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青春なんちゃらきっぷの旅
 “家に帰ったら、羊羹があったらいいな”ではなく、“部室以外でもヅカ先輩を見れたらいいな”が俺の想いだ。
 だいたい“家に羊羹があったらいいな”って何だよ。俺、羊羹なんて好きじゃねぇし。
 俺の所属する魔法部では一番最初に、うちの部で言うところの魔法を説明するのに、この“家に帰ったら羊羹があったらいいな”を使う。
 先輩たちはこうやって説明する。
「君はこういう経験は無いかい? 子供の頃に羊羹が食べたいなぁと思って家に帰ると、今日のおやつは羊羹よ。なんて出てくる」
 それが、この部でいうところの「魔法」だと。
 意味わからん。意味分からんが、ヅカ先輩がこれを説明している時に俺はうっとりとその姿に見とれていた。そして心地よい高過ぎない声に聞き入っていた。たとえ内容が“魔法”という、うさんくさそうなものであってもだ。
 この部は部活内でこそ「魔法部」ということになっているが先生や学校への手前、表向きはオカルト研究会という事になっている。
 オカルト研究会なら先生も学校も許してくれるのか、そして暖かく見守ってくれるのか、俺は謎に思ったがオカルト研究会を掲げながら、この魔法部はもう三十年以上続いているという結構な伝統的な部らしい。
 最初にオカルト研究会だと思って入部を希望してきた者たちが、この最初の「魔法」の説明を受けて三分の一ぐらいの者が去っていく。
 つまり三分の二も「魔法」なんて言葉を聞いても辞めないのだ。元々、オカルトに興味がある者は「魔法」にも興味があるのだろうか?
 俺は最初から部活説明会で発表していたヅカ先輩目当てだったので、オカルトが魔法になろうと大して問題は無かった。

 わが部は入部すると、副部長にあだ名をつけられる。部長は部の代表だし、色々とやる事があるが副部長はそれほどでも無い、ならばこの部ならではの役割を作ろうと創立当初から始まった決まりごとらしい。
 そんな今の副部長のあだ名は「女学生」だ。いつも長い髪をおさげのみつあみにしているかららしい。けれど副部長になってからは「女学生」ではなく「副部長」と呼ばれるようになった。
 少しだけ「女学生」より「副部長」の方が言いやすいからだと思う。
 俺の場合、ショタだったがそれがヅカ先輩の場合は「ヅカ」だったのだ。
 由来は、歌劇団の女優さんのようだからだ。
 これだけ聞くと、男役のイメージを持つかもしれないがヅカ先輩は、姫役の方のイメージなのだ。
 まるで生きた一昔前の少女マンガのように華やかで、まつげバチバチで目がキラキラと大きいのだ。目の中に星が煌いているように。
 髪は縦ロールでは無いが黒くて艶やかな長い髪が派手な少女マンガ顔にとても似合っている。
 そんな見た目も可愛いのだが、俺がヅカ先輩にヤラれた理由は「喋り方」と「優しさ」だ。どこの方言か分からないが、ゆったりと可愛らしい喋り方をするのだ。それがたまらない。
 入学式翌日の部活説明会で、壇上で話すヅカ先輩を見て俺は何をする部かなんて事はどうでも良くて「この人のいる部に入りたい」そう決めた。
 ちなみに俺のあだ名の「ショタ」は金田正太郎という名前からきている。
 俺が自己紹介した途端、副部長がピクンと反応して即
「君はショタね」
 と名づけられた。最速名づけ記録だったらしい。
 何故ショタなのか分からなかったので後からネットで調べてみると、昔のアニメの主人公が半ズボンの似合う少年の代表例として、少年を好む女性の間で名を挙げられたらしい。
 そしてその少年の名が俺と同じ金田正太郎なのだ。正太郎コンプレックス、それでショタコン。ショタに『コン』がつくと、そういう趣向の女性を指すことになるが、コンを省けばそういう趣向の女性に好かれる少年『ショタ』になるらしい。
『ロリコン』は俺も分かるが、まぁそれの女性版みたいなものらしい。
 副部長が即反応したということは、副部長はそういう趣向の持ち主なのだろうか。
 残念ながら(?)俺の外見は可愛らしい少年どころか、天パ以外大した特徴も無い普通の高校生だ。もう少年というより青年だと思う。


 三年生の先輩方が部を引退して、この部は五人になった。それを特にヅカ先輩は寂しがり、少し最近元気が無いように見える。
 俺はそんなヅカ先輩を元気にしたかった。
「文化祭も終わって、もうあまり部としての活動って無いですよね」
「うーん、まぁ細々としたものはあるけれど、大きな行事は一段落したね」
「何かやりましょうよ」
「どうした、ショタ」
「そんなに羊羹が食べたいのか?」
「何で、うちの部で何かやると言ったら羊羹なんですか」
 部室には、俺とヅカ先輩とラボ先輩と副部長、それに幼馴染の美子こと日ペンと五人全員がいる。
 俺はこの魔法部が特に好きというわけでは無いが、ヅカ先輩と一緒に過ごし何かをするという事を少しでも多くした。
 そしてヅカ先輩に笑ってほしい。


「私、雪見たことないさ。こっち来たら冬には見れるもんだと思ったら、昨年も降らなかったね。だから雪、見て見たいね」
「え? ヅカ先輩、雪見たこと無いんですか?」
「沖縄は雪降らないよ。私、中学まで沖縄だったさ」
「あれ? ショタは知らなかった?」
「はい……」
 そっか、ヅカ先輩のこの独特のゆったりした可愛らしい喋り方は沖縄の方言だったのか。
「まぁヅカの方言ってイントネーションぐらいだよね、沖縄弁になってるの。言葉は案外普通だもんね」
「私は、そんなになまりあると思って無かったさ。向こうでも私は標準語だねと言われてたよ」
「いやいや、標準語では無いっしょ」
 副部長がツッコミを入れたが、皆、うんうん、うなずいていた。
 そっか、ヅカ先輩の方言はイントネーションだけの中途半端なものなのか。けれど可愛いからいい。

「じゃあ、魔法で雪を降らせましょうよ」
 俺は良い提案をしたと思ったのに二年生の先輩たちは皆、渋い顔をしている。
「チラチラと積もらない程度に雪を降らすのだったらええけど、積もらす雪を降らすのはかんな」
「何故ですか? ラボ先輩」
 ラボ先輩は他の人たちより少し方言が入っている。『降らすのはかんな』とは降らすのは出来ないな、ダメだなという意味だ。
 なんだ、結局大した事出来ないんじゃないか。羊羹魔法め。
「でも雪っていいよね」
「……降らすこと出来ないんでしょう?」
 俺はせっかくの提案を反故にされた事にふて腐れつつ言った。
 どうせ何かやるならヅカ先輩が喜ぶことをしたいのに。
「ほらほら拗ねない」
 日ペンに頭をなでなでされながら、からかわれる。日ペンは同じ歳だけどいつも俺を子ども扱いする。
「降らすのは、かんけど降っとるとこに行くのは?」
「それいい!」
 ラボ先輩の提案に、副部長が即乗った。
 雪が降ってるところか、いいなぁ。やっぱり雪と言ったら北海道? ヅカ先輩と北海道旅行なんて、かなりいいかもしれない。
 俺は脳内で、ヅカ先輩と札幌の時計台の前で雪をかけっこしている映像や函館の夜景を見ている映像を流して、ウットリとしていた。
「うん、いいですね! 行きましょうよ北海道」
「北海道? 北海道はちょっと遠いな、部費もそんなに無いし」
 えーっ、俺の提案またボツですか。
「日帰りで行けるところがいいよね。しかも電車で」
「電車ですか?」
「うん、この時期にはJRさんから青春なんちゃら切符というお得な乗車券が出るのよ。それを使えば日帰りならこの部のメンバー全員で一万二千円ほどで行けるわ」
「あ、なんか聞いた事ある。普通列車一日乗り放題とかいうやつですよね」
「そうそう、快速や特別快速なんかも乗れるのよ」


 今日はヅカ先輩と副部長、それに日ペンとで雪見旅行のための切符を買いに行っている。最初は部長であるヅカ先輩が一人で行くと言ったのだが、もちろん(?)俺がお供をしたがったし、ヅカ先輩のおっちょこちょいなところを心配して副部長や日ペンもついて行きたがった事から、何故か女子部員三人で出かける事になった。
 俺一人でもヅカ先輩をフォロー出来るのに、と拗ねていたら
「お土産買ってくるさ」
 なんて、ほわわんとした感じでヅカ先輩に言われたら素直に「はい」と返事をしてしまっていた。
 というわけで、部室には俺とラボ先輩の二人きりだ。
 いい香りがしてくる。ラボ先輩がコーヒーを入れてくれているようだ。

「ショタは、この部にとって大切なものは何か、それをどう考とる?」
 ラボ先輩が尋ねた。ラボ先輩はこの部の俺以外のもう一人の男子だ。普段は女性陣の影に隠れてたまにしか発言しないが、こうやってたまに発言するとその言葉には重みがある。
「この部にとって大切なもの……魔法を実現させるための『想い』でしょうか?」
「まぁ、想いも大切やな。けれど、それはあくまでも魔法を実現させるためのもんやんか。この部がオカルト研究会を盾としながら何十年も、あんばようやってこれたのは『魔法』自体が大切やからや無く、この部に集った『仲間』が大切やったからや」
「仲間……」
「僕もね、よくかまってくれたOBの先輩から教えてもらったことやけどな」
 そう言うと淹れたてのコーヒーを俺と自分の前にラボ先輩は置いた。そういえば、この部は、他の部よりもOBの先輩が部に訪れる率が高い気がする。

 ラボ先輩はコーヒーを入れる時に、フラスコのようなものや試験管のようなものを使って入れてくれる。その道具は、ラボ先輩のお姉さんがやっている喫茶店で使っているものらしいのだが、そういう化学的な道具でコーヒーを入れてくれるそのお店がラボというらしい。そして先輩のあだ名もそこからついた。
 ラボというより化学の方がしっくりいくんじゃないですか? と副部長に質問したところ、化学というあだ名はすでに別の先輩についていたのでラボになったらしい。
 その話を聞いても俺としては『ラボ』というあだ名に納得しなかった。
 ラボより名古屋弁の方が合いそうだ、まぁこの部のあだ名なんて、その時の副部長の趣味趣向で決められるようなものだから考えても仕方が無い。

「この部は『魔法』部だ。ほんだからと言って、魔法が主では無いこともう半年以上おってわかっとるやろ?」
「ええ、まぁ」
「この部は、この部に集ったツレらで楽しむこと、それが一番大切で魔法は、その手段であり楽しみの一つや」
 何故、今ラボ先輩は俺にそういう事を語るのだろう。
「男同士で二人っきりになることってあんまないやろ。だで僕が先輩から引継ぎ教えてもらった事をこういう時にショタに伝えておこうと思ったんや」
 俺の心の中を見透かしたように、ラボ先輩は語った。
「ツレらで楽しむ……仲間たちで楽しむって事ですよね、まさに今回の旅行はそれに当たるんじゃないっすかね?」
「ほうだな」
 まぁ俺の最初の発想は、“ヅカ先輩に喜んでほしい”この気持ちだったけどね。

 ヅカ先輩たちが切符を買ってきた翌日は行き先を決める会議となった。
 俺たちの住んでいるのは愛知県常滑市。そこから冬休み期間中に雪が降っているだろう県に日帰りで行くとしたら、どこの県のどの辺りが適当か、それを話し合っている。
「長野か岐阜、行ってもせいぜい富山や福井じゃない?」
 その辺りなら日帰りで行けるのか。
「岐阜は近過ぎじゃないですか? しかも雪のイメージあんまり無いですよ」
「ショタの想像している岐阜は市内の平野部でしょ? 岐阜には高山があるわ、あそこならバリバリ雪が降ってるはずよ」
「高山とか郡上とか雪のイメージですよね。後、長野も雪のイメージありますよね」
 日ペンは俺よりもそういう事、詳しそうだなぁ。
「長野も近そうなイメージありますよ。雪は降ってそうな気もしますが」
「なんだショタ、そんなに遠くに行きたいのか?」
「だってせっかく一日どこまでも乗り放題の乗車券使うんでしょう? だったら出来るだけ遠くに行きたいじゃないですか」
「長野って、地理的には隣県だし近いような気がするけれど雪が積もっていそうな中北部に行こうと思うと列車ではかなり時間かかるみたいなのよ」
「そうなんですか?」
 さすが副部長は、そういう事も前もって調べているみたいだ。
「そうなのよ、愛知県と長野県って隣同士だから横からツイーと行けるような気がするでしょう? けれどダメなの。一旦、豊橋まで下がってそこから飯田線で上って行くか、名古屋から岐阜を通っていかないといけないみたいなのよ」
 うーむ、俺は地理はあまり得意な方じゃないから具体的には頭の中に地図を思い浮かべれない。けれど豊橋ぐらいは何とか分かるぞ、ここより南だよな。
 というか俺、気が付いちゃった……。
「あの、青春なんちゃら切符ってJRさんの乗り放題なんですよね? この辺り、JR通って無いじゃないですか! どこに行くにしても名古屋辺りまで出ないといけないんじゃないですか?」
 ここ常滑は、空港が出来て昔よりは栄えたのかもしれないが名鉄しか通ってない。
「そうなのよ。昨日、切符を買いに行ったでしょう? この切符ってJRのみどりの窓口に行けば買えるらしんだけど、この辺りは無いじゃない。だから旅行代理店の店頭に行って買ってきたのよ」
 そうだったのか。そんな事何も考えてなかった。やっぱり俺じゃダメだったな、さすが副部長。
「候補地の駅をこれで検索しながら考えてみませんか?」
 日ペンがスマホを出した。覗き込んでみると電車の時刻表案内だった。
 副部長といい、日ペンといい、この部は女子の方が頼りになるな。
「じゃあまず、最初に出た高山辺りを調べてみるさ」
「出発時間は何時ごろにします?」
「うーん、常滑を八時に出る感じぐらいが良いんじゃない?」
「えっと、名古屋でJRに乗り換えるとしてこれかな……高山に十五時二十五分着ですって。結構かかるんですね」
「その時間に着くと、高山ではどれぐらい遊べるのかなぁ?」
「うーんと帰りを検索してみますね……常滑に二十三時台までに帰ってこようと思ったら高山を十八時台には出ないといけないですね」
 十五時台に着いて、十八時台には帰るという事は三時間ぐらいの滞在か。雪で遊ぶだけならそれぐらいでもいいのかな? でも少し短いような。
 周りを見てみると先輩たちも悩んでいるようだった。
「じゃあ長野も調べてみるさ」
「長野の何処の駅を目的地にしますか?」
 皆が副部長を見つめている。もう地理的な事は皆、副部長にゆだねてる感じだな。俺もだけど。
「わ、私が決めるの? そうねぇ……長野県なんだから“長野駅”でいいんじゃないかしら。松本駅の方が近いけれど雪がいっぱい降ってそうな事を考えると長野の方が可能性高そうな気がするわ」
「長野駅ですね……こっちも高山と同じぐらいで十五時台着です。ちなみに途中の松本駅でも十四時台です」
「どうします?」
 皆、一様に考え込む顔になる。
「多数決にしない? 高山か、長野か、その他か」
「賛成!」
 皆、手を挙げる。
「じゃあまず高山から」
 あ……。
「全員一致で高山のようね」
「高山って一度行ってみたいと思っていたし」
「長野もいいけれど、同じぐらいの時間かかるんだったら高山かなと」


 というわけで魔法部の冬休み旅行は高山に決まる。
 あの時に日ペンがスマホで調べた時間と同じように常滑を八時台出発になった。
「じゃあまず、名古屋を目指すわよ。そしてそこからが本番」
 部長のヅカ先輩じゃなく、しっかり者の副部長が仕切っている。副部長は休みの日でもおさげみつあみのようだ。ヅカ先輩はふわふわモコモコの女の子らしい上着を着ていて可愛らしさがいつも以上だ。
 学校は休みになったものの、社会人は仕事のようで八時台は通勤ラッシュで満員だった。東京のラッシュはもっと凄いんだろうけれど俺たちにとっては、このラッシュでも大変だ。
 いつも学校に行く時はこんなにも混まない。さすがに名古屋に向かうとなるとそれなりだったようだ。
「ふぅーっ、疲れたね」
 やっと名古屋に着いたと皆、本格的な旅が始まっていないのにくたびれている。
「さて、こっから途中の乗換駅である多治見を目指すためにJRの太多線のホームまで行くわよ」
 副部長を先頭に、俺たちはぞろぞろと名古屋の地下街を歩いた。俺たちが乗ってきた名鉄の改札を出てからJRの乗り場までは結構ある。同じ名古屋駅だが新名古屋駅とノーマル(?)名古屋駅とではすんなり乗り換えとはいかないのだ。

 名古屋駅で太多線に乗りかえて始めの頃は名古屋ほどでは無いにしても都会感のある風景だったのが進んでいくにつれ、どんどん木々が増えていく。

 途中の美濃太田というところで乗り換えてからは、いつ雪が降ってくるだろうかと皆して窓のを眺めていたけれど、その気配はまったくないまま高山に着いてしまった。
  トンネルを抜けるとそこは雪国だった……という感じに駅の構内から出たらもしかしてと思ったものの雪は降っていない。前に降った跡も見当たらなかった。
 テレビで暖冬だ、暖冬だと言っていたが、まさかまったく雪が降っていないなんて思わなかった。
 せっかく七時間ほどもかけてきたのに。
「どうします?」
 俺の誰ともとわない問いに一同、副部長を見た。
「ラボはどう思う?」
 副部長は、自身の意見を言う前にラボ先輩に意見を求めた。ラボ先輩もどうしていいのか、無言のまま腕組をしている。
「もっと北の方に行ってみるというのはどうですか?」
 副部長もラボ先輩も何も言わないので俺が提案してみた。
「北ってどこよ」
 日ペンの突っ込みが入る。
「わかんないけどさ、もっと北の寒いところ行ったら降ってるかもしれないじゃないか」
「これ以上遠くへは行けないわ。今日中に帰れなくなっちゃう」
 じゃあどうするっていうんだろう。せっかくヅカ先輩に雪を見せてあげたかったのに。ヅカ先輩の喜ぶ顔が見たかったのに……。
「ラボ先輩?」
 ん? 日ペンがラボ先輩の名を呼んだ。見ると、ラボ先輩は空を見上げている。雪が降ってきそうという事なんだろうか?
「降らそう」
「はい?」
 ラボ先輩は今「降らそう」と言った。それって雪を降らすって事だろうか。俺には魔法部に関係の無い人に影響が出るからダメだって言ったのに。
「……そうね、やりましょう」
 えーっ? 副部長まで賛成ですか?
「いいんですか? 他の人たちに影響出るんじゃないんですか?」
 俺は慌てて二人に聞いた。
「今日のここの天気は雪だったはずなのよ。それなのにまだ降っていない。それならば私たちが降らせてもそんなには影響無いと思うわ」
 雪を降らす魔法なんてどうやってやるんだろう? 俺はまだ、テストのヤマが当たれとか、焼きそばパンがゲット出来ますようにとか、その程度の羊羹魔法ぐらいしかやった事が無い。それだって、魔法なんて言ってるけれどただの偶然だろうとも少し思っている。雪なんて降らせられるかなぁ……。
 副部長とヅカ先輩が何やら話をしている。
 まだ降っていなくても、いつ降って来てもおかしくないような曇り空をしているなら、羊羹魔法でも何とかなるかもしれない。
 けれど空を見上げるときれいな冬晴れだ。偶然で何とかなるような空じゃない。俺たちの地元、常滑よりはずっと寒いけれど雪のゆの字も無い空気だ。
「はいショタ、手を繋ごう」
 空や遠くの雲を見つめていた俺に柔らかいヅカ先輩の声が聞こえた。
 ヅカ先輩の右手が俺に差し出される。見ると、ヅカ先輩はすでに左手を副部長と繋ぎ、副部長はヅカ先輩とラボ先輩と繋ぎ、ラボ先輩はもう片方の手で日ペンと繋いでいた。
「はい、私とも繋ぐのよ!」
 日ペンが催促する。俺が日ペンと手を繋ぎ終えると『かごめかごめ』でもするかのような手繋ぎの輪になった。
「これから雪を降らせる魔法を起こそうね」
 副部長ではなく、ヅカ先輩が指揮をとる。
「目を閉じて、雪が降ってほしいと願うさ。雪、生で見てみたいよ。私たちの想いの力で雪を降らせようさ」
 俺も頭の中で『雪が降ってほしい』『雪が降ってほしい』と願った。
 ヅカ先輩の喜ぶ顔が見たい。雪よ降れ、雪よ降れと思いながら雪の中をヅカ先輩と駆け回る妄想が俺の脳内劇場の中で始まった。

 時間にしてどれぐらいだろう? 案外短かった気がする三分ぐらいだろうか。ふと、頬に冷たい感触受けた。気のせいか? と思った直後には耳元でサリッとかシャリという音とともに、やはり冷たい感触がする。
 早く確かめたくて閉じていた目を開けると雪も雪、大粒の雪が大量に降っていた。
「雪だ!」
 皆ももうすでに目を開けて周りを見渡していた。繋いでいた手も離し、それぞれ手を広げて雪を受けている。
「これが雪ね」
「そうです、これが雪です」
 “これが”なんて偉そうな事を言ったが、俺だってこんな凄い雪を間近で見たのは初めてだ。こういうの何って言うんだったっけ、ぼたん雪? 粒が大きくてどんどん積もっていく。
「ようけ降ってきたな」
 地面だけじゃなく、皆の頭や服にも積もっていく。
 俺はそこらじゅうの雪を集めて少し大きめの雪球を作った。そして小さめのも一つ。それを重ねてミニ雪だるまにしてヅカ先輩に見せた。
「わぁ、可愛いね」
 ヅカ先輩が笑ってる。楽しそうだ。ああ、寒いけれど俺の心はぽかぽかだ……。
「みんなー!」
 浸りだしていたところ、副部長が叫んだ。
「何ですか?」
「やばいわよ。天気予報とニュースをチェックしてみたら、ここだけじゃなくて名古屋の方でも雪だって。下手したら、常滑でも降ってるかもしれない」
「それはかんな、はよ帰らな」
「えーっ、まだ着たばかりじゃないですか。しかも雪も降らせたというのにほとんど遊んでないないのに」
「何言ってるの、電車が停まったら帰れなくなるのよ。せめて名古屋までは帰らないと」


 俺たちは、せっかく何時間もかけて高山にきたというのに、そして雪まで魔法で降らせたというのに、滞在時間わずか三十分弱ほどで帰路につくことになった。
「この辺りはさすがに雪に慣れてるから、これぐらいの雪じゃ運休にならないし遅れもほとんどしないのね」
 南下していっているけれど、雪は止むことなく降り続けている。副部長が言った通り、名古屋や常滑でも降っているのかもしれない。
「けれど名古屋辺りは心配ですね」
「そうね。今、化学先輩にメールしたらやっぱり常滑でもチラチラだけど雪が降り出したって。それでね、もし名古屋で電車が停まっちゃったら名古屋駅までなら車で迎えにきてくれるって」
 俺たちはあんなに雪を求めていたのに、「まだ止まない」「電車停まらないかな、大丈夫かな?」とドキドキと心配しながら地元に向かった。
「次の乗り換えの美濃太田で、本来なら行きと同じように太多線に乗り換えて多治見まで行くんだけど、予定を変更してこのまま高山本線で帰りましょう」
 副部長がそう提案する。高山本線? また高山に逆戻りすんだろうか。
 どうやら『高山本線』とはいうものの、その上りは岐阜駅の方に行くらしい。
「ねぇ皆、お金どれぐらい持って来てる? 千五百円ぐらい余分にある?」
「それぐらいなら何とかありますよ」
「美濃太田で高山本線に乗り換えたら、鵜沼というところまで行って、そこから名鉄で帰りましょう」
 副部長の話によると、高山本線で岐阜経由で名古屋に向かうよりも鵜沼まで行って、そこから名鉄の新鵜沼駅まで三分ほど歩いて、中部国際空港行きに乗り換える方が早く帰れるらしいのだ。
 けれど名鉄だとJRの青春なんちゃら切符は使えないから別で切符を買わないといけないことになる。
 それでも全員賛成で、名鉄で帰ることにした。
 新鵜沼駅で乗り換えた中部国際空港行きの電車は座席指定制の特急列車だったが、常滑までもう乗り換えずに帰れる。
 俺たちは、その特急に乗ってやっと一息ついた感じになれた。
「なんか、おおじょうこいた旅やった。でもこっからは、あんきやな」
 おおじょうこいた、とは苦労したという意味だ。確かに電車に乗って雪を見に行っただけなのに変に慌しく疲れた。
「愛知県に帰ってきても雪、止まないね」

 一時間半弱ほどして地元に帰り着いたが、ここでも薄っすらと雪が積もっていた。
 名古屋では毎年、なんだかんだと雪が降っているが俺たちの地元、常滑はあまり雪が降らない。
「これってもしかして俺たちの魔法の影響でしょうか」
「そうかもしれないね」

「家に帰ったら、温かい緑茶と羊羹があったらいいな」
 ぽつりとヅカ先輩が言う。
「じゃあまた魔法起こさないとですね」
 俺はほんわかと微笑むヅカ先輩を見ながら、こっそりヅカ先輩の自宅にお茶と羊羹を届けようかと思った。
林道 忍 

2015年12月25日(金)21時37分 公開
■この作品の著作権は林道 忍さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
「雪と美少女」

九条さん、企画開催ありがとうございます。

某マンガの光画部みたいな部と、光画部がしそうな列車の旅はいいなぁと思い書きました。
鉄道BIG4にも憧れています。
よろしくお願いします。

2016年01月29日(金)00時10分 ピューレラ作者レス
コメントくださった皆さん、ありがとうございました。
短いですが個別に返信させてください。

>青出さん
人数を出したかったので、名前よりもあだ名でしかも何か記号的なものがいいなと思って
名前をつけました。

そうですね、日ペンはもっと私の中でキャラも設定もできていたのですが
それが全然、描ききれていなかったと後から自分でも思いました。

>ラボ先輩の方言が愛知県常滑市のものであることがわかるタイミングが遅く、途中までキャラ設定がヅカ先輩と重なりました。もっと物語の前半部分で地名を出してもいいのかなあと思いました。

そうですね。キャラが多い上に女性キャラに押されがちになるだろうなと
何か特色を出したくて愛知県の方言バリバリにしました。
けれど書いて下さったように、遅いですよね。もっと早くに地名も出せば良かったなと思います。
私はミニ鉄子で、東海地方出身なのでその趣味に走ったのですが
かなり駈足になってしまったかなと思います。

ありがとうございました。



>ウサリアスさん

>途中経過が、ただ報告を聞いているような印象を受けます。

そうだと思います。
書いている時や書きあがった直後は自分で気がついていないのですが
後から読み返して見ると、かなり駈足に書いてしまっているのと
あらすじのようになってしまって、本編をどっしり描けていないと思いました。

もっと時間を置いての推敲をしていきます。

ありがとうございました。



>モンハンほもさん

>作者様の中では確固たる設定があるのかなとは思うのですが、彼・彼女たちの魅力が伝わってきませんでした。

そうなんですよ、私の悪い癖のようで、自分だけが設定を分かっていて
それを描ききれていない
それが酷いので枚数も少なくて終わってしまう。
それを今回痛感しました。

やっぱりキャラが多すぎますね。
その上、ゴチャゴチャと駈足になっている。

一番描きたかったことをもっと絞ればよかったと思います。

ありがとうございました。



>筋肉バッカさん

>作者さんとしてはどこを一番押し出したかったのでしょうか。

私としては列車の旅と“魔法だけど偶然かもしれない程度の魔法”と合わせて
描きたいと思い書きました。

けれどそれがゴチャゴチャしてしまい、しかも駈足で上手くいかなかったなと思います。

ありがとうございました。



>鷲飼ゲルさん

>本作では仕切り役が主人公や部長とは限らないため、特に台詞だけが続くと誰の発言なのか分かりにくく感じてしまいました。

書いてくださった通りです。
そうですよね、書いている時や書き終わった直後は自分では分かっているので
見逃してしまっていましたが、後から読み返して見ると自分でも分かります。

某マンガは本編も好きなのですがOVAのアニメも大好きなので
ドタバタな列車の旅に憧れているところがありました。
そういうのを描きたいと思ったのですが、まだまだ力不足でした。

ありがとうございました。



>ハイさん
魔法が薄味でしたね。
バリバリの魔法らしい魔法というよりは

これって偶然なだけなんじゃないか?と思えるような
そういうものとして魔法を描きたかったのですが、それにしてもそれをちゃんと分かるように
描ききれなかったなと思います。

ありがとうございました。



>タイヤサドルさん
前回の企画でも今回の企画でも私はタイヤサドルさんの作品にあるような
笑いが好きです。
私もそういったものを織り交ぜて描けたらと思うのですが
書いて下さったようにどうも薄味になってしまいました。

けいおんはまだ「うんたん、うんたん」がありますが
私の今回の小説ではそういうのも出せなかったなと。
次こそは、もう少し面白いと思えるもの書いていきたいと思います。

ありがとうございました。



>いりえミトさん

>こういう作品の場合は、連作短編としていくつかのエピソードを重ねてこそ、最大限に効果が発揮させるものかなと思います。連作で読むことで、キャラの印象もだんだん濃くなっていくと思うので。

そうですね。書いて下さったのを読んでそうだなと、とても思いました。
私の中でどうしても人数を絞りたくない思いがあったので
あだ名にしたりして記号化したのですが、それでもこの枚数内容では目立たないですよね。

ありがとうございました。



>天田龍太郎さん
私は乗り鉄な鉄道好きなので、その中でも比較的得意な東海地方での鉄道の旅を
描きたいと思いこの作品を書きました。

魔法はいかにもの魔法では無く、もしかしたらそれって魔法というより
ただの偶然なんじゃ?ぐらいの魔法を描きたいと思って書いていたのですが

それを表現するには、足らなかったなと思いました。

ありがとうございました。



>99kg
ヅラ先輩……確かに。

奇跡のようで奇跡じゃない、それを最後に書きたくて
ヅカ先輩の家に羊羹を届けようというのを入れました。

その前に大きな奇跡のような雪降らせを入れたからこそ
「魔法スゲー」を少し否定というか「あれ?やっぱただの偶然?」みたいにしたかったのです。

ありがとうございました。



>wさん

>その解決があまりにもあっさりしすぎているのは残念でした。
そうですよね。
自分でもあまりにも、ちゃっちゃと解決されて帰っていってしまたっと後から思いました。
短編といえど、もう少し肉付きがあり少しはハラっとするようなところを入れて書けば良かったです。

東海地方と鉄道は得意分野なのでもっと濃く描けたはずなのに
自分でも勿体無いことをしたなと感じました。

ありがとうございました。



>つとむューさん
勿体無い事をしました。
高山の滞在時間ものですが、その途中の駅にも面白いところがあったのに
それを見せ切れませんでした。

せっかく多治見周りにしたのですから途中に「姫」という駅があるのですが
その駅の事なども最初は書こうと思っていたのに
どんどん駈足展開にしてしまいました。

ありがとうございました。



>タカテンさん
岐阜県出身なのと載り鉄好きなのとで愛知県の鉄道には少し詳しかったので
それを使って描きたいと思い書きました。

やっぱりこの枚数では人数が多かったですね。
部活や仲間を描きたいと思っていたので強引でしたが人数を出してしまいました。

ありがとうございました。
 

nice1770
pass
2016年01月17日(日)18時47分 タカテン yRNUcsqs0o10点
冬企画への参加、お疲れ様です。
拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。

(良かった点)
・ 方言は正義
よく分かりませんが、漫画や小説で見る方言で話す女の子は魅力が二割り増しするような気がします。
まぁ、実際の発音を聞いてみると、あんまり可愛くないこともあったりしますがw

・ 愛知の鉄道情勢のリアリティ
愛知県は新幹線で通るだけなので、鉄道情勢はまったく知らず勉強になりました。作者様はそちらにお住まいなんでしょうね。こういうリアリティは大切だと思います。

(気になった点)
・ キャラが多すぎる
主人公とヅカ先輩だけで成り立つ話だと思います。
キャラはついつい色々と出したくなりますが、上手く書き分けるか、あるいはヒロインだけ突出して書き込みして、他は完全なモブ扱いをしないと、短編では読者を混乱させがちです(自分のことは棚にあげておく)
実際、キャラの会話でこの発言は誰のだろうと思うことがしばしば見られました。

・ 結局周りに迷惑をかけているw
まぁ地元で雪を降らせず、旅先で雪を降らせた分、主人公たちも大変な目にはあってますけどねw

(自分ならこうするという無責任なアドバイス)
 雪を見たいと言う想い人の願いを叶えるために主人公が頑張る話、という軸をもっと強めてみてはどうでしょうか?
 ヅカ先輩の為にあれこれ考えて、旅行プランを練り、切符なども手配して、と全部主人公にやらせます。イメージとしては初めてのデートで、張り切ってプランを立てる男の子って感じ。
で、頑張って目的地まで来たのはいいものの、ツメが甘くて現地には雪がまったく積もっていなかった……。落胆する主人公に、しかし、ヅカ先輩が魔法で雪を降らせます。驚き、喜ぶ主人公。だけど、だったら別にわざわざ遠出しなくても地元で雪を降らせばよかったんじゃないのと思っているところへ、ヅカ先輩が「一番の願いは雪を見たいってことじゃなくて、ふたりで雪を見に行きたいってことだったの」って趣旨のことを方言で話すと、自分的にはほんわかします。
……まぁ、リア充め爆散しろとも思いますが(ぁ

 それでは失礼いたします。
 執筆お疲れ様でした。

 

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2016年01月14日(木)20時58分 つとむュー0点
冬企画の執筆、お疲れ様でした。
御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。

>うん、この時期にはJRさんから青春なんちゃら切符というお得な乗車券が出るのよ。

出ましたね、青春なんちゃらきっぷ。
自分も散々お世話になりました。

>というわけで魔法部の冬休み旅行は高山に決まる。
>あの時に日ペンがスマホで調べた時間と同じように常滑を八時台出発になった。

高山ですか……。
常滑を朝五時台に出発すれば、高山には十一時前に着くような気もしますが。
八時台出発なんて、なんだか若者っぽくない印象を持ちました。

>俺たちは、せっかく何時間もかけて高山にきたというのに、そして雪まで魔法で降らせたというのに、滞在時間わずか三十分弱ほどで帰路につくことになった。

うわっ、もったいないですね。
自分なら、高山ラーメンを食べて、「氷菓」の聖地巡礼で、
数日は堪能できると思います(笑)。飛騨一之宮にも行きたいですし。

本作のストーリーは、魔法部で青春なんちゃらきっぷを使い、
高山まで行って、帰って来るという、非常にシンプルなものでした。

>「目を閉じて、雪が降ってほしいと願うさ。雪、生で見てみたいよ。私たちの想いの力で雪を降らせようさ」

おそらく、この部分が本作品の一番の見せどころだと思います。
純粋無垢な高校生達の旅行記を楽しませていただきました。

いろいろ書いてしまいましたが、ほのぼのとした作品でした。
拙い感想で申し訳ありません。
今後のご活躍に期待しています。
 

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2016年01月10日(日)21時33分 w10点
こんにちは。wと申します。
『青春なんちゃらきっぷの旅』読みましたので、感想を書きます。

なんとも不思議な魅力のある作品でした。
文章、というか語りに独特の味わいがあるというか。
物語の筋としては単純で、魔法部のメンバーが青春きっぷを使って電車の旅をして、というだけのものですが、これは正しいチョイスだったと思います。上限が50枚の中では複雑なストーリーでは書ききれなくなるでしょうから。
で、そのストーリーなのですが、やや動き出しが遅いかなとも感じました。冒頭が、なんというか余談的な話で。語りが独特なので私は退屈せずに読めましたが、他の読者はどう感じるでしょうか。エンターテインメントとしてはやや不利な感じだと思います。
行った先で雪が無く、魔法で雪を降らせるという一つ目の山場と、それによって発生する地元にどう帰るか、という問題を二つ目の山場として持ってきた構成も良かったです。
だが。
その解決があまりにもあっさりしすぎているのは残念でした。
副部長が別ルートを提案して、その通りに帰る、というのでは、せっかくの山場でありながら障害の山が低すぎるように感じました。危機感が少なすぎるというか。
これだったら、名古屋までまだまだ遠いところで踏み切り事故が起きて電車が止まってしまい、メンバーの間に絶望感が漂う、そこで、主人公が何かぽろっとキーワード(事前に伏線はっておいてください)を呟いて、それを聞いた副部長が「それだ!」とひらめいて、ここで空白改行を挟んで、エピローグで別ルートで帰った、とした方が山場として機能するように思います。

それと、読み終わってみると、キャラがもう少しのような。
ひとつは、上に述べたように、山場で主人公がなにかキーになる活躍をしてほしいところで、副部長の提案だけで解決してしまっているところ。
それと、キャラが基本的にニックネーム呼びであるところもあって、把握しきれなかった部分があります。最低限の25枚ということで、短すぎてキャラを把握する前に終わってしまったというのもありますが、25枚という中にはキャラが一人多かったと思います。5人のキャラにはそれぞれ魅力のポテンシャルはあるのですが、それを25枚では引き出しきれていなかった。副部長と日ペンは一人にまとめてあった方がバランス的には良かったと思います。
感想は以上です。
執筆おつかれさまでした。

 

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2016年01月10日(日)15時20分 99kg mXR.nLqpUY10点
ヅカ先輩というのがどうにも可愛らしいイメージにならない……。
ヅラ先輩に響きが近いせいでしょうか。

>そんな今の副部長のあだ名は「女学生」だ。いつも長い髪をおさげのみつあみにしているかららしい。けれど副部長になってからは「女学生」ではなく「副部長」と呼ばれるようになった。
今現在副部長のあだ名は「女学生」なんですよね?
でも「副部長」と呼ばれている。
ああ、副部長は役職であって、呼ばれているとは言えあだ名ではない。
でもあだ名は副部長が付けてんですよね? ああ、先代の副部長が付けたのか。
とここは少し引っかかった。

キャラクターが個性的な割にはあまりそれぞれがクローズアップされていない感じがありました。
日ペンも名前からはあまり女の子というイメージに繋がらないので女の子だと気付きませんでした。
>それに幼馴染の美子こと日ペン
とよく読めば書いてあるんですが、よく読まないと分からない。
初見では「それに幼馴染の美子と日ペン」と読んでしまう確率が高いと思います(または誤植か!? と思う)。

全体的にはいい話ではあるんですがあまりパッとしない。

結局は偶然というか、それが奇跡なんだ。
まあ有り得ない事ではないし、起きるかもしれない。という感じでそれを魔法と呼んでいる。
そういうテーマは非常によいと思うのですが、それにしては最後の場面、

>こっそりヅカ先輩の自宅にお茶と羊羹を届けようかと思った。

というのは結局誰かが仕掛けをしていたのか!? と思ってしまう。
仕掛けで雪は降らないし、超能力の伏線もないので「せっかく奇跡が起きたんだから、このままガッカリさせる事のないように計らってやろう」という事だと思うのですが、それは結局魔法部を否定する事になる。

ここだけがしっくり来なかった部分ですね。

執筆お疲れ様でした。

 

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2016年01月10日(日)12時28分 天田龍太郎10点
 以下、読書中メモ

 他の方にも言ったコトがあるんですが、文章中の強調に、会話を表現するための「」を使うのはやめた方がいいのでは。
 ショタって愛称の主人公はどんな容姿なんだろう(笑)
 小説って、なかなか主人公の容姿は描写しないトコロがありますよね。
 ショタだけどショタじゃなかったw

 作中でもあるのかどうかわからない曖昧な異能要素、というのは結構俺好みかな、と思ったんですけれど、少なくとも異能メインではないですね。日常寄り。

 JRがない、には笑いましたw その無計画さはなに(笑)
 この小説を読もうと思ったのは、俺が電車が乗るのが好きだからなんですが。

 以上。

 うーん、ほっこりして読了しましたが、結局、『魔法部』とか言う割には全然魔法じゃないし、もうちょっと不気味さの演出とかが欲しかったかな~と。
 短編だとワンアイディア特化というか、あまり要素を入れ過ぎず、一つに絞った方がいいかな、と。
 あんまり物語展開と『魔法』が絡んでいないような気もします。まあ、これは思ったより俺好みではなかったというだけなんですが……w
「なんか普通だ」
 と思ってしまったので10点!
 

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2016年01月08日(金)22時08分 いりえミト10点
 こんにちは。
 御作『青春なんちゃらきっぷの旅』を拝読したので、感想を書かせていただきます。


 魔法部5人のやりとりがほのぼのとしていて、ゆるーく楽しめました。
 副部長があだ名をつけるっていうのが、なんかよかったです。
 地理や電車の路線について詳しく書かれているのも好印象でした。
 魔法については、あるともないともいえない曖昧な感じでしたが、その曖昧さがこの作品には合っていたと思います。

 キャラクターについて。
 各キャラとも個性豊かだったとは思います。
 でも、この枚数で主要キャラ5人は多かったかなとも思いました。どうしても一人一人の描写量が少なくなってしまうので。
 そのため、各キャラの印象が薄くなってしまっている感がありました。主人公ショタとサシでのやり取りがあったラボ先輩が一番印象に残っているくらいですので。
  
 ヅカ先輩に関しても、セリフなどから可愛らしさは伝わるのですが、それ以外はさほど印象に残っていません。もうちょっと目立ったシーンが見たかったなと思うところです。
 一番もったいないと感じたのは、幼馴染の日ペンでした。頭なでなでのシーンは可愛いんですが、あんまり目立たないですし、あだ名の由来も書かれてないですし。(ググったらわかりましたが)

 冬旅行のエピソード自体はほのぼのと楽しかったですし、各キャラともポテンシャルはありそうです。
 ただ、こういう作品の場合は、連作短編としていくつかのエピソードを重ねてこそ、最大限に効果が発揮させるものかなと思います。連作で読むことで、キャラの印象もだんだん濃くなっていくと思うので。
 本作単体としては、少々インパクト不足かなと感じたのが、正直なところです。


 私からは以上です。
 執筆おつかれさまでした。
 

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2016年01月06日(水)08時24分 タイヤサドル0点
読ませていただきましたので感想を残します。
正直なところ、薄味だったなというのが読後感でした。
光学部が出てくる某マンガのといのは、不勉強なので読んだことないと思うんですけど、作者様はおそらくは日常系みたいなものを目指されたのかと思います。
エンターテイメント的な刺激(主人公がすごいピンチに追い込まれてはらはらドキドキ、謎の登場人物が現れて気になって読み進めてしまう)が足りなかった気はしますが、多分それはあえてなんじゃないかと想像してます。
でもキャラのやりとりとか会話の、味わいって言っていいのか分かりませんけど、そういうので読ませようとするなら、もうちょっとキャラ立ちさせないと難しいかと思います。例えばラボ先輩が主人公に魔法部の存在意義を語る場面とか、言ってることはもっともなですけど、ラボ先輩は普段は地味で目立たなくて男だというくらいの情報しか頭に入ってない状態で読むとぴんと来ませんでした。
日常系はキャラを理解させてからが面白くなってくるところじゃないでしょうか。自分の場合だと、けいおんとか見たときも1,2話目はつまんないのを我慢して見て3話目から面白くなった記憶があります。そういう意味では読み切りの短編というのが、そもそも日常系に向いてないのではとか、個人的には思ってたりします。
良かったところは、日ペンのネーミングセンスは何か好きです。
持ち点制なので点数低いですけど、悪しからずということでお願いします。
執筆ご苦労様でした。
 

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2015年12月30日(水)23時10分 ハイ s7d/2ml3o.10点
拝見しましたので、感想を置いていきます。


●文章

特に指摘するほどのことはありませんでした。

●キャラ

全体に弱いものの、区別には困らない程度に分けられていたのでその点は良かったと思います。

●テーマ

目的に据えられていたので、綺麗に消化されていました。

●ストーリー

うーん、地味ですねw
冒頭があれなので、もっと魔法があれこれ出てくるのかと期待してましたが、魔法必要だったかなぁという展開でしたし。
そもそも、魔法についての説明が全くといっていいほどないので世界観もなんだかなぁ、という印象でした。
その分、雰囲気が丁寧に書かれていたので、割と心地好く読ませてもらえました。
これなら、魔法なしですっきり読ませて欲しかった、というのが私の印象です。


他、あれこれいく場所を相談してるのに、誰も雪が実際に積もってるか、または降ってるかを調べる様子がないとか、説明にも出てこないというのもどうなのかなぁ、と思ってしまいました。一応、天気は調べたようですがその台詞は最後近くで。いや行く前に調べようよ! という気持ちで終始もやもやと。



雰囲気はすごくよく書けてましたので、私的には魔法の設定を少しだけでも説明して、きちんと下調べをさせて。あとはヅカ先輩に雪を見せたい理由を強化してたら良かったんじゃないかな、と。ベタなところでは卒業、転校などで。
そうすれば、雪を見に行くという目的がより意味を持ってくると思いました。


私からは以上です。
では、共に上げていきましょう!
 

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2015年12月30日(水)18時00分 鷲飼ゲル YGyum30nrk10点
作者さんへ

作品を拝見しましたので、感想を延べさせていただきます。

テーマについては、雪と美少女それぞれが作品のメイン要素としてきちんと盛り込まれていましたね。

本作が目にとまった理由は、タイトルを見てどんな旅なのかと思い、作者メッセージを見てみると「某マンガ」「列車の旅」とあったので、いよいよ興味が湧きました。

全体的に読みやすい一人称の文章でしたが、誰の台詞か分かりにくく感じる箇所がいくつかありました。
たとえば以下の部分ですが、
>「多数決にしない? 高山か、長野か、その他か」
>「じゃあまず高山から」
>「全員一致で高山のようね」
>「高山って一度行ってみたいと思っていたし」
>「長野もいいけれど、同じぐらいの時間かかるんだったら高山かなと」
本作では仕切り役が主人公や部長とは限らないため、特に台詞だけが続くと誰の発言なのか分かりにくく感じてしまいました。
(私の読み解き方が鈍いだけかもしれませんので、他の方の感想も参考に取捨選択なさって下さい。)

物語は、好きな先輩を喜ばせたい、雪を見せてあげようという主人公の意気込みを起点にして、遠出したのに雪が降っていない、それならば……という話の起伏を追いながら、高校生たちの小旅行を微笑ましく楽めた印象です。

雪を降らせる魔法のくだりでは、「ラボ先輩」というくらいなので小型ロケットを打ち上げる人工降雨の登場を予想しましたが、あくまでちょっと不思議な魔法に留められていたのは、かえって本作の暖かみのある雰囲気にふさわしかったと感じています。

ラストで直接的に贈り物をしようと考える主人公は、まだまだこの部活の魔法の本質を理解できていないなと感じましたが、彼が後輩を持つ頃にはきっと魔法を使いこなせるようになっているのだろうと思いを巡らせながら本作を読み終えました。
「某マンガ」という作者メッセージからはドタバタするコメディなのかと想像していましたが、予想外の優しいお話に大いに和ませられました。

以上です。
 

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2015年12月30日(水)15時01分 筋肉バッカ 9.WICozezU0点
こんにちわ。読ませていただきました。


なんとなく青春してる雰囲気にほっこりしました。時間は元には戻りませんので、やりたいことは積極的にやるべきですよね…(遠い目)

気になった点です。
作者さんの意図が感じづらい作品でした。ヅカ先輩の魅力たっぷりな作品なのかと思いきや、魔法という要素、魔法部の面々、列車の旅、そういったいろいろなものを少しだけかじらせてもらった、というイメージなのですが、作者さんとしてはどこを一番押し出したかったのでしょうか。
現状だとあれやこれやを詰め込んではいるんですが、それが物語として一本の線になっていないと感じます。ですので、読んでいても、どこに腰を落ち着けて物語を追っていいのかが分からず、なんとなく登場人物たちの間に入り込めないまま終わってしまうというさびしい感覚がありました。

以上です。
執筆お疲れ様でした。
 

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2015年12月31日(木)12時45分 モンハンほも0点
拝読いたしました。

日常系の作品ですね。ほんわかした雰囲気に癒されました。
ですが、申し訳ありませんが面白いとは感じませんでした。正確には、方向性として「面白いとは違うけどなんかこの作品好き」と読者に感じさせたら勝ちな作品だと思うのですが、そこまで至りませんでした。
原因として真っ先に思ったのは枚数と比べてキャラクターが多すぎることです。作者様の中では確固たる設定があるのかなとは思うのですが、彼・彼女たちの魅力が伝わってきませんでした。名前でキャラクターの特徴を表す工夫もされていますが、どうにも薄っぺらく感じました。
自分ならですが、この枚数であれば部活という設定とキャラをばっさり切って、主人公とヅカ先輩だけの物語にします。別作品じゃん何言ってんだコイツと思われるかもしれませんが、そもそも作品の尺と設定が合わなかったことが御作の一番の問題である、という考えなことをお伝えしたかっただけです。ご容赦を。作者様の今後のご活躍に期待しております。


拙い感想で申し訳ございません。
以上、失礼いたしました。
 

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2015年12月28日(月)23時05分 ウサリアス-10点
 どうも、感想専門のウサリアスです。

 正直、いまいちです。

 まず、人物が分かりづらい。
 ヅカ先輩と俺は、分かるのですが、それ以外は、分かりづらいし、ヅカ先輩も魅力がないかな……
 多分、特徴が分かる描写が主人公、ヒロインに集中しているし、魅せる描写があまり使われていないから、こうなるだろうなという感じです。

 次に、途中経過が、ただ報告を聞いているような印象を受けます。うまく説明ができないのが申し訳ないのですが、なんか読んでいて、面白くないな……ヤマまだ?という風に思ってしまいました。

 最後は、ヤマ場と思われる雪を降らすところが、あまり感動が伝わらないのが気になりました。
 苦労して来たのに、これだけ?もっと綺麗さや幻想さとかそういう風な表現がないと、いまいちだなと思いました。

 キャラの特徴が分かりやすく、さらに、風景や景色の表現が良かったら、マシなのですが、そうでないため、読んでいて、いまいちだなと思いました。
 

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2015年12月29日(火)19時13分 青出10点
 こんにちは。感想を書かせていただきます。親しみやすい文章で書かれた明快な筋立ての青春小説で、ほんわかした気分にさせていただきました。

ここが好きです
○興味を引く導入
 説明文ではありますが、羊羹の謎、魔法部、好きな人の描写など、興味深い内容をどんどん提示していて入り込みやすかったです。ラノベの導入はアクションが定石であるようですが、説明文であってもこのように書けばいいのだなと勉強になりました。
○文章の読みやすさ
 文章はわかりやすく、また一人称の利点を生かしていたと思います。とくにヅカ先輩への思いの描写にそれが感じられました。さらに、細部の説明に「今っぽさ」を感じました。たとえば、“何故ショタなのか分からなかったので後からネットで調べてみると”などは今どきのリアルな高校生らしさを感じました。全体を貫く、プラス方向にもマイナス方向にも情熱的になりすぎない低温な高校生男子の独白に現実味があり、共感しやすかったです。
○キャラ設定
 キャラ付けは記号的でわかりやすいのですが、それが嫌味にならない絶妙なさじ加減で描かれていると思いました。ヅカ先輩はヒロインとして十分にかわいらしく、ラボ先輩の喫茶店のエピソードは興味深いものでした。
○筋立てのわかりやすさ
 魔法部のメンバーが、雪を見るために鉄道で小旅行をする。明快で、かつ青春のエピソードとして十分な関心を引く筋立てだと思います。少年少女が乗った電車にしんしんと降り積もる雪、というビジュアルとしても趣き深いものでした。

ここが気になりました
○キャラの見分け
 それぞれのキャラはきちんと立っているのですが、ストーリーの中で活かしきれていない印象を受けました。たとえば、日ペンは絶対萌える女の子にちがいないのですが、25枚のストーリーの中では影が薄くなってしまったように感じました。せっかくの優れたキャラ造形なので、中編か長編の枠で生き生きと動く彼らが読んでみたいと思いました。
 また、“三年生の先輩方が部を引退して、この部は五人になった。”の段落の台詞のやりとりで、少しキャラの見分けがつきにくかったので、ここで印象付けるといいのかなあと思います。一案としては、台詞のかぎかっこの前か後に名前を書くなどです。
 それから、ラボ先輩の方言が愛知県常滑市のものであることがわかるタイミングが遅く、途中までキャラ設定がヅカ先輩と重なりました。もっと物語の前半部分で地名を出してもいいのかなあと思いました。
○魔法部のエピソード
 物語前半で、魔法部の活動がちらりとでも見えると面白かったかなあと思います。結果として失敗のエピソードでもいいので、この部活における魔法の定義を示しておくと、後半で雪が降ってくることに説得力が増すかなあと思いました。
○小旅行の行程
 このエピソードはおそらく鉄道マニアのかたをターゲットとしたものだと思うので、そうでない私は圏外なのですが、もっと旅行中の描写をふくらませられないかと思いました。ただ地名を列挙していくだけではなく、たとえば、なぜ高山に行きたいのか、名古屋駅で起こったドタバタ劇、電車の中の様子、などを肉付けして描くと、私のような鉄道に詳しくない者でも楽しめるかなあと思います。あるいは逆にもっと突き抜けて鉄道マニア向けの濃い情報を盛り込むか、どちらかでしょうか。
○魔法と鉄道のつながり
 この作品の見どころは、魔法部と鉄道旅行の2点だと思いますが、両者につながりがあると、もっと印象深くなるかもしれないと思います。たとえば、単純で申し訳ありませんが、魔法部にある問題があって、それが鉄道に乗ることで解決する、というようなものです。
○主人公の感情の動き
 上記についてはほとんど違和感はありませんでしたが、1点だけ、ヅカ先輩と手をつなぐときもっと感動している描写があるといいかなあと思いました。

 楽しませていただきました。これからも頑張ってください!
 

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合計 13人 70点

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