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絞魔が降る
 1

「姉ちゃん!! なんだあれ?」
 かろうじて遺跡である事が分かるような瓦礫がれきが散乱する砂地の中、フードを深く被った小さな影は後ろを歩く影に向かって声を上げた。
 声を掛けられた方はフードからまだ少女と言える顔を出し、弟が指す方向を見た。
「何かしら。人?」
 砂塵さじんに覆われている物は確かに人のようにも見える。
 旅人が行き倒れたのかもしれないが、かなり砂に埋まっている所をみると何十日もそのままだったようだ。
 ここは街道から外れている。弟が隣村までの使いの帰りに宝探しをしたいと言い出さなければ、これからも見つかる事はなかったかもしれない。
 その時、絹を裂くような甲高い泣き声が聞こえた。
 姉弟が驚いて周囲を見渡すと、石の塔に大きな鳥がとまっている。
 クアダルーと呼ばれている獰猛どうもうな肉食鳥だ。色鮮やかな羽を持ち、上空から獲物を探してすごい速さで襲い掛かる。素早く、鋭い爪とくちばしを持つが知能も高く警戒心が強い。主に家畜などの弱い動物を襲う害鳥だが人は襲わない。そう、大人の人間は。
 少女は周囲を見回す。切り出された石が散乱しているが、隠れられるような大きさの物はない。
 少女は弟を担ぎ上げるとそのまま肩車をした。弟も黙って背筋を伸ばし、両手を広げて自分を大きく見せる。
 クアダルーはしばし丸い、が鋭い眼で姉弟を凝視していたが、やがて大きな羽を広げると飛び去って行った。
 ふう、と息を付いて少女は弟を降ろす。
 大人達に教えられていた危険な動物から身を守る方法が役に立ったようだ。
 人の匂いがする街道は安全だが、奥地にはまだクァールやオークなどの恐ろしいモンスターも生き残っていると聞く。
 姉弟は足場の悪い地面をよたよたと歩きながら、ほとんど砂に埋まった塊に近づく。
 死体だろうか。それなら埋葬してやるのが礼儀だが、知らない土地では用心するように大人達に言われている。注意深く様子を窺っていると弟は考え無しに走り寄る。
「あ、こら」
「へーきだって姉ちゃん。こんなに砂に埋まってて生きてるわけないだろ。とっくにミイラになってるよ。あの鳥だって喰わなかったじゃん」
 それもそうか、と思ったよりさかしい弟の言葉に感心しながら少女も近づいてみる。
 所々砂から飛び出している黒い物は鳥の羽のようだが、これは服だろう。黒い鳥の羽で作られた衣服のようだ。そこから出ている物は腕。
 長い間、砂に晒されたらしき人間の手だ。形からして男性。
 しかし、ミイラ化というほど干乾びていない。細かくなりすぎた砂の粒がびっしりとついて真っ白。まるで石で精巧に作った彫像のようだった。
「ああー、いいもん見っけ! こりゃきっと値打ちもんだぞ」
 弟が側に落ちていたらしい何かを拾い上げて喜んでいる。
 死体から物を盗るなんて……、といさめるように弟を睨みつける。彼は姉の言う事を察したようで、
「大丈夫だよ。らねぇって、こいつの身内が探しに来るかもしれねぇだろ。形見がないと誰だか分からないじゃん。だからそれまでオイラが大事に取っとくんだよ」
 少女はやれやれ、とため息をつく。
 弟は大事そうに形見の表面をごしごしと擦っている。それは大人の拳くらいの大きさの菱形ひしがたをしていた。横から見ると菱形、上から見ると四角形という珍しい形をしている。
 調度品だろうか。たまに遺跡から出て来る事があり、旅人の持つ品と交換できると大事にする者もいるが、現実には何の役にも立たないただのモノだ。少女には全くその価値は分からない。
「すっげー金ピカじゃん!!」
 弟が感嘆の声を上げ、袖の布に唾をつけて更に擦り始める。
「わ! ここにはまってるの、宝石じゃね?」
 宝石? と少女の顔色が僅かに変わる。
 少女も宝石の美しさに心を奪われる気持ちは理解できる。
 あの煌びやかさは他の何にも変えられない。澄んだ水のようで、眩い太陽のようで、それでいて朽ちる事のない、永遠の美しさを保つ。それはまさに神の奇跡。
「他にも持ってるかもしんねー。探そうぜ」
 弟が死体を覆う砂を掘り始める。
「あ……、あ」
 死体あさりなど……、と弟をいさめようとするも言葉が出てこない。
「もう一個見つけたら、それは姉ちゃんのだぜ」
 少女はごくりと唾を飲み込む。
「丁寧に、丁寧にね。敬意を払って……」
 おろおろしながらも一応いさめるような素振りをする……が突然、砂が大きく盛り上がり始めた。
「わっ!」
 と驚いて尻餅をつく姉弟の前で、その「死体」はゆっくりと体を起こす。
 ざあっ、と体を覆っていた砂が地面に流れ落ち、周囲に砂煙を起こさせた。
 砂から現れたのは男――というには小さく、少年のようだ。まるで冬眠していた動物が周りの煩さに耐えかねて起き上がったかのようだった。
 眠っていただけ? なはずはない。頭は完全に砂に埋まっていたのだ。この気候で砂の上に一日寝ていたらそれだけで死んでしまう。
 少女は震えながらも弟を庇うようにしがみつく。
 起き上がった少年はゆっくりと目を動かして、その視線を弟の手の中にある物に合わせた。
 弟は視線に気が付くと我に返り、「ってません」と言わんばかりに首を振って持っている物を差し出す。
「……欲しいなら、そのまま持っていろ」
 少年は宝石のはまった菱形には目もくれず小さく呟くと、そのまま立ち去ろうとする。
 姉弟はその様子を呆然と眺めていたが、突然弟の手の中にある物が光と音を発した。
監視端末オブザーバーから離れたら、不可説不可説転ふかせつふかせつてん加罪かざいだよ』
 わっ、と弟は驚いて持っていた物を取り落とす。
「オレが放したんじゃない」
 少年はポツリと呟く。菱形が発した声に返事をしたようだ。
『キミの意思は関係ない。そしてオブザーバーがキミを見失ったら神の罰が下る』
 少年は足を止め、ボリボリと砂にまみれた頭を掻く。
 やがて顔だけで振り返り、仕方ないという風にゆっくりと姉弟の前に戻ってくる。
 弟は、はっと足元の菱形を見ると、慌てて手に取る。
「さっきくれたじゃないか。これはもうオイラんだ!!」
 少女はおろおろしながらも弟の腕を掴む。少年は歩み寄ると、へたり込む二人を下目使いに見下ろす。
 目付きが鋭い、というか悪い。黒い鳥の羽を束ねたような衣服はいかにもガラが悪そうで、逆立った髪はまるで鶏冠とさかのようだ。
 そんな事よりもあの状況で生きているなど普通じゃない。かかわらない方が……、と少女は弟を揺さぶって訴えかけるが、弟は威嚇するように歯をむき出している。
「やってもいいが、オレはソレから離れてはいけないそうだ」
 少年は菱形を指差して無感情に言う。
「そうなの? じゃあ、一緒に来ればいいじゃん」
 弟は急に態度を和らげるが、少女はその腕を強く掴んだ。
「いいじゃん。くれるって言うんだもん。通行料払うってんなら構わないだろ」
 入村にゅうそん料の事だろう。得体の知れない者が村に入れてもらえるはずはない。考え無しな弟に真っ青になるも、少年の雰囲気に気圧されている少女は何も言えずついて行くしかなかった。


 2

 黒い少年が倒れていた遺跡から、姉弟の住む村に着く頃にはすっかり日が傾いていた。
 村は小さな山の麓にあり、緩やかな斜面にそって広がった村は入り口から一望できた。
 土を塗り固めた家が数十件。堅牢な石作りの建物、風車や牧場も見える。人口で言うなら百人くらい。
 中ほどで立ち上るのは煙ではない。山の地熱で暖められた泉から上がっているのだ。川が流れて実の成る木々が生い茂る、豊かな村のようだった。
 村の中と外を分けているのは申し訳程度の柵だけで、平和な村である事が伺える。
「にーちゃん、あれだよ。あれがオイラ達の『せせらぎの村』」
 弟が磨いていた菱形から顔を上げて指差す。
 少女はその後ろを縮こまってついていた。
「おい! アローラ。なんだよそいつは」
 日に焼けた屈強な男がやってくるなり声を上げた。門らしい門はないが、門番のようだ。
「おい、正気か? よそ者を連れて来るなんて。それとも隣村の使いか?」
 明らかに商人には見えない客に声を潜める門番に、少女は泣きそうになりながらも首を横に振る。
「なあ、いいだろ? ちゃんと通行料貰ったんだから。ほら」
 弟は磨かれて更に光沢をおびた菱形を見せ、門番が目を見開く。
 ただの金塊ではない。複雑な模様がびっしりと彫られ、精巧な造型物である事が見て取れる。
 赤青の宝石もいくつかはまっていて、素人目にも美しい。
「お、おう。まずは長老に聞いてみよう。話はそれからだ」
 門番は上ずった声を上げると少年を案内した。

 *

「おお……、これは」
 村の長老は、菱形の模様を手でなぞりながら感嘆の声を上げる。
 長老の住まいに集まった村人達は、一番の長生きで聡明博識な老人に注目する。
 長老は懐かしいものを思い出すように宙を見つめる。もっとも長老の目はほとんど視力を残していないので、いつもそんな感じで話す。
 しかし、この老人は誰よりも真実を見透かす目を持っていると村人達は思っている。
「あなたは……、絞魔こうまなのですね」
 コーマ? と村人達が顔を見合わせる中、傍らに立つ少年は片眉を上げた。
「このお方は神の使い。神獣の化身じゃ」
 おお、と村人からも感嘆の声が上がる。
「その昔……いや、今よりもっと先の事かもしれぬ。神と魔の戦いがあった。その戦いは長きに渡り、その間に多くの世界が失われた。戦いは神の勝利に終わったが魔族とは和解し、魔も神も壊れた世界を元に戻すために注力しておられる。現世に降り立って人々の為に尽くす者を『絞魔』と呼ぶのじゃ」
 皆長老の昔話に嘆息して聞き入る。
「神と等しい力を持ち、この世に数々の奇跡を起こす。これはまさしく絞魔の証」
 長老は菱形を掲げ、皆は歓声を上げる。
「な! だから言ったろ。こいつ喋ったんだよ。ただの宝物じゃねぇ」
「最近他の村が襲われてるって話だから心配してたんだ。でも、もうこれで大丈夫だ」
「丁重にな。だがもてなしてはならんぞ」
 祭りだごちそうだと騒ぎ始めていた村人達は長老の声に言葉を止める。
「神は時に厳しい面も見せなさる。ワシは絞魔をもてなして、神に卑しき者と見なされ罰を受けた者も見た」
 村人達は少し動揺したが、それでも縁起のいい事には違いない。俺達だけで祝うのは構わないだろう、と村人達は活気を漲らせてそれぞれの家に帰って行った。
 石造りの部屋には長老と絞魔の少年だけが残された。
「まったく、余計な事を言ってくれたな」
 腕組みして壁にもたれかかったままぼやくコーマに、老人はふぉっふぉっと笑っている。
「ワシは長老じゃからな。村人を統べるのが仕事じゃ。最近不穏な事が多くての。村人達の不安が高まっておった」
 いいように利用されたようだ。魔と呼んでおきながら、神獣の化身だなどと……。
「あんたが前に会った絞魔ってのはどんな奴なんだ?」
「知らん。忘れたわい」
 ふぉっふぉっと長老は煙管きせるくゆらせた。

 *

「あ、コーマ様。これをどうぞ。あ、いや施しとかではなく、普通に。あ、ダメですか、これは失礼しました」
「コーマ様。こちらにいらっしゃいませんか。あ、そうですか。すみません」
「やー、にーちゃんってスゲーんだな。誰も抜けなかった剣を抜いたり、世界を丸ごと飲み込んだり、海を割ったり、地獄の門を守ったりするんだって?」
 コーマはうんざりを通り越した無表情で聞き流す。
「こらマキト。コーマ様に失礼だぞ」
 痩身の男が酒の入った杯を持ってやってきた。
「なんだよクトン。にーちゃんはオイラが連れてきたんだぞ」
「僕の事は兄さんと呼べと言ってるだろ」
「なんでだよ。姉ちゃんは別にお前の事好きじゃねぇぞ」
 クトンと呼ばれた男は「こいつめ」とマキトの頭を軽く小突く。
「にーちゃん、変身できねぇの? それ、仮の姿なんだろ?」
「できるが……、それがないとな」
 コーマはマキトの持つ菱形を指差す。
「そうなの? じゃあ、返すよ。……惜しいけど、仕方ないもんな」
 コーマは菱形を受け取り、それに向かって呟くように言う。
「この子が真の姿を見たいそうだ」
 菱形は光らず、音を発する事もない。
 ダメみたいだ、と無表情に告げるとマキトが頬を膨らませる。
「然るべき理由がないとコイツは許可してくれない」
「えー、オイラのお願いだよ。神の使いだろ。子供の願いは叶えてあげなきゃ」
 自分で言うな、とクトンがマキトの頭を叩く。
「だそうだが? 力の解放を申請する」
 コーマは菱形に向かって冷ややかに言う。
『申請は棄却。然るべき理由が見当たらない』
「ちぇっ、融通利かねぇの」
「同感だ」
 膨れっ面になるマキトに、魔物の化身は無表情に答えた。


 3

 朝の日差しが降り注ぐ広場は女達の声で賑わう。
 この村の女達は朝になると泉で洗濯等の水仕事をするのが日課だ。そして地熱で暖められた泉で湯浴みをして身を清める。
 先の文明が崩壊し、荒廃した台地が世界の大半を占めるこの世界には似つかわしくない楽園と言えた。
 山に面し、裏手には森が広がっている為砂塵も吹き込まない。
 奥にはかつて神殿であったであろう石造りの建造物があるが、ほとんど崩れ落ちて元の形も分からない。
 かつて神に護られていた土地。信心深い村だから、見るからに怪しいコーマも受け入れられたのだろう。だが昨日の少女、アローラだけは未だ怯えたように近づいて来ない。
 薄手の布を身に纏っただけの姿で湯浴みしていた女達は、コーマの姿を認めて少し戸惑ったような素振りを見せたが、皆一礼して湯浴みに戻る。
 だがよそ者が珍しいのか、絞魔が珍しいのか、皆チラチラと視線を黒い少年に送っていた。
 魔の化身であるコーマに人間の女性に対する興味があるはずもなく、一瞥しただけでその場を通り過ぎる。
『絞魔は人間に威厳を示してはいけないんだよ』
「オレは何もしていない」
 何度やったか知れないやり取りに菱形は『キミの意志は関係ない――』といつもと同じプログラムされたままの返答を返す。
 “お荷物”も返してもらった事だしさっさと村を出るか、とボヤくコーマに菱形は台詞を読み上げるように言う。
『黙って出ていくと礼を失するよ。一晩世話になったんだ。せめてその恩には報いないと加罪されてしまうね』
 今までにその言葉に従ってうまく行った試しはない。
 出ていくと言えば必ず引き止められ、断れば自分達を見捨てるのかと泣きつかれるのが関の山だ。
 経験上、日中に堂々と、すぐ戻ってくるような素振りで外へ出て、そのまま姿を眩ますのが最も罪を重くしない方法だった。
 そんな事を思いながら村の入り口に向かって歩を進めていたが、そこには何やら人だかりが出来ていた。
 何やら騒いでいる、というよりは揉めているようだ。三人のガラの悪そうな男達と村人が押し問答をしている。
 これはまずい……、とコーマは気配を殺して踵を返したが、
「あっ。コーマ様! ちょうどいい所へ」
 背後からを声を掛けられた。
 コーマは村人に見えないように顔をしかめる。
 面倒に巻き込まれるくらいなら走って逃げるか……、と逡巡するコーマに更に声がかかる。
「アローラが、アローラが変な連中に捕まってるんだ」
 アローラ? と村人の指す方に目をやると、最初に会った少女、アローラがガラの悪い男に腕を掴まれている。
 そうしているうちに村人に囲まれて促され、観念したように連れられるまま入り口まで歩いた。
「だーかーらーよ。俺達も仲間に入れてくれよ」
「それはダメだ。長老の許しがなくては村に入れるわけにはいかない」
 門番が、三人の男の前に立ちはだかっている。男達はレザーで全身をプロテクトしたような出で立ちだが、防護というより自身を派手に見せる為の服装のようだ。粉塵から守る為か、顔も半分覆っているので三人共区別がつかない。もっとも出で立ちだけで言うのならコーマも大差はないが……。
 その内の一人がアローラの腕を掴んでいた。
「じゃあ、許しを貰ってくれよ。それとも何か? ここじゃ困っている人間を放っておこうってのか? このまま野たれ死ねっての?」
「気の毒だがここも余裕があるわけじゃない」
「どこがだよ。ここはこの辺で一番豊かな土地だろ? 余裕ありまくりじゃねぇか。三人くらい増えたってどうって事ないだろう」
 男達が呆れたように辺りを見回す。
 男達の言う通り、このせせらぎの村は水源があり、獲物の獲れる山や森も近く農地もある。数十人くらい増えた所で問題はなさそうに見える。近隣に危険な動物もいない。場合によっては更に村を広げる事もできそうだ。
 長い時間世界を見てきたコーマにも安定した村と言えた。困っている者がいるのなら施してやるのが人情というものだろうが、確かに目の前にいる連中は困っているようにも見えない。
「分かってるんだぞ。数人村に入れたら、後から後から人が押し寄せてきて荒らされた村があるんだ」
 クトンが大声を上げると、三人は不適な笑みを浮かべる。
「じゃ、オレこいつと結婚する。それなら文句ねぇだろ」
 アローラの腕を掴んでいた男がその手を引き寄せ、アローラが悲鳴を上げた。
「ねーちゃん!」
「お、お前! ふざけるな!」
 マキトを制したクトンが男に飛び掛るが、別の男に足をかけて転ばされた。
「おいおい。オレ達ゃ平和的な話し合いを望んでんだぜ」
 一人が背負っていた物を手に持って構えると、そこから火炎がほとばしった。
 いきなり頭上で火の手が上がったクトンは、悲鳴を上げる事もできず頭を庇うようにして地面に伏せる。
 三人を追い出そうと入り口に集まってきた村の男達も一歩後ずさった。
「ふ、ふん。それがどうした。こっちには神の使いがついてるんだ」
 村人達は踏み止まって強気な態度に出る。恐慌して逃げ惑うものと思っていた三人は怪訝な表情になる。
「さ、コーマ様。こいつらに神の鉄槌を!」
「にーちゃん! やっつけてくれよ!」
 押し出されてきた黒い少年を、三人は距離が近いにもかかわらず凝視する。そして三人で顔を見合わせて苦笑した。
「お前が、何を見せてくれるんだって?」
 真ん中の男がコーマを小馬鹿にするように詰め寄るが、三人の目から見ても少年が無理矢理突き出された事は明らかだ。
「ふん」
 男がコーマの腹に蹴りを入れる。更に前のめりになったコーマの後頭部に組んだ両手を叩き降ろした。
「ガキだからって容赦しねぇぞ」
 三人で寄ってたかって蹴り始めたが、その間コーマはされるがままだった。
「変な格好をしやがって。それで神の使いか何かをかたって村に取り入ろうって魂胆だな。オレらのシマになる場所で勝手な事すんじゃねぇ」
 気が済んだのか男達は、息を切らしながらコーマから離れる。
 普通ならば肋骨が何本も折れるほどの暴行だ。血は出ていないが苦悶の表情を浮かべている所を見ると苦痛はあるのだろう。
「ま、スッキリしたし今日の所は大人しく引き上げてやるぜ。ここはいい所だ。俺達の親分、ドラード様の拠点にピッタリだ。それまでに空けておくか皆殺しにあうか好きな方を選びな」
 真ん中の男は武器を構え、勝利の雄叫びのように空中に火の手を上げた。暗くなり始めた中、村人達の引きつった顔が照らされる。
 男達が笑いながら去って行く中、最後までコーマが「いい加減にしろ」と立ち上がるのを期待していた村人達は、ただ呆然と立ちすくんでいた。


 4

 マキトは篝火かがりびとして炊いてある焚き火をじっと見つめていた。そこへやってきたのはこの村で一番長生きの老人。
 長老はぼんやりと篝火を見つめるマキトに声を掛ける。
「幻滅したのか?」
「ゲンメツ? それはよく分かんねーけど……、ガッカリだよ」
 マキトは落ちていた小枝を拾って焚き火に投げ入れる。
「ガッカリというのは期待を裏切られた事によるものじゃ。この場合はワシらが勝手に期待しただけじゃからな」
「でもよー。コーマが……、神の使いがあんなに弱いなんて、ガッカリするじゃんか」
「ふぉっふぉっ。あれだけやられて手を出さないなんて。これは凄く強い事なのではないかな?」
「強いんなら、やっつけちゃえばいいじゃないか。そうすればやられなくてすむんだし。あいつらだって、調子に乗ってくるぞ。神の使いが、聞いて呆れらぁ」
「人は神の子。絞魔は神の使いだ。神にとって人は等しく同じ存在だ」
 マキトは立ち上がる。
「別の村の奴らじゃんか。あいつらは敵だ。同じじゃねぇ」
「仮に、あやつらがコーマを先に見つけて仲良くなっていたら、やっつけられるのはワシらの方じゃな。お前はそれで納得できるのか?」
「それは……、でもあいつら悪い奴らじゃないか。神の使いが、悪い奴に手を貸していいのかよ」
「悪い奴らというのはワシらにとってじゃ。お前もアローラと喧嘩した事はあるじゃろう。お前は自分が悪いと思っておるか?」
「い、いや。そんな事はねぇ……けどよ」
 握り締めていた拳を降ろし、力なく言う。
「ならアローラは悪い奴か? アローラもコーマにやっつけてもらうか?」
「い、いや。だって姉ちゃんじゃないか」
「そうじゃ。人は皆神の子。神にとって人は皆兄弟なんじゃ」
 納得いかない顔で膨れるマキトに長老はふぉっふぉっと笑う。
「争いは、争いしか呼ばぬ。お前にもいつか分かる時が来るじゃろうて」

 *

 自らの体を引きずるようにして、何とか泉の近くまで移動したコーマは泉を囲う石を背にもたれかかった。
 途中村人にも会ったが、特に何も言われなかった。だが時折家の中から何かに悪態をついている声が聞こえる。何を言っているのかは想像に難しくない。
 だが村人からは何も貰っていない。恩義に報いる必要もない。村人達もそれが分かっているから表立って非難する事はないのだろう。これはあの長老に感謝すべき事なのかもしれない。
 などと思いながら、コーマは村の所々にある篝火かがりびの一つをぼんやりと眺めていた。
 こんなのはいつもの事だ。期待され続けるよりは遥かに楽でいい。だが動けるようになるまでもう少しかかるだろう。
 壊れる事はないが人並に苦痛があり、収まるまでにそれなりに時間がかかる。動けるようになったら村を出るつもりだった。
『今日は随分と人に触れたからね。結構な加罪になったよ』
「オレは何もしていない」
『キミの意思は関係ない。キミが酷い事をしたのは主に人間だから。本来人間からの報復を耐えていれば多少は罪が軽くなるんだけど、微細すぎて数値にできないね。今日の痛みくらいなら百六十億年ほど続ければ数値にできるくらいに――』
 コーマは黙って目を閉じる。普段はほとんど声を発しない、感情も意思も持たない監視役だと聞いているが、この菱形はコーマが酷い目に遭うと饒舌になる傾向がある。
 本当は意思も感情もあって、自分が酷い目に遭っているのが楽しいのではないか、とコーマは思い始めている。それとも高度な人工知能のように旅を続けているうちに感情を学習したのだろうか。
 だが神の作った人工知能ならば生物と何ら変わらない。オブザーバーは神界との接続を代行する者だが、不要なものを取り払っただけの立派な生物の一種なのだ。
 人の歩いてくる気配に、コーマはもたれかかりながらも姿勢を直す。
 人間に対して礼節を守る義務はないのだが、コーマも元は魔物。無様な姿を見られるのはあまり気分のいいものではない。
 通り過ぎるのかと思ったらコーマの方へ近づいてくる。何の用だ? また面倒な事かと顔を背けるコーマの前でその人影はしゃがみ込んだ。
 顔を上げるとそこにいたのは最初に会った少女アローラ。
 アローラは唖然とするコーマの顔に向かって濡らした布を近づける。
 反射的に払いのけようとしたコーマの手は、アローラの手に当たった所で止まる。アローラは少し微笑み、そのまま布でコーマの顔を拭き始める。コーマは大人しく手を下ろした。
「包帯も持ってきたんだけど……、傷がないわ。神の使いっていうのは本当みたいね」
 手当ての必要がないと分かったのか、アローラはコーマと並んで腰を下ろす。
「弟を許してやってね」
 ガラの悪い連中が帰る時、マキトは何やら叫んでいたがコーマは耳鳴りがしていて聞き取れなかった。だが何を言っていたのかは想像できる。
 許すも何も、と言う所だがコーマは黙っていた。こんなのはいつもの事だしその事を逐一話す気もない。
「私、暴力を振るう人は嫌いです」
 好きでやられていたわけではないコーマはやや仏頂面になる。だが先の暴力などコーマにとっては大した痛みでもない。人間の姿でこの世を彷徨っている事自体、魔物であるコーマにとって耐え難い苦痛なのだ。
『コイツは神の使いなんかじゃないよ。咎人とがびと、……神界の罪人だ』
 なんだ突然? と訝しむようにコーマは金色の菱形を取り出す。
「まあ、何をしたんです?」
 アローラは驚き、というより興味津々といった面持ちで菱形を見つめる。
『大量虐殺』
「たいりょー?」
『要はいっぱい人を殺したのさ。いや、人だけじゃない。動物も魔物も神も。とにかくたくさんだ』
「……でも、戦争になったらたくさん人は死にます。戦争で大勢殺した人は時として英雄になると長老に聞いた事があります」
『罪とは定められた摂理から逸脱する事だ。人間には人間の道徳があって裁くのも人間だ。人間の罪を神は裁かない。人間は神の子、神は全ておゆるしになる』
「まあ、寛大なんですね」
『コイツは世界の摂理を逸脱して、多くの人間を世界もろとも滅ぼしたのさ。平行して存在する世界も、過去も未来も関係なくね。そして神にまでケンカを売ってやられて、掴まって絞魔にされたんだ。そして人間の為に働かされてる。人間よりも弱くなってね』
 コーマはスイッチがあれば切ってやりたい、と言わんばかりに菱形をまさぐる。オブザーバーは人間と話すようにはできていない。人間に情報を与える必要もなければ、人間を手助けする義務もないのだ。
 もっとも義務がないだけで禁止されているわけでもない。この菱形は、コーマが人間の娘に好感を持たれている事が面白くないとしか思えなかった。
「人を大勢殺したなんて……、信じられないわ」
 目の前の少年が、魔物なのだと信じていないようにアローラは笑う。
「オレも暴力は好きじゃない」
『……それは本当だよ。まあ、正しくは得意じゃないだけだけどね』
 ふん、とコーマは鼻を鳴らす。単純機械はウソをつく事もできまい、とささやかな抵抗をしてやったのだ。
『だから人間という器に押し込められて、神の遺産を壊した弁償をさせられているのさ。だから君がコイツをこき使っても神はとがめないよ』
「余計な事を言うな。人間に従う義務はないんだ」
 実際人間に従属してはならない。人間を堕落させる事は手助けとは逆の事で、返って罪が重くなる。もっとも罪がかさなるのは絞魔の方で人間におとがめはない。
 何とも不自由で、融通が利かないのが絞魔なのだ。コーマ自身も全ての罪を償い、自由になった絞魔を知らない。それは過去、未来、関係なくだ。
「では、お願いを聞いてくれませんか」
 お願い? とコーマは少し動揺する。長い事絞魔やっているが初めての事だ。
 キョトンとするコーマに、アローラはにっこりと微笑んだ。

 *

「一体どうすればいいんだ」
「皆で逃げよう。どこか遠くに村を再建すればいい」
「どこにそんな場所があるんだ? その前に皆野たれ死ぬぞ」
「じゃあ戦うっていうのか? あいつらと? あの武器を見たろう」
 広場に集まった男達が声を荒げている。
 昨晩は事態がよく飲み込めていなかったが、少し落ち着くと事実が恐怖となって村人達を襲っていた。
 長老と相談の場を設ける予定ではあるが、浮き足立った者達が広場で口論を始めたのだ。
「ここに残ったって奪われて殺されるんだ。ならここを出た方が、まだ望みがあるんじゃないのか」
 その言葉に皆悔しそうに歯軋りする。
「わたしに考えがあります」
 沈黙を破ったのは村の若い娘、アローラ。
 若い割にはしっかり者で通っている娘だが、この問題に解決策があるとは思えず、皆一応という感じでアローラの方を見る。
「コーマさんの助けを借りてはどうでしょうか」
 皆一瞬固まり、アローラの後ろにいる黒い少年に今更のように気が付いた。そして失笑する。
「おいおい。ソイツ……、コーマ様に何をお願いできるって言うんだ。これは俺達人間同士の問題だ。神様は助けちゃくれないぜ」
「それは力を借りようと思うからです。力では何も解決できません。でもコーマさんには長い間世界を旅して得た知識があります。それをお借りするんです」
 男達にはその意味がすぐには飲み込めないが、当のコーマが納得のいかない表情をしている為、皆半信半疑といった所だ。
「じゃあ、その知識ってヤツで、奴らの武器からどうやって守るのか教えてもらおうじゃないか」
 アローラは笑ってコーマに場所を空ける。ここからはコーマに任せるつもりのようだ。
 なんかすごく無責任な気もするが……、と釈然としない顔をしながらも前に出る。
 本来知っている事を教えるだけなら罪にはならないが、世界、時代にそぐわない事を話して均衡が壊されれば罪になる。コーマに喋っても問題ない事を区別できるはずもなかったが、今更その程度の加罪を恐れるものでもない。コーマが渋っているのはただ面倒くさいからだった。
 だが今まで向けられた事のないないアローラの笑顔に、なぜか流されてしまっていた。
「あれはそれほど大した武器じゃない。動物の糞から作った火薬に火打ち石で火を点けただけだ」
 動物の糞から何? と男達は一様に怪訝な顔になる。
「……要は脅かすのが目的の物だ。当たった所で大した怪我もしない」
 それはコーマにとっての話なのだが、人間でも致命傷になるほどではないだろう。
「お、俺達にも作れるのか!?」
 聞かれてコーマは言葉を詰まらせる。
「いけませんわ。そんな事の為にお願いするのではありません」
 アローラが男達をいさめる。
 糞から硝酸カリウムを抽出して火薬を作る方法までは知らないコーマは内心ほっとする。
 確かに村人に武器を与えては戦争になり、大勢の犠牲を出した挙句に敗北するのも確実だった。
「それにあれは戦いでは大して役に立たない。あれは一発撃ったらおしまいだ」
「え? だって何回も撃ってたじゃないか」
「真ん中の男が二回撃っただけだ。オレに暴行している時に位置を入れ替わった」
 皆同じ格好をしていたから騙されただけで、この世界、時代に連射が出来る火器は存在しないはずだ。
 そんなトリックを使ってくるという事は、脅かすだけで無傷で村を手に入れたいのだろう。またはそれほど大人数でもないのかもしれない。
 粗暴な連中に見えてそんな小細工を使ってくる。実際にはそっちの方が厄介な事だった。少なくとも奴らの背後には頭の切れる奴がいる。
 そんな事を話していると村人達も次第にコーマの話に聞き入り始めた。
 まずは壁を作って守りを固める。完全ではないが従わないという意思を示す事が重要だ。
 相手は火を使ってくる。あの武器はコケ脅しだがもっと効果的な火器を持っているかもしれない。木で壁を作り、それに泥を塗り固める。
 これはコーマ達が滅ぼした人間達がやってきた事で、その多くは魔物には通用しなかった。
 しかし敵わないと分かっていても抵抗してくる人間に、ある種の強さを感じ取ったのも事実だった。
 その結末は皆殺しだったが、魔物相手に投降しても結果は同じだ。これは対人間用の防衛策だったろうから、効果があるかもしれない。
 それに同じ結末を辿った所でコーマの知る所ではない。だがその中にアローラが含まれる事にいささか抵抗を感じないでもなかった。
 長老を含めての会議の末、村の防衛改革が進められた。
 生きた木々を極力使わないよう、川に沈んだ流木、倒れた木を切って運ぶ。
 木目に沿ってくさびを打ち込み、石で叩くと見事に縦に割れた。
 削り、整えて村の柵の代わりに壁状に打ち立てていった。
 効率よく進める事で凄い勢いで村は改築されていったが、それは溺れる事もない、眠る必要もない怪我もしないコーマの働きによる所が大きかった。
 もっとも人並みに苦痛はある為、コーマにとって楽しい作業ではなかったが、アローラに笑顔を向けられるとなぜかやってしまっていた。
 それに触発されてか村人達もよく働く。村の若者達は並んで壁に泥を塗っていた。
 泥はただの漆喰しっくいではない。常に湿らせておく事で粘土のように衝撃を吸収し、適度に崩れて鉤縄かぎなわ等も引っ掻かけられない。
「まったく、こんな壁が何の役に立つって言うんだ。数人がかりなら壊せるだろ」
 クトンは作業を続けながらも悪態をつく。
「コーマ様も言ってたろ。意思が大切なんだって。それに遺跡には抜け道もあるんだ。いざとなったらそこから逃げられる。その間の時間を稼げるだけでも意味があるんだ」
 会議で長老が皆に話した事だ。
 クトンもそれは承知している。単に暑さと疲労で参っているだけだろうと、皆も適当に相槌を打っていた。
「あいつ……、アローラにベタベタしやがって」
「お前。それが本音だろ」
 皆声を上げて笑った。


 5

 村の背後は山、側面には岩場、川に囲まれているので城壁を築く部分はそれほど広くはない。
 それでも数日をかけて村を守る壁はもうすぐ完成と言える所まできた。
 コーマの目には子供騙しにもならない防御だが、少なくとも今のコーマには侵入するのは億劫おっくうだ。もっとも普段何をするのも億劫なのだが……。
 岩場の登れそうな所には油を敷き、攻撃性のある虫の巣を移動。壁の上にはといを敷いて水を流し、常に湿らせるようにしている。
 少なくとも連中は驚くはずだ。簡単に乗り越えられた柵とは雲泥の差なのだ。
 それでも攻撃されれば守りきるのは難しいだろう。だが屈服させるのが面倒だと思わせられればそれでいい。
 篝火の明かりを頼りに目潰し用の泥団子をせっせと作る女達の横を通り過ぎ、コーマは泉で一息ついた。
 こんなに動いたのは何年ぶりだろうか。
 疲れによって動けなくなる事はないが、苦痛はないに越した事はない。いつぞやのように泉の淵によりかかっているとアローラが盆を持ってやってきた。
「ごくろうさま」
 同じように腰を下ろし、コーマに盆を差し出した。
 乗せられているのはパンとミルクだろうか。いや……、と断るコーマに、
「施しではありません。わたしからのお礼です。わたしの分のお裾分けですから、村の誰にも迷惑はかけません」
 それでも――、と断ろうとするコーマの目を、アローラは澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめて微笑む。
 コーマは観念したようにパンをとって齧り、すぐには喉を通らずミルクで流し込む。
『いい所あるじゃないか』
 む、コーマは眉を寄せて菱形を取り出す。
『今のは不可説不可説転ふかせつふかせつてんの加罪だね』
「ふかせつ?」
 キョトンとするアローラに菱形が答える。
『数の単位だよ。とてつもなく大きいって事さ』
「断るのが面倒だっただけだ。お前こそ、最近よく喋るじゃないか」
 アローラには分からない話だったが、秘密の会話が仲よさ気に見えたのかその様子を微笑ましく眺める。
「あの人達は、どうして非道い事をするのかしら」
 ガラの悪い三人組の事を言っているのだろう。
『怪物を退治して糧を得てきた者達は、人の生活が安定し始めると、今度は人から略奪を始める。これはどの世界、時代においても共通に見られる傾向だ。侵略は言い換えれば統合で、それによって村は大きくなり、いずれは国になる。そして国同士がまた侵略し合って更に大きくなる』
「それなら平和的に一緒になればいいですのに。わたし達は争い事は嫌いです」
『だけど奴属は共存ではないからね。支配する者とされる者、皆どうせなら支配する側に、できるだけそっち寄りの立場でいたいだけなのさ。その為に、自分の力を見せる為の戦いだ』
 アローラはまるで長老みたい、と笑う。
 神に与えられた知識を持ち、あの老人よりも長く生きているのだ。存在としては近いだろう。だが一時にこれだけ音を発しているのコーマは今だかつて見た事がない。
 無表情に菱形を見下ろすコーマにアローラは声を掛ける。
「……遺跡では、何をやっていたの?」
「別に……、何も」
 それ以外の答えはなかった。人間と接するのに疲れたコーマは何ヶ月も動かずにじっとしている事も珍しくない。
『コイツはね。罪を償うどころか失敗してばっかりだから、ふてくされて寝てたんだよ。二ヶ月と八日と十二時間四十二分』
「まあ」
『絞魔には何の力も権限も与えられてないからね。期待されて、幻滅されて、時には詐欺師呼ばわりされてを繰り返す。この世の人間はまず絞魔に感謝などしない』
 この村の長老は、状況からコーマを都合よく利用しただけだ。絞魔を知る人間は、大半疎んじるものだからだ。
「あら、わたしは感謝していますわ」
『感謝を受ける事が償いじゃないからね』
 絞魔は人間に威厳を示してはならない。尊敬の念を抱かせても罪になる。感謝される事自体は罪ではないが、ほんの少し解釈が違うだけで罪に転じる諸刃の剣だ。だからほとんどの絞魔は感謝される事を敬遠する。
「感謝するのはその時だけだ。その後より大きな働きを期待する。そして満たないと幻滅する」
 アローラはくすっと笑う。
「コーマさんは、……罪人つみびとなんかじゃありませんね」
 ただ境遇が、生き方が他の者と違っただけだ。自分の使命のままに生きる事は、時に他人の意にそぐわない事もある。村を襲う連中も、結局は同じなんだろう。
 彼らが村人を傷つけたら、罰しなくてはならないのだろう。彼らを罰しなくてはならない時が来たのなら、自分の方こそ、彼らに許してほしい。
 というような事を少女の言葉でつづる。
 自分を縛る時に、同じ事を言った女神がいたっけな……、とコーマは遥か昔の事を思い出した。
『そうかもね。ここに来て少しこの絞魔の情報を修正する必要が出てきたよ。人間の資源を消費すれば加罪されると分かっていただけじゃない。忘れていた空腹感が蘇って半端なく苦しいだろうに』
 オブザーバーの羅列する単語のほとんどが理解できないアローラは首を傾げる。
『とにかく、コイツは全ての罪を償うまで、永劫とも言える時を苦痛と共に彷徨わなければならないのさ』
「えーごー? どのくらいなんです?」
『コイツの罪は二百七十一疲労限界極数グーゴルプレックスだ。目下増加中だけどね』
 よく分からない、という顔をするアローラに、泉の水を一すくい手に取るように言う。
『その手の中にある水の量が今日の償い』
 アローラは自分の手の中にある水を見た。
『コイツの罪の重さは、空の広さだよ』
 アローラは天を見上げた。今は真っ暗だが、それが返って深さを思わせた。
 しばらく呆然と夜空を眺めていたアローラだったが、やがてぷっと吹き出し笑い出す。
 何が可笑しいのか分からないコーマはバツの悪い顔で菱形を見る。
 何の音も発していないが、コーマにはこの菱形が同じように笑っているような気がした。


 6

 村の改築も軌道に乗ってきた。そろそろ離れ時かと考えながらコーマはなんとはなしに村をうろついていた。
 先の連中が大勢で襲ってきてもコーマには何も出来ない。結果は見えているのだ。できる事ならそれは見たくない。
 本当の事を言うと少し寂しいが、一時の夢だと思えばいい。今までもそうしてきた。
 村人のコーマを見る目も少しずつ変わってきている。畏敬の念は感じられないがそれは好都合だ。
「よー、にーちゃん。今夜また話聞かせてくれよ」
 マキトを含む村の子供達には結構懐かれている。
 長老の話に飽きた子供達にコーマの話は新しいようだ。
 とても戦いとは呼べない人間との闘争話は不評だったが、自分が手こずった神々との戦いは気に入られた。
 もっとも最高神と呼ばれる神はコーマよりも遥かに力が強い。どちらかと言えば暴虐を尽くしてきたコーマが初めて辛酸を舐めさせられた相手でもある。
 オーディンと呼ばれる神の話を子供達はえらく気に入ったようで毎晩のようにせがまれていた。
 もっともコーマが敗れてからのオーディンの動向など知らないし、知りたくもない。
 聞いた話と他の神の話を混ぜこぜにして、今や何が何やら分からない話になっている。
 コーマはいつ出てくるの? と興味津々な子供達に、実は最初の方にやられた魔物が自分だ、とは言えなくなっていた。
 不自然なほどにその事に触れてこない菱形が返って嫌味たらしい。
 そんな事を思い出していると、先のガラの悪い三人組がやって来るのが見えた。
 三人な所を見ると侵略ではなく、明け渡しの意志を確認しにきたのだろう。
「へえー、結構本格的に固めたじゃん。大したもんだ」
 真ん中の男、先日の時も真ん中にいたかは定かではないが、その男が素直な感想を漏らす。
「明け渡すつもりはないって事か? でもよー。こんなんで俺らと戦争始める気か?」
 百人の軍勢で押しかければイチコロだとうそぶく。
 まだ門扉は作っていないので中に入ってくるのは簡単だ。
「ここは長老の一族が作り上げた、俺達の村だ。ここを出るのは死ぬ事と同じ。明け渡すわけには行かない」
 屈強な門番が物怖じせずに立ち塞がる。
 真ん中の男は武器を構え、空中に火炎をほとばしらせる。門番は直撃していないにもかかわらずその熱さに後ずさりした。
 だが門番は苦痛に顔を歪めながらも、
「もう一回やってみたらどうだ? その……、同じヤツでな」
 と真ん中の男の武器を指差す。
 三人は顔を見合わせた。
「ほっ、こりゃ驚いた。頭の切れる奴もいるじゃねぇか。どうだ? オレ達の傘下に入らねぇか」
 門番は訝しげな表情になる。
「オレ達だって無駄に殺戮したいワケじゃねぇ。使えるヤツは仲間にしてきたんだ。ここは豊かだがあるが使えるヤツはいないだろうと踏んでたんだ。だがこの守りを見るとそうでもないらしい。どうだ? オレ達のボス、ドラード様の下で働かねぇか」
「……か、考えさせてくれ」
「六日後にまた来る。その時は全軍で来るぜ。いい返事がない時はそのまま攻撃だ。傘下に入りゃボスに従ってもらうが、誰も傷つかねぇんだ。頭を使えよ」
 男は武器を肩に担ぎ上げ、指で自分の頭を叩く。
 出て行こうとした三人だが、真ん中の男は足を止めて振り返った。
「オレ達は隣の村にいる。話をしに来たければいつでも来い。……ああ、隣村の奴らは傘下に入ったぜ。すぐ返事しねぇもんだから、半分くらいに人が減っちまったけどな」
 村人達が青ざめる中、男達は笑いながら去って行った。

 *

「これはチャンスだ。奴らの仲間になれば、皆生き残れるんだ」
「いや、そんなのは詭弁だ。奴らのために働かされるなど、家畜と同じだぞ」
「家畜だって生きられる。死んだら何にもならないだろ」
 ガヤガヤと言い合いが続く長老の家の中、一人の男が息を切らして駆け込んで来た。
「どうだった?」
 男は話せないほど疲労していた為、受け取った水を一気に煽って息を整える。
「ダメだ。あいつらの言っていた事は本当だ。隣村は全滅だ」
 奴らが帰ってから村で一番足の速い男に様子を見に行ってもらっていたのだ。
「生き残っていたのは若い女と子供だけだ」
 部屋は騒然となる。
「そら見ろ。これが奴らのやり方だ」
「いや、隣村は大きくないし、ここみたいな守りもない。だからだろ」
「もっと力を示せばいいんじゃないか? 守りだけじゃなく、攻撃もできる事を見せて、対等にもっていけば待遇がよくなるんじゃないか」
「長老! 長老のお考えは?」
 煙管をくゆらせていた長老はゆっくりと口を開く。
「村の守りはコーマ殿の知識で得られたもの。コーマ殿をここに留まらせるわけにはいかぬ。その後はどうなる?」
 う……、と村の男達は言葉を詰まらせる。
 残った者達に大した知識がないと分かれば、奴らはあっさりと態度を変えるだろう。
「もう戦いは始まっておる」
 長老は厳かに告げた。
「ここはワシの親の代が血と汗にまみれて作り上げた場所。そう易々と明け渡すわけには行かぬ。ここを出て新たな土地を耕しても、力をつけた奴らにまた奪われるだけだ」
 そ、そうだ……、と男達も力はないが長老の意見に賛同する。
 抵抗したからといって全滅するわけではない。村の遺跡には通路があり、山の裏に通じている。いざとなったらそこから脱出すればいい。
 大事なのは力には屈しないという姿勢を見せる事。だが殺してはならない。殺しは遺恨を残し、新たな闘争の火種となる。
「ワシのやろうとしている事は無駄に終わるかもしれん。だがその行動はきっと神に通じる」
「そ、そうだ。神の使いが見ているんじゃないか」
「人間同士の争いにコーマ殿は手を貸せぬが、ここは神に守られた土地。たとえ死ぬ事があってもその行いは神に伝わるはずだ」
 コーマは無表情の顔を僅かに歪めるが、村人達は一応の団結をして解散する。
 体良ていよく村人の士気を上げる事に利用されたコーマはやれやれと外に出るが、裏手では何やら聞いた事のある男の声がした。
「みんなどうかしてる。死んだら何にもならないだろう。家畜だろうが何だろうが、生きていればそのうちいい事もあるさ。僕達だけでも逃げよう」
 痩身の男、クトンがアローラを捕まえて説得を試みているようだ。
「いくら彼らでもいきなり襲ってくるなんて事はありませんわ。わたしは最後まで皆と一緒に話し合いの姿勢を保ちたいと思います」
 渋るアローラにクトンは声を荒げる。かなり焦っているようだが、おそらく彼だけではないだろう。各々の家で同じように不安に駆られている者もいるに違いない。
『非暴力、不服従か。その決断がどれだけの時間と犠牲を出すんだろうね』
「もしかして、心配しているのか?」
 オブザーバーが? とコーマは珍しい物でも見るように菱形を取り出して眺める。
『いやなに、キミがこれだけ注力した事が珍しくてね。その成果がどうなると考えているのかな? と思ってね』
「連中は六日待つと言っていた。あの連中がそんなに考える時間を与えるものか。あれは準備の時間だ。ここに来た奴は三下じゃない。ボスでもないだろうが、二番手くらいだろう。無傷で手に入れたいのも本当だろうし、抵抗の意思を見せたとなると計画的に確実に殲滅しにかかるかもしれない」
『さすが、絞められても魔物の戦士だね』
 この菱形は「腐っても」と言う時に「絞められても」と言い換える。
「まあ、危なくなったら逃げると言ってるんだ。大変な事にはならないだろ。それに、なった所でそれはオレのせいじゃない」
 そうだね、と菱形は冷ややかに言う。
 コーマとてあの心優しい少女が荒くれ者に蹂躙される所など見たくはない。見なくても、そんな事実がどこかで起きているというだけでもいい気分ではない。
 こんな事は絞魔になる前にはなかった感情だ。そんな気持ちになる度に、それが神の意図であるような気がしていい気はしないのだが、あの娘に無事でいてもらいたいと思う気持ちに偽りもない。
 だが自分にはどうする事も出来ない。絞魔は無力なのだ。


 7

 ドラードが襲ってくる予定を明日に控えた日、コーマは村を出る事を長老に告げた。
「ワシは感謝などせんよ。それは明日の結果次第じゃからの」
 元々期待などしていない、とコーマは一応武運を祈る言葉を残してきた。
 だがアローラに声を掛けてから去るべきか? 引き留めはしないだろう。それが返って別れを辛いものにするかもしれない。
 マキトら子供達や門番にもそれとなく声を掛けていった。全くらしくない行為なのだが、そういう流れを作った方がアローラに声を掛けやすいと思ったのだ。
 いつもの泉の辺りで待っていると、朝の仕事を終えたアローラが自室に帰る所だった。
「分かっていますよ。もう発たれるんでしょう?」
 コーマには耐える事の強さを教えてもらった、と感謝の言葉を述べられる。
 好きで耐えていたわけではないコーマは困った表情になるしかないが、感謝されている事には違いない。だがその感謝が明日も続くのだろうかと思うと居た堪れない気持ちになった。
 ふとコーマは遠くに複数の人影があるのに気が付く。黒い、それに多い。二、三十人くらいはいるだろうか。
「ドラードの奴らが来たぞ!」
 門番の男が叫ぶ。
「来るのは明日じゃなかったのか!?」
 村人達はパニックを起こすが、作戦通り門を閉めて固める。
「まあ、当然だろうな。律儀に約束を守るような奴らじゃないだろう」
 コーマは誰とは無しに呟く。村の準備はもう出来ている。読んでいたわけではないが、ギリギリまで準備をしているようではそもそも勝ち目はない。
「行ってください。山の遺跡に抜け道があります。後はわたし達の問題です。今までありがとう」
 と言ってアローラはコーマに抱きついた。抱きつかれた魔物の化身は引きつったように硬直して固まる。
「……元気で」
 少し瞳を潤ませるアローラだが、コーマは固まったまま、ジリジリと後ずさってぎこちなく方向転換した。
不可説不可説転ふかせつふかせつてんの加罪だね』
 オレは何も――、といつもの返しをする事もできない。コーマはここ数世紀で最も驚いていた。
 がくがくと震える膝を引きずって山へ向かう。この村に来てどれだけ縛られる期間が伸びたろうか。もう二度と人間には近づくまい、と何度目になるかもう覚えていない誓いを改めて立てる。
『このまま立ち去るのかい?』
 罪を重ねたままでいいのか――と言っているのか、と菱形を見る。この戦争を仲裁する事ができるならいい償いになるという事なのだろうか。
 だがコーマにそんな事ができるはずもなく、余計に罪を重ねるのがオチだ。それにコーマには一つ気になっている事があった。
「朝から姿の見えない奴がいる。オレと同じよこしまな奴は臭いで分かるんでな」

 *

 せせらぎの村奥にある遺跡はどのくらい前に作られたのかは分からないが、朽ち方から見ても数百年は前だろうと思われる。
 正面に彫られた模様が太陽を象った物らしい事から、太陽神を信仰する神殿であったと想像される。
 本格的に神を奉って人々を導く為の物か、一つの思想に基づいて人心を束ねる為の偶像かは定かではないが、神殿の下部には宝物庫と思しき広大な石室があり、正面には正式な通路のようなものがない。年月が経ち、崩れ落ちた為に入れるようになっただけだ。
 元は宝物を奉納して完全に埋めた物と思われるが、村の始祖が見つけた時には中は空だった。
 朽ち果ててから持ち出されたのかもしれないが、奥に狭い通路があった事から、創造者達は宝物を奉納の後、裏からこっそり運び出したのではないかと推察された。
 だが神殿が建てられる場所であるからには神聖で安定した土地であろうと、村の始祖はここに住み着いたのだ。実際、危険も少なく豊穣と言える歴史を綴っている。
 その遺跡の広い石室にガチャガチャと金属を擦り合わせる音が響き渡る。
 ガチリと音がすると、重い音を立てて奥の扉がゆっくりと開いた。
「ささ、ここです。ここから村に入れるんです」
 扉の奥から出てきたのは痩身の男クトン。
 続いて随分と大柄の男が現れた。
「あー、窮屈だったな。こりゃ大暴れしねぇと割りに合わんぜ」
 大柄の男はとんとんと肩を叩く。その後をぞろぞろと男が出てくる。皆レザー製の黒い服を着て、思い思いの武器を手にしている。
「あ、あの……。ドラードさん、約束通り、誰も殺さないように……、アローラという娘と僕は優遇してくださいよ」
 ドラードは聞いているのかいないのか分からない様子で首を回している。
「あ、そうだ。娘の弟も傷つけないでください。僕の弟でもあるんで」
「ん~、そいつは聞いてねぇ話だな。ダメだ、そいつは殺す」
「そんな……、誰も殺さないって約束です」
「なら娘の方を殺すか。好きな方を選べ。片方は殺す」
「そ、そんな! 約束が違います」
 石室内に鈍い音が響き渡り、クトンが吹っ飛ばされた。
「違う話してんのはてめぇだろうが。約束は反故ほごだな。娘はオレがもらう」
 下品に笑いながらドラードは手に持つ巨大な武器を舐めた。
 クトンは鼻から血を滴らせ、情けない悲鳴を上げる。自分の仕出かした事は覆らない。だがせめて皆に知らせなくては、と村に通じる出口に向かうが完全に腰が抜けてずるずると地面を這った。
 その手が足らしき物に触れ、クトンはぼやける視界の中を見上げる。
「なんだ。遅かったのか」
 そこにいたのは黒い――魔物の化身である少年。
 一応先ほどからいたのだが、既に扉が開いた後だったので、コーマにはどうする事も出来なかった。
「あ、ああ……、あんた。あいつらを……、あいつらをやっつけてくれ。魔物の力で、あいつらを皆殺しにしてくれー!」
 クトンは乞うようにコーマの足にすがって泣く。
『誰と同じ臭いがするんだっけ』
「それは撤回する」
「なんだお前。魔物だと? オレ達をやっつけるってぇ?」
「ボスぅ、こいつぁ大した事ねぇですよ。とんだ詐欺師野郎でさぁ」
 脇に控えるのはおそらくこの間の三人組の一人だろう。
 ドラードは鼻を鳴らして手にした武器を構えた。三人組が持っていたのに比べて大きい。それにメタンの匂い。火炎放射器だろうか。
「あの武器はこの世界にそぐわないんじゃないのか?」
『かもしれないけど稀にある事だ。直接指令がないのなら排除対象にはならないね』
「ああ? 何をぶつくさ言ってやがる」
 そうこうしている内に手下共は全て広間に出てきたようだ。統率がとれているのかきちんと整列している。
「その格好に免じて邪魔しないなら見逃してやる。何なら手下にしてやってもいいぜ」
 コーマは少し寂しそうに呟く。
「生きていく為の捕食は罪ではない。ただ必死に生きているだけのお前達を、神は裁く事はできない……」
「ああ? 必死だと? ふざけるな。オレは神など信じちゃいねぇ。オレはこの世で暴虐の限りを尽くし、全てを奪い尽くす。そして全てを破壊し尽くす。神がいるってんなら、このオレを止めてみろ!」
 石室内に響き渡る大声で怒鳴る。
「あんな事を言っているが?」
『そのようだね。この連中は後にエル・ドラードという国くらいの集団になって、この世を混沌に貶め、やがて滅ぼす。まあ、可能性の一つだけどね』
「それはまずいんじゃないのか?」
『星の数ほどあるまずい状況の一つにすぎないよ』
 オブザーバーは無機質に答えるが、その内容は否定ではない。
 神にとってはドラードも可愛い子供の一人だ。彼がどんな人生を送ってきたのかなど知る由もないが、それでもより多くを助ける為ならば……。
 コーマは口の端を僅かに上げて呟くように言った。
「魔力開放申請。多くの人間の命が失われるのを事前に喰い止める。未来をあるべき姿に正す為」
 菱形に埋め込まれた宝石が目のように光を発し、普段にも増して無機質になった声は、
『――承認――』
 と告げた。
『“現在”は多岐に渡る未来の可能性において、世界を破壊する分岐点の一つと認められた。体細胞の0.0124%を1/6秒間開放する事を認める』
「それだけかよ」
 本来の姿を取り戻す許可が降りたのは指一本分に満たない。それも瞬くほどの時間だ。
 相変わらずしみったれている、と不満を口にするが菱形はそれ以上何も言わない。犠牲を最小限に抑える為、解放も常に最小限だ。
 仕方ない……、と武器を手ににじり寄って来るドラード達を見やる。四、五十人はいるだろうか。外にいる連中は陽動の三下で、こっちが本隊なのだろう。
 ほんの一部の開放を体のどの部分に当てるかなど決まっている。コーマは片方の目を閉じて手で覆う。
 クトンが絶望的な悲鳴を上げてコーマの後ろに隠れてうずくまった。
 コーマは全員を正面に捉えると、目を覆う手を放し、閉じていた目をカッと見開いた。
 それは人間の目ではなく、爬虫類のように金色で縦に長い瞳をした目だ。
 ボッ! とストロボのような光が目から発せられ、ドラード達は写真に撮られたようにそのままの形で静止する。
 光に驚いて動きを止めたかのようにも見えたが、一呼吸置いてもドラード達は動かない。息遣いや衣服の擦れる音もしない。石室は完全な静寂に包まれた。
 コーマはそのまま歩き出し、奥の扉へと向かう。だがそこには巨躯を持つドラードが立ち塞がっている。
 クトンは何が起きたのかも分からずガタガタと震えながら、その光景を眺めていた。
 コーマの小さな体はドラードに叩き潰されると思われたが、コーマは障害物でもどけるように無造作にドラードの体を押した。
 ドラードは固まったまま倒れ、周りにいた手下共にぶつかり、“ボキッ”と折れた。
 腕が、首が、膝が、脆くなった石像のように折れ、手下共々将棋倒しにバラバラになって崩れ落ちる。
 コーマの目から発せられた光は、生物の分子構造を完全に破壊し、その材質を無機質な物へと変えていた。
 通路までの道を開けたコーマは、バラバラになったドラード達を踏み崩しながら奥の扉を抜けて出て行く。
 その光景をクトンは呆然と見送った。


 8

『相変わらず凶悪だね。キミのその“邪眼”は』
 あれっぽっちでは憂さ晴らしにもならないが、数百年ぶりに力を使う事が出来たコーマの足取りは少し軽い。
『強い毒を持ち、見た物ですら一瞬で命を奪う。何ともはた迷惑な能力だ』
 通った後に残る毒液に近づいた者までも殺し、槍で突き殺せば毒が槍を伝ってその相手を殺したとも言われる。
 多くの伝承を持つが、その凶悪さ故に正確にその性質を伝える者はいない。それがバジリスクと呼ばれる魔物である。
 何とでも言え、とコーマは通路を通り抜け、遺跡の裏山へ出る。
 コーマは振り返って、感慨深げに山を見上げた。
 この裏側では、村の人々が戦っているだろう。もっともドラードの主力は遺跡の中で石室の一部になってしまっから、心配するほどの事はない。
 外の残党など逃がさないよう囲う為にいるだけだ。その程度の連中くらい自力で追い払えないようではどのみち先はない。
 残党は中から奇襲をかけるはずのボスが現れない事に焦り、そのうち崩れる。村人も自分達の力でドラードを追い払ったと自信をつけるだろう。痩身の男は余計な事は言わないはずだ。
 おそらくもうあの娘と会う事はないのだろう。それが少し心残りだったが、一緒にいてはどれだけ罪がかさなるのか分かったものではない。
『あの娘なら、絞魔を続けていればその内会う事もあるさ』
 コーマは片眉を上げる。人間の寿命は短い。同じ人間に逢うなどこれまでにはなかった事だ。
『あの娘は天寿を全うした後、女神として転生する。天体の極域近辺に見られる大気の発光現象――オーロラの名の由来となる暁の女神だ。その彼女をけがれから救った功績は大きい。今回の贖罪しょくざいは期待していいよ』
 本当か? とコーマは菱形を取り出す。
『今回レベルの償いをこのペースで続ければ、星が三度生まれ変わる頃には全ての償いが終わるんじゃないかな――』
 コーマは無表情のまま、菱形をぽいと投げ捨ててさっさと歩き出す。
『オブザーバーから離れたら不可説不可説転ふかせつふかせつてんの加罪だよ。あ、もう今回の分を越えちゃったかも。きっと神の罰が下るよ。今戻ってくるなら――』
 山向こうから人の歓声のような音が風に乗って流れてきた。
 喉かな山の中に無機質な声が響く中、黒い少年は構わず山を下って行った。
 次に絞魔が降り立つのは、何処の地か……。
99kg 

2016年04月09日(土)15時09分 公開
■この作品の著作権は99kgさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
絞魔が降る(こうまがおる)

十数年前に書いたプロットを現在のスキルで新たに書きおこした物です。
完成した小説を書こう、と思いプロットを書いたのですが、誰に見せる予定もない物はやはりモチベーションが上がらない。
それが完成を見る事が出来たのも、企画してくださったクトン様、ピューレラ様のおかげであります。
ラノベという言葉が広まる前のものなので、ジャンルとしては一般ファンタジー小説になるかと思います。

5/8 誤植、章分けを修正

2016年05月10日(火)21時40分 99kg作者レス
元々そのつもりだったわけですし、掲示板にある通り解決しているようですから蒸し返すとまたややこしいですよ。

303さんのレスを削除なり訂正しておけばよいんじゃないでしょうか。


確かにうーんとなるんだとは思うんですけどね。


 

nice261
pass
2016年05月10日(火)20時57分 茉莉花
99kg さんへ

ふむふむ。
分かりました。

うーん……ごめんなさい。私としては評価なしで出したと思い込んでしまっているので、ひとまずクミンさんにメールをして、再度0点に戻していただくよう私から連絡をするということで解決してもよろしいでしょうか?

 

nice281
pass
2016年05月10日(火)02時44分 99kg作者レス
茉莉花さんへ

別にワザとやっただろうとは言ってません。
茉莉花さんが意図的に変えたのではない、というのは了解しました。そこはもう言及しません。
私も預金残高が不正に減っていて、不正請求だなんだと疑った事は何度もありましたが、ちゃんと調べたら必ず引き落とし忘れてたりしたもんです。それはよくある事です。

まず茉莉花さんは当作品に「評価無し」で感想を残したと思っているんですね。
ですが私は実際に茉莉花さんの感想に「0点」がついている事を見ています。

-- つとむューさん
0 茉莉花さん     ←
30 T.Kさん
20 ピューレラさん
20 いりえミトさん
10 wさん
30 兵藤晴佳さん
30 たぬきさん
0 ハイさん
30 たてばんさん
0 たかセカンドさん
10 七月鉄管ビールさん
0 キーゼルバッハさん
合計 180点 平均点15点

合計x平均 + 全感想数x100
180x15 + 13x100 = 2700 + 1300 = 4000

リック・ドMさんが提示してくれている資料を見ると0:00の段階で「絞魔が降る」は 4000点。
ピッタリ合いますよね。
茉莉花さんが「評価無し」をつけていたのなら点数は違っています(平均点変わりますから)。リック・ドMさんは適当な事を言っているのでしょうか?

そして 0:30過ぎに茉莉花さんが感想を修正。
その時に点数が変わっています。これは不具合のせいです。茉莉花さんのせいではありません。クミンさんのメールに書いてありますね。読んでますか?

掲示板に書いてある詳細からすると新規感想扱いで集計から弾かれるという話でしたから、

-- つとむューさん
30 T.Kさん
20 ピューレラさん
20 いりえミトさん
10 wさん
30 兵藤晴佳さん
30 たぬきさん
0 ハイさん
30 たてばんさん
0 たかセカンドさん
10 七月鉄管ビールさん
0 キーゼルバッハさん
合計 180点 平均点16点

合計x平均 + 全感想数x100
180x16 + 12x100 = 2880 + 1200 = 4080

リック・ドMさんが7:00頃に確認した「絞魔が降る」の点数はは 4080点。
ピッタリ合いますよね。ていうかなんで私はこんな事してるんですかね?

この間に感想更新したのは茉莉花さんだけです。
だから運営は本来設定してあった「0点」に戻したんですね。運営は根拠の無い修正はやりません。
これは不具合の修正ですから事後報告なのは当然ですね。
私は上の面倒な計算しましたが運営はもっとハッキリした根拠に基づいているはずなんですね。

これに対して茉莉花さんが「評価無し」をつけていた、とする根拠は何ですか?
少なくとも私やリック・ドMさん、クミンさんの労力を超える根拠を提示してもらわないと納得はできません。

繰り返しますが点数変わったのは不具合のせいです。茉莉花さんのせいではありません。クミンさんのメールに書いてありますね。読んでますか?
ですがその後の事態をややこしくしたのは茉莉花さんですよ。

しかも感想修正した理由が止むを得ないならまだしもあまりにくだらないので、ちょっと先の返信はキツイ書き方だったかもしれませんが、別に責めているのではありません。
勘違いなら勘違いでいいんです。よくある事です。

たまたま私は自分の作品なので点数チェックしてましたから分かっただけですけど、運営が勝手に変えたとか、更に他の人のもいじってるとかちょっと無茶苦茶です。
運営はやってみないと大変さは分からないとは思いますが、その大変さは計り知れないものですから、もう少し敬意を払ってもよいと思いますよ。

 

nice240
pass
2016年05月10日(火)01時07分 茉莉花
99kgさんへ

再びのコメント失礼します。

感想削除に関しては確かに私も浅慮であったな、と反省しております。
今後、作品・感想の一定期間の保持も含め、考えていきたいです。

点数の変更ですが、こちらは改めて点数の変更はしていないことを明言いたします。していない、というよりできないのです。一度投稿して後夜祭に入ってしまえば、削除も点数も、運営以外は手を加えられません。であれば順位の変動も、運営が原因と考えるのが自然でしょう。

なぜ運営が私の感想に対して「評価なし」から「0点」という変更を行ったのかは分かりませんし、私としてはそれを詮索することはありません。
ただ、私としては「評価なし」から「0点」という変更が行われたので、「評価なしに戻してください」と言い、クミンさんがその要求を聞き入れてくださったという流れです。

何らかの誤解が解けることを祈っております。

(作品を読んでいらっしゃる方へ)
作品とは関係のないところで長々と申し訳ありません。

 

nice250
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2016年05月09日(月)10時32分 99kg作者レス
私は実際に0点がつけられていて、評価無しに変わっているのを見ているから言っているのですよ。
私の記憶違いでない事は掲示板でリック・ドMさんが示しておられますよね?
ご自分で点数計算されました?
後から点数変えられたのは不具合があったからで、今は直っているから変えられないのですよね?
クミンさんのメールちゃんと読まれましたか?
ていうかこれあなた宛てに送られたメールですよね。公開の許可はとっているのですか?

削除した理由もよく分からないのですが、私も評価無しの感想は残していますが、別に消えたわけではないんですよね?
返信から読みとった限りでは集計画面に出ない事が気に食わなかった、という風にしか聞こえないのですが、解釈違ってますでしょうか。
集計画面はシステムで、運営が判断して決めているのではないだろうというのは私が技術系の人間だから分かるだけであって、あなたの理屈の方が一般論なんでしょうか?
仮に気に食わなかったのだとしても、それは要望に出して次回から改善してもらえばいいのだと思うのですが何か変でしょうかね?

別に間違ってしまった事は構いません。間違いは誰にでもあります。
私は礼節をわきまえてくださいと言ったのです。
掲示板ではあなたの名前を伏せた上で寛大な処置をしてくださっているようなのに、あまりに礼に失するのではないでしょうか。

まあもやもやは無くなりました。
ただ私の中では「犯人お前かー」にしかなってないですけど。
 

nice252
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2016年05月09日(月)05時00分 茉莉花
99kgさんへ
茉莉花です。
このたびはご心配・ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。

まず、感想を削除した理由から説明します。
出来るだけ丁寧に書くように努めますが、分かりにくい部分があればまたコメントしていただければ嬉しいです。

・感想を削除した理由について
これは感想を書いたものの、感想人ランキングの項で評価なしの感想は感想としてカウントされていなかった。
つまり主催により認められない感想であった、と判断したためです。
言うまでもなく、企画の最高責任者は主催にあります。その主催が認めない、数に入れないという判断をしたので私としてはその判断に従い削除しようとしました。
ただ、仕様上感想の削除はできない状態になっているので感想を変更し、削除のかたちとしました。(後述しますが変えたのはあくまでも感想の内容のみで点数・評価は一切いじっておりません)
あくまでも私は主催の意に従ったと判断しておりましたが、余計な混乱を招いてしまったようで申し訳なく思っております。
コメントにも残しました通り、99kgさんのせいではありません。


・点数の変更について
>0点が評価無しに変わっているので点数的には上がってはいますが、後夜祭に入ってから点数評価を変えるというのは問題かと思います。
とのことですが、私はもともと「評価なし」で出しておりました。後夜祭に入ってから感想を変えましたが、点数・評価は一切いじっておりません。というか、変更ができない仕様になっています。
(今回私は既定の五十枚以上の作品は二作の例外を除き、全て点数評価なしとして出しています)

ところが2016/5/7 13:25に主催のクミンさんから下記のメールをいただきました。

メールにて失礼致します。
GW企画運営のクミンです。
茉莉花様のメールアドレスでよろしいでしょうか。

おそらくなのですが、企画終了後に感想内容を更新した所、点数が消えてしまったのではないでしょうか。
そうでしたらシステム側の不具合となります。
大変ご迷惑、ご心配をおかけしました事を深くお詫び申し上げます。

集計後の点数が変動してしまう為、こちらで記録していた点数に戻させて頂いております。
万が一点数に相違がありましたらお知らせください。

大変申し訳ありませんでした。

これからも企画をよろしくお願い致します。


そこで確認したところ評価なしで出していたものが0点となっておりました。
つまり、主催によって勝手に感想者の点数が書き換えられたわけです。

このメールを受け、私は以下のメールを同日15:30に返信しました。


GW企画主催・クミン様へ

GW企画参加者の茉莉花と申します。
さきほどはそのまま返信してしまって申し訳ありませんでした。

さて、いただいたメールの件なのですが、該当する作品は

古太刀和也の怪異譚 生贄の巫女と優しい詐欺師
志田 新平 さん


絞魔が降る
99kg さん

の二作ですね?

(評価なしから0点へ、という変更)

この件についてですが、もともと私は「評価なし」で評価をしておりました。
よって、クミンさんが変更された評価なしから0点へ、という変更という変更は間違いとなります。
私は感想内容を変えただけなので、2016/5/7中に「評価なし」にお戻しくださるようにお願いします。
もしお忙しくて期限内にお戻しいただけないようでしたら、こちらで再度評価なしに戻します。 


この後、同日17:54に

ご連絡ありがとうございます。
点数修正致しました。

というメールが主催のクミンさんから届きました。

また、おそらく99kgさんもご存じかとは思いますが、後夜祭以降の点数変更は感想者の側では一切できないようになっております。
主催にも言いましたが、後夜祭に入ってから点数評価を変えるというのは不可能です。

今までクミンさんの立場も考え黙っていましたが、説明を求められていたので今回公にしました。
主催のクミンさんと私との間ではもう解決している問題ですので、改めて問題とはしませんが主催の一存で勝手に感想者の点数・評価が変えられた、ということだけは言っておきます。

長々と失礼いたしました。
また、煩雑な内容にしてしまい、申し訳ありませんでした。

繰り返しになりますが、要点をまとめると…

感想の削除というかたちにしてしまったこと……感想人ランキングの項で感想を書いたにもかかわらず集計されなかった=認められなかったこと。
認めない(=カウントしない)という判断をしたのは主催であり、最高責任者に認められない感想であれば消すのが筋、という判断に基づいたため。
ただし、無用なご心配、混乱をさせてしまい、申し訳なかったかなと思っております。
クミンさんが下した判断・その立場を守るため、消すのがスマートだと思いました。

・点数の変更について
今回、後夜祭以降は感想者が変更できない仕様になっております。
ただ、主催のほうで事後連絡のかたちで「評価なし→0点にしました」と告げられました。
確認したところ、確かに0点となっていました。
もともと評価なしでは出していたため「それは間違いです」と変更し、もとの「評価なし」に戻していただきました。

なお……主催が今回事後報告のかたちで感想者の点数・評価を勝手に変更したのですが、この措置が私だけである保証はどこにもありません。
少なくても私の身の回りにはいないようでしたが……。
感想者は各自、自分がつけた点数が変更されていないのか確かめる必要があるのかな、と思っています。

それでは一度説明を終わりたいと思います。
何か疑問点があればまたコメントをいただければ嬉しいです。



 

nice248
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2016年05月09日(月)01時58分 99kg作者レス
■つとむューさん

自分が三人称を使うのは場面を変えたい場合のみで、それ以外ならまず一人称ですね。
一人称でも正体を隠す事自体は難しくないと思っています。
まあ場面をバシバシ飛ばしたい時に使うものですので、遠慮なくバシバシ飛ばします。
でも分かりやすいように、というのはずっとついてくる問題でしょうね。

ありがとうございます。

コーマが自分の記憶を失ったら……、きっとチンピラ三人組の一人になっているでしょう。



■茉莉花さん

差し出がましいようですが、ネット上というのは公の場ですので、礼節は弁えられた方がよろしいかと思います。
私のせいでないと言われても、じゃあ誰のせいなの? ともやもやしたものしか残りません。
0点が評価無しに変わっているので点数的には上がってはいますが、後夜祭に入ってから点数評価を変えるというのは問題かと思います。
掲示板を見る限りでは不具合のようですけど、そもそも変えようと思わなければ起きなかったはずです。
昔の企画は通常の投稿板の拡張でしたからもっと色々な事ができ、利用者が各々やってはいけない事を守っていました。今もそれは変わるものではないと思っています。
監視カメラを設置していないから悪いのではなく、万引きをする人間が悪いのだと思います。

以上、お説教おじさんでした。



■T.Kさん

楽しんでいただけたのならば幸いです。
ありがとうございました。



■ピューレラさん

>絞魔が少年というより三十代ぐらいはいっている青年に感じました。
見た目は仮の姿ですからね。
実際には少年どころか人間でもないですから。数千年生きているじじいです。

>【好きだった点その1】
>長老の人柄。
実は、あれ私です。

>これは初めてプロットを作った十年前の時にも絞魔さんはバジリスクという設定だったのでしょうか?
そうです。その頃から話の筋は変わってません。

ありがとうございました。



■いりえミトさん

ここが面白いところなんですよ~と推せる所を楽しんでいただけたようで嬉しい限りです。

> 「威厳を示してはならない。尊敬の念を抱かせても罪になる。」など、「加罪されること」については多く書かれていたのですが、「どうすれば償えるのか」についてはあまり書かれていない印象でした。(読み落としていたらすみません)
> オブザーバーの説明を読む限り、加罪と贖罪は紙一重というか、非常に微妙で曖昧な部分があるようなので、「何をすれば贖罪になり、何をすれば加罪になるのか」について、もっと具体的に解説するシーンが欲しかったです。
それ、多分コーマが一番知りたがっているんでしょうね。
実際の所、絞魔にも一切説明されないです。

しかし毎回作者公開で驚かれているというのは嬉しいですね。
自分はそれほど器用ではないと思っていたので、作者意外というのしうれしいです。

楽しんでいただけたのならば幸いです。



■wさん

>少年が主人公なのかな、と思ってしまいました。それにしては印象弱いかな、と思ったら、コーマが主人公とか。そもそもコーマという名前が出てくるのが、3、になってからですし、さすがに短編の中で主人公紹介が遅すぎるような気がします。
某新人賞金賞作品では1/3くらいになってから主人公の名前が出てきた物がありましたよ(カンケーない)。

全体的には楽しんで頂けたようでありがとうございました。



■兵藤晴佳さん

前回オーバーしていたんでしたね。今回参加されていたようで嬉しいです。

高得点ありがとうございます。
楽しんでいただけたのならば幸いです。

 

nice253
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2016年05月09日(月)01時57分 99kg作者レス
■たぬきさん

>おもしろかったです。 砂に埋もれていた羽や鶏冠という単語で若干のネタばらし。オチ間際でのちょっといい感じの強キャラアピールが、彼の陰鬱なキャラクターによく似合っていましたし、旅立っていくところでオブサーバーからサプライズプレゼントがあって、後味も良かったです。
バジリスクはコカトリスと混同される事も多いですからね。
実際コーマの真の姿には羽はないですが(鶏冠だけです)、服のデザインに盛り込んでみました。

>途中門番とレザー男のやり取りで、セリフが一部変だったのでそこが気になりました。(誤字)
ご、ご……誤字!?(古)

>後細かい所で、村人たちの「いざとなったら抜け道があるから!」というのが二回出てきたのがなんだかシュールでした。
大事なことですのでw

高得点ありがとうございます。
楽しんでいただけたのならば幸いです。



■ハイさん

低得点ありがとうございます。
楽しんでいただけたのならば幸いです。

いやいや、厳しい評価こそ必要なものですからね。嬉しいのはホントてす。
まだまだ頑張らねばなりません。

よよよよりよりより精進してこんこんこんごともががががが……。



■たてばんさん

高得点ありがとうございます。
楽しんでいただけたのならば幸いです。

章分けは、少々雑でしたね。



■たかセカンドさん

感想ありがとうございます。
ドラマのように視点の変わる三人称をうまく書けるようになりたいと常日頃から思っていますので、今後の活躍にご期待ください(ホンマか)。

>最後に、コーマが何故菱型を捨てたのか。
>村での出来事で、コーマの胸中が変わり菱型を捨てるに至ったのだと思いますが、その動機もいまいちわからないままでした。
おやや。
その時コーマは3度星が生まれ変わる頃には全ての罪が償われる、と言われたのですね。
規模にもよりますが星の寿命を恒星と同期しているとみても平均的に100億年。それが3度ですから300億年です。
そして今回の贖罪が数百年に一度の好機でした。同じペースで訪れるとは思えないですが平均700年に一度のペースだと仮定しても21兆年かかると言われたわけです。
あくせく働いて借金返して21兆年。さっぱりピンと来ないですね。
大抵の人はどうでもよくなると思います。
コーマもぽいと投げ捨ててどっか行っちゃうわけですが、これは冒頭でも弟に持たせたままどっか行こうとしたようにしょっちゅうやってるやりとりなのです。
結局また戻ってきて拾うか、神の罰を受けてまた持たされるかなんですが……。
ですが、実際271グーゴルプレックスを21兆で割ってみると、アローラの件の贖罪の大きさも分かるかと思います(分からんわ)。



■七月鉄管ビールさん

ありがとうございます。何とも嬉しいお言葉です。



■キーゼルバッハさん

ありがとうございます。
つーか長いです。
毎回よく読みこんでおられますよね。ありがたい事です。

より精進を重ねたいと思います。
ありがとうございました。

 

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2016年05月09日(月)01時54分 99kg作者レス
■あとがきみたいなもの

「絞魔が降る」拝読頂き誠にありがとうございます。
このお話、コメントにある通り、十数年前に書こうとして設定、プロットを作ったものなんですね。
当時エピソードのみとか台詞のみとか物書きに片足突っ込んではいたものの、完成した小説というものを書いた事が無かったので、いっちょ書いてみようと思い立ったのが始まりです。
そしたらもう難しいも難しい。全然進まない。設定、大まかな流れを作るのはいつも通りでも間が埋まらない。
特に誰に見せるでもないと仕事の方が優先される(当然ですが)。
そんなわけで、十年以上暖めていたならまだしもですが、ずっと放置していたというのが現実です。
なので書けるようになった今、当時の設定を掘り返してみました(ちゃんと残ってます)。
書けるようになった、と言っても技術の向上よりは、実際には「ある程度の事には目を瞑れるようになった」というのが一番大きい所だったりします。
生まれて初めての小説であってそうでない。リメイクみたいなもんでしょうか。私的には感慨深いものになっています。
なのでプロットはできるだけ当時のものを再現したくてほとんど変更していません。タイトルもそのままです。
コーマとオブザーバーは当時から何も変わっていません。まあ十年なんて彼らにとっては瞬く間です。冒頭死体のフリをしている所とラストの「承認」の件も全く同じです。

しかし今回手痛い誤植が……。あれだけ見直してもこんなのが残る……。こりゃまいったね。首を吊ろうか拳銃で頭を打ち抜こうか。
でもこれが今のスキルなんだから仕方ありません。
これはもう不可説不可説転の加罪だね。

この不可説不可説転とはなんぞや? オブザーバーはとてつもなく大きい数の単位だと言ってましたが、
10 の 37218383881977644441306597687849648128乗 が1不可説不可説転です。
百は 10の2乗、千は 10の3乗、万、億、兆、京…………………の遥か先にあるものです。(ちなみに無量大数は 10の68乗)
そしてコーマの罪の重さである 271疲労限界極数(グーゴルプレックス)。
グーゴルプレックスとはアメリカの数学者の甥(当時9歳)による造語で、「1の後に疲れるまで0を書いた数」と言ったのをヒントに定義されたものです。
1グーゴルは 10の100乗、1グーゴルプレックスは 10の1グーゴル乗。
計算機に入力する事もできません。
懲役271グーゴルプレックス年(正確には年じゃないですけど)と言われてもピンともカンともこないですね。
ちなみにバック・トゥ・ザ・フューチャー3で恋人を失ったドクが「100万人に1人、10億人に1人、いや、1グーゴルプレックス人に1人の女性だった」と嘆くシーンがあります(人類そんなにいねーよ)。
疲労限界極数というのは私による造語で、ここだけ横文字なのもなんかなー、と勝手に定義したものです。
グーゴル = 疲労限界数、グーゴルプレックス = 疲労限界極数。
なので疲労限界極数を google検索しても出てきませんのであしからず。
ちなみに googleの名前はこのグーゴルのスペルミスによって付けられた名前です。



そして今回設定や世界観が分かりにくいという感想がいくつかありましたね。
実際の所はそれは重要ではないので、逆を言えば世界観を気にして頂けたのだと前向きに受け取っております。
冒頭クアダルーという鳥が登場しますが、正確にはクアダルーペという絶滅した鳥です。
かなり昔で、オークなんかもいたんだけど今はもうほとんど見ない。魔法っ気は全く無い世界。というのを描写的には入れてあります。

絞魔は自らを名乗ってはならない。
絞魔は監視端末の監視下から離れてはならない。
絞魔は現世にある物を傷つけてはならない。
絞魔は現世のために役立たねばならない。
絞魔は人に触れてはならない。
絞魔は人に影響力を持ってはならない。
 :
のように一応十二ヶ条みたいなものも存在するのですが、それを前面に出してしまうといかにルールに抵触しないように動くかなどの展開になり短編には収まらない。
実際コーマも制約を覚えた事はありませんしね。
どれも微妙な解釈で、何かつけては加罪されるので、皆最初の数年でこれは贖罪ではなく永劫縛りつめる為の制度なんだと理解しています。
基本的には囚人なので精力的に動く絞魔はいないんですね。

神界には時間の概念がないので、絞魔は時代、世界に関係なく飛ばされています。
ファンタジー世界にも現代にも中世ヨーロッパにも戦国時代にも絞魔はいます(モンスターの数だけ絞魔はいますがストーリー化したのはバジリスクだけです)。
菱形のペンダントやイヤリングをした妙にやる気の無い人がいたら、それは絞魔かもしれません。
バジリスク絞魔を縛った時に居合わせた女神が、アローラと同一かはご想像にお任せします。



そして今回、全体的に点数高めにつけています。
前優勝者は高い点数つけるようになってから自身の評価も高まったと言ってましたので、それにあやかろうと思いまして。
まあ点数だけ上げりゃいいってもんでもないんですけど、何事も形からという事で。
実際どんな作品でも楽しめる所を探し、突っ込んでばっかりいる物でも突っ込みを楽しんでいますので何も間違ってはいないのでね。
 

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2016年05月04日(水)21時08分 つとむュー
GW企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

アローラとマキトの姉弟が砂地を歩いていたら少年と菱型を発見し、
村に連れて行ったら少年は神の使いコーマと言われ、
しかしコーマはドラード一味にボコボコにやられてしまう。
ドラード一味が再度襲ってきた時もコーマは無力っぽかったが、
ついに真の力を発揮し、ドラード一味をやっつける、というストーリーでした。
(間違っていたらスイマセン。こちらの読解力不足です)

最初、アローラとマキト寄りの視点の三人称で物語が始まり、
この二人が主人公と思いきや、視点はだんだんとコーマの一人称寄りになり、
三人称になったり、コーマの一人称っぽくなったりで、
誰の立場で物語を楽しめばいいのか、わからなくなってしまいました。

>『強い毒を持ち、見た物ですら一瞬で命を奪う。何ともはた迷惑な能力だ』

コーマがすごい力を持っている、という真相は面白かったです。
しかし、コーマはそのことを知っているという設定のようなので、
上記のような人称の迷走が起きたのではないかという印象を受けました。
これは個人的な勝手な推測ですが、
作者さんは本当はコーマの一人称でストーリーを書きたかったところ、
一人称だとコーマの隠された力のことを隠し通したままでいることが難しくなって、
三人称っぽく描写されたのではないかと思っています。

このジレンマを解決するには、「主人公が自分の秘密について忘れている」という設定が、
一つ必要になってくるのではないでしょうか?
そして、何かのスイッチで思い出す。
ラ研の高得点作品掲載所には「ひよこリープ」など、
ラストに主人公が忘れている真相が明らかになる作品があるので、
参考にされてみてはいかがでしょうか。

枚数は、ルールが50枚までのところ60枚でした。
60枚を超えてしまったということで、ルールをあまり強く意識されていなかったためか、
もしくは立てられたプロットが50枚以内に収まるものではなかったのか、
どちらかだと個人的には思います。
真相がどちらかなのかは判断できませんので、大変申し訳ありませんが、
今回は点数無しでご了承いただけましたら幸いです。

いろいろと書いてしまいましたが、ラストの真相が衝撃的な作品でした。
拙い感想で申し訳ありません。
今後のご活躍を期待しています。
 

nice250
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2016年05月07日(土)00時33分 茉莉花
作者の方へ

茉莉花と申します。
貴作、拝読しました。

大変申し訳ないのですが、一身上の都合により感想を削除させていただきます。
99kgさんのせいではないです。
レスもお気遣いなきよう。

今後のますますの創作活動をお祈りしています。
 

 

nice246
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2016年04月30日(土)00時45分 T.K30点
オリジナリティに富んだ独特の世界観だと思います。
魔物であるコーマがただ能力を使うだけのバトル物に納まっておらず、
無力ながら、無気力ながらオブザーバーとやり取りしながら生きて行く様がいいと思います。
最後にきちんと締める所も締めてくれましたね。

 

nice246
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2016年04月26日(火)01時14分 ピューレラ20点
絞魔が少年というより三十代ぐらいはいっている青年に感じました。

【好きだった点その1】
長老の人柄。

長老の諭しの言葉が好きです。こういう考え方大好きですd。

特に「ならアローラは悪い奴か? アローラもコーマにやっつけてもらうか?」
とマキトに話しているところが好きです。

【好きだった点その2】
知識を借りるという発想が好きでした。

絞魔さんに制約が多過ぎて、何も出来ないと読みながら少しつまらないなと思っていたので
(チートまでいかなくても、少しは無敵感がある方が個人的にワクワクするので)
知識だけでも「早く、がツンといってやって」と気持ちが高ぶりました。

【好きだった点その3】
絞魔さんの性格。

これは初めてプロットを作った十年前の時にも絞魔さんはバジリスクという
設定だったのでしょうか?

淡々としているようで、人を思う気持ちもあるところが魅力的でした。

執筆お疲れ様でした。
 

nice249
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2016年04月26日(火)00時13分 いりえミト20点
『絞魔が降る』拝読しました。


 罪を償い続けなければならない「絞魔」の設定が独特で、面白かったですね。
 神にとって人は等しい存在なので、悪者に見える人間でも懲らしめることはできない、という考え方によって、「主人公が悪者から人々を救う」というありきたりな英雄譚とは違う、一風変わった物語が展開されていますね。
 村人たちがコーマの知識だけを借りて身を護ろうとするの展開もいいですし、世界を破壊する分岐点の一つと認められて、0.0124%を1/6秒間開放するという場面も面白いです。
 物語序盤はさほどでもない印象だったのですが、読み進めるごとに引き込まれるものがありました。

 気になった点としては、贖罪の条件が分かりづらいところでしょうか。
 「威厳を示してはならない。尊敬の念を抱かせても罪になる。」など、「加罪されること」については多く書かれていたのですが、「どうすれば償えるのか」についてはあまり書かれていない印象でした。(読み落としていたらすみません)
 オブザーバーの説明を読む限り、加罪と贖罪は紙一重というか、非常に微妙で曖昧な部分があるようなので、「何をすれば贖罪になり、何をすれば加罪になるのか」について、もっと具体的に解説するシーンが欲しかったです。

 また、文章面ではやや硬さを感じ、読むのに少々時間がかかりました。
 世界観に合っている文体だとは思うので、劇的に変える必要はないかとは思いますが、もう少しスピード感も兼ね備えることができると、なおいいのではと思います。


 短いですが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。

 

nice251
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2016年04月24日(日)21時19分 w10点
こんにちは。読みましたので、感想となります。

まず最初に作者コメントが気になりました。別にそれで点数上下するってことはないですが。
企画に参加しているような人なら、昔から、書きたい題材、みたいのを一つや二つあたためているものだと思います。でも実力が乏しい頃に考えたものだから、なかなか形にすることが難しかったりして。
それを、企画がきっかけでインスピレーションのスイッチが入って、完成までこぎ着けることができる、というのは、あんがいあることかもしれません。
かく言う私の場合も、前々回の企画と、今回の企画に出した作品は、そんな感じだったりします。
そういう意味でも、企画というのはありがたい存在なので、盛り上げていきましょう。

以下、作品について。
十数年前基準であっても、一般ファンタジーというよりは普通にラノベだとは思いますが、昔からあたためていたネタというだけあって、読み応えはあったと思います。
まず、冒頭からいいますと、正直これがイマイチ。
少年が主人公なのかな、と思ってしまいました。それにしては印象弱いかな、と思ったら、コーマが主人公とか。そもそもコーマという名前が出てくるのが、3、になってからですし、さすがに短編の中で主人公紹介が遅すぎるような気がします。
また、メインヒロインはアローラということになると思いますが、これが全体を通じてどうしても魅力が弱かったです。本当のメインヒロインというよりは、一話分のヒロインだけという感じがどうしてもしてしまいました。その割にはオーロラというやたら大きな設定が付いていたりして。
一方で、良いキャラは菱形でした。その良いキャラを最後にポイ捨てしてしまうのは大胆な展開だな、と驚いたと同時になんかもったいなくも思いました。
全体として、確かに力作ではあるのですが、この尺で書ききってしまうにはもったいない設定やストーリー展開のようにも思いました。まあ作者的に本作品を、長編で書くためのプロトタイプとして書いたのだったら、本作品そのものの評価は別として、それはそれでいいと思います。
作品の細かい部分について言えば、主人公が提唱する村人たちの闘い方、が良かったです。逃げるでもなく、相手と同じ力で戦うのでもなく、防御を固めることによって抵抗する。
かつて読んだ、酒見賢一さんの『墨攻』を少し思い出しました。
敵が、襲ってくると予告した前日に襲ってくるとか、クトンが保身のために敵に通じてしまい約束を反故にされるとか、ある程度お約束ではありますが、展開のしかたとしては良かったと思います。

と、いうことで、まとまりのない感想となりましたが、こんな感じです。
今回の企画では、バトルものとギャグコメディーものが多い感じで、本作はバトル物の方になるでしょうが、バトルものの中では良かったのではないかと思います。
企画参加おつかれさまでした。


 

nice263
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2016年04月24日(日)00時13分 兵藤晴佳30点
 拝読いたしました。

 見ているだけの主人公が、実質的に物語を動かしている村人との関わりによって鮮やかに描き出されています。
 『七人の侍』の構図ですね。
 逆に言えば、狂言回しとしての主人公によって脇役たちの生きざまを描く小説であるともいえるでしょう。
 コミックなら、さしずめ聖悠紀『超人ロック』、さだやす圭『ああ播磨灘』、白土三平『カムイ伝』の手法にあたるでしょう。
 主人公が最強無敵であれば、こうせざるを得ません。
 群像劇をやっておいて、最後に本気出すってやつです。
 それを考えると、最終対決のインパクトが弱い気もしますが……。
 全盛期の猪木のプロレスみたいに、悪役を十分ショーアップしてから延髄斬り、卍固めという展開が見たかったなと思います。

 とはいえ、楽しませていただきました。ありがとうございます。
 
 

nice258
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2016年04月23日(土)23時37分 たぬき nY39lNOBNk30点
おもしろかったです。 砂に埋もれていた羽や鶏冠という単語で若干のネタばらし。オチ間際でのちょっといい感じの強キャラアピールが、彼の陰鬱なキャラクターによく似合っていましたし、旅立っていくところでオブサーバーからサプライズプレゼントがあって、後味も良かったです。
途中門番とレザー男のやり取りで、セリフが一部変だったのでそこが気になりました。(誤字)
後細かい所で、村人たちの「いざとなったら抜け道があるから!」というのが二回出てきたのがなんだかシュールでした。
 

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2016年04月23日(土)21時03分 ハイ0点
『絞魔が降る』
拝見致しましたので、感想をおいておきます。



○文章


形にはなっていますが、情報整理がいまいちなっていないようでした。
特にオブザーバーの説明などは、人工知能だのなんだの言っておいてから、最終的には生物の一種と言いきっていて、ちょっとまとまりが感じられませんでした。
あそこはもっとスマートに説明出来ると思いますので、見直してみて欲しいです。


○構成


すいません、構成はその……ちょっと巧くないなと感じましたので、二つばかり指摘いたします。


まず、冒頭。
ここはもっとコンパクトに出来ます。
その後の場面場面の方がずっと短いのに、ここはやたら長いです。
そして長いのに、あまり魅力的とは言えません。
私的に言わせていただければ、これは悪手です。
冒頭は出来るだけ短く魅力的に、が基本なのでちょっと見直してみてください。


その2。
私的な創作理論から見ると、この作品は場面が多すぎるかと思います。必ずしも全ての作品に一致するものではありませんが……。
60枚であれば、およそ8場面が理想的です。しかしこの作品は大きく越えて14場面。
その14場面を60枚におさめるために、一場面一場面が大変軽くなっています。
結果、軽快に読むことが出来るのですが、スピーディー過ぎて読後の充足感がありませんでした。
話をすすめるだけならこれでも良いのですが、話を読者に魅せる時はこのあたりも気を配ってみてはいかがでしょうか。




○設定


悪くはありませんでしたが、ちょっと壮大すぎて理解しにくかったのと、あえて理解しにくく書かれているあたりが取っつきにくかったです。


あと、とにかくめんどくさいルールが多くて、話がすごく窮屈になっている印象を受けました。
最後の場面でカタルシスを産み出すためのものなのかなと思いますが、効果のほどは……わかりませんが、もっと分かりやすくした方が良かった気がしますね。


○キャラ

ヒロインは賢い良い娘!
主人公はダウナーすぎていまいち!
でした。
でも、それぞれの設定は好きですね。ラストはおお! そう来るか! と思わせてもらえました。


○ストーリー


ストーリー自体は悪くないので、やっぱり現状見せ方がかなり良くないと思うんですよね。
作者コメを見るに気が入らなかったってのもあるのかなと思うので、仕方ないのかもですが。
同じ話を全く別の人が書いたりしたら、または作者さんのモチベーションが違っていたら、かなり面白くなっていたに違いない、と感じています。



○まとめ


言わなくてもわかってらっしゃるかもしれませんが、いまいちでした。
世界観やラストは好きなんですが、それだけでは全体のいまいちさを払拭するにはいたらず……。
特に、この話の魅力というか、売りというか。そういうのが見当たらなかったのも要因としては大きいと思います。

具体的には、萌え、媚び、コメディを入れるか、シリアスに楽しませ、スマートな魅力を書き出すかのいずれかです。
まあ、作者さんなら後者を選ばれるものと思いますが、私は前者で手入れしてみたいところですね。
いまいちやる気のないコーマをもっとカッコ悪く、そしてもっとカッコ良く魅力的に書いてあげたいですねw




それでは、執筆お疲れさまでした!
 

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2016年04月27日(水)22時31分 たてばん L2TtHY/jcg30点
 執筆お疲れ様です。
 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残します。

 《文章》
 とてもわかりやすくて、物語の世界に引き込まれました。
 
 《設定》
 無駄な設定も見受けられなくて、使い切っていたと思います。

 《構成》
 短いところで切って文章分けしていたので読みやすかったですが、なんだか四コマ漫画を読んでいるような気分になりました。
 そして、盛り上がる場所も無いように感じました。
 億劫な性格で怪我もしないし本気を出したら最強の主人公なので、そのぶん主人公の苦悩がもっと欲しかったです。
 主人公の日常を淡々と映しているだけに感じました。

 ただ、この主人公だからこそのオチだと思うので、そこはかなり良かったです。
 他とはひと味違うオチで勉強になりました。

 《総評》
 読みやすい文章にわかりやすい設定で面白かったです。
 設定にあった、奥地のオークの話とかも読んでみたいですね。

 未熟者の身でいろいろと口出ししてすみません。
 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
 

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pass
2016年04月21日(木)20時33分 たかセカンド0点
こんばんは。
「絞魔が降る」を読ませていただきました。

感想に関しまして私が思ったことを書かせていただきました。
納得のいく所だけ抜き出し、今後の執筆の糧にしていただけましたら嬉しく思います。

ファンタジーながら、主人公であるコーマが剣も魔法も持っていない無力な存在。
どのように話が進んでいくのだろうと思い読み進めてまいりました。

読み進めて行くうちに、どうにも読みにくい所が出て行きました。

おそらく、人物の視点がちょこちょこ変わってしまい、今誰が視点で、どうなっているのか変わりにくい所がありました。
ラストの雰囲気ですと、コーマに全ての視点を集め、進めて行く方が混乱せず読み進めていけたのかと思います。

もしくは、マキトに視点でコーマを見て行くのも面白いかもしれません。

後、気になったのはコーマが罪を払しょくする為に何をしているのかが不明瞭でした。
もし、罪が重すぎて何もする気が起きないのならば、その思いを提示してほしいと感じました。
今のままでは、感情移入できずコーマというキャラクターに興味を持つことはできませんでした。

興味を持つことができなかったため、コーマのアローラに対する思いも、あまり納得できるものではありませんでした。

最後に、コーマが何故菱型を捨てたのか。
村での出来事で、コーマの胸中が変わり菱型を捨てるに至ったのだと思いますが、その動機もいまいちわからないままでした。

全体を通して言える事だと思いますが、もう少し、キャラクター達の心の動きを表現した方が、もっと良い作品になるかと思います。


いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。

以上となります。

このたびは有難うございました。
 

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pass
2016年04月21日(木)20時21分 七月鉄管ビール xn8ZkIqS3k10点
 主人公のカッコ良さでいえば、おそらく今企画で一番だと思います。
 終わらぬ贖罪を抱え、永劫に近い時間を独り彷徨い続ける虚無的ヒーロー像はシビレます。
 しかし、コーマは主人公として制約が多すぎます。基本的に無力であるし、設定上心の交流自体が禁じられているのであれば、本筋に関わりにくいと思います。
 このカッコ良い少年は傍観者的狂言回しにすぎず、本当の主人公は村人の誰か、もしくは全員であるべきです。本作では村人の自助努力や各人の思惑が描かれ、確かに構造的には近いですが、そこにドラマ性があったかというと疑問です。
 読者がコーマの眼を通して村人の懸命を見つめ続け、感情移入が起こった時に物語が成立するはずです。
「コーマ、何とかしてくれ」と。

 これは私見であり、物語と主人公にみんなシビレまくっているのかもしれません。
 コーマの設定がとにかくカッコ良いですから。

 正味、私の意見はアテになりません。世評と逆ということがよくあります。
 ご不快な点は、こういう馬鹿もいるということでどうかお許しください。

 執筆おつかれさまでした。
 

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pass
2016年04月16日(土)22時07分 キーゼルバッハ0点
キーゼルバッハと申します。読まさせていただきましたので感想を。


(設定)
 
 ある星の、ある村の近くの砂漠にて、姉弟は一人の行き倒れた男
 を見つける。彼は、絞魔と呼ばれる存在で、贖罪のため、地上にて
 罰を受けるべくこの地を彷徨っていたのだ。
 オブザーバーと呼ばれる端末をひろった姉弟の弟は、それを絞魔の
 男、通称コーマから貰う代わりに、自分たちの村に案内する。
 そこでコーマは村で起きる様々な出来事を体験していくことになる
 のだが……という内容でした。
 コーマの正体は、終盤になるまで秘密だったのですが、それ以前に
 世界観の説明があまりないので、想像しにくかったという印象です。
 もう少し、人物や情景描写が欲しかったと思いました。

(キャラ)
 
 コーマ  :この物語の主人公で、絞魔の男。見た目は若いが、
       その実は、大昔天界で暴れまわったバジリスクと
       呼ばれる化物。贖罪のため、地上の砂漠で彷徨い
       行き倒れていた所を、姉弟の二人に発見され、
       村まで案内される。
       基本的にクールな性格である彼は、あまり感情を
       表にすることもない、静かな印象です。また、
       助けを求める人間たちにも、絞魔は人間たちに
       関わってはいけないという制約があるせいか、
       積極的に動こうとはしません。終盤、姉弟の一人
       姉のアローラに話しかけられ仲良くなりますが、
       ある危機により、アローラとは離れることに。
       最後は、開放したバジリスクの力で村を襲おう
       とした悪者共を蹴散らして去ります。
       三人称形式で語られているせいもありますが、
       主人公の心理描写があまり語られず、淡白な
       印象を感じました。よって、物語全体の起伏も
       少なく、ハラハラ・ドキドキ心理的な揺さぶりも
       少ないため、少々退屈に感じてしまいます。

 オブザーバー(監視端末)
      :大人の拳くらいの大きさの菱形ひしがたをしていた。
       横から見ると菱形、上から見ると四角形という珍しい
       形をしている。
       よくしゃべる。主人公が、あまりしゃべらないのも相まって、
       よく目立ちます。神とコーマをやりとりしている存在で、
       限定的に、コーマの力を開放するためにも必要。
       『加罪』が口癖。
       魔法で作られたものなのか、機械でできたものなのか、
       よくわからない存在で、時々思い出したように、主人公
       につかかってきます。しかし、基本的に主人公に対して
       注意したり、犯した罪を確認するためにしかしゃべらない
       ので、あまり人間味は感じられず、機会的な印象を感じました。
       もう少し、キャラとしての魅力が感じられるように、
       人間味のあるところや、描写が欲しかったと思いました。
       

 アローラ
      :コーマを最初に砂漠で発見した姉弟の一人で、マキトの姉。
       最初は、コーマのことを訝しんでいたが、村に押し入ってきた
       悪党共に対して、殴られても抵抗しなかったコーマに対して、
       心配して駆け寄ってきた。この物語のヒロインである。
       アローラは、この物語のヒロインとしてとても重要な役割
       なのですが、それに比べてアローラの心理描写や、主人公と
       の絡みが少なかったように思えました。
       最後にオブザーバーが、『女神として転生する』といいますが、
       それに対しての伏線も見られませんし、個人的には唐突に
       賊が攻めてきて、唐突に別れたという印象です。もう少し、
       アローラの掘り下げが欲しかったと思いました。

 マキト
      :コーマを最初に砂漠で発見した姉弟の一人で、アローラの妹。
       砂漠で倒れていたコーマから、オブザーバーを貰う代わりに
       自分たちの村、せせらぎの村へと案内した。
       アローラとは対照的で、歳相応の素直でやんちゃな男の子。
       賊にやられっぱなしなコーマのことを幻滅したり、コーマ
       の昔話に興味を持って積極的に聞いてくるなど、子供らしい
       魅力のあるキャラクターですが、アローラ同様、物語の中核
       となるキャラクターゆえ、もっと掘り下げが欲しかったと
       思いました。もっとマキトと主人公を深く絡ませて、過去
       どういう人生を歩んできたのかとか、心の弱さを打ち明けていく
       描写が合っても良かったかもしれません。

 長老   
      :アローラやマキトが暮らすせせらぎの村の村長。
       突然やってきたコーマについて、村の人々に絞魔であると教え
       たり、神の使いであるが、過度にもてなすと、逆に神に
       怒られてしまうと、教えたり物知りで中々食えない人。
       アローラやマキト同様、重要なキャラなのですが、
       村長というキャラの役職以上でも以下でもないので
       印象的に薄いと感じました。もっと、キャラの個性が欲しい
       と思いました。

 クトン
      :アローラやマキトと一緒に、せせらぎの村に住んでいる
       村人の一人。密かに、アローラに好意を寄せていて、
       マキトに俺のことは兄さんと呼べと強要したり、
       アローラと仲良くなっている、コーマに対して嫉妬したり
       するほどである。
       終盤、敵であるドラードに村に親友する裏口を教え、自分と
       アローラとマキトだけは助けてもらえるようお願いするが、
       裏切られる。
       最後の、裏切って敵に寝返る展開はいいと思うのですが、
       少々唐突というか、ご都合主義を感じました。それならば、
       もっとコーマに嫉妬する場面を増やすとか、裏切る伏線を
       作って欲しかったと思いました。

 ドラード 
      :村に突然部下を向かわせ、襲わせようとした賊の首領であり、
       この物語におけるラスボス。体は大きく、手には武器を構えて
       いて、部下にも武器をもたせている。
       この物語のトリを飾るラスボスなのですが、威厳も恐怖もなく
       コーマにあっさりた倒されてしまう辺り、小物臭がしてなり
       ません。完全に、コーマの能力をお披露目するための見せしめ、
       引き立て役にしかなっていないという印象をいだきました。
       ラスボスらしい魅力がもっと欲しかったと思いました。

(世界観)
 
 世界観に関しては、どういった世界で、どういう時代で、いったいどいう風に
 人々が生きているのかの描写がないので、分かりづらいといった印象です。
 コーマが訪れた村も、一つの国の中にある村という感じではなく、それぞれの
 土地に、それぞれの人々が村というコミュニティーを作って住んでいると
 いった印象ですが、そういった説明は作中ではありません。賊が、村を襲い
 村を乗っ取るという展開も、時代背景や世界観の説明も無いので、唐突だと
 いう印象です。

(文章)

 文章は、読みやすく引っかかる所はほとんどありませんでした。
 しかし、世界観や人物の説明、心理・風景描写などが少ないため、想像しに
 くく、そういった意味で読みにくい文章でありました。三人称形式であるが
 ゆえに、主人公が何を考え、何を悩み、どういう心情であるのかも、分かり
 づらかったです。

(テーマ)

 テーマである神話については、北欧神話に登場するオーディンが名前だけ
 登場したり、主人公がバジリスクであるなど、神話になぞらえている部分も
 ありましたが、あまり物語とは関係なかったという印象です。
 オブザーバーが言っていた天界や、神々については名前でしか登場せず、
 主人公であるコーマのバジリスクとしての能力も、最後の最後でしか出てきま
 せんので、テーマである神話が弱かったかなという印象です。
 

(総評)

 オリジナリティのある世界観でしたが、それゆえ、説明が足りないと思える
 場面も多々多く、読者が置いてけぼりにされてしまう可能性があります。
 主人公であるコーマについても、動くのは、終盤も終盤ですし、それ以外は
 ただ村の中をうろついていたり、賊になぐられたり、昔話を語ったりなど、
 ほとんど大きな動きないので、終始退屈に感じてしまいました。
 相棒兼監視役であるオブザーバーに関しても、ただ設定をペラペラしゃべっ
 ているだけにしか思えず、好感をもてませんでした。
 その他、主人公コーマに関わる人々に対しても、描写が弱いため、個人的に
 普通の村人以上に感じることが出来ませんでした。
 もっと、人物についての描写が欲しかったという印象です。

 辛口になってしまい、申し訳ございません。

それでは、GW企画お疲れ様でした。また機会がありましたら、読ませていただけると嬉しいです。

キーゼルバッハでした。

 

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合計 12人 180点

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