった?」

「見つかるわけあるかい、海辺のテラス片端から探して、街中歩いて、遠い田舎まで行って、高い山の上まで登って……若旦那より先に俺が死ぬ」

「どうやって探したの?」

「だから4日かかってポホヨラ中くまなく……あ」

「どんな人か知らなかったんじゃないでしょうね」 

「いや、若旦那の話はして回ったぞ」

「レミンカ……様しか知らないことを他の人に聞いて回ってどうするの!」

 レミンカと「様」で間が一拍空いたのはどういうわけでございましょうか。
 それは置いておきまして。
 むっつりと黙り込んだイルマ、再びテーブルの下をごそごそやり始めます。

「また地下室か……コトカとかいうでっかいのはもう」

 床下からエコーのかかった声がいたします。

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……もうもうもう今日は今日は今日は何も何も何もしないでしないでしないで寝てちょうだい寝てちょうだい寝てちょうだいイライラするからイライラするからイライラするから……」

「そりゃこっちのセリフだろが、一言ひとこと3べんも繰り返しやがって」

「それよそれよそれよこっちきてこっちきてこっちきて……」

「だから3べんずつ言わんでも」

 そういいながらまた暗いヒンヤリした地下室におりてまいりますと、やはり大鷲のコトカがでんと鎮座ましましている傍らに、イルマが何やら怪しげな姿で佇んでおります。

「その姿は何だあ?」

 耳にはインカム。
 背中の巨大なバックパックには上と左右と背中にスピーカー。
 なぜかアンテナが1本生えております。

「これならレミンカ様の……想い人を探し出せるわ」

 そういうなり、せっせと兄の身体に装着いたします。

「使い方がわからんな」

「簡単よ。例の歌をどうぞ」

「例の?」

「セヲハヤミ……」

 イルマのいうとおりにリピートいたしますと。

「セヲハヤミセヲハヤミセヲハヤミ……なんじゃこりゃなんじゃこりゃなんじゃこりゃ……」

「余計なこと言わないで」

「そんなことそんなことそんなこと……」

「あ~うるさいしゃべるなバカ兄貴!」

 突然ブチ切れたイルマの勢いに口を閉ざすクレルヴォ。
 妹はその勢いでまくしたてます。

「いい、お兄ちゃん、これから一晩かけてポホヨラヘ行って、朝からこれでエコーかけて例のカミノクを繰り返すの」

「警察に捕まるだろ」

「大丈夫よ、お兄ちゃんならポホヨラの機動要塞サンポが出てきたって死なないわよ」

 サンポと申しますのは、ポホヨラの海中どこかに潜んで常に移動しているといわれる要塞でございます。
 この噂だけで、最後の戦でもポホヨラはどこから蹂躙されることもなかったとか。

「だから裸一貫になっても頑張ってきて」

「待てそんな恥さらしな」

「お兄ちゃんの恥なんかどうだっていいの! そのブサイクなエラ張り顔を縦につぶれた逆三角形の体に乗っけて毎日歩いてんだから同じことじゃない!」

 人権侵害の極みともいうべき暴言を一気にまくしたてましたイルマ、目に涙をいっぱい貯めて怒鳴りつけます。

「あと1日よ! レミンカ様の命がかかってるのよ、この恋には! この恋には! この恋には……!」

 機械なしでも十分エコーがかかるだけの声量でございます。

「子供のころからお兄ちゃんとレミンカ様がなんかやるたびに、私がどんな気持ちでいたか……考えてよ!」

 そのままぺたんと尻餅をついて泣き崩れる妹に、不器用なクレルヴォはブサイクな顔をひきつらせ、オロオロと地下室を歩き回るばかりで。

 
 次の日の朝、再びポホヨラに現れたクレルヴォでございます。

「何だってんだい、さんざん泣いたらくうくう寝ちまいやがって……」 

 ふわあとあくび一つで見上げた海辺の空は、爽やかに晴れ渡っております。
 きらめく海岸沿いの道路は、さすがリゾート地、遠くを早起きのお金持ちが2、3人ジョギングしております。

「いい気なもんだよ全く、こちとら若旦那の色恋でえらい迷惑……」 

 そんなことを申しながら、インカムつけてエコーかけて、さあお仕事の始まりでございます。

「セヲ~セヲ~セヲ~……ハヤミ~ハヤミ~ハヤミ……」

 ひとことつぶやいただけで、たいへんな音量のエコーがかかります。

 あちこちのホテルのベランダに、眠い目をこすりこすりラフな格好の観光客が鈴なりに現れました。

「イワニセカカルタキガワノ~イワニセカカルタキガワノ~イワニセカカルタキガワノ……」

 慌てて続きを一気に口にしますと、そのま~んまエコーがかかって繰り返されます。
 そのうちにジョギングやら見物やらラジオ体操に行く子供やらで、道路の両端は人だかりの山ができました。

「えらいことになってしまったえらいことになってしまったえらいことになってしまった……」

 警察に通報されるのも時間の問題とこそこそ裏路地に逃げ込みましたところ、床屋が早くから店を開けております。
 ここでクレルヴォの鈍い頭が一瞬だけ閃きました。
 床屋というところは、かわるがわる人がやってきては、静かにじっと座っているしかない場所でございます。
 ここに張り付いていれば、こんなエコーをかけなくとも、一人位はストッキングもといストク・インの歌に気づく者があるかもしれません。

 ドアベルをからんからんと鳴らして店に入りますと。

「いらっしゃいまっほ~、お髭でござ~いますね」

 小指を口元に当ててものを言う怪しげな理髪師のおっさんが、この日最初の客をお出迎えいたします。

「お席もちょう~ど空いております」

「いや、混んでないと」

「ご安心ください、当店はぎょ~うれつのできるバ~バ~でござ~いますドウゾ~」

 エコー関係のインカムもバックパックも引きはがされてほとんど無理やり鏡の前に座らされましたクレルヴォ、我に返るやごほんと咳ばらいをいたしまして……。

「セヲ~ハヤミ~」

「あら、ストク・インさまのお・う・た」

「反応早いな」

「当然ですわよ、何があっても愛し合う者は結ばれる……素敵なお歌じゃございませんか」

「知ってるのか」

「ええ、娘がよく口ずさんでおりますわ」

「年はいくつ?」

「19ですわ」

「それだ~!」

 思わぬところで探す相手が見つかったと思って有頂天になっておりますと、店の奥から学生風の若者が。

「いってきまあ~っす」

「ほら、あれが娘」

「……あんたは?」

「あらやだ、母親ですのよ~ん」

「ちょっと用事が」

「あら、お髭ソリソリがまだ終わってませんわ」

 喉元にきらりと光る剃刀をジトっと見つめながらクレルヴォ、特に自慢ではありませんがトレードマークとなった髭面をオカマの理髪師に任せます。
 毎度まっほ~と怪しげな声を背中に浴びながら店を駆けだしたクレルヴォ、河岸を変えることにいたしました。
 それから一日中、ここも含めた床屋をのべ20軒、サウナを30軒、温泉スパを40軒、ぐ~るぐ~ると回りまして、「セヲハヤミ~」の繰り返し。
 日が暮れる頃には顔も頭も剃られた上に、お肌もツルツルのピカピカになって元の床屋に戻ってまいりました。

「おいでまっほ~……ってまたあなた?」

 行列ができるという割にはガラガラのこのお店で、髭や髪はおろか、胸毛や脛毛まで何度となく剃ってきたクレルヴォでございます。

「セヲ~ハヤ~ミ……」

「また始まったわよこの人、今日で何回目かしら」

 そこへドアベルをからんからんと鳴らして飛び込んでまいりましたのは年の頃は50代、エプロン姿にサンダル履き、買い物前の肥えたお母ちゃんといった風采の中高年女性で……。

「ちょっとパーマお願いできない?」

「今、ちょっと手が離せないのよ」

「ちょっとぐらい放っておいてもいいじゃないの、そんなブサイクな筋肉ダルマのツルッパゲ」

 ひとこと多いこのオバサンにクレルヴォもむっといたしましたが、そこはぐっとこらえます。

「俺はいいから」

「どうも~」

 そう言ってパーマの準備にかかるオカマでしたが、このオカン、せっかちなのか「遅い」とぶうぶう文句を言っております。

「お代はいつもの通り末でござ~いますか?」

「ああ、月末にね」

「そうなのよお、こんなときは食事も使用人任せはどうも気が咎めてさあ」

 お金持ちのようでございます。
 娘さんは何やら患っているようで。

「ご様子はいかがかしら?」

「この20日ばかり、もうずっとベッドに横になったまんまよ」

「恋わずらいですって?」

「そうなのよ、あの子ったらもう、海辺にちょっと散歩に出たら、海辺のテラスで偶然ハンカチ拾ってくれただけのいい男に一目惚れ。19歳にもなって本当にしょうがないねえ」

「どこの誰かも分かんないんじゃしょうがないわねえ」

「その場でお茶でも飲んで、アドレス交換でもすればよかったのに」

「言ってることとやってることが違うんじゃありませんこと」

「アタシ普段から厳しいかねえ」

「ネリッキちゃん、小さいころからよく知ってますけど、そりゃあいいお嬢さんにお育ちですよ」

 病みついた娘さんの話になったようでございます。

「一人娘だからねえ、そりゃあもう」

「蝶よ花よと可愛がられ、お母さまときたら片時も目をお離しにならない」

 髪をピンでカチャカチャ止めながら、このオカマ、なかなかはっきりものを申します。

「それなのにこんな病気になって……外へなんぞ出すんじゃなかった」

「もっと外へお出しになればよかったんですよ、誰がネリッキちゃんに悪さなんぞするもんですか」

 オカンは急に機嫌を損ねます。

「そんな男がいたからこんなことに」

「たかがハンカチ拾ってくれただけでしょう?」

「それが手なんだよ! アタシだって若いころに……」

「何か間違いでも?」 

 かなりプライバシーに踏み込んだお話でございますが、そこはオカマ、さらりとかわしました。
 オカンはため息一つで、高ぶった気持ちを収めます。

「アタシに知られるのがよっぽど怖かったのか、メッセージカード1枚渡したっきり」

「何て書いたの?」

「それがねえ、アタシにもトンと意味が……たしか、セヲハヤミ」


「おおおおおおおっとりゃあああああああ!」

 そこでクレルヴォ、雄叫びと共にシートから跳ね上がりました。

「それだちょっと待てババア!」

「何だね、このツルハゲ全身毛ナシ扁平二等辺三角形男は!」

 パーマ途中で髪からぶすぶす湯気立てながらシートから下りたオカンの前に、オカマ理容師、必死の形相でたちはだかります。

「奥様、お気を鎮めてください、ほら、アナタも謝って! この方をどなただと思ってるの!」

「知るかそんなもん、おいババア、その歌もらったのは、うちの若旦那じゃあ!」

 ほお、とオカンは口元を歪めて笑います。

「ちょうどいい、一人娘に婿が見つかったってわけだね」

「なんじゃとおおお!」

 なおもつかみかかろうとする巨漢クレルヴォを、やめてくださいと力の限り背中で押しとどめるオカマ。
 そこはオカマだけに力に限りがございます。

「若旦那死のうが生きようがお世継ぎが生まれんようになっては元も子もないんじゃあああ!」

「それはこっちのセリフだよお、跡継ぎがおらんではポホヨラがいつ他所の食い物にされるかわからんじゃないかあああ!」

 ああっとばかりにオカマは二人がかりの力で店の隅へ弾き飛ばされてしまいました。
 一触即発。
 そこへドアベルをからんからんからんと威勢よく鳴らして入ってきた若者がおります。

「そこまでだよくやったクレルヴォ!」

「若旦那!」

 クレルヴォが振り向くまでもなく、床屋の鏡の中には颯爽と立つ美青年。
 それは恋の病で床に伏し、余命あと1日もないはずの若様、レミンカ・イネンの姿でございます。

「アンタ誰だい!」

 眉の間に皺を寄せて、荒々しく一喝するオカンでございましたが、レミンカ様は相手にもしません。

「クレルヴォ誰だそのババアは」

「ババアとは何だいババアとは! 聞かれたらきちんと名乗んな若造!」

「やかましいお前に名乗る名前なんぞあるか!」

 売り言葉に買い言葉で罵り返す若旦那、暗いお部屋で死ぬの生きるの言っていた病人と同一人物とはとても思えません。

「ああ! 何で若旦那が元のキャラに!」

「悪いけど、お兄ちゃんのやることなすこと全部モニターさせてもらったわ!」

 クレルヴォの悲鳴に答えるようにやってまいりましたのは、人呼んで「永遠の匠」、妹のイルマ・リネンでございます。

「お前何でここに……」

「発信機と盗聴器、それ」

 さっきオカマが外したインカムとバックパック。
 音声を拾っては場所を妹に告げていたわけで。
 道理でアンテナが生えていたわけでございます。

「何で一瞬で来られたかって聞いてんだよ!」

 お忘れかもしれませんが、ここはA long time ago in a galaxy far, far away、星と星の間には、神秘の宇宙空間がございます!
 ちょっとそこのタバコ屋まで、というわけには参りません。

「それは……」

 イルマが口を開きかかったとき、一触即発は相手を変えて発火点を迎えておりました。

「どこのドラ息子か知らないけど、婿に来ないなら娘は渡さないよ!」

「ならば力ずくでも貰っていくぞ!」

 傲岸不遜、厚顔無恥、傍若無人、これこそが「不滅の賢者」、ワイナミョ・イネンの息子レミンカ・イネンの本領でございます。
 そこでクレルヴォ、大向こうの声を発します。

「よっ! そうこなくっちゃ若旦那!」

 がっくりと膝をついたイルマはといえば、どうやら争い事を収めるつもりでおりましたようで。

「……ってそっち? 私はいったい何のために……!」

 クレルヴォの声援を受けて若旦那が向き合うオカン、そこで相好を崩します。
 和解の兆しが見えたかと思いきや。

「面白い」

 こちらにも矛を収める様子はございません。

「アタシをポホヨラの主と知っての狼藉かい!」

 すなわちこの品のないそこらのオカンが、ポホヨラの女帝ということになります。
 その名もロウヒ。
 ポホヨラの母。
 どうもちょっと話が違うようでございます。

  ポホヨ~ラ~よい~と~こ~いち~ど~はおい~で~
  ロウヒ~の母~さ~ま~良いお~ひ~と
  あ~こりゃこりゃ……

 ちっともよいお人ではございません。

 店の隅で震えておりましたオカマの床屋、蚊の鳴くような声をようやく振り絞ります。

「あの、ここはまだこれからお客さんが……」

 鼻で笑った若旦那ではございますが、どこまで守られるか分からない安全をきっちり保障だけいたします。

「心配するな、よそでやる!」

 表へ出ろとばかりに店から駆けだした若旦那、握りこぶしを一振りいたしますと、手の中の柄からぼうんと伸びましたのは一条のらいとせいばあ。
 それを追ってきたロウヒの母様が構えましたのは、どこから取り出したのかフランシスカと呼ばれる手斧。
 かつては海の戦人が手にしていたものでございますが、これもぼんやりと光を放っております。
 斧の刃が熱を持っておりまして、厚い鋼鉄の板でもバターを切るように真っ二つにいたします。

「行くよ若造、ネリッキが欲しけりゃ力ずくで取っていきな!」

 打ちかかる斧を軽くかわした若旦那、軽口叩いて光の刃を一閃させます。

「へえ、あのお嬢さん、ネリッキとはまたいい名だ」 

「親が苦労してつけた名前を気安く呼ぶんじゃないよ!」

 こんどはかわしきれず、中高年の斧を刃でしっかと受け止めた若旦那、あろうことかパワー負けして地面に転がりました。

「大丈夫でごぜえやすか若旦那!」 

 店から駆けだしてきたクレルヴォ、震えながらつぶやきます。

「よくも若旦那を……」

 そこで脱ぎ捨てましたのは、あの青い靴下。
 お忘れかとも存じますが、クレルヴォの二つ名は「青き靴下の息子」でございます。
 これこそが、身体に流れる戦闘部族のたぎる血を抑えておりましたリミッター。
 外れますとただでさえいかつい身体がいつもの5倍増しほどに膨れ上がります。
 しかし真の力はそこではございません。

「ただじゃ済まさんぞババア!」

 暑苦しい巨人が吼えますと、ロウヒ様を守るために駆けつけましたのはポホヨラの警察やら軍隊やら。
 そのコテコテに武装した面々が次々に倒れます。
 一方、どこから取り出したのか、ガスマスクを装着いたしましたのはイルマとレミンカ様。
 実はクレルヴォ、この宇宙に足の臭さで右に出るものはおりません。
 興奮するとこの通り、ガスマスクなしでは立っておられないほど。
 たまりかねたイルマが作りましたのが、超強力なインソールを仕込んだ青い靴下というわけでございます。

「アタシの星を汚すんじゃないよ!」

 ロウヒ様が一声叫びますと、肥えた身体で眩ゆいオーラが炸裂いたします。
 爆風が超音速で街角を吹き抜けますと、辺り一帯の大気を汚染していた悪臭が弾き飛ばされました。
 四方八方から吹き戻されてくる突風。
 イルマとレミンカ様のガスマスクが引き剥がされます
 クレルヴォはといえばごろごろごろ~っと転がされ、店にぶつかってやっと止まりました。

「若旦那、無駄に強いですぜこの婆さん!」

 似合わない泣き言を垂れております。
 片やロウヒ様はと申しますと、よろよろ立ち上がる巨漢に向かって大見得を切ります。

「これがポホヨラの力だああ!」

 ロウヒ様、ポホヨラの母よと男たちの歓声が上がる中、オカマの床屋さんだけはまだ店の中で震えておりました。

「これじゃあお客さんが……」

 そんな迷惑など気にも留めないレミンカ様、光の刃をぷしゅうと収めまして。

「倒しがいがあるぜ婆さんよお!」

「なあんのおおお!」

 エールの交換のごとき叫びが発せられますと、風か嵐か、路面がばっくりと裂けました。
 レミンカ様とロウヒ様、お互いのフォースが衝突して、衝撃波が襲ってきたのでございます。
 こうなってしまいますと、警察でも軍隊でもどうにもなりません。

「退避~! 退避~!」

 土煙上げて去っていく皆々様を、後ろからペコペコ頭を下げて見送っておりますのは「永遠の匠」イルマでございます。

「すみません、ほんと~によそでやります!」

 やがて、睨み合う女帝と若旦那、立ち尽くす兄をきっと見据えたイルマ、天に向かって叫びました。

「コトカ!」

 海の彼方に沈もうとする大きな夕日に、小さな点が黒くぽつんと浮かんだかと思うと、翼を広げた大鷲が飛んでまいりました。
 タイミングよくレミンカ様とイルマが現れたのは、これがあったればこそでございます。
 兄が目指す相手にたどり着いたと知るや、大鷲コトカに乗り込んで御殿からレミンカ様を拾い上げたイルマ、時空を捻じ曲げ、星々の間をあっという間に飛んできたのでございます。
 当然、御殿の一部と宿舎は倒壊いたしましたが……。
 それはそうと、自動操縦になっております大鷲コトカ、レミンカ様とクレルヴォを両の脚でひっつかみました。

「いきなり何すんじゃ妹よおおお!」

「待てイルマ決着はついとらんぞおおお!」

 幼いころから仲良く喧嘩で鳴らしたタッグチーム、大空の彼方へと消えてしまいます。
 代わりにロウヒ様の前へ残されたのはイルマ1人でございます。

「で、アンタがアタシの相手だって?」

「あ……」

 イルマもまとめて逃げればよかったのでございますが、生憎とコトカの脚は2本だけ。
 できることは苦笑いくらいのもので。

「いえ、お互い頭を冷やしてくれないかな、と」 

 そうは問屋が卸しません。
 その手は桑名の焼きハマグリ、そううまくはイカのキ……。
 失礼いたしました。
 ともかく、ここまでやったからにはポホヨラの女帝がそう簡単に許すわけがございません。

「甘いねえ、お嬢ちゃん! 」

 ふっくらした手で小柄なイルマの頭をナデナデするなり叫びます。

「ハウッカ!」

 見る間に巨大な鷹のオーラがロウヒ様をを包み、天空高く飛び去って行きました。
 イルマがさっと取り出しましたのはお手製のオペラグラス。
 その倍率はただ物ではございません。
 覗きこめば、そこには太陽に向かって飛ぶ大鷲に追いすがる鷹がおります。

「逃げて! お兄ちゃん! レミンカ……様……」

 乙女の祈りも空しく、ロウヒ様の変じた鷹にロックオンされたレミンカ様とクレルヴォの大鷲コトカ。
 背中でくるりと反転いたします。
 そのクチバシが、ハウッカと呼ばれる鷹の背中に迫ったと思いきや。
 今度はその鷹が反り返って宙返りいたします。
 大鷲の背中を捕らえる鷹の爪。
 翼を広げて燃え上がる鷹のオーラで、大鷲は一瞬で粉砕されてしまいました。
 オペラグラスの倍率を上げれば、真っ逆さまに海へと落ちていく、レミンカ様とクレルヴォの姿がはっきりと分かります。
 イルマはどこから取り出したのか、手の中の通信機に向かって呼びかけます。

「ハウキ!」

 再びオペラグラスを覗きますと、海中より巨大なカマスハウキが現れて、イルマの兄と若旦那をばっくりと呑み込んでしまいました。
 こんなこともあろうかと、ポホヨラに到着したときに予めコトカの両脚から投下しておいた「浮き」のようなものでございます。
 これを作るヒマがあるなら大鷲を3本足にでも4本足にでもしておけばよかったのですが、そこは「永遠の匠」。
 その考えは常人の及ぶところではございません。
 さて、この巨大カマス「ハウキ」が再び海中に逃れようといたしますと、「ハウッカ」すなわち鷹のオーラはこれも引っつかんで持ち上げようといたします。
 持ち上げられては沈み、引き込まれては持ち上げの力比べが何度となく続くうちに、カマスの機体にもひびが入り、ロウヒ様のオーラにも陰りが見えてまいります。
 やがて夕日は水平線のかなたへと沈み、その残光が波立つ海面に砕け始めた頃。
 光る鷹の翼が大きく羽ばたいたかと思うと、カマスは天空高くつかみあげられました。

「レミンカ様!」

 地割れの入った道の上で独り佇むイルマが、オペラグラスを手に悲鳴を上げたとき!
 大きな水柱が高々と噴き上がり、カマスは鷹のオーラと共に海の中へと沈みました。
 ほっとしてその場に崩れ折れたイルマも、はっと我に返ります。

「いけない、回収!」

 通信機に向かってハウキ、ハウキと呼びかけますが、彼方の海面に浮かんでくるものは何一つございません。

「どうしよう、レミンカ様、お兄ちゃん……ロウヒ様」

 眼鏡の奥からぽろぽろと涙を流すうちに、海岸の町もとっぷりと日が暮れてまいります。
 夕闇の向こうから海風が吹き始め、落胆する少女の髪を揺らし始めました。


 ところがその風、突如、嵐となって吹き荒れます。
 見れば、真っ青な闇に溶けていく海面に、無数の光が明滅する巨大な平たい円筒のようなものが現れました。
 それは上下に分かれ、上半分がゆっくりと回転しております。
 まるで臼のように。

「あれ、まさか……」

 そう、これこそがポホヨラを最後の戦から守ってきた伝説の機動要塞サンポでございます。
 その上に蜃気楼のごとく浮かびましたのはホログラム、レミンカ様の端整なお姿。

「イルマ、済まなかったな」

「いいえ」

 お言葉にさっと居住まいを正したイルマ、その場にひざまずきます。
 もちろん、この距離では話は通じておりません。

「話はついた」

「おめでとうございます」

 雨降って地固まるというところでしょうか、ロウヒ様の一人娘ネリッキとの婚約が成ったということぐらいはイルマにも察しがつきます。
 めでたい話にもかかわらず、涙で濡れたままのその顔はぐしゃぐしゃに歪んでおりますが。
 その傍らに屈みこんだ汗臭い巨体。

「何だ生きてたの、お兄ちゃん」

 とりあえず身体はしぼんで、足の臭いもさっきほどではありません。
 その臭いに咳き込み咳き込み、涙を拭きながら強がるイルマ。
 いつの間にか戻っていたクレルヴォにぎゅっと抱きしめられますと、イルマは小声で囁きます。

「嘘に決まってるじゃない、5日の命なんて」

「嘘?」

「恋わずらいなんてすぐ見当がついたわ。そんなに好きな相手なら、さっさと結婚しちゃえばいいのよ」

 クレルヴォのむさくるしい腕の中から、しゃくりあげる声が聞こえてまいります。

「こっちだってつきあってた彼氏ぐらいいたんだから気にしたりしないわよ……」

 不器用でカンの鈍い朴念仁の兄でも、ここまで来れば察しがつきます。
 身分違いの恋を自ら諦めた妹は、別の恋を探していたのでございましょう。

「泣くな、妹よ」

「別に泣いてなんか……暑苦しいからどいてよ」 

 悪い、と離れるクレルヴォが傍らにひざまずくと、妹は涙声で囁きます。

「レミンカ……様が落ち着けば、心配しなくてよくなるわ。お兄ちゃんも、私も……」

 それが聞こえているはずもございませんが、レミンカ様のホログラムが照れ臭そうに天を仰ぐや。
 海風がどうっと吹き抜け、辺りを潮の香りで満たしました。

「イルマ、その……僕と結婚してくれ」

「え……」 

 イルマが呆然としておりますと、海岸のホテルというホテル、街々の家という家から、訳も分からず歓声が夜空を満たします。
 そこでレミンカを押しのけて現れましたのは、胸元の開いた純白のドレスで正装した、プラチナブロンドの清楚な姫君。

「初めまして、イルマ・リネンさん!」

 微笑むだけで夜空をオーロラが照らします。

「ポホヨラの母ロウヒの娘、ネリッキです!」

 その笑顔を一瞬、寂しげに曇らせて申しますには。

「私も愚かでした、初めて会った年下の男の子に一目惚れして寝込むなんて」

 そこで気丈にコツンと小突いてみせた相手は、ホログラムの外にいるレミンカ様でございましょう。

「ここまで無茶してくれる女の子がずっと傍にいたのに……恥を知りなさい」

 腕を引かれて、入れ替わりにレミンカ様が現れます。

「というわけで、僕は決めたからな」

 相手は海上に現れた機動要塞サンポの映すホログラム、ノーの返事などできるわけがございません。

「どういうこと? お兄ちゃん」

「ここだけの話……」

 そこで姿もなく、街中とは言わずこのポホヨラ中に響き渡った声。

「よくやった、せがれよ!」

 誰あろう「不滅の賢者」ワイナミョ・イネンでございます。

「これでこの世界も安泰じゃ!」

「全くやってくれたもんだよアンタのせがれは!」

 怒鳴り散らすその声は、ポホヨラの母ロウヒ。

「昔のアンタそっくりだ! 元はと言えばたかがハンカチ1枚……」

 ポホヨラ中から上がる「え」の声。
 それに紛れてクレルヴォが耳打ちするには。

「腹違いの姉弟だと。姫様と若旦那」

 宇宙を揺るがす大スキャンダル発覚でございますが、そこは「強固なる不滅の賢者」、動じる気配もありません。

「きちんとプロポーズしたのに、ポホヨラの独立のためだと振られたのはワシじゃぞ?」

 遠い昔を蒸し返した痴話喧嘩もそこで終わりと思いきや。
 店の中から出るに出られず震えていたオカマの床屋さん、ようやく外へ駆けだしてまいります。

「おめでたい話に盛り上がってるとこ悪いんですけどねえ! これ、どうしてくれんのよ! 商売あがったりじゃない!」

 見れば、割れているのは店の前の道路だけではございません。
 店の中の鏡もすっかり割れております。

「……あ」

 返す言葉も必要もないイルマが呆然としておりますと、ロウヒ様がワイナミョ様に言い返します。

「アンタとアタシのことはいいとして、せがれの不始末どうしてくれんだい!」

 まあまあ、とそこを収めたのは娘のネリッキ姫。
 激しい海風にきらめく満天の星が浮かぶ夜空にも眩しく、プラチナブロンドがゆらめきます。
 人差し指をちょいと立てるや、片眼を閉じて一言。

「割れても末に、買わんとぞ思う」

 おあとがよろしいようで。
兵藤晴佳 

2016年04月10日(日)13時55分 公開
■この作品の著作権は兵藤晴佳さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
『牧場の少女カトリ』ってご存知ですか?
逆境にあっても清く正しい心を曲げないカトリが暗唱する叙事詩『カレヴァラ』。
恋に魔法に活躍するのは、個性的で情熱的な神々です。
ちょっとやりすぎじゃない? と突っ込めるところもなくはありませんが。

5月8日に改稿しました。

2016年07月04日(月)23時22分 兵藤晴佳作者レス
>ナマケモノさま

 ご感想ありがとうございました。

 カレヴァラをご存知の方に読んでいただくことができただけでも嬉しく思います。
 身勝手でやりたい放題のカレヴァラの神々(と、敢えてよばせていただきます。口伝でも神話は神話ですので)を古典落語の世界でドタバタやらせてみたかったというだけの話なのですが、作者が楽しんだ分、元ネタが分かりにくい作品になってしまったようです。

 お題はクリアしたかと思ったんですけどねえ……これがヒンドゥー教とかポリネシアの神話でも説明は必要だったんでしょうか。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年06月26日(日)22時35分 兵藤晴佳作者レス
>茉莉花さま

 ご感想ありがとうございました。

 落語を語り口だけそのままにして、強欲で身勝手で奔放なカレヴァラの神々を登場させてみたかったという作品ですので、どうしてもバタバタした感じになってしまいました。
 というか、『らくだ』みたいにクセのある人物が現れては消えて大騒ぎ、という展開を意識しましたので、ワイナミョイネンからオカマの床屋さんに至るまで、登場するのがこんな人数と相成りました。

 古典落語へのリスペクトですので、筋にあまり手を加えるわけにもいかず……アレンジは後半の展開でご勘弁ください。これでもキャラが暴走した結果ですので。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年06月23日(木)22時34分 兵藤晴佳作者レス
>いりえミトさま

ご感想ありがとうございました。

落語調の文体で書くと、思い浮かんだことをそのまま書けるので効率がよかったのですが、読みにくかったようで申し訳ありません。

事情を知っている者同士のやりとりを描くことでバックグラウンドを描きたかったのですが、掴みが甘かったようですね。

ご覧くださいましてありがとうございます。今後もよろしくおねがいいたいます。
 

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2016年06月12日(日)22時13分 兵藤晴佳作者レス
>たかたセカンドさま

 ご感想ありがとうございました。

 勢いに任せて作者が楽しんでしまいました。
 最後まで読んでいただき、恐縮です。

 落語の語りはマイナーなんですねえ……。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年06月01日(水)22時30分 兵藤晴佳作者レス
99kgさま

 ご感想ありがとうございました。

 読みにくい作品ですみません。
 登場人物ごとに独特な口調を心がけたのですが、及ばなかったようです。

 カレヴァラの神々はクセが強く、落語の世界で生かしてみたいと思ったのですが、この語り口には好き嫌いがあるようです。

 イルマもネリッキも魅力的だとのこと、光栄です。
 クレルヴォはまあ、仕方ないです。そういう男ですので。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年05月29日(日)17時54分 兵藤晴佳作者レス
たぬき 様

 ご感想ありがとうございました。

 ロウヒについてのツッコミを楽しんでいただけて光栄です。

 カレヴァラの神々を落語に登場させる以上、どうして語りを独特のものにしないわけにはいきませんでした。読みやすくするにはどうすればよいか、もう少し工夫が必要です。

 話す内容、口調、言葉遣いの他に、話者を区別しやすくするするにはどうすればよいか、もう少し勉強します。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年05月29日(日)08時54分 兵藤晴佳作者レス
ハイ様

 ご感想ありがとうございました。

 新作落語を作るほどの才はとてもとても私にはありません。
 古典落語の世界にカレヴァラの神々がいたらどうなるかという試みが精一杯でした。

 嬉しいことに、本来ならすぐにオチ「割れても末に買わんとぞ思う」に行くところでレミンカイネンが暴れ出してくれました。

 古典落語の戦闘描写としては『たがや』がありますが、よく読んで参考にすればよかったと思います。

 話を行ったり来たりさせるのに、単純で要領の悪いパワーだけが取り柄のクレルヴォは適任でした。この濃い男がどうも癖になったようですみません。

 押しが強くてガサツなロウヒは、カレヴァラのイメージ通りになったかと思います。
 まあ、イメージは現実を後に置いてどんどん広がっていくものですし……。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 
 

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2016年05月29日(日)08時46分 兵藤晴佳作者レス
おいげん様

 ご感想ありがとうございました。

 枚数とお題はきっちり守ったうえで、人が書かないことを書こうとしたんですが、まだまだ工夫が足りなかったようです。

 ギリシャ神話や北欧神話は誰でもやることなので、敢えてカレヴァラを選んだのですが、個人的には神々の魅力を再発見できてよかったと思っています。

 ライトノベルの間口が存外に狭いことがよく分かりました。
 ステレオタイプ破りの突破口がどこにあるか、もう一度よく探してみます。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 

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2016年05月11日(水)22時54分 兵藤晴佳作者レス
コボルトスキー303さま

 ご感想ありがとうございました。

 ドラマは終わりに向かって真っすぐ進むものではない、というのが私のポリシーですので、そういうドラマを求めていらしゃらない方にはきつい作品だったかと思います。

 唐突に事件が起こって、「実は……」という展開が苦手な方もいらっしゃるかと思います。
 読みづらい作品ですみませんでした。

 なお、落語のオチというのは、「これでおしまい」というサインのようなものなので、そこが最大の笑わせどころとは限らないことを申し添えておきます。

 ご覧くださいましてありがとうございました。


 

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2016年05月10日(火)23時17分 兵藤晴佳作者レス
青出さま

 ご感想ありがとうございました。

 なかなか好評価をいただけない本作を理解してくださり、感激しております。

 『星の都』も、実は落語のお題にあるんですね。嘉門達夫氏のアルバムにも、『月宮殿~星の都~』という落語とシンセサイザーのコラボがあります。

 本当は、セリフ全部関西語でやりたかったんですよね。
 さすがにやかましいと思ってよしましたが。

 『カレヴァラ』で真っ先に目につくのは、「見かけはジジイ、心はヤンキー」ワイナミョイネンと、「行く先々をハーレムにする暴走イケメン」レミンカイネンです。この2人が「ご隠居」「若旦那」となって落語の世界に降臨したら、というのが発想の発端です。

 落語の恋物語と言えば、筆頭はこの『崇徳院』。若旦那のために走りまわるタフな男……力加減を知らないクッレルヴォなら大丈夫でしょう。

 尻を叩くおかみさんは……悲運の妹にするわけにもいかないので、メカフェチのイルマリネンを女性化して充てました。

 結果はこの通り。
 レミンカイネンがおとなしく床に伏せっているわけもなく、ロウヒの母様に挑戦することとなりました。
 『カレヴァラ』でいえば「魔法の臼」サンポ争奪戦争勃発です。

 ネリッキという女神は、作者が森の神ニーリッキをもじって作り出した名前です。
 レミンカイネンのお相手は、ポホヨラの魔女ロウヒの娘でキュッリッキというのですが、日月星辰の求婚さえも断る遊び好きの高慢女なので、ちょっとイメージには合いませんでした。
 
 イルマの出番が少なくてすみません。前半はホログラムがやっとでした。
 
 ラストシーンのアイデアは秀逸です。
 もし、イルマとレミンカがコトカで新婚旅行で飛び立ってしまったら、こんなことが起こったでしょう。

 途中の星に降りたコトカに群がる女たち。
 口々に叫ぶのはレミンカ様の名前。
「……レミンカ様、これは?」
 そう尋ねはいたしますが、そこはイルマ。
 ことの経緯は見当がつきます。
 顔は笑っておりますが、眼鏡の奥の眼は笑っておりません。
「いや、その……」
 かつて渡り歩いてこさえた、ハーレムの一つでございます。

 一方のネリッキ姫がクレルヴォと結婚したなら、『たらちね』が始まることでしょう。

 クレルヴォに一首詠ませるとしたら、伏線としてご隠居様の手ほどきが必要でしょう。
 『千早ぶる』ですかねえ。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 
 深読み本当に感謝いたします。
 

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2016年05月09日(月)20時22分 ナマケモノ
 どうもケモノです。本作を読ませていただいたので、感想を残していきたいと思います。
 作者さまが楽しんで書いていることがよく伝わってくる作品でした。
 ただ、チョイスしている神話がカレワラという超が付くほどのマイナー品であったのは不味かったと思います。というのも、カレワラを知っている方って、どのくらいいるんでしょうか。
 この辺りの説明が本作できちんとされていないので、読む側にとっては凄く不親切な小説だと思ってしまいました。
 自分はとあるサイトでカレワラの概要を知っていますが、それにしても原型をとどめないほどカレワラを魔改造する必要はなかったように思います。
 カレワラってなんでこんなにマイナーなんでしょうかね。
 世界神話辞典みたいなちゃんとした本にもなかなか載ってなかったりするし、岩波文庫から出ていた和訳は絶版状態ですし。
 というか、正確に言うとカレワラは19世紀に口伝の神話をもとにして作られたフィンランドの国民的叙事詩であって、神話ではないんですよね。よく本とかの煽りだとフィンランド神話って触れ込みで紹介されてますけど。カレワラをカレヴァラって書かれている辺り、そのあたりの事情はよく知ってらっしゃると思いますが。


 

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2016年05月08日(日)21時47分 兵藤晴佳作者レス
ピューレラ様

ご感想ありがとうございました。

勢いで書いたものですので、テンポを楽しんでいただけて光栄です。

ご隠居の手口は昔から民謡に歌われるほどありがちなものです。
フィンランド神話の色ボケ欲ボケ神ワイナミョイネンが落語の世界にいたら、たぶんやるだろうなと思いながら書きました。

ご覧くださいましてありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
 

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2016年05月08日(日)20時54分 兵藤晴佳作者レス
たてばん様

 ご感想ありがとうございます。

 落語のスタイルがお気に召さなかったようで、申し訳ありません。

 ネタがネタだけに、こうしないと文体が余りに唐突なものになってしまうと思いましたもので。

 フィンランド神話のキャラクターを生かしてどたばたやろうとすると、どうしてもスター・ウォーズっぽい設定にしないわけにはいきませんでした。

 ご覧くださいましてありがとうございました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 

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2016年05月01日(日)03時06分 茉莉花0点
作者の方へ

茉莉花と申します。
貴作、拝読しました。

落語調の作品でしたね。
個人的にはこういうごちゃ混ぜ感があるのは楽しんで受け入れる方なのですが、ちょっとバタバタした展開で内容を把握していくのが難しかったかなぁというのが正直な感想です。

で……「崇徳院」がモチーフなのか……。
ざっと調べてみたんですが、ベースとした題材はおもしろいと思います。
(発表から50年以上たっているし、著作権うんぬんは弱くなっているはず)

で……ですね。
こういう場合、「崇徳院」以上のおもしろさ、目新しさを展開に求めてしまうんです。
確かにスターウォーズと絡めたのは斬新だったのですが、展開がどうしても「崇徳院」のまま。

いや、崇徳院を下敷きにするならばそれでも面白いんです。
ただし、なじみの薄い題材なうえになじみの薄い文体。そこに異質なスターウォーズの要素が入ると、一読者としてはどこに注目していいのか分からず混乱してしまう。
または、展開が落語の崇徳院と同じなので敬遠してしまう向きがあるのではないかな、と思います。

あと、どこがどうとは言えないのですが、語り口調や展開に山と谷(=起伏)をつけるともう少しテンポ良く読めたかもしれません。
今回は終始ドタバタ感が目立ってしまった印象を受けました。

酷評で申し訳ありません。
異なる要素を組み合わせようという試み、とても素晴らしかったです。
地の文(語りの部分)も雰囲気がよく出ているな、と思いました。

それでは読ませていただいてありがとうございました。
執筆お疲れ様でした。

 

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2016年05月09日(月)21時36分 いりえミト-10点
 『星の都のストク・イン』拝読しました。

 
 独特の文体と世界観で、オリジナリティがあるのはいいと思うのですが……
 申し訳ない、非常に読みづらく感じました。
 この文体は、あえてこのような書き方をしているのだと思います。
 ただ、その文体のせいか、読んでいてもすっと頭に入ってこなくて、何度か読み返すというシーンが多かったです。

 一例をあげると、序盤のこのあたり↓

 >「おお、ガーゴイルが。ワシは気づかなんだがイルマは無事であったか?」
 >「へえ、おかげさまでお咎めもなく」
 >「なんの、最後の戦でお前たち兄妹だけになったのを、ワシが面倒見ておるのではないか」
 >「では、妹のアレではないので」
 
 ↑連続した会話なんですが、セリフ同士のつながりがいまいち分かりづらいと思います。
 「お咎めもなく」の返事に「なんの」と来るのはなぜなのか……と、この部分は何度か読んで、「なんの~」は「おかげさま」に対する返事なのかと理解しましたが……
 そのあとの「では、妹のアレではないので」については未だに意味がわかりません。
 
 作品は最後まで読んで、話の大筋は理解したつもりですが、細かい部分はやはりわからない点が多かったです。
 ラストも、これはどういうことなんでしょう……レミンカはイルマと結婚することにしたんでしょうか? 「腹違いの姉弟」というのはレミンカとネリッキのことでしょうか……? いまいち分かりません。

 「大鷲コトカ」などは魅力的に感じましたし、ストーリーそのものはドタバタコメディな感じで決して悪くない気はします。
 ただ、そのストーリーが読者に伝わらなければ元も子もないので、もう少し普通の書き方をしてもよかったように思いました。(もし「分かりづらい」と感じたのが私だけだったら申し訳ないですが)

 とにかく私としては、全体的に「分かりづらい」という印象が先行してしまったため、大変申し訳ないですがこの評価とさせていただきます。

※追記です。他の方の感想を読んでわかったのですが、なるほど本作の書き方は落語調だったのですね。私は落語はほとんど見たことが無いので、本作の文体を読みづらいと感じた理由もそこにあるのかもしれません。なんにせよ、感想は常に本音で書くことを心掛けているので、ご容赦ください。


 厳しくなりましたが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。
 

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2016年04月26日(火)23時01分 たかセカンド-10点
こんばんは。
「星の都のストク・イン」を読ませていただきました。

感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。
納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。

独特な語り口調でどのような物語になるのだろう? と興味を惹かれました。

でも……申し訳ありません。
和風チックな語り口調と、SF……になるのでしょうか?
それがどうしてもシンクロせず、違和感ばかりになってしまいました。

作者様は新しい表現を試されようとしていたのかもしれませんが、どうしても物語に入っていけませんでした。

最初の文章で違和感を覚えてしまったため、キャラクター達にも感情移入することができませんでした。

苦言ばかりで本当に申し訳ありません。
ですが、これが私の正直な気持ちとなります。

今回の作品は上手く歯車がかみ合わなかったように感じられますが、文章自体に関しては特にひっかるところはありませんでした。

いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。

以上となります。

このたびは有難うございました。
 

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2016年04月26日(火)22時30分 削除
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2016年04月26日(火)22時29分 削除0点
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2016年04月24日(日)09時01分 99kg
落語調というのは珍しい。
ファンタジーを落語調で語るという切り口は新しいです。

お? と思う入りではあるんですが、終始この調子で語られるのはツライ。
とくに台詞の掛け合いは誰が誰か分かりにくくなる事も多い。
一応前後読んだりすれば分かるのですが、逆を言えばそうしないと分からないので、常に集中の必要があって疲れる。
落語では、語り部が右向いて左向いてで語り手を分けたりしますが文面にはそれがないですからね。
なにより落語調で語っている事の利点が特に感じられなかった。
オチが落語ならではである、とか。
結局お後が全然よろしくない。

女性陣は割と魅力的なのですが、主人公がなんというかあまり好きになれずのめり込めなかったでしょうか。

気になるのは神話のキャラクターとはどれでしょうか?
ガーゴイル?
一行だけの登場はNGで……、確かに単語は3回登場しますが、ガーゴイルそのものは一度も出ていませんよね?

テーマに対しての批評はしない方向で、という話なのでこの評価で。

 

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2016年04月24日(日)02時38分 削除
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2016年04月23日(土)23時33分 たぬき nY39lNOBNk10点
冒頭からずっと落語っぽいと思っていたら落語でした。
摩訶不思議というのがしっくりくるような物語ですが、内容は割とシンプルで、ギャグとして見れば個人的に好みの部類でした。
一番好きだったのはロウヒの母さまに対しての感想「ちっともよいお人ではございません」という部分でした。こういうキレのあるネタはとても好印象です。
ただ序盤からスローテンポで、話をじっくり聞いていくような進み方でしたので、ちょっと退屈でした。会話についても誰の言葉かサッとわからない部分がありました(恐らく地の文を語りにされた弊害だと思います)
 

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2016年04月28日(木)20時13分 ハイ0点
『星の都のストク・イン』
拝見致しましたので感想をおいていきます。



まず、すいません。
読み終えて、まあまあ面白かったなと思ったんですが。
「セヲハヤミ〜」って、なんぞ? と、調べまして、落語、崇徳院に行き着きました。
で、ストーリーのほとんどが落語、崇徳院の借り物だと知ったときの落胆ぶりたるや……。
あ、いえ、そこまでは落胆しませんでしたけどね?
でも、ちょっとがっかりしたのは間違いないです。
ということで、この点につきまして減点いたしましたので、ご理解頂ければと思います。




さて、話は変わりまして。

試みが面白かったです!
ザ・スペース落語って感じで濃いキャラ達がすったもんだで目白押しで怒涛の50枚!
純粋にすごいと思いました。
戦闘描写は落語のせいか、ちょっと何やってるかわからなくなってましたが、その手前までは楽しませてもらいました。

あ、あとは純粋に戦闘描写の前後、キャラを出しすぎたせいか、通常のやりとり自体も何やってるかわかりにくくなってるのももったいなかったですね。


この話、どこに神話のキャラが?
と、思い調べてみましたら、使用したのはフィンランドの神話なんですね。で、全員神話の人達だったんですね。
勉強になりました。ありがとうございます。


●キャラ

最初、クレルヴォがいると話が進まないなー、と感じてましたがでずっぱりになると若干癖になりましたw
うん、いいキャラですね、クレルヴォ。
あとはポホヨラの母。
確かにいい人じゃなかった!


それでは、お疲れさまでした!
 

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2016年04月21日(木)05時22分 おいげん-10点
御作拝読させて頂きました、早速感想を残したいと思います。

◆作者様の意図がどの辺にあるのか、私は見つけることが出来ませんでした。
 フィンランドの神様等、マイナーなところから引っ張ってきたのはチャレンジ精神溢れる試みだと思います。問題は、「ライト」に読みたい人がどれだけ理解できるかでしょう。
 まだ掘り当てていない金脈を探索するようなイメージですが、固有名詞等の理解が定着していませんので、一読して「おお、なるほど」とはなりづらいかと思います。
 もう少し読者に歩み寄って頂ければ良かったなぁと感じました。

 酷評申し訳ありませんが、忌憚のない意見です。
 
 執筆お疲れ様でした。
4/20 おいげん
 

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2016年04月25日(月)23時00分 コボルトスキー303 LGzEDAtRks0点
読ませていただきました。
ただ読了するのにかなり苦労したことを報告せねばなりません。
話をしているのに話の内容があっちへいったりこっちへいったりでなかなかストーリーが進まずイライラさせられました。また進んだかと思えばいつの間にか婚約の話が決まっていたりと。色々と予測できない筋で疲れました。
あと最後のオチは読む者の素養が必要になるのでしょうか。面白いとは思いませんでした。
あまり読解力には自信がないので、こう言う意見もあったくらいに捉えてください。執筆お疲れ様でした。
 

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2016年04月21日(木)19時34分 青出30点
 こんにちは。感想を書かせていただきます。
 フィンランド神話×落語『崇徳院』×『スター・ウォーズ』を掛け合わせたどたばたコメディでした。「そうきたか!」という発想に仰天しつつ、最後まで楽しんで読ませていただきました。

ここが好きです
○題名
 ぱっと目を引かれました。「星の都」というロマンチシズムと「崇徳院」の掛け合わせ。後者をカタカナにすることでSF風味を感じさせて、内容を表したとてもいい題名だと思いました。
○軽妙な語り口
 落語は学校の行事で一度見ただけなのですが、導入からすぐそれとわかりました。この語り口が最後まで破綻なく貫き通されていて、作者さまの力量を感じます。クライマックスのバトルシーンまで落語調なところは笑いました。そしてたびたび挿入される『スター・ウォーズ』の“A long time ago in a galaxy far, far away……”。宇宙を駆け巡るダイナミックなロマンの雰囲気づくりに成功していたと思います。
○ストーリー
 『崇徳院』の本歌取りでしょうか。落語にもフィンランド神話にも詳しくなくウィキペディアでざっと調べたくらいですので、間違いがあったらご容赦ください。ストーリーの流れ自体は正統派のラブコメで、ものすごく意外性のある展開があるわけではないのですが、だからこそ安心して最後まで楽しむことができます。特に、ラストシーンの若旦那の選択は、「そうこなくっちゃ!」と思わされるものがあります。
○イルマがかわいい
 赤毛、眼鏡、メカニックと、的確にツボを踏まえています。バトルでガスマスクを装着するところなど、ちゃっかりしていてかわいかったです。相棒のコトカの造形もいいですね。絵になります。

ここが気になりました
○出だしの掛け合いが長いかも?
 導入からしばらく、主要人物の顔出しやギャグの応酬が続くのですが、ストーリー的になかなか進まず、個人的に少し飽きを感じてしまいました。「全宇宙回って探して来い!」という台詞が出てくると、ストーリーの目的・流れが理解でき、グッと興味をそそられました。落語ですと、キャラクター同士の掛け合いこそに妙味があるのだと思うのですが、文字で延々読むのは少しつらいところが、私はありました。導入はもっとコンパクトにするほうがよかったかもしれません。(ただ、“ええ、ライトノベル研究所GW企画作品『星の都のストク・イン』をご覧くださいましてありがとうございます。”~“ここにも、私共の住んでおります宇宙とは別の宇宙がございまして……。”というところまでは、すごく惹かれました。私はこの冒頭を読んで、最後まで読むことを決めました)。
○イルマをもっと登場させてほしいです
 とても魅力的なキャラクターなので、初めのほうから出て来ないのはもったいないと感じました。また、ラストをこういった形にするのであれば、それに関する伏線をもっとわかりやすく提示してもいいのではないかと思います。たとえば、クレルヴォ、レミンカ、イルマの子供の頃の親しげな思い出とか、レミンカが女性を探していることを知ったイルマが嫉妬するエピソードを挿入するというようなことがあるのかなと思います。
○オチ
 もうひとひねりあるといいのかなと思います。ネットで見ただけなので、間違っていたら申し訳ありませんが、現状ですと『崇徳院』そのままで、さらに「末(=月末)」が活かされていないように感じます。また、床屋の鏡もそれまであまり描写されていないので、唐突に感じました。本歌取りは、読者が共通して持っている作品のイメージの上に、さらに新しい作品世界を構築するというような技法なのかなと思います。あえて元ネタから変えて、この作品ならではのラストシーンを作り上げてもいいのではないでしょうか。読んでいると力のある作者さまと感じるので、読者としてはついそこまでを期待してしまいます。妄想ですがもし私だったら……レミンカとイルマがコトカで宇宙へ旅立ってしまい、クレルヴォだけが取り残されて、ネリッキ姫が彼に一目惚れ、とか……ほかには、取り残されたクレルヴォが床屋に損害賠償を請求されて「願わくは床屋のもとにて働かん この如月の今月いっぱい」とか(つまらなくてすみません、今適当に思いついたことを言っています。御作が面白かったので、書いてみたかったのです。どうぞお許しください)。

 楽しませていただきました。今後のご活躍を期待しています。
 

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2016年04月17日(日)00時52分 ピューレラ10点
こんばんは。

元ネタを私があまり知らないからか、もしかしたら本来もっと笑えるのかも?と思いつつも
少し笑いの盛り上がりには欠けた感がありました。

【好きだった点その1】
落語のような語り口。
お話の進みはそれほどではないのに、落語のような語り口だったので
テンポよく読めました。

【好きだった点その2】
財布のくだり。
>「そこでさりげなく中身を見せて、ああ奢ってもらえそうだな、と思わせるのじゃ」
は笑いました。

 

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2016年04月26日(火)22時50分 たてばん L2TtHY/jcg-10点
 執筆お疲れ様です。
 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残したいと思います。

 《文章》
> ええ、ライトノベル研究所GW企画作品『星の都のストク・イン』をご覧くださいましてありがとうございます。
 なんだか聞き慣れない名前の出てくる、SFのような落語のような怪しげなお話でございますが、400字詰原稿用紙で50枚かそこらでおつきあい願います。
 作品の内容にまったく関係ないです。

 正直最初の
 > 便利なもので、こう前振りをしておけば、どんな無茶苦茶もお客さんは許してくださいます。
 > 全く、ありがたいことで。
 で読むの辞めようかと思いました。
 これは物語ではなくて作者様の意見ですよね? 下に見られているようで不愉快に感じました。
 ここまでは物語に関係無いので、作者コメントで良いと思います。

 冒頭はインパクトのある出だしにして、読者の心を掴むようにした方が良いと思います。
 世界設定の説明だけでは、つまらなく感じてしまいます。
 
 次に、会話が多くて物語が進まないのですし、地の文も少ないので状況がイメージし辛かったです。
 会話の間にキャラクターの行動を挟んであげると、キャラクターが生きて動いてくれるので、読者の中で生き物に変わっていくと思います。

 > 育ちのせいかクレルヴォが「若旦那」と呼ぶのはご隠居の息子、即ちこの世界を継ぐお方でございます。
 自分的にはわざわざ地の文で括弧を使う必要は無いと思います。
 どうしても付けたいのなら、『』などで台詞と分けてあげると良いと思います。

 >どのくらい不器用かと申しますと、太いワイヤーは力任せにちょ~ちょ~結びができましても、針の穴には糸が通せません。
 こういう例え話は上手いと思いましたし、個人的には結構好きです。

 《設定》
 スターウォーズとかフォースとか、らいとせーばーが出てきてましたけど、いまいち使い切れて無いのかなと。
 別になくても進む物語なら、読みやすいように省くのも大事です。
 特にフォースなどの超能力系はイメージし辛いので、これを使うならもっと細かい描写が欲しいと思いました。

 《構成》
 女を探して敵を倒してハッピーエンド、ありきたりですけどわかりやすくて良かったです。
 欲を言えば、女を探すところにエピソードを作り、もっと苦悩を出して欲しかったです。
 苦悩を読者に共感してもらうことで、どうしてもこの女が欲しいという想いの強さがわかりやすくなり、バトルのシーンももっと栄えると想います。
 
 《総評》
 落語のようなナレーションの地の文はなかなか無いので、新鮮さを感じましたが逆に読みづらかったです。
 語りかけられるのと自分で文字を読むのは別なので、読みやすい文を書いた方が良いです。

 あと、使った神話はなんだったのでしょうか?

 未熟者の身でいろいろ口出ししてすみません。
 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
 

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合計 13人 10点

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