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妖精を月の、時間に英雄が醜い内なる時間に呼び覚ます
 ※ この作品には、暴力的なシーンが含まれています。


 夜空に浮かぶ、紫と青のまだら月。
 吐き気がするほど、気味が悪ぃ。

「――――ぶち抜け、ゲイボルグ!」

 俺が投擲した白銀の槍は、命令通りに目標を刺し貫いていた。
 串を通した魚のようにされた黒い妖犬は、そのままアスファルトへと倒れこむ。
 犬はすぐさま、生まれたての子馬のように立ち上がろうとしたものの叶わず。そのまま路上に伏せ、荒い息を上げる。ひと気のない夜の耕作地に、その息遣いはやけに大きく響く。
「はっ! ざまぁねぇな、クソ犬」
 俺はこみ上げてくる歓喜を噛み締めつつ犬へと歩み寄ると、おもむろに槍に手をかけ、一気に引き抜いた。
 犬の体は、びくんと跳ねたものの、反撃の様子はない。どころかまるで、待てを命じられた忠犬のように、大人しく地面に突っ伏したままだった。
「ははっ! なんだよ、案外おりこうさんなやつだな。……よーし、じゃあそんなてめぇにごほうびだ」
 言って、蹴った。
 蹴る、蹴る、踏みつける。踏みにじる。
 つま先で、かかとで、足全体で、すねで。
 軽快に、鈍重に、小刻みに、全体重で。
「はっ、ははっ! ほら、どうだ、嬉しいか? 嬉しいだろ? おら、どうだ! 尻尾振って喜んでみろよワン公! はははっ!」
 悲鳴をあげても、血が流れ出してきても、嫌な音がしても、痙攣しだしても俺は止めてやらない。ごほうびだからな。
 あー、なんて最高の気分だ! 
 苦悶の喘ぎ! 
 絶望の仕草! 
 飛び散る血飛沫! 
 かすかに肉片の混じる飛沫ひまつ! 
 心地良い! 
 その全部が気持ち良い! 
「っと…………あー、こりゃもう死んだか? なぁ、どうだリオ?」
 俺が声をかけると、犬の周りを手の平ぐらいの小さな光の球が飛び回って戻ってきた。
 その光の中には、背中から蝶のはねが生えた、小さな女が見える。
 フリルをあしらった黄色い洋服に、手首と足首にも黄色のシュシュ。頭には、タンポポの花飾りがついていた。髪は金髪というより黄色に近く、瞳は深い緑色。
 リオは、せわしなく背中の翅を動かし、宙に浮いている。飛んでいるのだ。
「大丈夫、ちゃんと死んでるよこいつ! やったね、クー!」
「……ったく、人の姉貴に手ぇ出そうとするからだ、この馬鹿犬」
「あはは! ばーかばーか!」
 もう動かない肉塊を、リオは素足で楽しそうに蹴りつけていた。
 ああ、なんてひでーやつ! 




「…………もう、朝か」
 スズメの鳴き声で、目が覚めた。
 携帯で時間を確認すれば、時刻はまだ六時前。春とはいえ少し冷え込んだ空気は、温かい布団から出るのが辛くなる。
「んー? おあよ……クー……」
 僕の上で、リオが眠そうに目をこすっていた。それを見て、僕は何気なく、妖精も睡眠不足になるのかな? とか考える。
「むにゃ……クー、もう起きるの? 昨日、あんなことがあったのに」
「あんなことがあったせいで、目が冴えてるの」
 そんな話をしながら、僕はベッドから抜け出た。
 リオは「うーん、眠いよー」とか言いつつ、ぱたぱた飛んで僕の肩に。
 部屋を出て階段を下りると、台所の方からは包丁が刻む小気味のいい音が響いていた。
 一旦、顔を洗いに洗面所へ。それが終わってから台所に入った。
「あら、おはよう太一。今朝は早いのね」
 包丁を片手に、そんなことを言いながら振り返ったのは瀬端明日香、僕の姉さんだ。
「おはよう、姉さん。なんか目が覚めちゃってさ。今朝のごはん、なに?」
「もうすぐ出来るから座って待ってて」
 言われるまま席につくと、ほどなく食卓に料理が並べられる。一通りそろってから、姉さんも席について準備完了。いただきますをして、朝食がはじまる。
 僕の家に、両親はいない。
 二年前に事故で他界してからは、ずっと姉さんとの二人暮らし。四人がけの食卓に二人きりは少しさびしいけど、もう慣れてしまった。
 もっとも、最近はそこにリオという居候が加わったんだけど。
「はい、今朝はタンポポと豚コマの炒め物、ツクシの佃煮。ギシギシのお味噌汁。それと、ヨモギをおひたしにしてみまーしたっ」
 どーよ! とばかりに、野草のメニューを読み上げる姉さん。
 我が家では、こんな献立は日常茶飯事だ。
 今の時期はフキノトウ、ツクシ、タンポポ、スイバ、ギシギシ、オオバコ、ヨメナ、ヨモギ、カラスノエンドウに、ハルジオン。片田舎ということで、食べられる野草には事欠かない。
 では早速とばかりに、僕はタンポポ豚コマ炒めに手を伸ばす。
 うん、おいしい。
 塩コショーと共に、タンポポの風味が口の中に広がる。少し苦く、それでいてかすかに感じる旨味。その辺に売ってる小松菜やほうれん草より味わい深い。それが豚コマの旨味と相まって、なんとも言えない味をかもし出している。
「どうかな、太一。おいしい?」
 黄色いフリルのエプロン姿で、新妻よろしく聞いてくる姉さん。なんだか気恥ずかしくなって、僕はちょっと顔を逸らす。
「ふ、普通だよ。ふつー」
「普通? 普通になに? ちゃんと答えなさい、太一」
「普通に、おいしいです……」
「うむ、よろしい」
 ご満悦な様子で、姉さんがうなずいた。
「最近ね。仕事場の近くに穴場を見つけたの。空き地にタンポポとかがたくさん生えててさー。まだまだとってきた分が冷蔵庫にあるから、今夜はタンポポのフルコースにするわね」
「いや、昨日もそうだったよね。それ……」
 昨夜のタンポポ尽くしを思い出すと、僕は突っ込まざるを得ない。
「あと、庭で家庭菜園してるでしょ。あれも使おうよ。なんのために育てたのさ?」
 訊くと、姉さんはついと目を逸らして。
「……なんかあいつらのこと、最近いとおしく見えてきちゃって」
「そんなしみじみと……」
「あはは! ばかだー! 本末転倒だー!」
 肩の上で、リオがお腹を抱えて笑った。
 早くに両親を失くしたということで、僕らの生活はそれほど楽じゃない。
 姉さんが近所のスーパーに働きに出ているものの、給料のほどはたかだかしれたもの。月々の生活費、光熱費、水道代、食費、そして僕の学費。
 生活保護をうけてなんとかやりくりしているものの、それでも辛い状況だったりする。
 そんな事情があるから、姉さんは野草料理は、少しでも食費を浮かそうという涙ぐましい努力だったりする。
「そうそう、太一今年受験でしょ? どう、ちゃんと勉強出来てる?」
「ばっちりだよ。心配ないって」
 僕は炒め物で少し脂ぎった口の中を潤すように、ギシギシのお味噌汁に口をつけた。
「そう、だったらいいけど。あんたはあたしと違って出来がいいんだから、しっかり勉強しときなさい。受験失敗して後悔しないようにね。あたし、あんたには期待してるんだから。良い学校入って、良い仕事についてよね。それでたくさんお金かせいで、あたしに楽させてよね」
「……すごいプレッシャーかかるんだけど」
「かけてんのよ」
 ふふっ、と笑う姉さんだけど、笑えないからね、それ。
「ねぇ、やっぱさ。僕、大学は諦めて高校卒業したら就職したほうが良いんじゃない? 学費だってかかるんだし」
「いいの、太一は大学に行って生物工学だっけ? を勉強したい、って言ってたじゃない」
「そりゃまあ、そうなんだけどさ……」
 それは父さんたちが生きていたらの話だよ。
 なんて言葉を、ごはんと一緒に飲み込む。
「太一、今はその気持ちだけで十分よ。気にしないで、太一は好きな道に進みなさいな」
 そう言って、姉さんはふっと柔らかな笑みを浮かべた。
 けれど、その笑顔を見ていると、いつも言いようのない気持ちが沸きあがってくる。罪悪感とか、無力感とか、そんな感じのマイナスな気持ちが。
 化粧っけのない顔に、荒れた指先、着古した服を目にする度、僕の胸の中は、いつもすまない気持ちでいっぱいになるっていうのに。
 本当は、姉さんはもっと綺麗なのだ。
 男の僕よりも、すらっと背が高くて、長めの黒髪が似合ってて。よく友達にうらやましがられた。そんな自慢の姉さんなのだ。
 だからこそ余計に、姉さんの今の状況は、僕にとって耐え難いことで。
「ふぁーあ…………っと、ごめんなさい」
「疲れてるの、姉さん?」
 大あくびに心配して聞いてみると、姉さんは「ううん、そうじゃなくて」と手を振って否定。
「どうも最近夢見が悪くてさー。変な夢ばっかり見るのよね。太一のほうはどう?」
「え? いや、僕の方は……」
 見てないけど、と答えると姉さんは何かを思い出したような、表情をした。
「そう言えばさー、最近太一、夜に誰かと話してない? 時々、出歩いたりもしてるみたいだけど。もしかして……彼女でも、出来た?」
「い、いないよ! そんなの!」
「ふぅ~ん?」
 僕の返事をどう受け取ったのか、姉さんはにまにまと表情を緩める。
「……追求されると面倒だ、さっさと出よう」
「らじゃ!」
 小声でリオとそんなやりとりをしてから、僕は席を立った。
「ごちそうさま、僕もう学校の準備しなきゃ!」
 そそくさと食器を片付けて、台所を後に。なるべく慌てた感じを出すために、駆け足で階段を登る。
「……まさか、妖精と一緒に戦ってる、なんて言えるわけないよね」
「だね~」
 自分のことなのに、他人事みたいに相槌を打つリオだった。



 ――――リオと出会ったのは、一週間ほど前のことになる。
 姉さんが観葉植物にとタンポポの鉢植えをくれて、夜にそのつぼみから現れた。それがリオとの、最初の出会いだった。
 ……なんとも嘘みたいな話だけど、実際にそうだったんだから仕方がない。
 もちろん、僕も最初は夢か何かだと疑った。
 けれど頬をつねれば痛いし、消えもしない。それならと早めに寝ても、翌日もそのままだわ。姉さんに見せても当然のように見えていないみたいで、すごく心配された。ものすごく心配された。
 じゃあ、と何かの薬か病気の類を疑ったものの、怪しげな薬なんか口にした覚えはないし、それらしいものに近づいた記憶もない。
 だから実際のところ、リオのことはストレスか何かで見ている幻覚、ぐらいにしか思っていなかった。
 つい、昨日までは。
 学校方面へ向かうバスを待ちながら、僕は肩の上で退屈そうにしているリオを見やる。
 と、その視線に気づいたリオが、首をかしげた。
「どうかした? クー? あ、昨日のブラックドッグにやられた傷でも痛む?」
「いや、大丈夫だよ。全然平気」
 言いながら、僕は左腕をさすってみせた。
 袖をめくれば、そこに昨日の跡が残っている。
 ブラックドッグに噛まれた傷跡だ。
 ただし、跡が残っている程度で、出血も痛みもない。むしろ、いつも以上に調子がいいぐらい。
 普通なら、絶対にこんなのじゃ済まないだろう。
 こんなのを見たら、妖精でもなんでも、信じるしかないよな……。いや、それよりも昨日のは…………。
 そんなことを考えているうちに、バスが来た。
 定期を見せて、バスに乗り込む。丁度通学通勤時間ということで、それなりに席は埋まっていたものの、運良く空いている席を見つけてそこに腰掛けた。
「……なぁ、リオ」
「んー?」
 他の人にはリオは見えないから、変な風に見られないように、僕は小声で話しかける。
「昨日みたいなやつ、また現れるのかなー」
「ブラックドッグのこと? うん、まだメイヴは諦めてないよ。きっと、次はもっと強い妖精を送り込んでくるね!」
 自信満々に言い切るリオに、僕はたまらずため息をついた。
「やっぱりそうなのか……。で、ええっと……ごめん、なんだっけ。昨日も聞いたけど、その……メイヴってなに?」
「メイヴはね、クインメイヴ。悪い妖精の女王なの」
「妖精の女王、か。そのメイヴがどうして姉さんを……?」
「さぁ? でもきっと、すっごく悪いことを企んでるんだよ! それは間違いないよ。リオが言うんだから絶対だよ」
 リオは腕組みしてそう言うものの、それはあまりに曖昧すぎた。
「えっと……あのさ。悪いことって、例えばなに?」
 訊いてみたものの、リオはそっと目を逸らしただけだった。待ってみても、答える気配なし。
「リオ、もしかしてわからない?」
「…………クーにはわかるっていうの」
「わかりません」
「やーい、やーい! クーのばーか!」
 一転、揶揄するリオに、僕は苦笑いを浮かべるしかない。
 どうにもリオは、妖精としてはまだ子供のようで、時々こういう言動をする。サイズこそ小さいものの、見た目は今年二十二の姉さんと同い年ぐらいに見えるというのに。
「……ま、とにかく姉さんを狙うやつが来たら倒すだけか。昨日みたいに、クー・フーリンの力で」
 言って、僕はぐっと拳を握り締める。
 クー・フーリンについては大昔にやったゲームに出てきたから、ほんの少しだけ知っている。
 それによるとクー・フーリンはケルト神話に登場する英雄で、普段は美男子なんだけど、いざ戦いが始まるとゲイボルグという槍を操り、狂戦士と化す…………とかなんとか。
 かなり昔のことだから、あんまり覚えてないんだけど。
「そう言えば、あの時の僕、なんか性格とか口調も変わってたよね」
「かっこ良かったよ! リオ、あっちのが好き!」
「そ、そうかな……」
 そう言われると、ちょっと悪い気はしないけど。いくらなんでも中二病っぽ過ぎるような気がしないでもない。
「けどまあ、姉さんを守れるなら、なんでも良いか……」
「あ。リオ、知ってる。クーみたいなの、シスコンって言うんだよね?」
「うるさいなぁ……」
 僕が軽く睨みつけると、リオは、きゃは! と声をあげて、飛んで逃げた。
 なんて素早いやつ。
「なんだろうと、僕はこの力で姉さんを守るんだ、絶対に」
 ぐっと拳を握り締めて呟くと、ひらりリオが舞い戻ってきて、その手にそっと腰掛けた。
 それから真っ直ぐ、らしくない真面目な面持ちで、僕の瞳を射抜くように見つめてきた。
「そっかー。それが、クーのゲッシュなんだね!」
「……ゲッシュ? ゲッシュって何さ」
 その問いかけに対する回答は、なかった。






「…………来た」
 夜、自室で過ごしていると、リオがぼそりとつぶやいた。
 携帯で時刻を確認すると、十時を少しすぎたところ。
 その直後に、世界が変化を始める。携帯に表示された数字が、見たことのない模様のようなものに。淡い月明かりは、青と紫のまだら色に。街灯は深緑、室内灯は赤に変化する。
 さらにどこかから、女の人が歌うようなあえぐような、そんな声が聞こえてきた。
「妖精の時間、か……」
 リオに教えられた名前をつぶやいて、僕は準備を始める。
 クローゼットを開けて、レインコートを取り出す。それを普段着の上に羽織って、洋服かけの奥にしまっておいたものを取り出す。
 長さは僕の身長ほど、重量はごく軽く、白銀に輝いている。
 クー・フーリンが使ったとされる槍、ゲイボルグ。それを手にして、僕は……いや、俺は部屋を出た。
 姉貴を起こさないよう、足音を忍ばせ、玄関から外へ。
 春になったとはいえ、それでもまだ冷たい空気が肌を撫でていく。
「あーあ、今日もまた、薄気味わりぃことになってんなぁ」
 そこかしこの民家から妙に甲高い笑い声が聞こえるなか、俺はやれやれと嘆息する。
「クー、こっち! こっちから、悪い妖精の気配を感じる!」
 薄闇の中、淡く光るリオについていく。
 ……昨日と同じ方向か。ってことは、この方角にメイヴの本拠地でもあるのかもな。
 なんとなくそんなことを考えながら、俺はひと気の少ない耕作地へと足を踏み入れる。
「そろそろ昨日の場所だな……」
「うん、そうだね」
 そんなことを話しながら、歩を進めていると、前方に人影を見つけた。
 昨日、クソ犬をぶち殺した場所だった。
「クー!」
「ああ!」
 リオの声と共に足を止め、槍を構える。
 まず目に付いたのは、昨日と同じ犬だった。
 黒い、大きな犬。薄闇に、紅く光る眼が浮かび上がる。さらに犬とは思えない、金属がねじれるような唸り声をあげていた。
 リオ曰く、ブラックドッグ。変幻自在の妖犬で、別名ヘルハウンド。
 昨日と同じ敵だった。
 まさか、殺したやつが生き返った、なんてことはないだろうけどな……。
 だが、そんなこともあるのかもしれない。そう思ってしまいそうになる。
 ただ、昨日と違って、その場所にはさらに二人、女が立っていた。
 一人は、背が高い、黒い女。
 長い黒髪に、黒い服を着込んでいる。顔は薄暗いせいでよく見えないというか、髪が顔を隠している。
 対照的に、もう一人の方は全身からほのかな光を放っていた。
 髪は黄金色に輝き、瞳は深い緑色。着ているものは、白を基調としたドレスで、夜だというのに日傘のようなものをさしていた。
 しかし、それよりも目を引いたのは、その背後だった。
 翅だ。
 リオと同じ、蝶のような大きな翅が、その背中から生えていた。
「あいつが、クインメイヴ……」
 直感的につぶやくと、リオが無言でうなずいた。
「てめぇが、姉貴をどうにかしようとしてるやつか!」
 距離をとったまま声をかけてみるも、返答はない。
「ちっ、だんまりかよ、気にいらねぇな……」
 槍を構えて歩み寄ると、黒い女がメイヴを庇うように前に出てきた。同時に、メイヴも犬と一緒に数歩下がる。
「んだよ、まずはお前からか? いいぜ、かかってこいよ」
 軽く挑発してやると、黒い女は軽くウォーミングアップをするように、拳を鳴らした。続けて、肩、首とほぐすように動かす。
 その次の瞬間、だった。
 黒い女が、恐ろしく耳障りな甲高い声を発したのは。
「ぐ……っ?! なん……っだ、これ!」
 激しい目眩めまいを感じ、思わず耳を塞ぐ。
「クー、気をつけて! あいつバンシーだ!」
 バンシー……死を告げ、嘆く妖精か! 
「だったら……せいぜい嘆いてろ! ……てめぇの死をなぁ!」
 叫び、ゲイボルグを構え、駆け出す。
 バンシーが、こちらに一歩踏み出した瞬間を狙い、槍を突き出す。
 が、バンシーは紙一重でそれをかわし、そのまま突撃してくる。
 …………く、速えっ! 
 即座に横薙ぎ、しかしこれもバンシーは体制を低くして回避。さらに距離を詰めてくる。
 もう槍では対応しきれない。そう判断し、即座に手を放す。すぐさま拳を構えるが、もう間に合わない。
 見る。
 バンシーの掌底が、あごの下から迫ってきていた。
「…………くっ!」
 とっさに後方へ跳――――。





「――――っ、ぅわっ!」
 気づけば、そこは僕の部屋だった。
 それもベッドの中で、いつもと代わり映えの無い風景がそこに広がっていた。
 カーテンのかかった窓の外はうっすらと明るくなってきていて、夜が明けたことを示していた。
 着ているものは、昨日の夜のまま。レインコート姿で、ベッドの脇にはゲイボルグが転がっていた。
「え…………? どうして僕、ここに……バンシーは? メイヴは?」
 心臓が、どくどく言っていた。
 あのあとどうなったのか、どうやって帰ってきたのか。あるいは全部夢だったのか。
 何も覚えていないのと、かすかに首が痛むことが、余計に不安をあおる。
「クー! 良かった、目を覚ました!」
 そんな声が耳元で聞こえて、目を向けるとそこにリオがいた。
「リオ、僕は…………バンシーにやられたの? あと、なんでここに…………」
 そう言いかけて、気づく。
「………………っ! そうだ、姉貴っ!」
 はっとしてベッドから、部屋から飛び出た。廊下を走り、姉貴の部屋へと向かう。
 メイヴは、姉貴を狙っている。
 だったら、僕がやられたってことは! 
「姉貴っ!」
 叫ぶと同時に、姉貴の部屋のドアを開けると、
「あー…………おぁよ、たいひ…………ふぁ……んー、まだ四時半よ?」
 普通に、パジャマ姿で、寝ぼけ眼の姉貴が、ベッドに横になっていた。
「え? あれ? …………いや、えっと、姉貴が……姉貴がさ…………あれ?」
 なんだか拍子抜けしてしまって、僕は戸惑いを隠せない。しどろもどろになっていると、姉貴はまだ眠いのか、目をこすりながらあくびを一つ。
「どうしたの太一、そんな顔して。……あ、わかったー。太一も怖い夢でも見たんでしょー」
 くすっと笑われて、僕は急に恥ずかしくなってきた。
「なっ、なんでもねぇよっ!」
 そう言って誤魔化すも、姉貴はくすくすと笑っている。
 なんだ、これ。すげぇやりづらい。
「もう笑うなよ、姉貴……」
「それよりなーに、その姉貴って。そう呼ばれるのって、なんか変な感じー」
「えっ? …………あ」
 指摘されて、初めて気づいた。
 くそっ、クー・フーリンの時の口調にひっぱられてるな、僕。
「ごめん、ちょっと慌てて……それじゃ、起こしてごめんね、姉さん」
 それだけ言って、僕はドアを閉めた。
「良かった…………」
 ほっと息をついて、姉さんの部屋のドアに体を預けて、ずるずると床に腰を下ろした。
「本当、良かった……」
 じわりと涙がこみ上げてきて、視界が歪む。
 いるはずの誰かが、いなくなる。
 その悲しみを知っているだけに、怖かった。
「大丈夫、クー? 平気?」
 ひらひらとリオがやってきて、僕の肩に乗った。小さな手で僕の頬に触れて、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「ああ、ごめん。なんか、安心したら涙が出ただけだからさ」
「ほんとに? ほんとのほんとに大丈夫?」
「大丈夫だよ、ほんとのほんとに」
 そう言うと、リオはそれ以上何も言わなかった。
 メイヴに……バンシー。
 心の中で、その名前を呼んで、歯噛みする。
 姉さんに、手は出させない。絶対に! 
「絶対に、次は殺してやる……」
 窓の外、空はまだ、夜の色に染まったままだった。



 ○



 姉さんの仕事場は、チェーン展開しているスーパーマーケットだ。主に、そのレジ打ちをしている。勤務時間は、だいたい朝八時から夕方五時まで。その様子は、駐車場側からでもガラス張りの窓越しにうかがえる。流石に休憩中なんかは、バックヤードに入ってしまうからわからないけど、こればっかりはどうにもならない。
 とりあえず、朝から見ていてわかったのはそんなところだ。
 駐車場の隅の縁石に腰掛ける僕は、温かな春の日差しに目を細めた。
「これ、バレたら怒られるんだろうなぁ、姉さんに……」
「そうだね、リオもそう思う」
「けど、そうも言ってられないからな……」
「うん、リオもそう思う」
 うんうん、とうなづいてくれるリオがいて、ちょっとほっとする。一人でやっていたら、きっと心細かっただろう。
 いったい僕がなにをやっているのかというと、姉さんの監視だった。
 今までのところ、メイヴとその手下が現れたのは夜、妖精の時間だけだ。けど、それは今後もそうとは限らない。
 だから僕は、メイヴとの決着がつくまでは姉さんを見守ろう、そう考えたのだ。
 今日は平日だから、学校の方は風邪をひいたということにして休んだ。
 帽子を目深にかぶりコートを着込んで一応変装もしている。ゲイボルグはどうしても目立ってしまうから、家に置いて来た。
 ふと空を見上げれば、春の暖かな日差しがまぶしい。
 見慣れた色合いの、鮮やかな世界。平凡なものの、見ているとどこか落ち着いた。
 そんな風景を見ていると、まるでここ数日の出来事が嘘のように思える。あの、陰惨な空気の漂う、妖精の時間とは真逆の景色に、心が癒されるような、そんな気がした。
 ……今、姉さんを守れるのは僕だけなんだ。
 そんなことを考えていると、不意にあたりが暗くなった。
 びっくりして振り返ると、そこにはいつの間にか、日傘を手にした女の人が立っていた。
 それも綺麗な金髪と、透明感のある白い肌をした、緑色の目の女の人だ。日本人ではありえない。歳は姉さんと同い年ぐらいだろうかと考えるも、外国人だからあまりあてにはならなそう。
 その隣に、もう一人いた。
 黒い女の人だった。
 黒のスーツに身を包み、マスクをしていて顔はわからない。背の高い、黒髪長髪の女だ。こっちは、どこか空ろで血走った目をしていた。
 その二人を見て、僕ははっと気がつく。
 そんな奇妙な二人組、そうそういるもんじゃない。
「クー、この二人……」
「ああ、メイヴと、バンシーだな」
 ぞわっと背筋を、通り抜けていくものがあった。
「昨日の夜以来デスネ。セバタタイチさん?」
 少し硬い日本語をつむぎながら、メイヴが微笑む。
 どうして僕の名前を知っている。
 一瞬、そんなことを思ったものの、すぐにどうでもいいことだとその考えを振り払う。相手は妖精の女王だ、それぐらいわかるんだろう。
 それよりも、と僕は彼女を睨みつけた。
「…………なにをしに来た、メイヴ」
 一歩前に出ると、即座にバンシーが間に割って入ってきた。
 マスクをしていて表情はよく見えないが、唯一わかる血走った目から、むき出しの敵意が見て取れた。
 それを目にした瞬間、僕の中の何かがはじけた。
「てめぇ、昨日はよくも…………」
 俺は、拳を固め戦闘態勢をとった。
 同時にバンシーも、半身になって腰溜めに拳を構える。
 が。
「おやめなサイ、ヴァル!」
 メイヴの命令に、バンシーはあっさり引き下がってしまった。
「おい、お前! ……今良いところだったんだ、邪魔すんなよ」
「良いところ、トハ? ワタシには、そうは見えなかったのデスガ……」
 背後、バンシーが再度前に出ようとするのを手で制しながら、メイヴはため息混じりに答える。
「るせぇな、とにかく俺はそいつに借りを返さないと気がすまねぇんだ。それとも何か? まずお前からやろうって――――」
 言いかけたところで、メイヴに襟元をつかまれた。そのまま引き寄せられて、メイヴの唇に口を塞がれる。
 塞がれている。
 一瞬、思う。
 これは、どういう攻撃だ、と。
 …………は? ちょ。え? え? 
 突然の出来事に混乱していると、リオが俺の頬を叩きながら叫んでいた。
「いやー! クー! 離れて! すぐ離れて! 離れなさいってば!」
 それを目にして、はっと気づいた俺は、慌ててメイヴを引き剥がした。
「頭、冷えまシタカ?」
 メイヴはしれっと表情薄く、そう言ってのける。
「お、お前なにを…………」
 密かに初めての女の唇の感触に戸惑っていると、メイヴが深々とため息をついた。
「あの、デスネ? 一つ勘違いしてらっしゃると思いマスガ、ワタシたちにあなたと争う気はまったくありマセン」
 ……争う気がない、だと? 
 少し落ち着いてきた俺は、メイヴの意外なセリフに眉根を寄せた。
「おい、昨日とさっきのこと、忘れたとは言わせねぇぞ」
「もちろん、覚えてイマス。しかし、先に仕掛けてきたのは昨日も今日もアナタでしたヨネ? 忘れた、とは言わせまセンヨ」
 メイヴの思わぬ意趣返しに、俺はほんの一瞬沈黙してしまうが。
「いや待て、その前に犬をけしかけてきたのはそっちだろ」
「No、あれは人探しをしていただけで、そういう意図は含まれてなかったノデス。けれどなにぶん大きな犬でしたから、そう思われてしまったのであれば、Sorry。ただ、その点はこちらも犬を潰されていますので、お互いに差し引きゼロ、としていただきたいのですケド……」
 どうでしょう、でもいいたそうに、メイヴが首をかしげる。
 けれど、俺は首を縦に振らなかった。
「駄目だ」
「…………何故デス?」
「お前が姉貴を狙っているからだ」
 そう告げると、メイヴはかすかに目を見開き、鸚鵡返しに繰り返した。
「狙う…………デスカ?」
 メイヴはしばし首をかしげて、黙考しているようだった。
 やがて数秒ほどしてから、
「あの、タイチさん? ちょっとお尋ねしますが、示談をもちかけることも、狙うという表現にふくまれるのデスカ?」
 そんなことを言い出した。
「示談だと? ……お前、いったいなんの話をしているんだ?」
「お姉さんの不法侵入の件デス」
「…………は?」
 あまりに意外な単語が飛び出してきて、俺は思わず間の抜けた声をあげてしまった。
「あの、デスネ。最近、ワタシの所有する土地が荒らされているんデスガ、どうやらそれはあなたのお姉さんによるものと昨日ようやくわかりマシテ。それで本日、お話をと思って出向いたシダイデ……」
「待て。姉貴が不法侵入? そりゃなんかの間違いだ。あの姉貴がそんなことするはずが…………」
 そこまで言いかけて、思い出した。
 姉貴がここ最近、野草を取っている場所のことを。あれはどこだ? 姉貴はなんて言っていた? 
「心当たりがあるようデスネ」
 黙りこんでいると、日傘を手にした妖精の女王は、意地の悪い笑みを浮かべていた。
「お話出来ないとナルト、最悪の場合訴訟
 を起こすことになるのデスガ。…………それでもかまわないデスカ、セバタタイチ?」






「――――ごめんなさい、メイヴさん!」
 客間に姉貴の声が響き渡る。
 平身低頭で平謝りする姉貴を前にして、俺はその様子を見守ることしか出来ない。
「頭を上げてください、アスカさん。今後注意していただければワタシはそれでかまいませんカラ」
 テーブルを挟んで姉貴の正面に座るメイヴは、極めて良識ある返答をしていた。
 それこそ、俺が一片の口も挟むことが出来ないぐらいに。
 ついさっきまで、メイヴが妙なことを言い出したり、姉貴の不法侵入を盾に無理難題を言い出すんじゃないかと思っていた身としては拍子抜けした。
「なあ、リオ。本当にこいつ、お前が言うように悪いやつなのか?」
「騙されちゃ駄目だよ、クー! こいつ絶対何かたくらんでるんだから!」
 リオは拳を振り上げて叫ぶが、いまいち説得力に欠ける。確かに、バンシーはまともとは言いがたいが、メイヴの言動は口がうまいとは思うものの、リオが言うほど嫌なものは感じない。
 手持ち無沙汰に頬をかいていると、メイヴと目があった。メイヴはかすかに笑みを浮かべ、首をかしげる。どうです、安心できましたか? とでも言いたそうに。
 その仕草にばつが悪くなって、思わず目を逸らす。なんというやりづらさ。
 そんなこっちの胸中を知ってから知らずか、メイヴは淡々と話を進めていく。
「とりあえず、今回訪問させていただきましたのは、今後ワタシの土地に足を踏み入れないとお約束していただくコト。……それから」
「あ、あの!」
 メイヴの話の途中に、姉貴が声をあげた。
「あ、す、すいません! メイヴさんからどうぞ」
 声が重なってしまったからか、姉貴は戸惑った様子で口ごもる。どうやら相当に慌てているようだった。
「どうかされましたか、アスカさん?」
「い、いえ、そちらからで!」
「大丈夫デスヨ。質問があれば遠慮なくおっしゃっていただいて。今日はそのために来たんデスカラ」
「え? でも……その……」
「はい、なんでショウ?」
 柔らかな態度で応対するメイヴだ。姉貴の方が幾分年上のはずだが、振る舞いを見ているとどっちが年上だかわからない。
「おい。もう少し落ち着けって姉貴」
「あ、ごめん太一。あ、あたし、こういうの慣れてなくて……」
 姉貴は、一度目を閉じ深呼吸。それから、ゆっくりと口を開いた。
「そのっ、メイヴさんのところから持って行ったもの全部お返しします」
「返す? 姉貴、返す、って…………それって、採ってきた野草のことか?」
「そう。やっぱり、勝手に取ってきちゃったものだし、許してもらってお終いってのは良くないと思うの」
「いや、それはわかるけどさ…………もう料理してあるだろ?」
「あ、そっか……でも……」
 ちら、と姉貴が遠慮がちにメイヴの方を見る。するとメイヴは、胸の前で手を打ち合わせて声をあげた。
「まあ、すばらしいデスネ。日本の野草料理デスカ。実はワタシ、日本料理に目がないんデスヨ。スシもテンプラも、ワタシ大好きデス。アスカさんの手料理、それもいただいてみたいものデスネ」
「そ、そうですか?」
「はい、是非にデモ。…………ああ、ですが今はそれほど空腹ではないノデ、出来れば包んでいただけると」
 助かりマス、とメイヴは続けた。
「わかりました。じゃあ、すぐにでも集めてきますから、しばらく待っててください」
 言って、姉貴は部屋を出て行った。
 メイヴは涼しげな面持ちで目を伏せ姉貴の入れた緑茶を一口。俺はついその所作に見入ってしまう。
「あのさ」
「どうかされましたカ、タイチさん」
「これがお前の用。……ってことで、良いんだよな」
「そうデスヨ」
「これだけか?」
「これだけデス。滞りなく終われば、もう会うこともないでショウ」
「嘘だよ! 絶対こいつ、まだ何か企んでるよ!」
「リオ、少し黙ってろ」
「…………まあ、信じる信じないは自由ですよ、タイチさん」
 そう言われても、どこをどう疑えばいいのだか。
 疑わしきは罰せずというものの、疑わしいのかどうかすら疑わしい。今のところメイヴの言動におかしなところは無く、強引に話を進めているわけでもない。一般的な良識に基づいて、誰も損をしないような、そんな基本方針で動いている。
 そう、見えた。
「俺、なんかお前のこと勘違いしてたのかもな……」
「人は誰しも間違いや勘違い、失敗をするものデス」
「妖精の女王様が言うと深みが違うな……」
「ああ、そうかもしれまセンネ」
 くすり、とメイヴは微笑む。
「ところでタイチさん。今回の件で少々調べさせていただきましたが、この家にはあなたとお姉さんの二人で暮らしてらっしゃるのデスヨネ」
「ああ、そうだけど」
「お二人で暮らされるのは、大変でショウ。高校卒業後は大学ニ? それとも、仕事につかれるんデスカ?」
「…………まだ決めてねぇよ」
「デスカ。では、もしよろしければ、ワタシのところで働きまセンカ」
「………………は?」
 意外な話の流れに、空気の抜けたような声をあげてしまった。
「実はワタシ、いくつかの事業を手がけていまして、その中に丁度人手が足りていない部署があるんデス。もし、タイチさんがよろしければでいいデスガ、お仕事をお世話することが出来るかと思いマス」
「は? 仕事? いや、それより事業、って…………妖精のお前が?」
 突然ふって沸いた話に、頭が追いつかない。
 正直、願っても無い話だ。進学か就職か悩んではいたものの、実際のところ進学するよりは就職したほうが姉貴の助けになるだろうとは考えていた。
 そんなところにこの話が出てきて、正直なところ喜ぶべきなんだろうが、話が急すぎてどう返答したものかわからない。
「まあ、気が向いたらでかまいませんので考えてみてクダサイ。……では、そのときはこちらの番号にデモ」
 そう言ってメイヴは手近にあったメモ用紙にペンを走らせ、差し出してきた。
 言われるまま、俺はそれを受け取る。
 妖精の女王の番号、と考えるとなんともいえない奇妙な感じがしたが。
「…………あのさ、なんでここまでしてくれるんだ?」
 思い切ってそう尋ねると、メイヴは真顔で。
「アナタが、気に入りましたノデ」
 そんなことを言った。
「……本気で言ってるのか、それ?」
「さぁ? どうでショウ」
 さらりと質問をかわすメイヴに、言いようのないやりづらさを感じる。
 姉貴とは別な意味で苦手だな、こいつ……。
 思わず目を逸らすと、肩の上でリオが深刻そうに呻いていた。
「クーがメイヴにたぶらかされた……」
「されてねぇよ」
 ……多分な。
 そんなやりとりをしているうちに、ぱたぱたとスリッパの足音をさせながら姉貴が戻ってきた。
「すいませんメイヴさん、遅くなりまして」
 その手には、安っぽいスーパーの袋がぶら下がっている。
 姉貴はそれをテーブルに下ろすと、メイヴはその袋の口を開けて中を覗き込む。遠目に見ると、中身はタッパーが二つばかり。一つは天ぷら詰め合わせ。もう一つは、野草炒めのようだった。
 ひとしきり眺めてから、メイヴが問いかける。
「ちなみに、これで全部デスカ?」
「はい、これだけです。あ、持って帰ったらレンジで温めて食べてくださいね。天ぷらの方は、出来れば揚げなおしたほうが美味しいと思います」
「お心遣いありがとうございマス。それでは、これで用件は済みました。急なお話に付き合っていただいてありがとうございマシタ。ではワタシは、これニテ」
 立ち上がったメイヴを、俺達は玄関まで見送りに出る。
「では、失礼しましたアスカさん。……それと、タイチさん。出来れば、もう一度お会いしまショウ」
 言って、メイヴは思わせぶりに唇を指で撫でた。その仕草に、俺は顔がかあっと熱くなるのを感じた。
「お前、余計なこと言うんじゃねぇよ……」
 横で、姉貴が「え? え? えっ?」と混乱していた。
「では、いつでも電話してくださいタイチさん。それでは、お姉さん。ごきげんよウ」
 ドアが閉まる台風一過とでも言えばいいのか、さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静まりかえる。
 ……結局、あいつは俺の敵なのか? それとも…………。
 そのまま考えていたものの、結局答えは出なかった。


 ○



 夜、ベッドに体を横たえて、僕は窓辺の鉢植えを眺めていた。
 携帯で時刻を確認すると、丁度九時になったところ。それでも鉢植えに変化はない。淡い光を放ち、そこからリオが現れる様子はなかった。
「今日も出てこないのか…………あいつ」
 メイヴと話をしてから、一週間が経過していた。
 あの日の翌日から、リオは姿を見せていない。
 もともとリオはきまぐれなところがあるから、退屈しのぎにどこかに遊びに行ったのかもしれない。他の誰かのところに行ったのかもしれない。あるいは、ただ眠っているだけの可能性だってある。
 そうさ、あいつのことだからきっと今頃どこかで遊び呆けてるんだよ。気ままな妖精なんだしさ。
 そんなことを考えながら、僕は軽く寝返りをうつ。
 ただ、一つ気になっていることがあった。
 それは、リオが現れなくなったのが、メイヴが家に来た翌日からということだ。
 偶然、と言ってしまえばそれまでだけど、僕としてはどうもそこが引っかかる。
 実際に会ったメイヴは、リオが言うように悪いやつとは思えなかった。
 けれど、リオは何度もメイヴは悪い妖精の女王だと言っていた。
 確かに、リオは気まぐれで遊ぶのが好きな、気ままな妖精だ。けれど、メイヴのことに関してはいつも真剣で、嘘を言っているような様子は無かった。
「……だとしたら、メイヴが何かしたのか? リオに」
 何気なく呟くと、自分の声が静かな部屋の中にやたらと響く。
 ……いや、でもまだそうきまったわけじゃない。リオが自分で姿を消したのかもしれないし。
 あいつ、僕とメイヴが仲良くしてるのが気に入ってなかったみたいだし、そのせいでへそ曲げてるのかもね。
 けど、メイヴは絶対悪いやつじゃない。仕事をくれるって話もしてくれたし。訴訟もしないって約束もしたんだ。だから…………。
 妙にもやもやした気持ちが、胸の中で渦巻いているものの、どうにもすっきりさせることが出来ない。
 かと言って、眠りにつくことも出来ないぐらい、目は冴えていた。
 くそっ、どこにいったんだよ、リオ…………。
 枕に顔をうずめて、無理やりに眠りにつこうとした、その時、だった。
 夜を切り裂くような悲鳴が、前触れなく鼓膜を撫でた。
 それも、ごく近い場所。家の中から。
「今のは………………姉さんの声だ!」
 ベッドから跳ね起き、立ち上がる。
 が、奇妙な頭痛を感じて、僕は足元から崩れ落ちた。そして、かすかに聞こえ始める。不気味な歌声。
 …………妖精時間っ! 
 急激に真っ暗になっていく視界と、毒々しい色に染まっていく灯り、俺は戦慄する。
 なんで、またこの現象が……? 
 ブラックドッグの夜の再現のような状況に困惑していると、耳元で聞き覚えのある声が響いてきた。
「……クー! しっかりして! クー!」
 顔をあげると、そこに淡い光を放つ、リオがいた。
「お前、今までどこに…………いや、それよりリオ! 姉貴が!」
「うん!」
 わかっている、とばかりにリオは力強くうなずく。
 俺はクローゼットを開け、ゲイボルグを掴んで部屋の外へと飛び出す。
 一直線に廊下を走り抜けて、姉貴の部屋へ。駆け出した勢いそのままに、勢いよくドアを開けた。
「姉貴っ、大丈夫か!」
 呼びかけるも、部屋の中に姉貴の姿は無かった。
 いつもはきちんと片付いているはずの部屋の中は、雑誌が乱雑に飛び散っていて、椅子は倒れ、あらゆるものが床に散乱していた。
 さらに開いた窓から風が吹き込んで、カーテンを揺らしていた。
 リオはすぐさま窓を飛び出し、外の様子をうかがってから、やがて無言で首を横に振る。
「くそっ!」
 力任せに壁を殴りつける。乾いた粘土を割り砕いたような音と共に、壁に穴があいた。
「姉貴はどこに行ったんだ、リオ!」
「わからない! でもきっと、メイヴが……」
 リオはそう言うものの、俺はすぐにその言葉を受け止められない。
 騙されたのか、あいつに? いや、まだそうと決まったわけじゃ……。
 まだそんな証拠はない。だから、違う。
 そんな言葉で、自分を誤魔化している俺がいた。あるいは、騙されたと思いたくない俺がそう囁く。
「…………とりあえず、外を探そうリオ」
 そう声をかけて、廊下に出る。
 と。
 暗がりの向こうから、ぎしりと床がきしむ音がした。
「誰だ!」
 声を荒らげたものの、応答はない。
「…………姉貴? 姉貴なのかっ?」
 再度呼びかけたが、やはり返事は無い。
 暗くてわからないが、誰かがいる。それだけは間違いない。
 俺は、ゆっくりと唾液を嚥下した。
 再び、床がきしむ音。それは数秒の間を空けて、少しずつ近づいてくる。
 俺とリオは、いつ何が起きてもいいように身構える。
 その次の瞬間、金属を引っ掻いたような、目眩のする声が響き渡った。
 ……バンシー! 
 耳から針金を突っ込まれたような痛みに耐えていると、暗がりの中から一気に影が距離を詰めてきた。
「くっ!」
 初撃。薄闇の中から伸びてくる手を、すんでのところで槍で払いのける。
 が、バンシーは槍をくぐりぬけて、肉薄。
 打ち出された平手をまともに受けて、俺は頬から頭全体に強烈な衝撃を叩き込まれた。
 それでよろけた直後、再度、視界が揺れるほどの金切り声が響き渡る。
「…………くっ!」
 鼓膜ごと頭の中まで引っかいてくるような声に、思わず耳を塞ぐ。
 瞬間、バンシーが追撃してくるのが見えた。
 ちっ、毎回毎回……。
「ふざけんなよてめぇっ!」
 破れかぶれで槍を振り回すと、バンシーは即座に距離をとった。
 そのまま体勢を整えるように、半身に構える。俺は槍を構えて、バンシーを睨みつけた。
「姉貴をどうした、バンシー!」
 問いかけてみたが、返答は無い。
 わかっていたこととはいえ、その態度が無性にむかつく。
「どうしたって聞いてるんだ! 人が質問してるんだから、ちったぁなにか言いやがれ!」
 怒りに任せて叫ぶも、やはり返事は無い。
「てめぇ…………もし、姉貴に何かあったら、ただじゃすまねぇからな!」
 今度は、応答があった。
 ただし、金切り声で。そして同時に突撃してきた。
「ちっ…………またかよっ!」
 頭痛に耐え、槍での迎撃を試みるも、やはり脳を揺らされ動きが鈍る。
 その隙をつかれて、まともに拳がみぞおちに突き刺さってきた。
「っぐ…………がはっ!」
 腹の底から内臓がせり上がってくるような衝撃に、胃液が押し出された。
 一瞬、槍を落としそうになったが、ぎりぎりで耐え、かろうじて一振りする。それでバンシーを後退させ、さらなる追撃は避けることが出来たが、吐き気まではどうにもならない。
「ぅげぇぇっ! …………て、ってめぇえええええっ!」
「クー!」
「さ…………がってろ、リオ! 邪魔だ!」
 口元の胃液を拭いつつ、バンシーを睨みつける。一応、槍を構えて戦闘態勢をとるも、呼吸が乱れきっていた。
 クー・フーリンの力で、痛みはない。だが嘔吐により呼吸が滞って、軽い酸欠状態に陥っている。
 くそっ、やっぱつえぇな、こいつ…………。
 普通に戦えば、至近距離の格闘戦なら俺よりやや強い。だが決定的に俺と違うのは、中距離以上の攻撃手段だ。
 特に、金切り声。近距離でも離れた位置からでも届く上に、動きを制限してくるこの攻撃が、一番厄介だ。
 そのまま耳にすれば、脳を揺らされてしまうばかりか、手で耳を塞いでしまえば攻撃も防御も一瞬以上対応が遅れてしまう。
 くそっ、厄介な! 近づいても離れてもあれに邪魔される! だったらまずは…………。
 俺は、ゲイボルグから手を放した。
「クー! どうして?!」
 リオが声をあげた。
 同時にバンシーも驚いたのか、不思議そうに首をかしげるのが見えた。
 俺はおもむろに、来ていたシャツに手をかけ、破いた。びりびりと、力任せに破いていく。そしてその中から、手ごろな大きさのものを選び耳に詰め込んだ。
「……これで、ようやく互角ってわけだな、おい」
 そうバンシーに声をかけて、床に転がっている槍を拾い上げる。
 青と紫の気味の悪い月明かりの下、顔を覆う髪の下から、バンシーは狂気をはらんだ目で俺を睨みつけていた。
 再度、絶叫に近い金切り声が、廊下に響き渡る。
 だが、耳に詰め込んだ綿のおかげで、ダメージは大分和らいでいた。
 ……馬鹿の一つ覚えみたいに、何度も何度もわめきやがって。もう、お前の弱点はお見通しなんだよ。
 月明かりに照らされたバンシー、その動向を注視する。
 正確には、その胸の動きだ。
 叫ぶには、どうしたって息を吸う必要がある。狙うべきは、その瞬間。
 俺は槍を構え、その時を待つ。
 バンシーの胸郭が膨らむ、その刹那に全膂力りょりょくを振り絞って、
「らぁあああああああああっ!」
 投擲とうてき。同時にバンシーが叫ぶ。
 ゲイボルグはまっすぐに飛翔し、金切り声をあげるバンシーの喉、そのど真ん中を貫いた。
 瞬間、バンシーは口から真っ黒な液体を吹き出す。金切り声になりきれない、半端な声をあげながら、バンシーは床に倒れこんでいった。
「そのまま永遠に黙れよ、ヒス女」
 俺はその前に突っ伏して、肩で荒い息をする。全力以上で動いたことで完全に酸素不足だった。
 ただ起き上がることすら出来ず、しばらくはそのままでいることしか出来ない。
 顔をあげ、バンシーを盗み見る。バンシーは、ほんのかすかに痙攣している程度で、起き上がってくる気配はない。
 さ、流石にこれで終わりだろ……。
 どうひいき目に見ても瀕死のバンシーを目にして、俺はほっと安堵のため息をつく。
 その時になって、俺はあることに気づいた。
 リオが、いない。
 さっきまでいたはずのリオの姿が、どこにもない。ゲイボルグを投げる直前まで、すぐそばにいたはずなのに。
 それだけじゃない。
 妖精時間も、戻っていた。
 奇妙な歌声も、怪しげな色の光もない。窓の外に浮ぶ月も、普段見慣れた、地味で淡い光を放っているだけだった。
「リオ! おい、どうしたんだ! どこに行ったんだよ、ったく!」
 いったい何が起きているのか。いまいち把握出来なかったが、そんなことを気にしている暇なんか無い。
 ……とりあえず全部後回しだ。それより早く、姉貴を探さねぇと。
 俺はやたらと重い体を起こして、床に手をつく。
 そのすぐ目の前、だった。
 バンシーが倒れていたはずの場所に、探していた姉貴が、何故か、倒れていた。
「…………は?」
 見間違いかと思い、目をこすってみたものの見えるものは変わらない。
 月明かりに照らされて、床に大の字になって倒れている姉貴の姿が見えた。
 その喉には金属製のパイプが突き刺さり、そこを中心に、おそらくは血であろう液体が床に広がっていた。
 それが、全てだった。
 どくどくと心臓が脈打つ。息が苦しい。背筋が寒い。
 違う、嘘だ、ありえない。
 いくつも否定する言葉が、胸の奥から湧き上がってくるものの、目の前の光景からまるで目を逸らすことが出来ない。俺はただ呆然と、姉貴の姿を凝視し続ける。
 ――――確かめろ。
 残酷な理性がそれを叫び、即座に現実を確認すべしと命ずる。
 床に手をつき四つに這い、姉貴に近づいていく。
 触れて確かめようと、俺はそっと手を伸ばしたものの。天井を見上げて見開かれた、姉貴の空ろな目が全てを物語っていた。
 なん…………だよ、これ…………え? 
 どうしてだ! なんで、姉貴が! 
 まさか、俺がやったのか? 
 嘘だ……。
 ……違う、僕じゃない。俺じゃない! 僕が、俺が殺したのはバンシーだ! 姉貴じゃない! 姉さんじゃない! 
 違う違う! 違うんだ! 
 だから姉さん! 今すぐ、目を覚まして、冗談だって、そう言ってよ! 
 くそっ! リオ! どこにいるんだよ、リオ! なにがあったんだよ、これ! 教えてくれよ! 出てきてくれよ! 
「――――ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ! なんっだよ、これ! なんでだ! どうしてだよ! ふざけんなよ!」
 体から急激に熱が奪われたみたいに、背中から冷たいものが広がっていく。
 父さんと母さんの事故について聞かされた、あの時みたいに、体中から力が抜けていく。
「やめてよ……僕を…………僕をおいてかないでよ……」
 涙があふれ出て、止められない。
「起きてよ、姉さん…………姉さん!」
 冷えた姉さんの体を抱きしめる。温めれば、また目を覚ましてくれるような、そんな気がして。
 僕はその耳元で、呼びかけ続けた。
 と。
「遅かった、みたいデスネ……」
 唐突に、そんな声がした。
 振り返れば、そこにメイヴとバンシーが立っていた。
「ヴァル、プランBで進めてください。ここはワタシ一人でかまいまセン」
 メイヴが何かを命じると、バンシーは小さくうなづいてどこかへ行ってしまった。
 呆然とその様子を見ていて、ややあってから僕は、はっと気づいた。
「……ね、ねぇ、メイヴ。君……妖精の女王なんだろ? だったら、魔法とか、そういうの使えるんだよな? …………な? 頼むよ! 何を犠牲にしたっていい! 僕の命でも! だから、姉さんを! 姉さんを助けてくれ!」
 彼女にすがり付いて、必死に願う。
 プライドも何も、みんなかなぐり捨てて、頼み込む。
 それが今の僕に出来る、唯一のことだった。
 だけど。
「……タイチさん、向こうでちょっと、お話ししまセンカ」
 そう言うとメイヴは、そっと僕の手を掴んできた。
 何も考える気になれず、僕は言われるままメイヴに従う。
 台所へと場所を移し、僕は椅子に座らされた。メイヴは食器棚からガラスのコップを一つ手に取ると、流しの前に立った。
 蛇口を捻りコップに水を注ぐと、それを僕の前においた。
 メイヴは僕の向かいの、姉さんの席に腰掛けると、ゆっくりと口を開いた。
「タイチさん、ケルピーってご存知デスカ?」
 唐突な質問、だった。
「ケルピー、ワタシの国の言い伝えに出てくる妖精デス。水の中に住んでいて、馬のような姿をしている、と言われてイマス。ケルピーを乗りこなすことが出来れば素晴らしい名馬として用いることが出来マスガ。それが出来なかった場合、水の中に引きずり込マレ、内臓を残して食べられてしまうというという恐ろしい妖精らしいデス」
 淡々と語られるメイヴの話に、僕は特に興味も持てなかった。
 それよりも、さっきまで激しく動いていたせいか、やたらと喉が乾いていた。目の前におかれていたコップを手にすると、僕は中の水を半ばまで一気に煽った。
 その間にも、メイヴの話は続いているようだった。
「――――ワタシはその名前を、新たに開発した植物に名付けマシタ。それは見た目には、ごく普通のありふれた植物にしか見えませんシ、基本的な性質も同じデス。ただ、一点違うところがあるとすれば、植物全体に主としてオピエートと呼ばれるアルカロイド他数種を含んでいるコトデス。……ご存知ですヨネ、タイチさん。アルカロイドは」
 訊かれて、僕は無言でうなずいた。
 アルカロイド、植物が持っている毒素のことだ。
「そのアルカロイドからは、とある薬品が抽出出来るんデスヨ」
 どうやらまだ続くらしい、不可解な説明にだんだんと苛立ちが募ってきた。
 ……メイヴ、君はさっきからはいったい何が言いたいんだ。
 そう言ってたしなめようとしていた僕だったが、次に彼女の口から出てきた言葉が、そうさせなかった。

「――――モルヒネ」

 …………えっ? 
「医療の現場において、強力な鎮痛剤として重宝されるモルヒネデスガ、同時に悪名高い麻薬、ヘロインの原料でもありマス」
 流れるように、あまり耳慣れない名称が次々並べられていく。
 それでも淡々と、表情一つ変えずに話を続ける彼女に、僕は徐々に背筋が怖気立つのを感じた。
「もっともこれは成分の一部に過ぎず、実際には複数の麻薬成分、幻覚性毒素などが含マレ――――」
「……待った! メイヴ、ちょっと待ってくれ」
 もう流石に落ち着いていられなくなって、僕は彼女の話をさえぎった。
「メイヴ、君はいったいなんの話をしてるんだ? さっきから、君が何を言ってるのか、なにを言いたいのか、僕にはさっぱりわからない!」
 自分でもどうしようもない焦りと、どこからわきあがってくるのかわからない、漠然とした不安感が僕を突き動かす。
 それはきっと、彼女が次に何を言い出すのか、それが怖くてたまらなかったんだと思う。
「わからない、デス? それは…………わかりたくない、の間違いなんじゃないデスカ、タイチさん。本当はアナタ、もうわかってるはずデスヨ。ワタシが何を言っているノカ」
「…………っ」
 ああ、わかってるさ。
 わかってる。
 けど。
 だけどさ! 
 だって、彼女が言ってることが本当なら、それはつまり。
「……君がいうところの、麻薬成分を生成する植物、ケルピー。それはつまり、姉さんが採ってきたタンポポ…………なんだな?」
「Yes、ワタシのところではダンディライオンと呼びマスガ」
「いや、けどあれは…………間違いなく紛れもないタンポポで……そんな成分は含まれてないはずだろ?」
「確かに、普通のタンポポには含まれていまセンネ。けど言いましたヨ。開発したト。生物工学を勉強されている、タイチさんならもう想像がつくはずデスヨ?」
 メイヴのその言葉に、僕ははっとさせられた。
「まさか…………やったの? タンポポで、遺伝子組み換えを……」
「Exactly(まさにその通り)」
 メイヴはなんでもないことのように、さらりと答えた。
「じゃあ、ここ数日の出来事は…………」
「全部あなたが抱いた妄想と幻覚デスヨ」
「僕が見た、リオって妖精は……」
「あなたが生み出した存在デス」
「僕がクー・フーリンってのは」
「あなたが創った設定デスネ」
「痛みを感じなかったり、すごい力を出せたのは……」
「ケルピーの持つ、鎮痛作用と麻薬成分の恩恵デス」
「は、はは……なんだよ、それ……なんだよ、それ!」
 この数日間の出来事を、その全てを否定されて頭がちっともついてこない。だんだん、今ここにいる自分自身すらおぼつかなくなってくる。
 そして、すぐ目の前にいる彼女も。
「まあ、個人によってだいぶ効果にばらつきはあるマスガ。ワタシの観察によれば、あなたの場合顕著だったのは攻撃性の増加、口調や態度の変化、罪悪感や理性の抑制が強く出ていたようデスネ。人によっては、五感が異常に鋭敏になっタリ。色彩感覚が変ワル、なんて効果もアリマスガ…………ヴァルの場合は軽い人格崩壊も見られマスネ」
 楽しげに、腕組みして説明を続けているメイヴに、僕は戦慄せざるえない。
「な、なんだってそんなものを…………?」
「さぁ? ただワタシは、そういう依頼があったからそういうものを作って、それを欲しがる人達に売って生計をたてているだけデスカラ」
 それ以上のことは知ったことじゃない、とでもいいたそうに興味なさそうに彼女は言ってのけた。
「メイヴ…………君は、いったい誰だ?」
「ふふっ、誰だと思いマスカ?」
 茶化すように、彼女は両手を広げて見せる。
「ヴァルキリーにはフレイヤと呼ばれてイマスガ。フレイヤでもメイヴでも妖精の女王でもありまセン。まあ、好きに呼んでいただければソレデ」
 もう、誰でもなくなってしまった彼女は、愉快そうにそんなことを言う。
 真正面から絶望を突きつけられたみたいに。
 頭から氷水をかけられたみたいに。
 全身から力が抜けて、僕はテーブルに突っ伏した。
 じゃあ、姉さんは、もう……。
 まだ残っているはずだと思っていた箱の片隅の希望が、最初から入っていなかったみたいな、そんな絶望感が、全身を苛む。
 涙が、次々溢れ出して視界が歪む。
 目を閉じると、夜よりなお暗い闇が広がっていて、今にも自分がいなくなってしまいそうだった。
「……ワタシも、大変だったんですヨネ」
 きしりと椅子をきしませて、メイヴがぽつりともらす。
「野外で栽培試験をしていたケルピーの畑がが何者かに荒らされテ。犯人を捜すためにわざわざ警察に手を回して犬を用意してもらったら潰サレ。やっと見つけたと思った犯人はただの民間人デスヨ。しかも、荒らした理由が食材にするため、最初は何の冗談かと思いましタヨ。……ケルピー一株の相場がいくらか、想像出来マスカ?」
 何か言っている。
 今の僕にはその程度のことにしか思えない。もう、どうでもいい。もう、なんだっていい。守るべき姉さんが死んだいま、全部どうだって……。
「ワタシもね、最大限配慮したんデスヨ? 単なる不法侵入の話を持ち出して、穏便にことを済ませようとシタリ。これ以上中毒が進まないよう、忠告してケルピーを回収したリトカ。……ああ、回収というと違いマスカ。あれはお姉さんが自分から返してくれたんデシタカ。あれで、全て解決、のはずだったのデスガ…………まさか、フラッシュバックでこんなことになるナンテ。ワタシもつくづくついてまセンネ、まったく」
 …………ついてない? 
 ため息混じりにそう漏らしたメイヴの言葉に、頭のどこかがざらりと撫でられたような気がした。
「タイチさん、明日香さんのことは残念デシタ。けれど、ワタシもベストは尽くしマシタヨ。だから今回のことは、不運な事故だったと思ってクダサイ」
 ……不運な、事故、だって? 
 その言葉に、ついさっきまで冷え切っていた体が、一気に沸騰した。
「――――ふざけるなっ!」
 思い切りテーブルを叩いて立ち上がると、僕はメイヴを睨みつける。
「ベストを尽くした? 不運な事故だった!? 君は…………お前は、自分の企みが暴かれることを怖れて、僕たちを見殺しにしたんだ! だから、僕らがどうなろうがお構いなしだ!」
「あー、その点は否定出来まセン。否定は。ですが、タイチさん。あなたが何と引き換えにしても守りたいものがあるのと同じで、ワタシも自分の生活を守らなければならないという義務があるんデスヨ。最小限の犠牲で」
 僕と同じ? 最小限の犠牲? 
 その言葉に、頬が引きつるのを感じる。骨がきしむぐらいに、拳を握り締める。ぎりと歯噛みして、メイヴをにらみつけた。
「もういい、黙れ。お前も殺してやるからそこを動くな」
 彼女に向かって、一歩踏み出した。
 その途端の、出来事だった。
 ……あ、れ? 
 前に出そうとしているはずなのに、なかなか進まない。五秒ほど遅れて、ようやく床についた。三歩目にいたっては、床から離れすらしない。
 それどころか、
「なん……だ? か、から……だが………………」
 バランスを崩して、前のめりにフローリングに倒れこんだ。
 まるで全身が、鉄か何かになったように、重く身動きが取れない。舌も、うまく動かせない。かろうじて顔を横に向けると、そこにあいつが立っていた。
「ふふふ、あはあははっ! タイチさん、聞いたことありまセンカ? 妖精に招かれたら、なにも口にしてはイケナイ。食べてはいけない、飲んではいけナイ。もし口にすれば、人間の世界に戻れなくなるから、ト。……ああ、失礼ここはあなたのおうちでシタカ?」
 勝ち誇ったような表情で、彼女はそんなことを言う。
「くっ…………さっきの水…………か」
 こいつ、最初からこうするつもりで! 
「僕を……どうす……?」
「あなたにはこのまま行方不明になってもらいマス。姉を殺し、逃走した殺人犯とシテ」
 ……殺すつもりなのか、僕を。
 そう聞きたかったものの、もう舌が完全に動かない。
 外道が椅子に座ったまま、僕を見下ろしてくる。
「こんなことになってしまって、残念デス。本当は、何事もなければあなたにワタシの仕事を手伝ってもらうつもりだったんですケド……でもまあ、仕方ありませんヨネ」
 そう言って微笑む彼女を、出来ることなら睨み殺してやりたい。
 なのに、まぶたが重い、半分も開けていられない。もう、睨んでいることすら、つらくなってきている。
「ああ、そうそウ。ご存知ですか、クー・フーリンの最後ハ?」
 そいつは椅子から立ち上がると、ゆっくりと僕の周りを歩き始めたらしい。床を通して、振動が僕の体の回りを動いていく。
「クインメイヴの罠にかかり、クー・フーリンはゲッシュと呼ばれる誓いを破ったために命を落とすことになりマス。あなたの場合は、お姉さんを守るコト。その誓いを破ったために、こんな結末になったのかもしれませんネ」
 最後の力を振り絞って、彼女に呪詛を吐きかけようとしたが。もう、なにも……わからな。
「め、イ…………ヴ!」
「いえ、もう一度言いますが、ワタシはメイヴではありまセンヨ。名前の上でも、役割の上デモネ」
 遠く、遠くから、声が。


「――――ワタシが思うに、メイヴは意外とアナタのそばにいたんじゃないですカネ?」

 ああ、ねえさ……。



 ○



 見上げた夜空、そこに浮かぶのは紫と青のまだらに染まる、醜い月だった。
 吐き気を催すほど、おぞましい。


 気がつくと、僕は何故か外にいて、空を見上げていた。何故そんなことをしているのか、わからない。とりあえず辺りを見回すも、メイヴの姿はどこにもなかった。
「クー! クー!」
 呼び声に目を向けると、ほのかに光を放つリオの姿が目に飛び込んできた。
「良かった、間に合った!」
「…………なんだ、また幻覚か」
 ため息混じりに顔を逸らすと、頬に軽い痛みを感じた。
 見れば、裸足で蹴ったらしい、リオの姿。
「リオを無視するな!」
「幻覚って痛みまで感じるんだな……」
 思わず感心して頬をさすると、それはさらに声を荒らげる。
「リオは幻覚なんかじゃない! あれは全部、メイヴの策略! クーの目を逸らすためのデタラメ真っ赤な嘘八百! やーい騙された! クーのばーかばーか!」
 そんな野次がとんできた。
 ああ、そうだよ。騙されたんだよ、実際。 自分の作り出す妄想とはいえ、その言葉は結構こたえる。なんだか今にも泣いてしまいそうだ。
 なのに、僕の幻覚はまだ続けようとする。
「クー、騙されないで! メイヴの幻術を打ち破るの!」
 もういい加減にしてくれよ。
 姉さんが死んだ今、どっちを信じるとか、そんなのどうでもいいんだ。
 うるさい。
 もう、黙れ。
 消えろよ。
「……クー?」
 そっと、それに手を伸ばす。首をかしげる僕の妄想の産物を、握りつぶすために。
 幻覚を、殺すために。
 力を込める。
 けれど、

「――――クー、お姉さんは生きてるよ」

 一瞬、頭の中が真っ白になった。
「クーが殺したのは、メイヴが連れ去るために用意したお姉さんの偽者。あの時お姉さんはとっくに連れ去られてて、今はメイヴの城にいるよ」
 リオはさらにそう続ける。
 けど、そんなの、いくらなんでも都合が良すぎるだろ……。
 そう、思う。
 けど。
「リオ…………それ、本当?」
「うんっ! リオは、嘘つかないよ!」
 無邪気な笑顔でうなずく彼女は、どこまでも明るい。
「姉さんは、無事なの?」
「そうだよ。メイヴの城で太一のことずっと待ってるよ」
「でも、僕は……僕が姉さんを……」
「太一は、お姉さんのこと、殺したい、って思ってた?」
「そんなこと、あるわけないだろ!」
 真っ向から否定すると、リオはふっと微笑んだ。
「だったら、例え幻覚を見ていたとしても、太一はお姉さんを殺したりなんかしないよ」
 そう言われた瞬間、ふっと目の前が明るくなった。
 そんな気が、した。
「…………そうだよな。確かに、姉さんが死ぬとか、僕が殺したとかそんなことあるはずないよな。父さんと母さんが死んで、さらに姉さんまでなんて、そんなことありえないよな」
 やっぱり僕は、メイヴに騙されていたんだ。メイヴが全ての元凶で、全部メイヴが自分の思い通りにことを運ぶための策略だったんだ! 僕は、やっぱり騙されていたんだ! 
「くくっ…………あはははははははははっ! やられたなぁ、メイヴのやつに! 僕は馬鹿だ! 大馬鹿だ!」
「あははは! ばーかばーか! クーのばーか!」
 笑う、笑う。リオと一緒になって、大笑いする。
 それでちょっと、もやもやしていた胸の中が、すっとした。
「……ありがとうな、リオ」
「どういたしまして」
 柔らかに、花開くようにリオが微笑む。
「ありがとうな、リオ。ありがとうな、リオ。ありがありがりが」
 …………あれ? 今、僕俺同じこと二回三回言ってた? 
 ないか、そんなわけはずあるがねぇだろ。
「さぁ、クー。青と紫の満月の力を借りて、いまこそ内なる英雄、クー・フーリンの真の力を呼び覚ましときがだね。メイヴは中いる暗闇の城は泉にその」
「ああ、わかったたいるそこだなよし。さぁ。…………ところに姉さんがリオ行くぞ!」
 打ち砕く陰謀のメイヴのメイヴの姉さんがそてし取り戻すさあ姉さんを取り戻す取り戻す取り戻りりりりりりりりりりりりり――――


ハイ s7d/2ml3o.

2016年04月05日(火)23時22分 公開
■この作品の著作権はハイさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
かなり拙く、かつ荒い作品ですが、少しでもご感想をいただけると嬉しいです。


※ なお、この作品には暴力的なシーンが含まれています。


2016年06月08日(水)22時03分 ハイ作者レス
ご感想ありがとうございます、青葉さん!
あまり内容に触れる返事は出来ませんが、ご了承ください。
……いえ、自分でも突っ込みどころが多いもので、泣きたいぐらいだったりするので(汗
ストーリーは自分でも自信があるんですが、スケジュールを見間違えるという初歩的なミスから血を見る執筆に。よって、完成度は全く自信がないばかりか、目を逸らしたい部分がちらほらと……。


>たんぽぽー! 野草料理大好き! とテンション高々に思って読んだら……さすがです。

●構想自体は2年前ぐらいにあったんですが、当時は遺伝子組み換えまで考えたものの、麻薬成分の摂取方法が香りから、という説得力の無さからお蔵入りしてました。
メイヴポジションにいたのは学校のセンパイでしたしw
で、今回丁度食べられる野草にはまっている時期にカギを野草料理にすることを思いつきました。
これなら、読者騙せるぞひゃっほー! と確信したので無事執筆の運びとなりました。



>バンシーが好きです。真っ黒で強い女の人いいなあ。

●何気にバンシーは私も気に入ってますw
現実に出会ったら確実に近づきたくないタイプですが、味方だったら惚れそうですね。


>前者なら私は納得というか、「あ、なるほどそれでこのタイトルか」とおもしろく感じました。

●ありがとうございます。そして、ありがとうございます!
いえ、なんか割と評判が良くなくて、このタイトル……私はすげぇ気に入ってるんですけどねぇ。
ちなみに、あのラストシーンを書く前は普通のタイトルでした。


>ぞっとするというか、読んだ後「……」と放心してしまいそうになりました。おもしろかったです。


●楽しんでいただけたようで、非常に嬉しいです。
ラストシーンは自身のなかでもかなり満足の行く終わりかたでした。
でも、ラスト近くは読んでて頭が曲がりそうになるので、あんまり読みたくありませんw




●共幻


ハイ名義では投稿していませんので、探しても見つかりませんw
っていうか、去年のってまだ見れるんですか?
うーむ、困る!

諸事情からあまり読んで欲しくないので、どれかは教えませんw


ただ、ヒントだけあげるなら。

投稿したのは、『手』『艶のある人』のみ。
名前のヒントは、ヤクルト、ラクトバチルスにおける特徴的な名前そのまま。
今までこのヒントでわかった人はいませんが、わからなくて結構ですw




それでは、ご感想ありがとうございました!

 

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2016年06月08日(水)00時27分 青葉
こんばんは。
そういえば、GW企画に参加されていたのでは!? と思い出し探してみるとたどり着けました。
いつもお世話になってます。読めて嬉しいです。

いやあ、印象「うわわわ!!」という感じでした。
たんぽぽー! 野草料理大好き! とテンション高々に思って読んだら……さすがです。
他の方が書いているように厨2設定かと思ったら……やられた。
とても読みやすかったですし、ひきこまれました。ラストは、良い、褒め言葉の意味で気持ち悪かったです。

1つケチをつけるならば、姉さんを殺してしまった状況で、メイヴの「少し話しませんか」のところ応じるのかな、ってことです。冷静さをなくしてわめきそう。

バンシーが好きです。真っ黒で強い女の人いいなあ。
レスや感想はほんとにさらっとしか拝読していないので……タイトルは最後のおかしくなってるところとリンクしているのでしょうか? それとも別のこだわり?
前者なら私は納得というか、「あ、なるほどそれでこのタイトルか」とおもしろく感じました。

ぞっとするというか、読んだ後「……」と放心してしまいそうになりました。おもしろかったです。
ありがとうございました。
執筆お疲れ様でした!(とても今さらですが)。
 

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2016年05月11日(水)19時45分 ハイ作者レス
金木犀さん、『妖精を月の、時間に英雄が醜い内なる時間に呼び覚ます』をお読みいただきありがとうございます!
……タイトル、合ってる?w

>これ読むだけでうげーってなりました。企画主催者が誰なのかおぼろげにもわかるこの感じ。誰とは言いませんが誰とは。この思想に似たことを言っていた人間を僕は知っているぞ。

●ん? 私は全くピンと来ませんw
(ピンとくるほど顔広くない)
とりあえず私は作品を書くだけなので、誰が企画立案しようとヘンテコルールになろうと、あんま関係ないです。
あ、多少は口出ししますがw


>冒頭と最後の落差は良かったです。
G戦場の魔王をの鬱エンドを彷彿させるというか。
そこはおもろかったです。

●ありがとうございます。お楽しみいただけたようで安心しています。


>しかし、タイトル、これハイさんの遊びなんでしょうが、ほんと、意味が解らん。


●くくく、ネガティブキャンペーン的につけたんですが、極めて不評だったもようw


しかし、私的にはこのタイトル以外ありえないので、そこは譲れません。
初期には麻薬エンジェルダストから連想してフェアリーダストなんてタイトルもつけてましたが、あまりに普通過ぎて好きになれなくて……。


ただこのタイトルをつける以上は、中身がめちゃめちゃ面白くないと説得力が出ないんだな、とは感じました。
なので、なんかバカやってる、と思って生暖かい目で見ていただければ。

あ、あと確実にうまくいく方法より、こういう際どい技がどういう結果を生むかを見たかったってのもあります。
シチューにカツを見いだす、みたいな。
なかなか良いデータが取れたのでその点は満足です。


ちなみにえつなまさんじゃないですが、タイトルを口に出して繰り返していると癖になって、軽い中毒に陥るみたいですw


>冒頭と中間まではわりと退屈だったんですが、最後のとこでそれ全部面白さにかわる、その手腕は見事だなって思いました。

●ありがとうございます。ただ、前半は……うん、前半はねぇ昔は良い子だったのに。なんでこんな子に育っちゃったんだ(遠い目)。



>いろいろと理不尽な感じで、良いと思いますが、ぶっちゃけ納得な感じはいまいちしなかったんですよね。なんでだろう。

●い、いや、そこは私も納得の出来ではないので。深く考えなくても大丈夫です。っていうか、考えないでください。お願いします!


●次回も参加予定なので、金木犀さんもよろしければ……やらないか?w


それでは、ご感想ありがとうございました!
 

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2016年05月11日(水)17時10分 金木犀
テーマに添う添わないの判定はご遠慮ください
感想者は純粋に作品が面白いかどうかを判断してください(好みが入るのは許容)
できる事なら作者の向上に繋がる内容である方がお互い発展に役立つと思います
感想書いて全作完走を目指しましょう!


→これ読むだけでうげーってなりました。企画主催者が誰なのかおぼろげにもわかるこの感じ。誰とは言いませんが誰とは。この思想に似たことを言っていた人間を僕は知っているぞ。


こんにちは金木犀です。
なんか企画参加者大変そうやなーと遠巻きに見ながら思ってました。
なにはともあれ、参加お疲れ様です!
僕が参加すれば優勝間違いなしだったんだけどなあ(なんのとは言っていない)


冒頭と最後の落差は良かったです。
G戦場の魔王をの鬱エンドを彷彿させるというか。
そこはおもろかったです。

しかし、タイトル、これハイさんの遊びなんでしょうが、ほんと、意味が解らん。
これで『この作者大丈夫か』ってなる可能性はビレゾンですね。いえ、内容は良かったのですが。

で、内容読んだ後にタイトルを読み読み。うむむ、あれか、麻薬中毒者の狂乱を意味しているのかな。ぼくそういうのぜーんぜんわからんからやっぱりわからんけれども。

冒頭と中間まではわりと退屈だったんですが、最後のとこでそれ全部面白さにかわる、その手腕は見事だなって思いました。
でも、僕なら、選択肢を作るな。
イフみたいな感じで、書くかも。
あ、文字数……やっぱり無理だな。


いろいろと理不尽な感じで、良いと思いますが、ぶっちゃけ納得な感じはいまいちしなかったんですよね。なんでだろう。


そんな雑多な感想を残しつつ、この辺で。
執筆お疲れさまでした。



 

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2016年05月10日(火)05時21分 ハイ作者レス
読了ありがとうございます。ナマケモノさん!
内容に深く関わらない、言い訳にならない程度に御返事いたします。
ご理解のほど、よろしくお願いします。


>正直、読んで評価に困った作品でした。下手ではなくて、評価が割ると思ったからです。

●いえ、まだまだですよ。極限状態で書いていたとはいえ、あとから見直すと穴だらけで泣きたくなりました……(涙)


>生活保護


●気がつくと空いていた大穴の1つでした(汗。


>ケルト神話を調べている最中なので本作は興味深く読ませていただきました。


●さほど内容に関係ないことなので、補足いたしますと。
かなり自己解釈や婉曲が含まれています。
また、主人公が単なるいち高校生に過ぎないことから、ややマイナーなケルト神話における情報が正確過ぎるのもおかしいかな、と主人公の思い込み(設定上は、ゲームかアニメでクーフーリンを知った程度)を含めてかなり間違った認識に。
ゲイボルグが白銀に輝く槍だとかは特に顕著で、この辺りは見映えを考慮してゲーム的表現になっています。
メイヴが妖精の女王ってのもそれと同じ理由で採用しました。


主人公がケルト神話を読み込んでいる、という設定にしようかとも思いましたが。その設定を入れるのが困難だったため、簡易的な設定にならざるえなかった部分もあります。
あと、私がコントロール出来る情報量の問題的にもこの辺が限界でした。



うーん、なんだか結局言い訳を並べ立てただけのような気がしますが、よろしかったでしょうか?
内容にまで触れるとかるくこの三倍にはなるので見苦しいことになるのは確実。
そう、コーラを飲んだらげっぷが出るぐらい確実ですよ!(キリッ)

次回は、もうちょっと情報密度が軽い作品で、いりえミトさんみたいな完成度で、自分らしい作品を投稿出来るよう頑張りたいと思います。
では、またお読みいただけたら、幸いです。



それでは、ご感想ありがとうございました!
 

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2016年05月09日(月)20時04分 ナマケモノ
 どうも、ケモノと申します。本作を読ませていただいたので、感想を書かせていただきます。闘掌では私の作品に感想ありがとうございました。本作も企画開催中に読んでいたのですが、忙しく感想を書く事ができませんでした。申し訳ございません。

 正直、読んで評価に困った作品でした。下手ではなくて、評価が割ると思ったからです。中二病全開な始まりから、驚愕の真相が明かされ、そしてあの衝撃のラスト。ケモノ的にはすごく好みなんですが、中には意味がわからないという方も多くいるんじゃないかと思いました。
 また、新種タンポポのアイディアはいいんですが、それを一般人が採っていってしまうような場所で栽培するのか凄く疑問に思いました。
 細かいところだと、生活保護とかも。正直、生活保護のくだりは削って、お姉さんが家計を一生懸命支えている程度の描写で良かったと思います。

 自分もいまケルト神話を調べている最中なので本作は興味深く読ませていただきました。
 

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2016年05月07日(土)23時05分 ハイ作者レス
03さん、この度は拙作をお読みいただきありがとうございました。


内容に触れず、言い訳にならないようにお返事します。ご理解のほどよろしくお願いします。


>御作も読んでいるこっちが恥ずかしくなるぐらい厨二病でした

●わかりました、誉め言葉として受け取っておきますw

>味のある締め方で勉強になったのですが、個人的にはあまり好きではありません。
というのも、自分が典型的ハッピーエンド厨というのもあるのですが

●私も基本はハッピーエンドのが好きなんですけどね。過去に育てた性根は変わらないみたいで、時折発作が出てどうしようもなく破滅する話が書きたくなるんです。


>作者様の思惑とは違うかもしれませんが

●ありがとうございます。人の意見に耳を傾けられなくなったらおしまいだと思ってますので、こういった意見はありがたいです。


>タイトルで損しているんじゃないかなと思いました。


●いや、その意見は聞き入れられませんw

……というのは、半分冗談ですが。今回の件でいろんな人に同じことを言われて、思惑は半分成功したんだなと感じました。
このタイトルじゃ、感想数が伸びない?
それは間違いないです。ですが、このタイトルよりこの作品に適したものはない、という意味ではたとえ損してでも、このタイトルにして良かったと感じています。



>神器ゲイ♂ボルグを駆る最狂のホモ・腔堀倫というネタでGW企画に参戦しようかと考えてまして

●それはちょっと読みたかったかもw


あと、個人的に今回の企画で『○○神話』に無理矢理こじつけて『○○不敗神話』とか、『ウメ○ラ神話』『松岡○造神話』とかぶっこんでくる挑戦的作品が読みたかったんですが、残念ながらそこまでやる人はいなかったみたいで。まあ、ネタ的に色々難しいですけどね。



すいません、不必要に長々と。
では、今度は次の企画でお会い出来ることをお祈りしています。
それでは、ご感想ありがとうございました!

 

nice254
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2016年05月07日(土)20時25分 03
拝読いたしました。
いつもお世話になってます03です。
(企画でお世話になったモンハンほもです。)


まず最初に。このサイトでここまでラノベらしい作品が読めるとは思っていませんでした。厨二作品はバカにされがちですが自分は好きです。さすおになんて最高です。御作も読んでいるこっちが恥ずかしくなるぐらい厨二病でした(注:褒めてます。本当に。)

作品の本筋について。明確な敵の登場、終盤のどんでん返し――とそこまでは楽しめたのですが、ラストの締め方が個人的に納得できず、残念ながら評価を下げることとなりました。
ラストの締め方が独特で、本当にメイヴに騙されていたのか、けっきょく全部主人公の幻想だったのかを読者に委ねるラストでした。味のある締め方で勉強になったのですが、個人的にはあまり好きではありません。
というのも、自分が典型的ハッピーエンド厨というのもあるのですが、こういった終わり方をするのであればどうあってもハッピーエンドを想起させる終わり方であるべきだと思います。
それともう一つ欠陥が。御作は全部主人公の妄想だったというバッドエンドならここで完結したと言えるのですが、目が覚めてメイヴを倒しにいくというハッピーエンドの場合は俺たちの戦いはこれからだエンドなので、完結した作品とはみなせません。つまり、本作は救いのないバッドエンドが本筋としか解釈できないのです。
作者様の思惑とは違うかもしれませんが、とどのつまり野草には気をつけましょうね、ということを言いたかっただけのかなと感じました。

あ、あとタイトルについてですが誤字かと見紛いました。正直、タイトルで損しているんじゃないかなと思いました。作品自体は面白いのにもったいない。



余談ですが、自分も神器ゲイ♂ボルグを駆る最狂のホモ・腔堀倫というネタでGW企画に参戦しようかと考えてまして(けっきょく参加は見合わせましたが)、ハイ様からも感想頂いた掌編を読んだ他の創作仲間から「犬殺し03」というなんともありがたくない二つ名を頂戴したこともあり、なにかとネタが被りまくってる御作には妙なシンパシーを感じたということだけ報告させていただきます。

拙い感想で申し訳ございません。
以上、失礼いたしました。
 

nice242
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2016年05月07日(土)16時01分 ハイ作者レス
etunamaさん、ご感想ありがとうございます!


とりあえずお楽しみいただけたようで良かったです。

もやもやは、ひとえに私の責任であり、この場で言い訳はいたしません。
申し訳ない。
もう少し私に技量があれば、みんなにより楽しんでいただくことが出来たのですが。
今後も修練に励みたいと思います。



なお、etunama愛が行き過ぎた感想すいません。
思っていたより楽しみにし過ぎていたみたいです。
後程、感想内容を柔らかい表現に直させてもらいます。



それでは、ご感想ありがとうございました。
 

nice258
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2016年05月07日(土)14時07分 etunama
 お姉ちゃん殺しちゃった!(うひょぉおおお!)
 てなかんじで、おいまじかよ展開がすごくよかったです。たのしめました!
 タンポポで狂っちゃうのぉおおお。いやほんと狂っちゃう展開やオチすごいすき
 てなわけで読んでるときはよかったんですけど、読みおわってしばらくすると、なんかもやもやとするかんじもあったり。
・ メイブさんなんでキスしたんだろ
・ 空き地にそんな危険植物育てるかなぁ
・ 幻覚はともかく現実とのリンクがちょっと甘いような…。
 みたいな。
 ぼくの脳内だとちょっと補完しきれなかったかんじです。
 でわ!
 

nice255
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2016年05月07日(土)11時45分 ハイ作者レス
みなさん、『妖精の……?』(しまった、自分でもタイトルを覚えられないっっっ)にご感想いただきありがとうございました!
本来、一人ひとりお返事すべきところかと思いますが、大半が情けない言い訳にしかならないので、簡単にお礼を申し上げますことをお許しください。

○兵藤晴佳さん

楽しんでいただけたようで何よりです。
画面前で、ほっと胸をなでおろしています。
また、補足知識などありがとうございます。
私の知識不足が簡単に露呈してしまいますねw
勉強になりました。
それでは、ご感想ありがとうございました!


○七月鉄管ビールさん

この度は当作品をオススメしていただき、ありがとうございます。
ほのかな中二臭は、私がそれ系好きだからですw
けど、まんまそれをやっても面白くないので、ぐるりとひねってちぎって丸めてポンした感じです(自分でも意味不明)。
ただ、自分ではこの作品の出来がまったくわからず(というか確認出来ず)、軽いウツになりながら投稿したのはもはや良い思い出です。
とりあえず、楽しんでいただけたようで光栄です。
次回以降はより安定した完成度の作品を投稿出来るよう、今から複数のプロットを練りたいと思います。
それでは、ご感想ありがとうございました!

○たかセカンドさん

『神の語り部』2位おめでとうございます。
たぶん、私の感想はあまり好感触ではなかったと思いますが……申し訳ありません。
さて、ご感想についてですが。
なかなか楽しんでいただけたようで、光栄です。
あの結末は当初考えていなかったのですが、より読者が気分の悪くなる方向を目指したらああなってました。
後半数行は私自身、あまり直視出来ませんw
妙なタイトルは、失敗半分、成功半分ぐらいということで、予想外に今後の糧になってくれそうでうれしく思っています。
次回以降もこの手のタイトルは付けるかもしれませんし、付けないかもしれません。
今回の件で、変なタイトル=ハイ、という図式を覚えていただけたなら、あるいは。
まあ全ては、作品次第ですけどねw
それでは、ご感想ありがとうございました!

○たてばんさん

もう一つ楽しませてあげられなかったようですいません。
諸々の指摘はどれも間違いがなく、自身の未熟さを痛感しています。
次回の企画も参加するつもりでいますので、その時にご期待に添えるような作品を投稿出来ればと思っています。
なお、疑問点にお答えしないことに関しては、深くお詫び申し上げます。
それでは、ご感想ありがとうございました!

○シュヴァルツシルトさん

ありがとうございます。
まだ伸びしろがあるだろ、ってことですよね。
頑張ります!
それでは、ご感想ありがとうございました!


○wさん

まず、色々と申し訳ありません。
タイトルはこれじゃないとダメだって、この作品が言うんですもんw
感想を見ると、半々ぐらいでやや無し派が優勢なのかな……?
ともあれ、厳しさと優しさが入り混じった感想ありがとうございました。
途中、ツンデレ? と思ってしまいました、ごめんなさい。
拙さは自分でも感じているので、次回以降なんとかしたいところです。
それでは、ご感想ありがとうございました!


○志田 新平さん

楽しんでいただけたようで、安心しています。
今後も面白い作品を書き続けたいところです。
個人的には損してでもタイトルは変えたくないんですが、冒頭は色んな意味で修正が必要でした。
純粋に楽しんでいただけるよう、まだまだ努力が必要ですね。
それでは、ご感想ありがとうございました!

○たぬきさん

お久しぶりです!
その後、あんまり投稿されていないようですが、次回の企画とかどうですか?w
ご感想を見るに、そこそこ楽しんでいただけたようですね。
しかし、まだまだという感じでしたか。精進します。
なお、内容や整合性について回答しない点については、深くお詫び申し上げます。
それでは、ご感想ありがとうございました!

○99kgさん

点数を見ると楽しんでいただけたのでしょうか?
でも感想内容はそうでもないような……。
私はそれほど柔ではないので、遠慮なさらなくてもかまいません。
というか、自分自身これはかなり不甲斐ない出来で、私がもっとちゃんとしてればもっとみんなを楽しませることが出来たのに、と感じています。
次こそは、自他ともに満足できる作品が書きたいです。
それでは、ご感想ありがとうございました。

○いりえミトさん

まず、『ダーク』の2位入賞おめでとうございます。
そちらにつけた感想は、かなり低評価な感想だったと思いますが申し訳ありません。
次こそは勝ちたいですねw
一応、具体的な問題点の洗い出しは終わってるので、後は実行できるかどうか、ですが。
なお、当作品についてお褒めいただき光栄です。
ちなみに救いのない終わりは、私の作品の仕様みたいなものです。
……あ、ブーメラン云々ですが、そうですね。
ブーメランですよ!w
それでは、ご感想ありがとうございました!

○つとむューさん

色々とご指摘ありがとうございました。
調べなおしてみると勉強になったことが……いい加減ですね、私。
なお、内容について補足は致しません。ご了承のほどを。
ちなみに、プロットは最初から70で切りました。
どうしても書きたかった作品だったんですが、50枚に収まらないのは明白だったので70までオッケー! と言われたら、そりゃ書きますよw
けど、そのせいで貴重な点を……ま、いっか(いい加減)。
枚数調整技術をおおむね体得出来たので良しとします。
次回はつとむューさんからも点数をもらえるように、なるべく規定枚数におさえますよ!
それでは、ご感想ありがとうございました!

○東湖さん

楽しんでいただけたようで恐悦至極にございます。
まあ、詰めが甘いのは間違いがなく。
今後は人生レベルで詰めの甘さをどうにかしていきます。
その課題が山積みだったりで、すでに背を向けたくなってますけどw
では、機会がありましたら、またご感想をいただけると嬉しいです。
それでは、ありがとうございました!

○ 青出さん
 楽しんでいただけたようで光栄です。
 なお、指摘事項に関しては、非常にお見苦しくなる可能性が高すぎるため、基本お答えしない方針をとっています。
 ご了承ください。
 なお、次回以降も参加予定ですので、また読んでいただけると幸いです。
 ここまでの作品にはならないと思いますがw
 それでは、ご感想ありがとうございました!

○茉莉花さん

 正直なところ、茉莉花さんからは感想をもらえないものと思っていました。
 いえ、期間中ずっとリストを眺めてたんですが、茉莉花さんが感想をつけだして、リストの上の方から付けて行って、私の作品飛ばして次の次に行ったんですもんw
ああ、こりゃ、合わなかったんだな、まあ仕方ない、と諦めていたので、最後の最後に感想がついたときはすごく嬉しかったです。
なんか、内容もかなり褒めていただけたようで。
なお、作品内容に関しての指摘についてはあまり回答しない方針なので、ご了承ください。
本当のタイトルについての回答ですが……沈黙は金、雄弁は銀と申しますので、これも伏せておくこととします。
すいません。
それでは、ご感想ありがとうございました!

○えんさん

 おかしい、感想が消えている……?
 とりあえず、返信です。
 が、内容についての回答はあまりしない方針なので、ちゃんと受け取りましたよ! とだけ。
 ただもっさり回答するなら、「いや、それだけじゃ高得点にならないでしょw」と。
 直さないといけないところ、もっとたくさんあるっちゅーねん!
 それでは、ご感想ありがとうございました!

 

nice245
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2016年05月07日(土)07時37分 えん
おもしろいっちゃ面白いんだけど、枚数の割には登場人物が多くてごちゃごちゃしていた印象でした。

最後のオチとか何回もどっち? どっちが現実なん? やっぱりそっちか! うっほ! と面白いんですけれども、途中でちょっとハーレムラノベっぽい感じが強くなり、読むのやめちゃおうかなぁ、とも思えたのでそこを改善したら高得点の作品になると思います。

きっとオチとの落差をだしたくてほのぼの感を強くだしたんだとは予想しますが、それでももっと読みやすさを!

クーフーリンとかバンシーとか女神転生好きのわたしとしては、楽しい作品でした。

もし点数を入れるとするなら10~20点で、さんざんまよった挙句に評価なしにしたかもしれません(今は企画が終わっているから評価なし一択ですけど)

ほんじゃねハイさん!
またいつか!!
 

nice242
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2016年05月05日(木)02時36分 茉莉花30点
作者の方へ

茉莉花です。
貴作拝読しました。
(一部ネタバレありです)




いや、うまいですね。素晴らしくうまかったです。
クー・フーリンの設定だけがちょっとうまく読み取れなかったくらい。
英雄が憑依した感じなのか、力のみが憑依した感じなのか、そこが少しふわっとしていたように感じました。
あとは前半、「姉さんの仕事場は、チェーン展開しているスーパーマーケットだ」ここの前までは物語がどこに向かうのが少し読みとりづらく感じました。

突込みとしては、生活保護を受けているんなら野草料理出さなくてもいいんじゃないの??というところでしたね。
ただし伏線にもなっているので変更するのは難しい。
そのタンポポ(ケルビー)の伏線が秀逸すぎました。素晴らしいです。

ラストの扱いはおそらく意図的に幻覚か現実か読者にゆだねるという手法をとったのだと思います。(幻覚を見ているだけ、という方向が個人的にはしっくりくるかなと思いましたが)
少し古いのですが『クラインの壺』『.hack』、比較的新しいものでは『ソード・アート・オンライン』と一部似ているな、と感じました。

一人称の使い方
>そいつは椅子から立ち上がると、ゆっくりと僕の周りを歩き始めたらしい。床を通して、振動が僕の体の回りを動いていく。
こういう部分。非常にテクニカルだな、と思いました。

あとは……なんだ。
あ、一カ所だけ誤字があったように思います。
>即座に横薙ぎ、しかしこれもバンシーは体制を低くして回避
ここですね。

うわ、ちょっと興奮してまとまらないw
幻覚エンドはやっぱり後味が悪いですね。(褒め言葉)
こう、閉塞感が漂ってくるところが何とも好きです。

で……タイトル。
これ、「月の時間に、英雄が内なる醜い妖精を呼び覚ます」もしくは「月の時間に英雄が、内なる醜い妖精を呼び覚ます」ですね。
リズム的に前者かな、と思っていますがどうでしょう?
分かりにくいタイトルにしたのは主人公の結末を示唆したものだと捉えています。
そういう意味でもタイトルが内容をあらわしているんですよね。うまいなぁと思いました。
※「時間に」が余るんですが「…………あれ? 今、僕俺同じこと二回三回言ってた?」あたりから引いてきたのかな、と思います。
あるいは、一緒に読んだ知り合いの発言ですが「二回三回繰り返すこと(あるいは幻覚の中での無限ループ)の暗喩では?」なのかな。どうでしょう??

点数について…この作品に限っては例外的な対応をします。素晴らしかった。その思いを示したいので。

それでは執筆お疲れ様でした。
この作品が今回のGW企画の中で一番よかったです。
高い技術力を感じました。
読むことができて幸せでした。ありがとうございます。

 

nice241
pass
2016年04月29日(金)00時04分 青出30点
 こんにちは。感想を書かせていただきます。スカッとやられたなあ!というような作品でした。途中から始まる怒涛のネタばらしが気持ちよかったです。

ここが好きです
○素晴らしい構成
 「はじめにオチありき」な発想の作品だとは思うのですが、きちんと前振り部分も面白くてよかったです。私は、斬新(ぽいと自分では思う)なネタを思いついても、なかなかそれを活かす丁寧なストーリーを思いつけません。その点、こちらは主人公と姉の温かな関係、妖精時間のおどろおどろしさ、かっこいいバトルシーン、などなど、ストーリーとしても面白かったです。そして、そこまでの流れが魅力的なので、ネタばらし部分がいっそう映えていたと思いました。
○タイトルの「腑に落ちる」感
 タイトルと内容の兼ね合いという点では群を抜いていました。ラスト一文まで読んで、息を呑みました。キャッチーさという点では難があったかもしれませんが、最後まで読んだ人にだけ訪れる納得感がたまりません。
○妖精たちの魅力
 まず、リオのビジュアルが魅力的です。ティンカー・ベルのたんぽぽバージョンを想像しました。黄色の妖精がきらきら輝きながら飛んでいる様子が思い浮かびます。そして、彼女がたんぽぽの妖精であることや、姉と同じくらいの年齢であること、などはさりげなく描写されていますが、物語に直接関わってくるのが心憎いです。
 それからバンシーも好きです。貞子みたいな恐ろしい形相。そもそもバンシーという妖精自体、不気味で恐ろしい印象を与えるものです。そのイメージを上手く活かしつつ、妙にアクティブなバトルも繰り広げさせ、興味深い造形に仕上がっていました。
 その他、妖精の女王、姉さんもそれぞれにきちんと魅力を書き分けられていてよかったです。
○伏線
 伏線を周到に張りめぐらせていることがすごいと思いました。構想段階でかなり丁寧に計画なさったのだろうなあと推察します。

ここが気になりました
○冒頭
 読者をどう牽引するか、ということに尽きます。読み進めるとここを含めて面白いと思うのですが、私個人は進んで読もうという気持ちになりづらかったです。それは、主人公があまりに残虐すぎるように思われたからです。「悪と戦うヒーロー」という設定であれば、もう少し正義のヒーローらしいふるまいでもいいのではないでしょうか。あるいは、もっと悪役を憎らしい様子に書くとかがあるかなあと思います。または、バトルシーンではなく、妖精時間の別のシーンを持ってきてもよかったかもしれません。
○なぜクー・フーリンなのか
 主人公がクー・フーリンである理由を前半に伏線として置いておけば、さらによくなるのではないかと思いました。たとえば、彼の部屋の本棚にそういった類の本を置いておく、などです。両親との思い出の中に求めてもいいかもしれません。そうすれば、ネタばらしの時にさらに得心がいくのではないかと思います。すでに書いてあるのに見落としていたらすみません。
○主人公と姉の絆
 あくまで、そうだったらなおよかった程度のことなのですが、主人公と姉の固い絆を描くシーンがあってもよかったかもしれません。そうすれば、ラストの主人公の嘆きにもっと説得力が出たかなとも思います。主人公が姉を非常に大切に思っている理由が、もうひと押しあってもいいのかなと思いました。ただ、両親が亡くなっているという背景事情によって、すでに説明はなされていると思いますので、蛇足になるかもしれませんが……。

 楽しませていただきました。これからも頑張ってください。
 

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2016年04月28日(木)22時23分 東湖20点
こんばんは。

とても、面白かったです。
個人的な時間の都合で、内容についてじっくり指摘させていただく時間がないのですが、よくできておられるし最後まで一気に拝見させていただきました。

ラストも、私はいい終わり方だったと思います。

全体的な細部についてのリアリティに関しては、残念ながら他の方がおっしゃっておられるように、詰めきれてない部分があるように感じる箇所もありました。

ものの、それは些細な箇所ばかりだと思いました。

面白かったので、ご挨拶代わり程度の内容のない感想で申し訳ありませんが、なにかの足しになればとほんの少しですが、点数をおいていかせていただきます。

今後の、ご活躍をお祈り申し上げます。
 

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2016年04月28日(木)22時55分 つとむュー
GW企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

初読の時は、内容がわかりにくくて、
頑張って読んでいたら、ラストで「おっ!?」となって、
再読した時は、こういうことだったのか?と
楽しみながら読むことができました。

個人的な印象としては、二度目には違った意味で読めるような構成にしたら、
初読が読みづらい作品になってしまったという感じです。
でも、こういう構成は大好きなので、多くの方からの意見を集約して改稿すれば、
より面白い作品になるのではないかと思いました。


>「ありがとうな、リオ。ありがとうな、リオ。ありがありがりが」

ラストは、こういう終わり方もあるんだな、と勉強になりました。
なかなか余韻のあるラストだったと思います。


>「……君がいうところの、麻薬成分を生成する植物、ケルピー。それはつまり、姉さんが採ってきたタンポポ…………なんだな?」
>「くっ…………さっきの水…………か」

スイッチとなるものがすべて飲食物だったので、
急に幻覚に惑わされたり、急に素面になったりするところが納得いきませんでした。
でも、タンポポなどは、序盤からちゃんと伏線が張られていたので、
とても良かったと思います。


>犯人を捜すためにわざわざ警察に手を回して犬を用意してもらったら潰サレ。

警察に連絡したら、違法植物の栽培で捕まるのでは?
というか、不法侵入しやすいところで、そんな危ない植物を栽培することはないのでは?


>生活保護をうけてなんとかやりくりしているものの、それでも辛い状況だったりする。

お姉さんが働いていたら、生活保護は受けられないような気もします。
(あまり詳しくはないので、間違っているかもしれませんが)


枚数は、ルールが50枚までのところ67枚でした。
これは、ルールをあまり強く意識されていなかったためか、
もしくは立てられたプロットが50枚以内に収まるものではなかったのか、
どちらかだと個人的には思います。
真相がどちらかなのかは判断できませんので、大変申し訳ありませんが、
今回は点数無しでご了承いただけましたら幸いです。

いろいろと書いてしまいましたが、構成が自分好みで興味深い作品でした。
拙い感想で申し訳ありません。
今後のご活躍を期待しています。
 

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pass
2016年04月26日(火)00時24分 いりえミト20点
 『妖精を月の、時間に英雄が醜い内なる時間に呼び覚ます』拝読しました。


 非常によくできた作品だと思いました。

 文章は、本作の怪しげな雰囲気に合っている文体ですし、戦闘シーンも迫力がありました。その上、とても読みやすく、分かりやすく、この枚数を感じさせないほどにスラスラ読み進めることができました。 
 
 ストーリーもよく練られていて、後半に明かされる内容は衝撃的ですし、伏線も巧みに引かれています。まさか姉さんのタンポポが、あんな展開につながるとは!
 メイヴが示談などと言い出した時には、先の展開が読めなくなりましたし、その後も二転三転する物語展開には引き込まれるものがありました。
 「神話キャラ」という今企画のテーマから、このような方向のアイデアを出すことができる発想力も凄いと思います。
 
 ただ、この終わり方はあまりにも救いがないのではとも感じました。
 私はホラーが好きなこともあり、本作の内容やラストも、決して低く評価するわけではありません。ホラー作品としてみれば、いい終わり方だとも思います。
 ただ、序盤の「妖精と一緒に戦う」という内容は王道ラノベ的なので、中盤まではラノベ的な展開を期待していこともあり、ラストはちょっと後味の悪さを感じてしまったことも確かでした。期待を悪い意味で裏切られたというか。

 ごめんなさい、実は私自身の作品もアレな内容なので、思いっきりブーメランなことを言ってしまっているかもしれませんが、読者として感じたままに書かせていただきました。


 短いですが、以上です。
 執筆おつかれさまでした。

 

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2016年04月24日(日)09時05分 99kg30点
状況が分かりにくい。
リオとの出会い……、も語られるようで結局何も語られてないし。そもそもなぜ戦いに身を投じたのかが分からない。
ブラックドッグらが、姉を狙っている、というのも何を根拠にそういう話になっているのかが見えない。
姉は一度襲われたのか? でも姉にそんな素振りはないし。
とかなり置いてけぼり。
リオ、メイヴとどちらが正しいのか分からずピンボール状態に翻弄されます。
タイトルが意味不明。

途中で、「ああ、そういう話なのね」と訳は分かるのですが、ここまででは単にヘタなだけのようにしか見えず。
この投稿数でなければ、前半で読むのを止めていたと思います。

全体的には悪い話では無かったですね。
「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせました。
こういう話は好きです。
結局メイヴの正体が明らかにされない事で物語をより謎めいたものにしているという所でしょうか。

麻薬組織の一員(または商売相手)には違いないのでしょうけれど、その実態は人間ではないように思います。
連れているのは薬物で操っている人間でしょうか。本物も混ざっている感じですけど。

細かい事を言うのなら姉も同じように幻覚を見ていたはずですが、二人とも妙に普段は普通にしています。
スイッチのオンオフがハッキリしている症状のようですね。何か条件があるのでしょうか。夜のみとか?

高価な苗を空き地に植えるのは無防備ですが、これは灯台下暗しを狙っての事でしょうね。
それにしては警察を使っている、と言うし。それが本当なら警察も金で懐柔されているはず。
姉の死体からも薬物反応が出るはずなので、おそらくそうでしょう。

裏には作り込まれた設定があるだろうと思える作品でした。
狙ってやったのであれば結構な冒険だったと思います。

 

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2016年04月23日(土)23時33分 たぬき nY39lNOBNk20点
主人公にしか見えない妖精が見えているというだけで主人公を疑ってしまうひねくれもののたぬきですが、おもしろかったです。バンシーが肉弾戦というのもなんだかはじめて見る気がします。新鮮というか、変というか。
麻薬オチでしたしバッドエンド風ですが、個人的には結構よかったと思います。
ただ、フラッシュバックでダメになったというのではなく、姉が(もしくは主人公やリオが)野草をまだ隠し持っていた、とか、そういった方向で自ら狂ってしまってダメになるという方が結末からすると好みかもしれません。
違和感に気付くのも中盤からじわじわと、自分で疑っていった方が恐怖感が増します。もしくは姉と徐々に言葉がかみ合わなくなっていくとか。ネタばらしまで正常に進んでいるように感じましたのでそこがちょっと突飛だったようにも感じました。
 

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2016年04月23日(土)16時30分 志田 新平 2XEqsKa.CM30点
作品拝読いたしました。

面白かったです。オチが良く決まっていたと思いました。
掲示板にあったように冒頭とタイトルで損をしている感じがしました。リオも妖精として、もいい味を出していました。

少し気になった点はメイブは実在するのか? というところです。メイブは実在する人間なのかが少しわからなかったです。タンポポを栽培しているということは実在するのか、と思いましたがリオを見れるということは彼女自信も…?

何はともあれ面白かったです。
それでは執筆お疲れ様でした。
 

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2016年04月23日(土)13時50分 w-20点
まず申し訳ないんですが、タイトルが日本語として意味不明で、読み終わってみてもやっぱり意味が分かりませんでした。
ラストが、なんかよく分からないなんだかな感じなので、それを反映したのかなとも思いましたが、そうだとしてもわざわざタイトルをこうも意味不明にすることが意味不明。
ラ研の読者で、このタイトルを良いと思う人、このタイトルの意味が分かってこのタイトルでなければならん、と思う人っているのでしょうか。
mayaさんあたりだったら分かるのかな?
分かっていてやったことなのかもしれませんが、タイトルで損をしているのは事実だと思います。

冒頭シーン。
戦闘シーンから入るのは悪くないのですが、相手があまりにも弱すぎて、戦闘というよりは虐殺でした。暴力シーンがあります、という注意書きがありますし、別に虐殺シーンを出して悪いというわけではありません。
ですが、主人公が弱者を虐殺して中二的に悦に入っている、というのはあまり共感できるものではありませんでした。
姉さんに手を出そうとした、と書いてありますが、この時点ではその姉さんは出てきておらず、姉さんを守るために戦ったという感じがしません。むしろ、姉さんを口実にして弱い者いじめをしているだけに感じました。
また、文章が、あまり上手いと感じませんでした。内容が同じであっても、もっと優れた文章で書いてあれば、読者を共感させて引き込むこともできた冒頭だと思うのですが。
ということで。
タイトル、冒頭の時点で、この作品は期待できないな、とある程度見切りをつけてしまいました。
以下、流し読み的な感じになってしまいました。


しかし。
ここから。
まさかの追い上げ。
中盤は良かったです。
文章は相変わらずそんなに良いとは思えなかったのですが、姉さんも出てきて、主人公が姉さんを大切に思っていることもちゃんと描けていましたし。
山菜の伏線の使い方も良かったです。最初に散々出てきた山菜が、敵と出会うことになる伏線になっていたとは。そしてそこで終わらず、その山菜から幻覚、というふうに持っていたのも上手かったです。
また、出てきた敵も、単純に倒すだけの敵ではなく、ひとすじなわでは行かないところが描けていて良かったです。
そうなってくると、中二全開なバトルも上手くハマり出した感じがします。主人公が、状況によって僕と俺を使い分けているのもいい感じでした。


しかし。
ラストがガッカリ。
よく分からなかった。
これラ研の読者で何人分かる人がいるのでしょうか。
私も、流し読みだったこともありますが、ちゃんと精読してもこりゃ多分何一つ分からないと思います。
どう解釈するか、という作品でもなさそうですし。
全部主人公の妄想だったのか。だったらいわゆる夢オチってことになりそうですが。んーでもそうでもないようにも感じますし。
でももしそうだったら、姉さんとか敵とかどうなったのかが分からない。それだと投げっぱなしってことになりますし。
いずれにせよ、ハッピーエンドではないとは思います。いや別に絶対ハッピーエンドでないと駄目だと言うつもりもないのですが。中盤でわりとまともでいい感じの展開をやっておきながらバッドエンドであることに読者が納得して満足できるかどうか、だと思うのです。どうも納得も満足もできない。
タイトルと冒頭は駄目だったけど、中盤がとても良かった。その中盤をうけて、どう終わるのか、と楽しみにしていたところに、どこに着地したのかすら分からないエンドでは、どうなのかなあ、と。
これで、冒頭から全編高い文章力で書いてある作品だったら、自分の読解力不足なんだろうな、と思うところなのですが、この文章力では、何が書きたかったのか分からないけど文章力不足のせいで書ききれなかったのだろう、というふうに思いました。
あ、作者レスでどういうことなのかを説明してほしいわけではありません。別にそんなこと知りたくもありませんし、説明するくらいなら本文の中で(全部とは言わないけどある程度でも)分かるように書いてほしいです。
感想は以上となります。執筆おつかれさまでした。

 

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2016年04月23日(土)12時49分 シュバルツシルト-20点
狂気の話である事は拙さとは関係の無い話。
狂気をテーマにしても拙いものであるという事実は変わらない。
アルジャーノンのように、これはより丁寧な作り込みが揃って成立すると考える。

 

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2016年04月27日(水)22時25分 たてばん L2TtHY/jcg20点
 執筆お疲れ様です。
 拝読しましたので、思ったことや気になったことを残します。

 《文章》
 文章はとても読みやすかったです。
 
 > 串を通した魚のようにされた黒い妖犬は、そのままアスファルトへと倒れこむ。
 >犬はすぐさま、生まれたての子馬のように立ち上がろうとしたものの叶わず。そのまま路上に伏せ、荒い息を上げる。ひと気のない夜の耕作地に、その息遣いはやけに大きく響く。
 道路で闘っていたのか、それとも耕作地で闘っていたのかどっちでしょうか?
 アスファルトがあると耕作地では無いと思います。

 > 黒い女の人だった。
 > 黒のスーツに身を包み、マスクをしていて顔はわからない。背の高い、黒髪長髪の女だ。こっちは、どこか空ろで血走った目をしていた。
 のように、同じ内容の文章が続くのがたまに見受けられました。余分だと思うところを意識して推敲すれば、自然と引き締まる文章になると思います。

 > カーテンのかかった窓の外はうっすらと明るくなってきていて、夜が明けたことを示していた。
 (中略)
 > 窓の外、空はまだ、夜の色に染まったままだった。
 時間が戻ってます。

 > 駐車場の隅の縁石に腰掛ける僕は、温かな春の日差しに目を細めた。
 > 「これ、バレたら怒られるんだろうなぁ、姉さんに……」
 (中略)
 > 帽子を目深にかぶりコートを着込んで一応変装もしている。ゲイボルグはどうしても目 >立ってしまうから、家に置いて来た。
 >ふと空を見上げれば、春の暖かな日差しがまぶしい。
 これも内容が被ってますね。ちなみに、ここで太一が姉さんを監視しているとありましたが、数行後には見守ると違う言い回しになってました。

 >「頭を上げてください、アスカさん。今後注意していただければワタシはそれでかまいませんカラ」
 >「タイチさん、明日香さんのことは残念デシタ。けれど、ワタシもベストは尽くしマシタヨ。だから今回のことは、不運な事故だったと思ってクダサイ」
 メイヴの明日香の呼び方ですが、カタカナと漢字があったので心の変化が無いなら統一したほうが良いと思います。

 《設定》
 気になる点が何個かあります。

 まず、冒頭の犬のシーン。これはメイヴが借りた警察犬が一匹でうろついているところを刺殺したのでしょうか?
 一般人が空き地と勘違いして入れるような柵もなにもなさそうな場所に、警察犬だけを配置しておくのはあり得ないと思うのですが、どうでしょうか? 野良犬でもありませんし。
 ここで犬使いも一緒にいて、犬が殺されて犬使いは逃げて行った、との描写があれば納得できました。

 さらに、なぜ太一はこの犬が姉を狙っていると思ったのですか?
 姉の仕事場の近くにタンポポが取れる空き地があるとの描写があったので、おそらく家からはそこそこ離れていると思うのですが、そこまで徘徊して犬に難癖をつけたということですか?

 廊下での姉との戦闘ですが、胃液を吐くほどの攻撃を姉がしてきたとこを見ると、姉も同じような幻覚を見ていたんですね。
 ここらへんの設定の使い方は上手いと思いました。

 メイヴは警察に犬を用意してもらったとありますが、モルヒネを作ってる人間が警察をわざわざ頼りますかね。
 闇側の人間のようなので、ここは知人に良い犬を借りたではダメだったのでしょうか?

 >ヴァルキリーにはフレイヤと呼ばれてイマスガ。
 ヴァルキリーとは誰ですか?

 《構成》
 わかりやすい構成で、無駄がなくて良いと思いました。

 《総評》
 タイトルを読んだ時に、これは異能バトル物だな、と思ったのですが、良い意味で裏切られました。
 これは内容に関係ないですが、『妖精を月の、時間に英雄が醜い内なる時間に呼び覚ます』だと日本語的に意味不明なので、『妖精が月の時間に、英雄の醜い内なる時間を呼び覚ます』に変えた方が良いと思いました。
 あえてあの題名だったらすみません。

 場所が変わったり時間の移り変わり、状況の辻褄など設定の煮詰めの甘さが目立ちました。
 場所や時間は推敲をしっかりして、辻褄合わせはプロットを見直し、あり得ないとこは無いか探せばすぐ直せると思います。

 叙述トリックが好きな自分的には、こういう内容の話は大好きなので、そのぶん内容に納得できないところがあり残念でした。
 個人的にこの内容なら遺伝子組み換えに頼らないで、もっと上手くリアルな物を持ってきて欲しかったです。
 ただ、性格が変わったり狂気染みている描写は上手く描けていたと思います。

 未熟者の身でいろいろと口出ししてすみません。
 企画参加お疲れ様でした。では、失礼します。
 

nice249
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2016年04月19日(火)21時22分 たかセカンド30点
こんばんは。
「 妖精を月の、時間に英雄が醜い内なる時間に呼び覚ます」を読ませていただきました。

最初は、よくある異能力バトル物と思っていました。

迫力ある描写に、テンポの良いバトル。主人公と姉の関係や生い立ち。
良質なバトル物だと思い、楽しく読み進めることができました。

しかし、終盤のどんでん返し……まさかあのようなとんでもない結末が待っていようとは……。

最後のリオとの会話は、背筋に冷たいものが走りました。
もともとダークな世界観が表現されていたのですが、さらにもう一段、ドス黒い雰囲気を表現されていました。

正直なところ、何か違和感があれば、恐れながら意見をさせていただこうと思ったのですが、全く浮かんできませんでした。
非常に質が高い作品だと思います。

もう少し、リオの天真爛漫さを強くした方が良かったような……。
そうすれば、ラストにその天真爛漫さが不気味になるかな? と思いました。

すいません。この意見はいちゃもんみたいなものですので、流してください。
それほどまでに完成された作品かと思います。

少し妙なタイトル(すいません)もラストを見た後には、妙に不気味に感じられます。

いろいろと失礼なことを書いてしまったかもしれません。申し訳ありません。

以上となります。

このたびは有難うございました。

 

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2016年04月21日(木)20時10分 七月鉄管ビール xn8ZkIqS3k30点
 面白かったです!

 失礼ながら、最初は中二地雷のほのかな香りが。
 と、思ったら大間違いでした。

 謎の提示が巧みで、まあ引っ張られました。
 なぜお姉さんが狙われているのか。
 太一の案内役であるリオもよくわかっておらず、悪い妖精が狙っているの一点ばり。
 ちょっと怪しくないか。
 でも悪そうな怪物犬が敵だったし。
 このあと新たな謎を小出しにされ、徐々に真相に近づいていく。
 面白かったあ!

 ほめてばかりは良くないのでひねり出します。
 序盤のこういう感じのところです。

『言って、蹴った。
 蹴る、蹴る、踏みつける。踏みにじる。
 つま先で、かかとで、足全体で、すねで。
 軽快に、鈍重に、小刻みに、全体重で。』

 言葉を重ねて強調しておられますが、少しくどく感じます。
 リズムも良くないように思えます。
 このテーストは、延々とかネチネチといった意味なら間違いとは思いませんが、前後の文から判断すると調子に乗っている感じの方が良いと思います。
 勢いをつけた方が。
 語尾や語順を変えたり、省く所は省くだけで印象が随分違うと考えますがどうでしょうか。
 偉そうなことを書きましたが、「お前ごときが言うな!」と非難されるのは覚悟なことを汲んでやってください。意図を読み違えている場合は御寛恕のほどを。

 かなり面白かったです。
 ホント、引っ張りまわされました。終盤なんか、頭グルグルです。
 ネタバレになるから、これ以上語れないのが残念です。
 執筆おつかれさまでした!
 

nice243
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2016年04月22日(金)21時45分 兵藤晴佳30点
一見、中2的作品のようですが、こう来ますか。やられました。

お姉さんの生きる日常にリアリティがあります。この平凡さが、オチを際立たせます。
その中に蘇る、ケルト神話の世界。
レッド・ツェッペリンの曲が似合いますね。

妖精の女王様。理由はどうあれ、悪党です。
レッド・ツェッペリンの歌詞でいえば、「花を摘み取り、背を向けて去っていく生命の女王」、そんなところです。

リオ。
男の歪んだ願望そのものの、かわいらしい妖精です。
その点で、上手い人物配置です。

バンシーには、泣きながら鎧かなんかを洗ってほしかった。
あしべゆうほ『クリスタル・ドラゴン』に出てくるアレです。
バンシー・ヴォイスはどっちかっていうとD&Dの設定じゃなかったかな?

ブラックドッグには、「振り向いて見るたびに大きくなる追跡者」の側面も欲しかったですね。まっすぐにしか走れないというマヌケな弱点もありましたっけ。

何にせよ、楽しませていただきました。
 

nice234
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合計 14人 250点

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