勇者様はテレビショッピングがお好き |
タロウの趣味はテレビショッピングを観ることだ。 特に好きなのが深夜にやっている、ちょっと変わった変な商品が売られている番組と、その番組で商品の案内をしている美少女エレナちゃんだ。 エレナはブロンドのツインテールで、ちょっぴりたれ目、そばかすがキュートな女の子。そして巨乳だ。 エレナが番組に出る時のコスチュームは肩だしで襟元も胸のラインギリギリまで開いているオフショルダーという服で肩と胸のラインは大きなフリルになっているデザインのものを着ている。 タロウはエレナのその服装にいつも鼻の下を伸ばしながら、番組を見ていた。 ところで、このテレビショッピングで売られている商品は家電製品や食品や運動器具などでは無い。 戦士や魔法使いなどが使う武器や防具、旅のお供に便利なグッズなどが紹介されているのだ。 そしてその番組が大好きなタロウも代々、勇者を務めてきた家に生まれた十五代目の勇者なのだ。 「タロウ様、いつもいつも夜更かしばかりしてないで早く寝てくださいよ」 タロウのお世話係兼魔法使いのサチは明日からの旅の準備を終えると、自分の部屋に下がる前にタロウにいつもの小言を言った。 サチもまた代々、魔法使いであり勇者に仕える家に生まれた者だった。 「んー、分かった、サチも早く寝なよ」 タロウはそう返事をするも、顔はずっとテレビに向けたままで生返事のようだった。 今日もテレビにはタロウの大好きなエレナが、おっぱいをぱゆんぱゆん言わせながら変わった武器を紹介していた。 テレビに夢中になり、サチの言葉をいい加減にしか聞いていないタロウにサチは怒っていた。 でも正確に言うと、タロウの態度に怒っていたというよりテレビの中のぱゆんぱゆんエレナに嫉妬していたのだ。 エレナは揺れる胸の音が聞こえてきそうなぐらいの巨乳。 サチは太った男子にも軽く負ける平らなお胸。テレビでエレナを見るたびに羨ましくなるのだった。 1 朝起きて、身支度を整えタロウ様の部屋に行ってみると思った通りまだグースカ寝ていた。子どものように寝相の悪い姿は、見ていると何だか可愛く思えてくる。 「タロウ様、起きてください。午前中には出発するんですよ」 寝息をたてたまま反応が無い。旅先で野宿しなきゃいけない時に寝ていて襲われても気づかないんじゃないかと、いつも思う。 タロウ様は、なんだかんだで暢気なお坊ちゃまなのだ。寝る時は旅先だろうとパジャマを着て寝るしこうやって起こしても簡単には起きない。 勇者ともあろうお人が……。 「タロウ様っ」 肩を揺さぶる。やっと「うーん」という反応を示す。 「あ、テレビにエレナが! 今日も巨乳ですね」 「う、うーん」 ちっ、ダメか。これで飛び起きてくれたら悔しいけれど楽なのに。 「もう、タロウ様ってばー」 軽くほっぺたをペチペチ叩いてみる。 「うーん、起きるよー」 まだ半分眠っているような顔で身体は何とか起こしてくれる。このまま安心して部屋を出て行くと、大抵また眠ってしまうので起き上がらせて顔を洗いに行かせる。 洗面台まで連れて行ってやっと私は自分の仕事が出来るのだ。 台所に行き、作りかけだった朝食を仕上げる。 この家には通常なら、旦那様と奥様そしてタロウ様の三人がいらっしゃる。けれど今は旦那様と奥様はハナコ様の住む街に旅行中なのだ。 ハナコ様はタロウ様のお姉様で結婚して遠くの街に住んでいる。早くにタロウ様に家督を譲った旦那様はこうやってお嬢様のところに行ったり、たまには依頼のあった仕事をこなしたりと奥様と一緒に家を空ける事が多かった。 「はい、出来ましたよ」 私がお味噌汁をテーブルに運ぶと顔を洗い終えたタロウ様が席に着くところだった。 「いただきます」 タロウ様はご飯とお味噌汁という朝食が好きなので旅先で無理な時以外は和食にしている。 エプロンを外し、私も向かいの席に着いて食事を始めた。 「結局、何時に寝たんですか?」 「ん? 三時ごろだったかなぁ。エレナちゃんのコーナーが終わるまで見てたからね」 「まったく。今日からマントの街に行くって分かってるのに夜更かしするんですから」 私が軽く怒って見せても、タロウ様は分かっているのか分かっていないのかヘラヘラしている。 今回の依頼があったマントの街は、ここからバイクで一日半ほどのところ。途中の街で今日は宿を取る予定だが、そのためにも今日中にその街にまでは着きたいのだ。外に出てしまえばそれなりにシャンとして下さるけれど家を出るまでがダラダラされたら遅れてしまう。 「ところでさぁ、サチ」 「はい、何ですか?」 「もうすぐクリスマスじゃん?」 「はい、そうですね」 「俺さぁ、サンタさんにエレナちゃんのテレビショッピングでやっていたピカピカナイフをお願いしようと思うんだよね」 「……」 この人はもう。これから魔物退治の旅に行こうというのに緊張感が無いどころか、十七歳にもなってサンタクロースにプレゼントをお願いすると無邪気に言うなんて……いつまで経っても子どもなんだから。 「あーっ、サチってば呆れてるんだろう。大丈夫だよ、ちゃんとサチのプレゼントもお願いしといてあげるから」 わざと子どもぶっているのか、こういうところがたまに可愛いと思ってしまう。 2 「ところで、ピカピカナイフってどんなナイフなんですか?」 タロウ様がクリスマスプレゼントに欲しがっていたナイフがどんなものか聞いてみた。 「見た目は普通のナイフなんだけど、振るとピカピカーッと光って敵を眠らせる事が出来るんだ」 「持ってる人は眠っちゃわないんですか?」 「うん、柄の部分に催眠にかからない鉱石が入っているんだって」 「じゃあ、近くにいる味方はどうなんですか? 安全なんですか?」 「うん、大丈夫。柄に使われているのと同じ鉱石で出来たペンダントをしてればいいんだよ。それもオプションで一個は無料で付いてくるんだよ」 「へぇ、色々考えられてるんですね」 でもナイフというのが心もとない。タロウ様はいつも大きな剣を使って戦っている。そういうサイズの物ってないのかしら。 「ナイフってタロウ様の戦闘には小さくないですか?」 「まぁね。ピカピカナイフに使われている鉱石は貴重らしくってナイフサイズが限界らしいんだ」 なるほど、そういう事ね。でもまぁ敵を眠らせてから、いつもの剣で戦ってもいいわけだしね。 今回の目的地であるマントの街に行く前に、今日は途中の街で一泊する。 私たちは基本、移動にはバイクを使う。バイクよりも早い列車を使う人たちもいるが列車は小回りが利かない。余程遠い街への依頼があった時には列車で行くが遠い場所はまだ旦那様たちが行って下さっている。 今日泊まる街は観光地の山や他の街への分岐処にある大きな商業地なので人が集まる場所だ。宿も前もって予約しておいた。 私もタロウ様も、両親は健在だけど早くから魔物退治の旅に出かける事に慣れるため二人での行動を多くさせられた。 甘えん坊で、戦う以外はあまり出来ないタロウ様をフォローするために私は自分の事はもちろん、タロウ様の身の周りのお世話や旅に関する手配などもなんなくこなせるようになっていた。 街に着くとクリスマスが近い事もあり、電飾で華やかで人の波も何だか楽しそうな雰囲気だった。 宿は安いビジネスホテルを予約している。なので食事は外で取る。人でごったがえしているので、どこのお店も混雑していそうだ。 チェックインを済ませた後、私たちは近くの定食屋のようなところに入った。 3 「混んでるのでこちら、相席よろしいですか?」 私たちは二十代ぐらいの男性が一人で座っている席に案内された。 メニューを見ながら、タロウ様に「何にしますか?」と尋ねようと見るとタロウ様は何やら失礼なぐらいに相席になった向かいの席の男性の事をマジマジと見つめていた。 注意しようと軽く袖を引っ張ろうとした時、タロウ様は勢いよく立ち上がり向かいの男性の方へ乗り出した。 「あの! もしかしてそれって特守グローブ限定版じゃないですか?」 「ああ、ご存じでしたか。そうですよ、昨年発売した限定の特守グローブです」 特守グローブ? それってエレナのテレビショッピングの商品だったような。タロウ様がしつこく話題にするから私も何となく覚えがあった。 この人もエレナのテレビショッピングのファンなのだろうか? けれど、戦士や魔法使いという格好では無く、街の職人のような服装だ。 「俺も欲しかったんですけど、あっという間に売れちゃって買えなかったんですよ」 「限定数が少なかったですからね。これは正規品では無く試作品なんです」 「へぇ、試作品なんて手に入れられるんですか? ある意味、限定品より凄いですね」 「いやまぁ、これ私が作っているものなので」 「え? ええええええええー!」 さっき、一旦腰を落ち着けたタロウ様だったのに、また勢いよく立ち上がった。ひな壇芸人より反応が良い。 「あはは、ここまで反応して下さるという事はクーパー商店をごひいきにしてくださってる方でしょうか? ありがとうございます。私、クーパー商店の技術担当をしております、ダニエルと申します」 「あわあわ、お、俺、勇者をしていますタロウと言います。クーパー商店のエレナちゃんのテレビショッピングの大ファンです」 その後、一緒に食事を楽しみながら色々と話をした。 元々、クーパー商店も普通の街の万屋だったところを新しい社長が目新しい商売を、という事でテレビショッピングを始めたらしい。それを機会に昔はダニエルさんの遊び心程度にしか作っていなかった特殊武器や防具をメインにしたところ、タロウ様のようなコアなファンが増えたらしい。 「ところで今回は、どちらかにご旅行ですか?」 「実は、我が社の人気商品のピカピカナイフの原材料のことで困った事が起こりまして」 「困ったこと?」 「ピカピカナイフの材料に使う鉱石がルイスの山でないと採れないのですが今、ルイスの山にはドラゴンが居座っていてその鉱石を掘り出す事が出来ないのです」 「なんですとー!」 タロウ様はまたもや大げさに立ち上がり、ダニエルさんの方に前のめりになった。 そういえば、ピカピカナイフといえば今度のクリスマスにタロウ様がサンタさんにお願いすると言っていた品だった。 「そうなると、しばらくは製造中止ですか?」 「しばらくどころか、いつになるか。ドラゴンは一度気に入ると何年も居座ると聞きますから、それでどうにもならないのかどうか見に行かねばと思いまして」 ルイスの山はルイスさんという魔法使いさんが昔所有していたという山で、ダニエルさんが言っていたように珍しい鉱石が採れたり、キノコや薬草が採れる。 ルイスの山があるルイス群の採取許可を持っている人は誰でも自由に色々な物を採取できるらしい。 それ以外にも低めの登りやすい山だという事で観光で訪れる人もいる結構有名な山だ。 「俺たちが退治に行きます!」 「なっ、マントの街の件はどうするんですか? 受けた依頼はちゃんとこなさないと」 「マントの街が終わってからでいいじゃないか。その後は予定入ってないだろう?」 「まぁ、そうですけど……」 「ダニエルさん、三日後でどうですか? 三日後にルイスの山の麓にある宿で待ち合わせということで」 「本当ですか? 助かります。早速社長に知らせます。喜ぶだろうなぁ」 タロウ様が勝手に決めてしまったけれど、まぁ人助けになるんだしタロウ様の勇者としての仕事としても悪くないわよね。 4 マントの街でのタロウ様の戦いぶりは、まるでニンジンをぶらさげられた馬のようにはりきったものだった。 私も一日もあれば解決出来るかな? と依頼を受けた時から思っていたけれど、もう本当にあっという間に片付けてしまった。 そんなにピカピカナイフがほしくて、発売が中止されるのが嫌なのね。 そのために予定よりも半日早くダニエルさんとの待ち合わせのルイスの山麓の宿に着いた。 「お二人がドラゴンを退治してくださるんですか? ありがとうございます」 待ち合わせの宿に着くと、ダニエルさんだけじゃなくエレナさんまでいた。テレビショッピングに出ている時と同じようにオフショルダーのセクシーな服を着ていた。しかも今着ているのはクリスマスを意識しまくったサンタワンピースデザインのオフショルダーだ。 可愛いけれど、やっぱりお胸がぱゆんぱゆんなのが目立つ。 タロウ様の視線も自然とそこに行っているので軽く耳を引っ張ってやった。 テレビで見ている感覚のままだった時は『エレナ』と呼び捨てで意識していたけれど、こうやって実際に会ってしまうと『さん』を付けずにはいられなかった。少しだけ私たちより年上かもしれない。 「エレナちゃんだ! 本物だ、やっぱ可愛いなぁ」 タロウ様は挨拶そっちのけで異様に興奮している。 「初めまして。勇者をしていますタロウと私、魔法使いのサチと申します。よろしくお願いします」 「こちらこそ、本当にありがとう。よろしくお願いします」 そう言ってエレナさんは私と握手してくれた。けれど私の事をじっと見つめたまま固まったようになってしまった。どうしたというのだろう。 「ごめんなさい、あまりに綺麗な髪だから見とれてしまって」 エレナは私の髪を見つめていたようだ。 私の髪は黒くてまっすぐで、呪いの人形のようで私はあまり好きじゃなかったんだけれどエレナさんに褒められると悪い気はしなかった。 「……ありがとう」 「社長も直接、お二人にお礼を言いたいとこちらに合流しました」 「え? エレナさんって、テレビショッピングに出ているタレントさんだと思っていました」 だって、慣れた感じで男性を惑わすようなお胸アピールの商品説明だったんだもの。 「何だか恥ずかしいです」 テレビで見るエレナさんよりも清楚というか控えめ感があるからか、ますます私はエレナさんに今まで持っていた女子としての、嫉妬のような感情が薄れていった。 「サチは知らなかったのか? エレナちゃんはテレビショッピング界の有名な社長さんの一人なんだよ」 そうだったの? 私たちと大して年齢が変わらないように見えるのに、社長さん? 「はい、社長をしていますがお二人と歳も近いと思いますし普通に接してくださいね」 そう言って、ニッコリ笑ったエレナさんはテレビで見る姿を思い出させる可愛らしさがあった。 ファンとして興奮しているタロウ様より、女の子同士で歳も近い私の方が喋りやすいのか、エレナさんは食後に二人だけでとお茶に誘ってくれた。 エレナさんは私やタロウ様と同じ歳ぐらいかなと思ったら二十一歳だと言う。ちょこっとだけお姉さんだった。 「いつ頃、家督を継がれたんですか?」 タロウ様がエレナさんのテレビショッピングにハマり出したのは二~三年前からだったはず。 「四年前からよ。うちは両親が私の幼い頃に離婚しちゃって、お父さんはずっと不安定で仕事にも身が入っていないところがあったんだけれど、とうとう四年前に蒸発しちゃったの」 なんともまぁ大変な家の事情を会ったばかりの私にサラリと話してくれる。どう反応していいか少し戸惑ってしまうぐらい。 「それじゃあ家の方もお店も方も大変だったんじゃないですか?」 「それがね案外、お父さんいなくてもすんなり回っちゃうのよ。それが少し寂しかった反面、気が付いたの」 「何をですか?」 「我が家を支えてくれていた人々、お店の従業員がどれだけ大事でありがたいかっていう事をね」 同じような事を旦那様がいつも仰ってる、『土岐高丸(私の家の苗字)の者たちがいてくれなかったら勇者家はここまでこれなかった』と。 私、それってよく世間の人が何かを成し遂げた時に「ここまで応援してくれた皆さんのおかげです」という、あれと同じようなもので月並みなフレーズで深い意味合いは無いんだと思ってた。 社交辞令とまでいかなくても、それぐらいお決まりの文句とまで思ってた。 世間の人がよく言う「ここまで応援してくれた皆さんの……」なんて、頑張ったのはその人本人なのに周りの人間にまで気を使うコメントしないといけないなんて面倒だし、大変だなとそんな事に同情していたぐらいだった。 私は旦那様から、私や私の父、そしてご先祖様たちのおかげだと感謝された方の立場だったけれど、その本当の意味合いは分かってない子どもだったのかもしれない。 けれど今、エレナさんが話した言葉は旦那様がいつも仰る事と同じような事なのに何かが私の中に衝撃を走らせた。 旦那様も奥様も、もう一組の私の両親のように私を可愛がってくれている。勇者家に仕えるという立場だと思ってきたけれど、それを嫌だと思った事、そして将来の道を変えたいと思った事は一度も無い。 それは旦那様や奥様の愛情や感謝をいっぱい、いっぱい受けてきたからなんだと気が付いた。 「……サチさん?」 「ごめんなさい。今のエレナさんの話を聞いていて、私、自分が子どもだったなぁと思って」 「子どもってサチさん、まだ若いじゃないですか」 「あ、いやまぁ、年齢的に子どもだけど精神的にはもっと子どもだったなって」 「そうなんですか?」 「人に感謝する、感謝されるということの本当の意味を分かっていなかった。エレナさんが自分の家やお店を支えてくれる人に感謝しているっていう言葉が、ただの言葉だけじゃなくてもっと深い本当のものに聞こえたから、私、気が付いたんです」 「私、そんな大きな事言ってないよ」 顔の前で手を振りながら、エレナさんは少し恥ずかしそうにしている。 テレビショッピングで見ていたエレナさんは、ぱゆんぱゆんオッパイで男性視聴者を惹きつける美少女で、女の私からしたらいけ好かないというか、あまり好感を持っていなかったけれど、こうやって直接話をするエレナさんは普通に友達になれそうなお姉さんだった。 5 翌日、私とタロウ様はルイスの山に登っていった。宿の女将さんに聞いたところ、ドラゴンは山の中腹辺りの草原を好んで居座っているという。 「タロウ様、戦闘方法はいつものように私が氷魔法でドラゴンの動きを軽く止めますから、そこからタロウ様が攻撃してくださいね」 「うん、分かった」 私の氷魔法は、威力が小さいので大きなダメージを食らわせるまでにはいかない。けれど短時間でも敵の動きを止めるのに使う事が出来る。 五合目辺りの森を抜けた草原のようになっているところまで辿り着くと女将さんが言っていたようにドラゴンが眠っていた。 私たちの到着にニオイで変化を感じたのかドラゴンが目は閉じたまま鼻をヒクヒクさせている。急がなくては。 私はドラゴンの足を狙って氷魔法を放った。ドラゴンの足が氷で固められる。けれどそれによってドラゴンが完全に目を覚ましたようだ。 タロウ様が動けないドラゴンの額目掛けて剣を振り下ろしに行く。けれどドラゴンは向かっていったタロウ様目掛けて炎を吐きかけた。それをタロウ様は横に避ける。そのまま今度は胴体に向かって剣を振り下ろしに行こうとした時、ドラゴンは自分に攻撃してくるタロウ様では無く木が生い茂っている森の方に向かって炎を吐き出した。 タロウ様の振り下ろした剣はドラゴンに軽いながらも傷を負わせた。けれどドラゴンはそれを気にする事無く、更に森に向かって強く炎を吐き出したのだ。 「どうしましょう、このままでは山火事になってしまいます」 「サチ! 氷魔法で何とか炎を鎮められないかな?」 「駄目です。私の氷魔法では威力が少ないので焼け石に水になってしまいます」 「それでも何もしないよりマシだろう。何か他に手立てが見つかるまでサチは山の方を頼む。俺はドラゴンの方を何とかする」 「はい」 何なのこのドラゴン。自分が気に入って住み着こうとした山を焼いてしまうつもり? これ以上、森に炎が回らないように私は必死で氷魔法を唱えた。 やっぱり私の魔法では、広がらないようにするのが精一杯で消す事までは出来ない。それも残り少ないパワーではそれほどは持たない。どうしよう……。 そう思っていた時、向かいの方から勢いのいい水が放たれてきた。 「タロウさーん、サチさーん、ご無事ですか?」 ダニエルさんの声だ。 「こっちです」 炎の先を覗き込むと、傘のようなものを持って放水しているダニエルさんとエレナさんがいた。二人の持つ傘からは何故か大量の水が噴射されて、火は見る見るうちに鎮火していった。 「助かりました」 「良かった。中腹辺りから煙が見えたので、何かあったのではと思い駆けつけたのです」 山火事は落ち着き、ドラゴンと戦っているタロウ様の方に行ってみると、まだ苦戦しているようだった。無理も無い。いつも二人ががりで戦うところを一人で戦っている上に、私がかけた氷魔法はすでに溶けてドラゴンは自由に動けるようになっていた。 再び私は残っている力を使って氷魔法をドラゴンの足めがけて放った。 そしてダニエルさんとエレナさんが先ほどの水が噴射される傘でドラゴンの目元を狙って水を打ち込む。視界も動きも止められたドラゴンにタロウ様の剣がトドメを刺した。 「エレナちゃん、ダニエルさんどうしてここへ? しかもそれは雨出し傘では?」 「はい、煙が見えたのでこれが役に立つかもと持って登ってきました」 雨出し傘っていうんだ。雨を出してるというよりホースで勢いよく水を出しているようだったけど。 「これ買おうよ。サチは水魔法使えないだろう? こういう時に便利じゃないか」 まぁ便利は便利よね。けど、こんな時はそうそう無い気がするけれど。 「はぁい、皆さん! こちらは普通の傘ではありません。この傘から水を放出する事の出来る雨出し傘です」 「わお」 いきなり目の前でエレナさんがテレビショッピングでやっているように商品のアピールを始めた。それにタロウ様が目をキラキラさせて興奮している。 「この傘は水魔法が使えなくても大丈夫。魔法の力を貯めておいて使う方法と、雨降りに傘として使って降ってきた雨を貯めて置く方法があります。しかも、雨や水を貯めても重くなりません。普段は普通の傘として使えるのもいいでしょ」 そういってエレナさんはウィンクしてくる。 私はちょっと遠慮気味に手をあげた。 「……買います」 「まいどありー」 何だかまんまとエレナさんの商売にハマってしまったようで恥ずかしいけれど、何だかとても良い商品に思えてきた。 タロウ様も、テレビを見ながらこうやってハマっているのだろうか。 6 私はタロウ様には内緒でエレナさんと連絡先を交換し、友達になった。 旅から帰るとあっという間にクリスマスで、クリスマスの朝も私は普通にタロウ様と二人の朝食を用意していた。 「サチーっ!」 「何ですか?」 「ほら、やっぱりサンタさんは居たんだよ。ちゃんとクリスマスプレゼントを持ってきてくれたんだ」 パジャマを着たままの姿でタロウ様は嬉しそうにピカピカナイフを私に見せにきた。 まるでおもちゃのナイフを振り回す子どものように。 「良かったですね」 私は軽く微笑みながらお味噌汁の味見をした。うん、美味しい。 タロウ様のプレゼントは旦那様に何を欲しがっていたかを伝えて用意していただいたものだ。それをクリスマスツリーの下にタロウ様が寝てから私が置いた物だった。 「サチのプレゼントもあったみたいだぞ」 え? 私がタロウ様のプレゼントを置きに行った時には何も無かったはずだし、旦那様も奥様もまた旅に出られているのに……。 「ほら」 そう言うとタロウ様は小さな包みを私に差し出した。 「……ありがとうございます」 「サンタさんからだぞ」 包みを開けると赤い和風の櫛が入っていた。 「可愛い」 「サチの髪はエレナちゃんも羨ましがっていたぐらい綺麗だからサンタさんが選んでくれたんじゃないかな」 私はその櫛を両手で包んで胸元で抱きしめて嬉しさを噛み締めた。 ピンピロピンピンピン! 「ん?」 嬉しさに浸っていた私の胸元から変な機械音がした。今もらった櫛から出た音らしい。 「それ、エレナちゃんのテレビショッピングでやっていたマジックポイント貯金箱櫛だよ」 「へっ? マジックポイント貯金箱櫛?」 「胸元で想いを込める事によって貯まっているマジックポイントを貯蓄しておける櫛なんだって」 音がした櫛を見てみると、十という数字が出ている。たぶんこれはマジックポイント十が貯蓄されたという事なのだろう。 まぁ、便利っちゃ便利よね……。 嬉しかった気持ち以上に、何だか笑えてくるおかしさで吹き出してしまった。 「何吹き出してるのさ」 「いえ、幸せなクリスマスの朝だなと思いまして」 「あ、ねぇねぇ! これ見て」 幸せに浸ろうとしていたところを、タロウ様は突然リビングのテレビをつけて私にもテレビを見るように促した。 テレビにはエレナさんが、この前着ていたサンタワンピのオフショルダー姿で何か商品の説明をしていた。そして今日も、お胸がぱゆんぱゆんだ。 「エレナさんのテレビショッピングって深夜にやってるものだと思ってました」 「いつもはそうなんだよ。けれど今日はクリスマススペシャルで午前中からやってるんだよ」 今日の商品はファイヤーキャンドルというものらしい。 タロウ様が番組を見ながら朝食をとりたいと言うので、私も一緒にそのままテレビを見た。 なるほどね。この前、ルイスの山で私たちを助けてくれた雨出し傘と同じような物で、これはキャンドルから炎魔法が噴出すというものらしい。 「ねぇねぇ、あれ買おうよー」 始まった。タロウ様のおねだりだ。 「いらないですよ。炎魔法なら私も使えるんですから」 「ちぇっ」 軽くスネ声を出すタロウ様、子どもか! けれど、暖かいお味噌汁の湯気と暖かい部屋。 クリスマスの暖かい雰囲気と暖かいタロウ様の気持ちに包まれて、改めてこの家にお仕えできて良かったと感じた。 |
林道 忍 2015年12月25日(金)21時02分 公開 ■この作品の著作権は林道 忍さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
2016年01月26日(火)00時27分 | ピューレラ | 作者レス | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
コメントくださった皆さん、ありがとうございました。 短いですが個別に返信させてください。 >ウサリアスさん 他の方も書いて下さっていましたが 世界観についての説明が足らな過ぎたなと反省しました。 自分の中ではどんな世界観でどんな設定なのかが分かっている上に 難しい世界観では無く、現代社会とRPGのような世界観が一緒になっただけという 単純な思いがありました。 ですがそれは私だけがわかっていることで 説明を入れないとダメだと当たり前の事なのに分かりました。 ありがとうございました。 >藁谷拳さん 私は、ひかわ玲子さん、ゆうきりんさん、上橋菜穂子さんのファンタジーが好きなのですが だからこそ、王道ファンタジーでは無い私なりのファンタジーを考えた時 どうしても現代社会と融合させたものを描きたいと思ってしまうんです。 西洋風になった途端に何だか嘘っぽくなる気がして。 ですので、今回はテレビショッピング好きの勇者というのだけは決めてあって そこに肉付けしつつストーリーを作っていったという感じです。 高評価してくださり本当にありがとうございました。 >筋肉バッカさん >サチがこういったことについて考えている場面がないので、なんとなく唐突に感じました。 そうですね、そう書いてくださって気がつきました。 私も書いてくださった感想を読みながら、うんうんとうなずいてしまったぐらいです。 私が小説を書く上で、こういう部分を一番大切にしていたはずなんですが そこをおろそかにしてしまったなと思いました。 ありがとうございます。 >鷲飼ゲルさん >しかし早い段階で気になったのは、描写が不足しているように感じられる部分があちこちに見られたことです。 そうですね、自分の中だけで世界観、設定を分かっているつもりになって それを描写できていませんでした。 >タロウがサイドカーを運転してサチを乗せていく これいいですね。それぞれにバイクを運転、それもモトコンポのようなコンパクトなものを 勝手に想像していました(苦笑)それはそれで突っ込みがありそうですが そういうのをちゃんと描写しないとですよね。 ありがとうございました。 >ハイさん >私的には、ピカピカナイフの原料が櫛の原料でもあった、とかであれば、タロウが頑張った理由とプレゼントの価値があがって、より読者を感動させられたのではないかな、と。そう、思いました。 それはいいですね。そこまで考えていませんでした。 わざと子どもっぽさの抜けない勇者というのが書きたいなと思ってタロウを書いたので 嫌いじゃないと言っていただけで嬉しいです。 ありがとうございました。 >モンハンほもさん >作品内の視野が狭すぎることが一番の原因 そうですね、書いていると自分では気づかないものの こうやって時間をおいて見ると分かってきました。 勇者とテレビショッピングというアイディアだけは最初から決まっていたので そこからどうストーリー展開していくかが まだまだ甘かったと思います。 ありがとうございました。 >いりえミトさん テレビショッピング好きの勇者を描くには 勇者本人の一人称で書くより、傍にいる者から見た姿を描く方がいいなと思って サチ目線にしました。 最初の状況説明、設定描写を手っ取り早くするためにプロローグとしての三人称に してしまったのは、確かに自分でもちょっとと思うところはありました。 ありがとうございました。 >99kgさん 現代社会と変わらないイメージなので飛行機も新幹線もあるのですが 17歳の子どもの移動として飛行機や新幹線ではお金がかかり過ぎるかなと 勝手に想像して書いてしまっていました。 ドラゴンが山を焼き始めた理由は、寝ているところを起こされてしかも攻撃されて イラっとしたから(苦笑)というようなところでしょうか。 ありがとうございました。 >青出さん テレビショッピングの商品は、せっかくなので短編でありながらも 少しでも多く商品を登場させたいなと思って書きました。 それでもゴチャゴチャなり過ぎないようにアホらしいぐらいな商品や分かりやすいものを 考えてみました。 そうですね、タロウとサチの事をもう少し描けば良かったなと思います。 最初の三人称も設定を説明するために少しズルをしたような感覚で やってしまったので余計におかしなことになったのかもしれません。 ありがとうございました。 >つとむューさん >いっそのこと、この様子をテレビショッピングで放映したら、バカ売れするんじゃないでしょうか? なるほど!そうやってタロウやサチがエレナのテレビショッピングに貢献する物語 そういうの面白そうですね。 その方が書いて下さったようにテレビショッピングという題名が生きますし 話がまとまりますよね。 ありがとうございました。 >タカテンさん 現代っぽい何かとRPG冒険者っぽいものを組み合わせた設定にしたいと考えて 勇者とテレビショッピングというものだけ一番最初に決めていました。 個人的には微乳が好きなのですが、テレビショッピングのようなビジュアルで うったえるものには巨乳の方がいいなと考え 私の頭の中は「ぱゆんぱゆん」に支配されました(笑) >苦労して手に入れた伝説の剣がテレビショッピングで売られていたり これいいですね。 後から振り返ってみると、もっと面白く出来たかなと思いました。 ありがとうございました。
|
2016年01月17日(日)18時36分 | タカテン yRNUcsqs0o | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
冬企画への参加、お疲れ様です。 拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。 (良かった点) ・ 勇者とテレビショッピングという組み合わせ なかなか出てこない組み合わせだと思いますw こういう自由な発想が出来るのが羨ましい。……はっ、勇者とネット通販というアイデアがこの瞬間ボクにも浮かんだぞ!(モロパクリ ・ ぱゆんぱゆん 私は それが 大好き です。 いいよね、夢がある表現だと思います、ぱゆんぱゆん (気になった点) ・ 話にこれといった山がない 世界観、キャラクターは良かったと思うのですが、ストーリーは山がなくてどこかだらだらとした印象を受けたのが勿体無かったです。 やはりドラゴン退治は勇者さまの見せ場ですから、ここでもっと盛り上げてほしかったですね。ピンチでダニエルとエレナのテレビショッピングコンビが現れて助けてくれますが、ここは商売人として手は出さず、ただひたすらこの窮地を救い出すようなアイテムを次から次へと勇者ご一行に叩き売ると良かったんじゃないでしょうか(強欲 (自分ならこうするという無責任なアドバイス) 勇者とテレビショッピングという組み合わせをもっと意識した作りにしたいですね。先述したようにどんな窮地でもテレビショッピングのおかげで脱出してしまったり、クエストで依頼されたアイテムがどうしても見つからないのでテレビショッピングで買ってしまったり、逆に冒険の果てに苦労して手に入れた伝説の剣がテレビショッピングで売られていたり(しかも一振り買えば、もう一振り付いてくるパターン)とか。 色々とチート的な意味合いで都合よく使えそうな設定だと思いますw それでは失礼いたします。 執筆お疲れ様でした。
|
2016年01月16日(土)06時43分 | つとむュー | 0点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
冬企画の執筆、お疲れ様でした。 御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。 >今日もテレビにはタロウの大好きなエレナが、おっぱいをぱゆんぱゆん言わせながら変わった武器を紹介していた。 勇者様がおっぱいぱゆんぱゆんのテレビショッピングに夢中になる、 ほのぼのとしたドラゴン退治旅行記でした。 テレビショッピング、サンタへのお願い、ピカピカナイフ、ルイスの山の鉱石など、 物語が進むにつれて色々なものが出て来て、 ストーリーが発散してしてしまったような感じがしました。 >「はぁい、皆さん! こちらは普通の傘ではありません。この傘から水を放出する事の出来る雨出し傘です」 個人的に、一番面白かったのは、この部分でした。 いっそのこと、この様子をテレビショッピングで放映したら、バカ売れするんじゃないでしょうか? その他にも、勇者様やサチにも違う商品を持たせて、 それを使ってドラゴンを退治する風景を放映したら、その商品も売れるような気がします。 そんな風に、タイトルにある「テレビショッピング」に的を絞った方が、 話が発散しなかったのではないかと、個人的には思いました。 >包みを開けると赤い和風の櫛が入っていた。 包みの中にもカメラを仕込んでおいて、テレビショッピングに利用するという手もあるかもしれませんね。 包みを開けてサチが喜ぶ顔が放映されたら、マジックポイント貯金箱櫛もバカ売れするかもしれません。 そうなったらエレナさんのぱゆんぱゆんのおっぱいもホクホクです。 いろいろ書いてしまいましたが、ほのぼのとした勇者様が可愛い作品でした。 拙い感想で申し訳ありません。 今後のご活躍に期待しています。
|
2016年01月10日(日)22時59分 | 青出 | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
こんにちは。感想を書かせていただきます。現代文明とRPG的ファンタジー世界がミックスした、ほんわかした世界観を楽しませていただきました。 ここが好きです ○テレビショッピングというアイデア 武器や魔法の道具を売るテレビショッピングという発想は新鮮で、面白かったです。どういうラインナップの商品があるのか興味がわきます。『ドラえもん』の秘密道具のようにシリーズで描いたら面白そうですね。エクスカリバーやマサムネなんかが通販されたら……などと妄想しました。また、それを紹介する社長のエレナちゃんや、テレビショッピングマニアの勇者というアイデアも意外性があってよかったです。 ○自然な世界観 現代日本世界の中に、RPG的ファンタジーの制度が落とし込まれていますが、それがとても自然でしっくりきました。短編で異世界を構築するのは難しいなあと思うのですが、こういう見せかたですと、読者としてもストレスなく世界観を理解することができてよかったです。ビジネスホテルに泊まる勇者や、それに違和感を抱かない一般の人たち、という描写が面白かったです。 ○テーマ 「勇者に仕える少女が、人に感謝するとはどういうことかを知ること」というのが作品のテーマだと読み取りました。テーマ自体も身近で共感しやすく、エレナとの出会いを通してそれを理解していくという構成もわかりやすいものでした。このテーマとテレビショッピングというネタの間につながりを持たせると、さらによくなるのではと思います。 ここが気になりました ○視点 冒頭の節が三人称、以降の文章はサチの一人称と、視点が異なりましたが、途中まで作品世界の把握に多少混乱を覚えました。というのは、冒頭はタロウを中心に語られていて、またそのネタもインパクトのあるものなので、「この作品はタロウの物語なのだな」と思いながら読み進めていたからです。しかし、「1」以降はサチの物語なので(サチから見たタロウを中心とした物語ではなく、サチ自身の成長の物語と理解しました)、作品のどこを中心に置いて読めばいいかわからなくなってしまいました。ですので、冒頭からサチの視点にしたほうがよかったのかなと思います。 ○サチの容姿 サチが、黒髪がチャームポイントだということは、物語のもっとはじめの部分で説明したほうがいいのではないでしょうか。そうすると読者としては、巨乳のエレナと黒髪ストレートのサチというふたりの美少女を長く楽しめると思いました。 ○タロウに対する感謝の気持ち 夜更かしで、朝は起こしてもらって、ご飯も作ってもらって、仲間に相談せずに依頼を受けてしまう……というタロウの行動は、勇者らしい天真爛漫さと言えばそうかもしれませんが、少しサチに対する思いやりが足りないように感じてしまいました。ストーリーの中で何か1つ見せ場を作ってあげるとよかったのかな?と思います。たとえばサチがピンチになっているときに命がけで守ってあげるシーンなどがあると、サチのタロウに対する思いに、より説得力が増したかもしれません。 ○他、少しだけ気になった点 ・タロウの家の構造が、和風なのか洋風なのかわからず気になりました。 ・ドラゴンはなぜ山を焼いたのでしょうか。 楽しませていただきました。次回作も期待しております!
|
2016年01月08日(金)02時12分 | 99kg mXR.nLqpUY | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
世界設定は現代文明でありながらファンタジー。 テレビ、味噌汁、和食がある中で、同時に勇者と魔法使い。 ファンタジーだと思ったら現代的、かと思ったらファンタジーと世界観がイメージしにくい。 そういうものだと言ってしまえばそれまでなのですが、そういう世界で何を見せてくれるのか? という期待に答えるものは特になかったというのが感想です。 >バイクで一日半ほどのところ。 確かにファンタジーでは馬で一日半とか言うけどね。 飛行機とか新幹線とかないんですか? 由緒正しい勇者である事と、ドラゴンを二人で倒してしまう事(助けはありましたが倒せる前提で挑んでますからね)から結構強いはずです。 移動だけで往復三日かけるというのはかなり世の中の損失だと思いますね。 ドラゴンが森を焼き始めた理由もよく分からないです。 人質のような作戦だったのなら知能が高いですが、その割には簡単にやられてしまう。 >まるでおもちゃのナイフを振り回す子どものように。 サチ寝ないんでしょうか……。 冒頭はプロローグという事で三人称なんでしょうね。 特に分ける必要性もないように思います。 分けてもいいんですけど世界設定と同じく期待させておいて結局何もないの? となってしまうんですね。 と突っ込み所はありますが、それは作品のメインではないと思います。 全体的にはほのぼとした雰囲気がいいです。 キャラクターも光っていると思います。少し狙いすぎている感はありますが。 執筆お疲れ様でした。
|
2016年01月05日(火)21時53分 | いりえミト | 20点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
こんにちは。 御作『勇者様はテレビショッピングがお好き』を拝読したので、感想を書かせていただきます。 RPG的な世界観とテレビショッピングという組み合わせが、意外性があってよかったですね。 勇者タロウの視点ではなく、あえて魔法使いのサチの視点で物語進めているのがいいと思います。 そのおかげで、普段は子どもっぽいけどやるときはやるタロウの魅力が客観的に描かれていたと思います。 サチ自身や、エレナのキャラにも好感が持てました。 サチとエレナの間に生まれた友情や、「周りの人たちの大事さ、ありがたさ」みたいな下りも、心があたたまりました。 ドラゴンを倒すシーンはあっさりしていたんですけど、戦闘をメインにした作品ではないので、それで合っていたと思います。 全体として、大きなインパクトこそない感じでしたが、安定して楽しめました。 ひとつ思ったのは、冒頭に関してでしょうか。 冒頭だけ三人称で、なんだか説明的な書き方なので、ちょっと浮いてる気がしました。 最初からサチの一人称で物語を始めたほうが、まとまりがよくなったんじゃないかと思います。 私からは以上です。 執筆おつかれさまでした
|
2016年01月05日(火)21時00分 | モンハンほも | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
拝読いたしました。 まず最初に。王道ファンタジーの設定とテレビショッピングを掛けあわせるというアイデアが秀逸です。また、キャラクターも立っていたと思います。 ……ですが。「コレじゃない」感が強かったです。せっかくの設定とキャラクターをまったく活かしきれていません。失礼を承知で申し上げると、御作は神戸牛をコゲ肉にしたような印象を受けました。 具体的に申し上げると、スケールの大きさとしょーもなさが足りないというか、作品内の視野が狭すぎることが一番の原因だと思います。自分ならですが、「テレビショッピングにはまった伝説の勇者が、零細企業のために一肌脱ぐ」というインパクトのあるフレーズを打ち出して、勇者は伝説の英雄として名高く、エレナの会社は財政難、という設定にします。ストーリーは変えず、起死回生の商品としてピカピカナイフを発売するも鉱石採掘場にドラゴンがいて――という形にしますかね。伝説の勇者と零細企業、というのは一例ですが、とにかくギャップを生み出すことを意識して頂ければと思います。 厳しいことを書きましたが、それだけ御作の設定とキャラクターに可能性を感じた、ということをお伝えできれば幸いです。叱咤激励のつもりで書いた感想とご理解いただければと思います。 拙い感想で申し訳ございません。 以上、失礼いたしました。
|
2015年12月31日(木)02時00分 | ハイ s7d/2ml3o. | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
拝見しましたので、感想を置いていきます。 ●文章 やや単調で描写不足な部分もありましたが、読むのに困るほどではありませんでした。 ●キャラ タロウがなんとも苦笑もので……。 17でこれ? と、見ていて軽く頭を抱えたくなりましたw いや、嫌いじゃないですけどね。 ラストの行動もありますし、割に好きかも? ●テーマ 世界観がすごいごった煮なので、クリスマスの存在が若干違和感でした。 が、お題の消化としては妥当なところだったかと思います。 ●ストーリー とりたてて上手さは感じませんでしたが、話のしめ方は綺麗に整っていたかと思います。 さりげないタロウの優しさが良いですね。 私的には、ピカピカナイフの原料が櫛の原料でもあった、とかであれば、タロウが頑張った理由とプレゼントの価値があがって、より読者を感動させられたのではないかな、と。そう、思いました。 あと、どうでもいいかもですが、マジックポイント貯めとける櫛って、地味に強力なアイテムだと思いますw 私からは以上です。 それでは、ともに上げていきましょう!
|
2015年12月30日(水)17時29分 | 鷲飼ゲル YGyum30nrk | 0点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
作者さんへ 作品を拝見しましたので、感想を延べさせていただきます。 本作のテーマである「クリスマスと美少女」は、物語の主要な設定として織り込まれていたと思います。 きちんとテーマを元にしてお話が作られたように感じられたことは好印象でした。 それと私も同じテーマで本企画に投稿しており、本作の作者メッセージを見て興味が湧いたので拝見させていただきました。 作品についてですが、「現代文明とファンタジー世界を組み合わせたもの」と作者さんのメッセージにあるとおり、作品タイトル通りのシュールな場面から物語が始まっていました。 私生活のだらしない少年勇者と、奉公人のような関係であるしっかり者の少女魔法使いの間で行われる緩い掛け合いが微笑ましい印象です。 しかし早い段階で気になったのは、描写が不足しているように感じられる部分があちこちに見られたことです。 例えばキャラクターの外観では、最も活躍するタロウとサチの服装についての情報が作中の文章からは得られませんでした。 タロウの武器についても >大きな剣 とあるだけで、それが身の丈を越えるほど大きいのか、長いだけで細身なのか、それともベルセルクのガッツみたいな肉厚幅広の大剣なのか……といった具合に、読者としては気になってモヤモヤしてしまう点でした。 また、バイクで街に移動するにしても、二人がそれぞれ別のバイクに乗るのか(これはサチが格好いい!)、タロウがサイドカーを運転してサチを乗せていくのか(頼れるタロウの一面が出る)……これだけでも街へ向かう状況を今よりもイメージしやすくなります。 きっと作者さんの頭の中には明確な絵がイメージできているのだろうと思いますので、その内容がもっと本編に書き出されてくると、作品の魅力が伝わりやすくなるのではないでしょうか? ラストの戦闘についても >額目掛けて剣を振り下ろしに行く >胴体に向かって剣を振り下ろしに行こうとした >タロウ様の剣がトドメを刺した と、かなり端折られた描写であるように見えています。 この場面は特に、作者さんの想像する戦いの映像を詳しく文章化することによって、今よりも迫力が大きく増すだろうなと思いました。 作者メッセージにあった「二人は仲良くなれるのでしょうか。」の要素は、いざ二人が出会うとその場で仲良くなってしまうので、少々あっさりし過ぎていた印象を受けました。 何度かの交流を通して徐々に仲良くなったり、ラストの戦闘を経てお互いを認め合うといった、間という溜めというか、そういうワンクッションが挟まれていたらもっと印象的な要素になりそうですね。 以上、これはあくまで私個人の感想や想像でしかないので、作者さんによる取捨選択をよろしくお願いします。 少しでも作者さんの役に立つ内容があれば幸いです。
|
2015年12月30日(水)15時29分 | 筋肉バッカ 9.WICozezU | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
こんにちわ。読ませていただきました。 最初にお伝えしておきます。 俺は巨乳のほうが好きだッ!(どーん) ということでエレナちゃんぱゆんぱゆん良かったです。 気になった点です。 ぱゆんぱゆんが足りないッ! 勝手に想像していたものとは全然違いましたね。もっとムフフできるお話かと思っていたら、普通に良い話風のお話でした。まぁ、これはこれで良かったのですが…ぱゆんぱゆんが欲しかったよぅ… すいません。真面目にやりましょう。 サチがエレナと出会うことで愛情や感謝の意味に気づくというのがメインですかね。それに気づいたというのはいいのですが、件のサチとエレナの会話シーンに至るまでに、サチがこういったことについて考えている場面がないので、なんとなく唐突に感じました。サチが辿り着いた結論については、そうだね、と納得はできるのですが、急にそういうことを言い出したのであまり感慨深くは思えませんでした。 あと勇者タロウ。いいキャラっぽいのにあんまり本筋と関係ないというか。ドラゴン討伐とかはあるんですけど、先述のサチとエレナのシーンで結構、お話のテンションが高まった後なので、なんとなくおまけみたいな感じを受けてしまいました。勇者タロウ、エレナを交えた三名で苦戦の末に勝利を収め、その結果として、サチが感謝や愛情の重要さを実感する、という構成のほうがしっくりくるような気がしました。 以上です。 執筆お疲れ様でした。
|
2015年12月29日(火)18時23分 | 藁谷拳 Awdr/kQ7Ic | 30点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
ライトノベルに出てくるファンタジー小説ってあんまりファンタジー感がないんですね。 どっちかっていうとテレビゲームのRPG寄りな感じ。 正統派ファンタジーが好みな私には幾分不満があるのですが、これも時代の流行というわけで無理やり納得している今日この頃です。 ……と、いきなりな自分語りはこの辺にしておいて、本作も正統派とはかなりかけ離れた「ファンタジー」になっております。 最初からテレビが出てきて、朝にはご飯とみそ汁。移動にはバイク。名前はタロウとか。 もうこれは確信犯ですね。確固たる意志をもってファンタジーから逸脱しています。 しかも、その逸脱ぶりがいい感じです。 それで、感想を書くからには少しでも作者さんのためになることを考えなければならないのですが…… 正直言って、なにもありません。 本当に、なにもありません。 大事なことなので二度言いました。 それほどにレベルの高いコメディとお見受けしました。 まったく役立たずな感想で申し訳ないですが、これからも頑張ってください。 むしろ私が頑張れ。
|
2015年12月29日(火)00時15分 | ウサリアス | 10点 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
こんばんは、感想専門のウサリアスです。 通販をネタにしたファンタジーというのは、面白く、着目点も悪くはないです。 だからなのか、世界観が明示されていないのと、それを生かし切れていない点が引っ掛かります。 世界観が明示されていないというのは、具体的に、どのくらい現代文明に近いのか?というのが明示されていないせいか、現代文明の用語に違和感を覚えて、物語に集中できない部分がありました。 また、通販をネタにするなら、その手のアイテムでドラゴンを叩く、その効果が宣伝通りなら、驚いたり、著しく違ったら怒ったりする等、もう少し通販ネタを活かすと、なお、良かったです。
|
合計 | 11人 | 120点 |
作品の編集 |