人恋し幼雪女 |
ヨウイチは生まれつき暑がりだった。 筋肉質で新陳代謝が良いというわけでもなく、肥満体形で汗っかきというわけでもない。むしろ細身でひょろりとした印象を与えるヨウイチの体には、不思議なことにいつでもうらうらとした暖かさがあった。 ヨウイチの暑がりは普通の暑がりとは訳が違う。ヨウイチの体に近づくだけでうっすらと額に汗が滲み、部屋の温度をじわりと上げてしまうほどなのだ。 『人間暖房機』という風変わりな愛称で呼ばれるヨウイチは、冬の季節でも体の火照りが止まらず、日々の生活にも難儀していた。 特に高校から始めたコンビニのアルバイトでは、棚卸するたびに手が汗でびしょびしょになってしまって仕事にならない。それを見かねた店長から特例でタオルの常備装備を認められたくらいだった。 「この寒い時期になると、ヨウイチ君の存在はありがたいんだよねぇ。いつもお疲れ様」 冬の12月、耳を引き千切るほど寒い風が靡く深夜11時のこと。郊外にひっそりと建つ大手コンビニチェーン「ファミラーマートン」のフロアにて、初老を迎える当コンビニの店長は、熱心に働くアルバイトのヨウイチに労いの言葉をかける。 「なんすか店長。ジッと見てるんなら棚卸手伝ってくださいよ。このビール缶めっちゃ重いんですからね」 悪態をつきながらヨウイチは店長を睨む。 「ははは。冬の夜11時でも君がいるだけでフロアがこんなに温かいんだよね。ヨウイチ君を雇うだけで光熱費が浮いちゃったよ」 店長の言うことは決して大げさではなかった。ヨウイチの体は常にふつふつとした熱を帯びていて、それが途切れることなくフロア全体を暖かくしていく。だからヨウイチが働く間は、真冬の夜でも暖房を付ける必要はなかったのだ。 「いいっすからはよ手伝ってくださいよ、もー」 「うんうん、わかったよヨウイチ君」 ふう、とヨウイチは額に伝う汗を拭う。ヨウイチの体に籠る熱が次々と冷えた外気に吸収されているが、ヨウイチの熱源が収まる気配はまるでない。 「そう言えばヨウイチ君は、寒くてたまらないってことになった事はあるかい?」 棚卸を手伝いながら店長はヨウイチに尋ねる。 「あー、ないですね。生まれてこの方、厚着したことないっすから」 「いやあ、本当にすごいね君の体温は」 「まあ、肝心の俺は熱くて暑くてしょうがないんですけど、ね」 ヨウイチは軽く背伸びして、凝り固まった背中をほぐす。 「誰でもいいから、俺の体を思い切り冷やしてくれないかなあ……」 「北風ですら君を寒がらせることが出来ないしね……お、もうすぐでヨウイチ君、あがりの時間じゃないかな」 「あ、ほんとだ。時間進むの速いなぁ」 「高校一年の春から働き始めて、ちょうど8カ月だね。いつもお疲れさま」 「いえいえ俺こそ。親から離れて暮らす俺を雇ってくれた店長に、本当ありがたく感謝していますよ」 「ふふふ、そうかい。そう言ってくれるとうれしいね。そうだ、あの肉まんを持って帰るといい。あれはもうすぐで廃棄になるからね」 「まじですか。ありがとうございます! かえったらキンキンに冷やして食べます!」 「そういう風に肉まん食べる子初めて見たよ」 ヨウイチは冷やした肉まんの感触を楽しみにしながら、鼻歌交じりで棚卸をこなしていったのだった。 そして就業後。ヨウイチは高校の制服を身にまとい、店長にあがりの挨拶をして裏口から颯爽と外に出る。手には肉まんを大切そうに抱えていた。その数4個。 それ以外にもヨウイチの手には大量の弁当が抱え込まれていた。賞味期限切れで廃棄されたものだ。親からの仕送りが見込めず、日々の食事に難を抱くヨウイチにとって、この食料は生命線ともいえた。 「さあ帰ってかき氷食べよっと」 ヨウイチは食料を抱え軽快な足取りで帰路へと向かう。 冬の12月の夜風は氷より冷たい。コンクリートの地面と草木には霜が降り、夜の星空が寒さで磨きだすように冴えている。 そんな、寒さを通り越して痛みすら感じる外気の中で、ヨウイチの服装は至って軽装だった。防寒具もなければ厚着もしていない。何をせずとも、暑がりのヨウイチの体はいつだってポカポカだったのだ。 そんな最中。夜の街灯が頼りない静かな夜道にて。 ふわり、と、ヨウイチの背中に悪寒が走った。 身を切る夜風のせいではない。 なにか、自然を超越するような、芯から凍りついてしまうような寒気。 そんな寒気を感じたのは、初めてだった。 ヨウイチは思わず立ち止まり、本能的な恐怖心を抱えながら、身を固める。 しかし、次にヨウイチの五感に舞い降りたのは、まるで予想だにしない物だった。 「あ、肉まんだ!」 (え?) ヨウイチはあっけにとられる。 今しがた後方から聞こえたその声は、純粋で無垢で、そして、あまりにも、幼すぎたからだ。 なんだってこんな夜遅くに、こんな幼い子供の声が聞こえたんだ。 そんな面持ちでヨウイチは後方を振り向く。 その先には、雪のように純白な肌をした、まだあどけなさを残す幼女がいた。 薄暗い夜道でも幼女の体はまるで発光しているように眩しく、たおやかな四肢と平坦な胸がどこか愛くるしい。純白な着物が夜風でひらひらと楽しげに舞っていて、長い白銀の髪が小波を打っている。 そして、ヨウイチが抱える肉まんを羨ましげに見つめる幼女の顔は、おもわず甘やかしてしまいそうなほどに可愛らしいものだった。 「ねえ、その肉まん、ちょうだい?」 ヨウイチは思わず手に持つ肉まんを差し出そうとする。が寸でのところでためらった。 「い、いや、これは俺の大切な食料だ! 絶対やらねえぞ!」 「でも私、おなかがすいたの。お願い、一個だけでもいいの。ちょうだい?」 「やっ…… や、やらねえ!これは俺んのだ! というかこんな4つも食べられないだろ!」 幼女の誘惑的な表情に懸命にこらえながらヨウイチは肉まんを手から離さない。 「そう。だったら……」 すると幼女は、イラズラっぽく笑って、 「凍らせて保存しちゃえばいいのよね?」 え、とヨウイチが驚くのもつかの間、幼女は手をすう、と前方に据えたかた思うと……手のひらから冷気を発した。その冷気はヨウイチの手に持つ肉まんを瞬時に凍らせていく。 「つめたっ!?」 思わずヨウイチは肉まんを手から離してしまった。 コツン。 金属のように凍りついてしまった肉まんの落下音だ。凍りついた肉まんが地面を転がって行くのを見て目を丸くしたヨウイチは、つと幼女の方を垣間見る。 幼女は体を縮こませながら、くしゅん、とくしゃみをした。 「うー……やっぱり寒い日にこんな能力使うんじゃ無かったよぉ」 そう言ったのもつかの間、幼女は前方にのめり込むように倒れてしまった。ヨウイチは咄嗟に幼女に駆け寄って大事そうに抱き上げる。 「お、おい! だ、大丈夫かっ!?」 すると、幼女のお腹が、ぐう、と鳴った。 と同時に静かに目が閉じて、幼女はぴたりと気を失ってしまった。ヨウイチはここで、華奢な幼女を抱きかかえる手が痛いほどに冷えているのに気が付いた。そして地面に転がった肉まんの氷漬けを見て、ヨウイチは息を飲む。 「まさかこの子……雪女とかじゃあねえだろうな」 ヨウイチは末恐ろしい気持ちになったが、気を失った幼女をほっとく訳にもいかず、ヨウイチは幼女を抱え込んで自宅に連れ込むことにしたのだった。 ヨウイチが下宿するアパートの一室にて。さて、とヨウイチは布団の上に幼女を仰向けにして、ゆっくりと寝転がせる。そしてヨウイチはカチンコチンに氷漬けになった肉まんを手にとり、それをしげしげと眺めては横たわる少女を見比べた。 「俄かには信じられねえか、マジモンの雪女なのか……?」 空想上の存在が目の前にいることでヨウイチは少し頭がクラクラとしたが、次第に思考の調子を取り戻していく。 「とにかく、この子を介抱しよう。さすがに弱ってそうな子をほっとく訳にもいかん」 そしてヨウイチは1LDKのぼろアパートの自室をぐるりと見渡し、まず冷蔵庫に目をやった。そしてクーラーのリモコンを注視し、ヨウイチは『雪女が喜びそうなこと』をいそいそと始めたのだった。 「まあ、いつも通りの部屋にしていればいいのかな?」 ヨウイチは冷房をかけ、冷凍庫からアイシングを大量に手に取りそれを幼女の周りに置く。そして当たり前のように部屋に鎮座していた扇風機をかけ、うちわで軽く幼女を仰ぐ。 ヨウイチの部屋は、まさに夏の熱帯夜にふさわしい様相を呈していた。 しかしこれは、ヨウイチにとって年中無休のスタイルだった。 「しっかし今日の夜の気温は6度か……今日も暑いなぁ」 ヨウイチは体の中から迸る熱源を氷やうちわで冷やし、半袖半ズボンでアイスバーを食べながら、幼女の目が醒めるのを待ち続ける。 やがて布団の上で寝ころんでいた幼女が、つと目を醒ました。 「あれ? ここは……」 ヨウイチはアイスを食べる手を止め、目が醒めた幼女に近づく。 「お、目が醒めたか。いきなり倒れたもんだからびっくりしたわ」 「あ、君はさっきの……って、さむっ!」 幼女はくしゅんとくしゃみをして、両手で体をこすりあわせた。 その仕草は、寒がりで縮こまるようにしか見えなかった。 「え?」 ヨウイチは素っ頓狂な声を上げて寒がりな幼女の姿を見る。 「え、じゃないよ! どうしてこの部屋、こんなに寒いの!?」 「いやだってほら、あんた雪女だろ?」 「そうだけど……ってなんで私の体に氷が敷き詰められているの!? 遺体安置所なの!? それにどうしてクーラーも扇風機も全部私の方だけ向いているの! というかなんで冷房!? そこは暖房じゃないの!?」 「そらあんたが寒いの好きだろうと思って」 「違うもん!」 幼女は元気よく立ち上がり、きょとんとするヨウイチを見下ろした。 「私! さむがりだもん!」 「……寒がりの雪女ってなんだよ」 「いいから早く温かくして! 私凍死しちゃう! あ、あとさっきのあったかい肉まん持ってきて! 温かいお茶もね!」 「積極的に雪女としてのアイデンティテイを失いにいこうとするんじゃねぇよ」 閑話休題。 「まあ私は見ての通り雪女なわけだけど」 「炬燵に入ってアツアツの肉まんほおばりながら言うな」 ごくり、と肉まんを幸せそうに飲み込む幼女を、ヨウイチは炬燵から離れた場所で座りこみながら見る。 幼女に言われるままヨウイチは、とりあえず扇風機と冷房を止めて暖房に切り替え、氷はすべて洗い場に投げ捨てた。幾分暖かくなったかと思ったヨウイチであったが、それでも幼女がくしゃみをするので、ヨウイチは仕方なく炬燵を押し入れから引きずり出した。前の住人が置いていったものでそれなりの年代物だったが、幼女はすっかりそれを気に入った様子で、炬燵に体をすっぽりと埋めてぬくぬくと堪能していた。 そんな幼女の姿を見て、ヨウイチは大いなる疑問を隠さずにはいられなかった。 「なあ、お前ってその……いわゆる雪女なのか?」 幼女はこくりと頷く。 「そうだよ。雪山に住む、雪女。つい最近まで私はね、雪女の妖怪として雪山に住んでいたの」 「……マジで雪女なのか」 幼女は暖かいお茶を飲み、ふう、と白い息を吐いて、 「でもね、寒がりだから雪山の寒さに我慢できなくて。それで雪山から降りてこの街に迷い込んだのよ」 「やっぱりお前実は雪女じゃないだろ」 「むむ、私はれっきとした雪女だよ。君もさっきみたでしょ? 肉まんを思い切り凍らせたの」 そう言われると、ヨウイチは何も言い返すことが出来なかった。 確かにあの時、氷漬けになった肉まんは、怪奇現象と言わざるを得なかった。 そして、その怪奇現象の影には妖怪の姿が……ということも、ヨウイチは直感的に察していた。 「まあでも、雪山から離れて今までずっと、雪を降らす練習を怠っていから能力ががくんと衰えちゃった。君の肉まんを凍らせるだけでもバタンって倒れちゃうくらいに……あと最近寒いから、寒さにやられて体調もすぐれなくて」 ごくり、とお茶を飲みほしてから、幼女はちょこんと正座し、ヨウイチと正対する。 「それでね、あのね……お願いがあるの」 「……なんだよ」 「私のこの能力が復活するまでの間──」 「雪女一人を住ませるほど生活に余裕はねえぞ」 「この部屋で暮らしていい?」 「直前の大ヒント見逃してんじゃねえ」 「あと肉まんちょうだい? 毎日ね」 「わがままな移民かよ」 「じゃあ……見返りをあげるわ」 幼女は体を前のめりにして、冷えた小さな手をヨウイチの頬にピタッと付けた。ヨウイチは一瞬身が凍りつく程の寒気を感じ、やがて、慈しむようにヨウイチを見つめる幼女の顔に見惚れてしまった。はだけた一張羅の着物の胸元からは、幼女の無防備な白肌がさらけ出されている。 「君って暑がりなのね。触れるだけで私の体がぽかぽかしちゃう」 「……まあ、生まれてこのかた防寒具というものを付けたことがないくらいだからな」 「それじゃあそんな暑がりな君を、寒がりな私が毎日冷やしてあげる」 そして幼女はすりすりと、ヨウイチの顔の輪郭を撫でていく。ヨウイチは幼女のすべすべでひんやりとした手のひらの感触にすっかりふ抜けてしまっていた。 「うわ、お前すげえ冷や冷やだな。これじゃあ冷房要らずだ」 「でしょ? ……だから、ね、お願い。私を、居候させて?」 「ぬ……」 ヨウイチは暫し思案する。 「……なあ、お前って凍らせること以外になんかできる?」 「えーっとねえ、雪を降らせたりとか」 「よしじゃあかき氷作れるんだな」 「え、まあ、うん、そうだけど……というより、今の季節にかき氷?」 「おう。だって俺暑がりだからな」 ヨウイチは半袖半ズボンの姿をどんと見せつける。 「お前のために今こうして暖房付けているけど、はやく冷房に変えたくてたまらねえんだ。体中に熱がこもってて、このままじゃあ勉強にも集中できない」 「じゃあ、ちょうどいいじゃない!」 ぽん、と幼女は手を叩いた。 「私は君を冷やしてあげる。代わりに君は私を暖かくする。これでいこう!」 「……ほう」 ヨウイチは顎に手を置いて、ふんふんと頷く。 「冷房の電気代とかも馬鹿にならねえからなあ……」 「お部屋を暖かくしてもらう代わりに、私が君を冷やしてあげる。毎日かき氷を作ってあげるし、アイスだってたくさんつくっちゃうよ?」 「…………………………よし。採用!」 「やったぁー!」 嬉しさのあまり、幼女はヨウイチに思いっきり抱きついた。ヨウイチの胸筋に幼女の柔らかい頬が擦り付き、ヨウイチの体を芯からきゅうと冷やしていく。 「あー、あったかいねえ、君の体! これからも、よろしくね!」 「……お、おう」 突然の抱擁に驚きながらも、ヨウイチは幼女の言葉に答える。 「とりあえずこれで当分は電気代は浮くな……」 「あ、そうだ、そういえば君の名前はなんていうの?」 幼女は顔を上げる。幼女の吐息がヨウイチの唇に這うほどに、二人の顔は接近していた。 「ああ、俺の名前は、ヨウイチだ」 「ヨウイチ……うん、ヨウイチ! よろしくね!」 幼女はヨウイチの名前を頭に染み込ませるように何度も復唱する。 「んだったら、俺はお前の事なんて呼べばいいんだ?」 「んー。私の名前かぁ」 幼女はヨウイチの胸筋からぺらりと離れ、今度は腰回りに沿う様に体を巻きつかせた。まるで仔猫みたいだな、とヨウイチは思った。 「名前がないのか?」 「うん、名前ってものは無かったかなあ。雪女の仲間たちとは一緒に過ごしていたけれど、特に名を名乗り合ったとかはなかったかな」 「それじゃあ、雪女……って呼ぶのもなんだかなあ」 「じゃあさっ! 名前、つけてよ! 私に!」 「俺に?」 「うん!」 幼女はヨウイチの体温を全身で享受しながらヨウイチの顔を見上げる。火照った頬がまるで焼きあがった餅のようで、ヨウイチはその頬におもわず突っつきたくなるような衝動に駆られた。 「じゃあ……」 幼女の顔はぽっぽっとのぼせたように血色が良く、うきうきとした表情でヨウイチの名付けを従順に待ち続けていた。 「も、もち……いや、もちじゃない、もちじゃあ……そうだ!」 ぱん、とヨウイチは膝を叩いて、 「雪見! ゆきみだ!」 「ゆきみ……?」 「そうだ、お前の頬みたいに白くて柔らかいお菓子! 雪見おまんじゅうっつう二個入りのお菓子があってだな、それだ!」 「ゆきみ……」 幼女は、与えられた名を大切そうに唱和しては、こんこんと頭を揺らす。 「……うん、ゆきみ! 私の名前は、ゆきみ!」 そう言ってゆきみは、満面の笑みをこぼした。 その笑みにヨウイチは不思議と心が暖かくなるのを感じた。 「ああ、それじゃあ、よろしくな、ゆきみ」 「うんっ、よろしく! ヨウイチ!」 こうして、ヨウイチとゆきみの同居生活が幕を開けた。 「そういえなゆきみ。お前の雪女の能力ってどうやって回復するんだ?」 「そりゃあもちろん、いろんな物を冷やしたり凍らせたりする練習を沢山するんだよ!」 「よし、それじゃあ今からかき氷作ってくれ。暖房で暑くて暑くてたまらん」 「……ヨウイチって実は夏の妖怪だったりとかしない?」 「俺は一般ピープルだよ。ちょっと暑がりなだけで」 「……私さ、雪山で妖怪たちと話していた時に、噂で聞いたんだけど……」 急にゆきみは真剣な顔になって、 「人間の世界で、天候を操る妖精と称えられている元テニスプレイヤーの男性がいるっていう噂を聞いたんだけど……本当?」 ヨウイチも急に真面目な顔になって、頷いた。 「……あの人は別格だから。噂とかじゃなくて、真実だから。マジで」 「……その噂、本当だったんだ……」 ・・・ ヨウイチは週5日、下宿先に近いコンビニでアルバイトをしている。ヨウイチが通う高校は県立特有の「アルバイト禁止」という校則があったが、ヨウイチは自分の家庭事情を提示して熱心に説得したことで、特別にアルバイトが認められていた。 その他に早朝の新聞配達も兼業しているから、ヨウイチには同学年の友人と遊ぶ機会はあまりない。それでも、ヨウイチは楽しかった。偶に仲の良いクラスメートがコンビニに現われてはひと時の会話を楽しんだり、むっつりな友人の代わりにコンビニの成人図書を買ってあげたりもしていた(ちなみにヨウイチは見返りでクラスの女子の全メールアドレスを貰った)。 今日も今日とて夜11時までコンビニのアルバイトに精を出し、店長から貰った廃棄弁当を抱えヨウイチは帰路につく。 「おっかえり~」 ヨウイチが扉を開けるとなんとも不抜けたゆきみの声が聞こえた。ゆきみは部屋のど真ん中に設置された炬燵に体を埋め、すっかり顔を蕩けさせている。さらに純白の着物の上にドテラを着込み、ニット帽をふかぶかとかぶり毛糸の手袋を装着するゆきみの姿は、冬の12月で寒がりであることを考慮しても少々重装備すぎていた。 「ゆきみ、お前そんな炬燵でぬっくりしてて本当に溶けないのか?」 「だいじょぶだいじょぶ~あああ、炬燵は人類の叡智そのものだねぇ、ヨウイチっ」 「そうかい」 炬燵の布団に頬をくっつけるドテラ姿の幼雪女に、ヨウイチは温かな肉まんを差し出す。 「ひゃっはぁ、頂きます」 ゆきみは肉まんを手に取り起き上がり、包装をぺらぺらとめくって仄かに湯気が立つ肉まんをぱっくりと頂いた。肉汁がじわりと舌を濡らし、ほかほかで柔らかい生地がゆきみの口内を優しく包み込む。火傷するほど熱い肉まんはすっかりゆきみの体に吸い込まれ、ゆきみの体を内側からほんのりと加熱する。 「はぁ~、肉まん最高だぁ。心も体もあったまるよぉ」 「よし、腹が満たされたら能力使えるだろう」 ヨウイチは残りの肉まんをゆきみに近付ける。ゆきみは唇を窄め、肉まんに向かってひゅう、と冷気を発した。 すると、温かかったヨウイチの肉まんがキンキンに冷えていき、それをヨウイチは美味そうに口に放りこむ。 「よしっ、いい感じに能力の調整が出来てる!」 「毎日良い練習になってんじゃねえの」 キンキンに冷えた肉まんを食べ終わったヨウイチの体は、肉まんの凍えた肉汁と生地で芯から涼しくなっていった。 「いやあ、今まではしばらく冷蔵庫に入れとかないと冷たくならなかったけど、ゆきみのおかげで冷えた物を直ぐに食べられるようになった」 「ねえ、冷たい肉まんっておいしい?」 「おいしいぞ、食べてみるか?」 「やめておくよ。というかヨウイチって猫舌なの?」 「どっちかっつうと体全体が猫舌みたいなところはある。熱い物全般が苦手なんだよな」 「冬はいいけれど夏はどうしていたの?」 「耐エガタキヲ耐エ忍ビガタキヲ忍ビ……」 「辛い戦いだったんだね……」 ゆきみはしんみりとしながらヨウイチが持って帰った弁当を次々と冷やしていく。 「今日の俺の夕飯はカツカレーと牛丼と八宝菜と餃子だ」 「軒並み温かくしないとおいしくない系統のものばかりを揃えてきたね」 ヨウイチはゆきみの向かい側の炬燵に座り、体を炬燵の中に入れないように足を組んだ。そして弁当を炬燵の上に乗せ、いただきますと唱和して弁当の山を一気に平らげる。 「そんなに冷えたもの一気に食べて大丈夫? お腹壊さない?」 「大丈夫。あ、あとゆきみ、かき氷作ってくれ。大盛りで」 「一応確認するけど今真冬の12月だよね?」 「でも例年よりかは温かいだろ今年の冬は」 「明日の最低気温5度だって」 「そら大変だ」 「毎朝暑い暑い言いながらアイスを食べるヨウイチがそれ言う?」 「だって俺暑がりだから、基本的に寒いって感じることはない。この世に俺を寒がらせる物は無いと思う」 少し不機嫌になったゆきみは立ち上がり、ヨウイチを見下ろす。 「雪女の私としては今の発言は聞き捨てならないよ」 「へえ、じゃあどうするんだ?」 ヨウイチの挑発にゆきみは細い眉をきゅっと締めて手をかざす。 「もう怒った! 雪女の矜持を傷つけたね! ええい、思い切り私の冷気に体を凍えてしま──くしゅん! さ、寒い……あ! 部屋から隙間風吹いてる! せっかく昨日塞いだのに、この部屋ボロすぎるよ……。あと暖房つけようよ、炬燵から抜けただけで凍えて死にそうだよヨウイチー」 「お前本当に雪女要素皆無だな」 「雪女馬鹿にしているの!? こうなったら部屋中を雪だらけにあああああごめんなさい炬燵の電源切らないでお願いごめんなさいヨウイチさま~」 「せめて雪女としての矜持を守る努力はしろや」 その後ヨウイチは勉強机でかき氷(ゆきみ特製の微細雪結晶)を食べながら学校の課題に取り組み、ゆきみは炬燵に入りながらテレビの天気予報をはしごしていた。 やがてヨウイチは大きく伸びをして、ゆきみに就寝を呼び掛ける。 「もうそんな時間かぁ。ううう、炬燵は恋しいけれど」 ゆきみは名残惜しそうに炬燵から出て、ヨウイチが用意した布団にばたりと倒れこむ。 「炬燵の電気代も馬鹿にならねえからな」 ヨウイチは部屋の電気を消し、ゆきみと同じ布団に入る。 「まあ、その代わりヨウイチを抱き枕にするからいいんだけどね」 ゆきみは両腕でがっしりとヨウイチの背中を抱きしめ、両手をヨウイチの胸元に静めた。大きく起伏する呼吸でゆきみの薄い胸は何度もヨウイチの背中を押しつけていて、ヨウイチの温かな体温を小さな胸で思い切り吸収する。 「うひゃあ、ヨウイチの体って炬燵みたいに温かいねぇ。冷やし甲斐ってのがあるよ」 背中越しに聞こえるゆきみの声にヨウイチは淡々と答える。全身暖房機のヨウイチと全身雪女のゆきみがお互いに体を寄せ合うことで、二人は絶妙な寝心地を実現出来ていた。 「ゆきみも冷たいな。下手に冷房付けてねるよりもずっと涼しいくらいだ」 「ふふん、雪女を舐めないでよね」 ゆきみは胸を逸らして威張り、ゆきみの薄い胸をヨウイチの背中にこすり当てる。 「ねえヨウイチ、お願い事があるんだけど」 「おう」 「……足、ヨウイチの体に絡めてもいい?」 「よかろう」 「ひゃっはぁ」 ゆきみは喜びながら両足をヨウイチの下半身にからめつかせた。冷たくて小さな足の裏をヨウイチの太股や膝裏、内股に執拗に擦り合わせ、ヨウイチの体温をどんどんと吸収していく。 「ぬぬぬ、これだけ体温奪ってもヨウイチの体は熱いままだね」 「何せ全身暖房機だからな」 「それじゃあ上半身にも足を──」 「ごふぁ!」 「あ、ごめんヨウイチ! 踵がみぞおちにはいっちゃった!」 「お、お……お前」 「へ、へへへっ、ご、ごめんねヨウイチ」 「お前明日の朝食チョコバーな」 「ひえぇ!? それヨウイチの朝食だよね!?」 「うるせえチョコバーの刑を執行する」 「お、恩赦恩赦!」 「だったらもうちょい俺の体を冷やしてくれ」 「う、うん! ええい!」 ゆきみは口から冷気を吐きだし、ヨウイチの首筋をゆっくりと冷やしていく。 「おおう、まるで冷房のド真ん前で眠っているみたいだ。さすが雪女だな」 「へへへ……」 褒められた喜びでゆきみはひとしきりはにかんだ、 「これ続けて結構日は経ったけど、それなりに能力は戻って来たんじゃねえか?」 「そだねえ……物を冷やすよりも、やっぱり人間を思い切り冷やしたほうが、能力が戻りやすいのかな」 ゆきみは声のトーンを落とし、背中を抱きしめるヨウイチに言う。 「私は、人を襲うために生まれた妖怪だから。人を凍えさせないと、存在理由が、なくなっちゃうから……」 「……」 ああ、そういえばゆきみは妖怪だったな、とヨウイチは数日ぶりに思い出した。 「……人間って、温かいんだね」 「どうしたいきなり」 「いいなあって……思って。私も、人を温かくする妖怪になりたかったなぁ」 「……まあ、雪女ってのは雪山に迷い込んだ人間を猛吹雪で襲うっていうイメージはあるな」 「そう、だよね……でも私、雪山から出ていって……」 「寒がりだったからだろ?」 そうヨウイチは笑いながら言う。が、ゆきみからは何も帰ってこない。ヨウイチは訝しんでゆきみの方に顔を向けた。 「……どうしたんだよ」 ゆきみはふるふると顔を振って、大丈夫、と小声で答えた。 「私、妖怪だから……やっぱり、雪を降らさなきゃいけないのかな」 「お前毎日雪降らしてんじゃん」 「それはかき氷っていうの。まあそれはいいとして……私、雪の妖怪だから、もっと雪を降らさなきゃいけないのかな。もっともっと、人を凍えさせないといけないのかなって。最近、思う様になったの」 「んだったら雪ふらせばいいじゃねえか思い切り」 「そういう訳にはいかないの」 「……え?」 「私は雪女として生まれたから……人を、人を、襲わなきゃいけないから……」 「……ある意味では今の俺の状況も、雪女に襲われているってことになんのかね?」 「でもヨウイチって私に襲われても喜んでいるじゃない」 「言葉の綾ってものを考えろ」 ふふっ、とゆきみは笑って、より一層ヨウイチの体を思い切り抱きしめる。 「ヨウイチのおかげで私は……人を襲う妖怪としての、存在を、保ち続けているんだと思う。私の生まれた意味を、保ち続けることが、できるから」 人を襲う、という言葉にヨウイチは暫し怯んだ。 今、こうして寝具を共にしている幼き雪女も、本来ならば人を襲う妖怪である。そのことをヨウイチは思い、口を閉じた。 「私たちのような妖怪は、何よりも存在理由が、大切だから。人を襲わなきゃ、私は雪女としてこの世に存在できなくなる。だから、ヨウイチ以外の人も、私はいつか、襲わなきゃいけないの。でも……」 「……」 「私は、人を、傷つけたくない」 ゆきみの吐息が仄かに暑くなるのを、ヨウイチは背筋で感じる。 「だから、私はね……ヨウイチと会えて、本当に良かった。ヨウイチは、安心して襲うことができるから。どれだけ凍えさせても、ヨウイチはこんなに、温かいままだから。だから……」 ありがとう。 ゆきみの感謝の言葉を聞いて、何と返せばいいのか、ヨウイチは分からなかった。 (おそらくゆきみは今、己の存在理由に、何かしらの忌避感を持っているはずだ) (己の存在理由……この世に生まれた理由に、ゆきみは苦しんでいるのかもしれない) そしてその苦しみは、ヨウイチも同調するところもあった。 両親がなぜヨウイチを産んだのか、その理由。 ヨウイチの存在理由。 ヨウイチ、という名に当てつけられた漢字の、意味。 忘れることのできない忌々しき過去を思い、ヨウイチは息を吐く。 「──なあ、ゆきみ。お前……」 とヨウイチが言い終わる前に、ゆきみは目を閉じてすうすうと寝息を立てていた。 ヨウイチは苦笑して、ゆっくりとゆきみの髪を撫でる。 ヨウイチの顔は、少しだけ寂しそうに見えた。 「そうか、お前も、俺と同じなのかもな」 そしてヨウイチも、ゆきみの冷えた体に体を預けながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。 ・・・ 休日のある日。ヨウイチとゆきみは二人で昼間の外を出歩いていた。太陽と冬風たちは今日ばかりはケンカをやめているのか、温と涼が調和した心地よい空気が二人を包み込む。 防寒具を一切付けない軽装のヨウイチの一方で、コンビニの店長から譲り受けたふかふかのパーカーにニット、そしてイヤーマフにクリスマスカラーのマフラーとゆきみは完全防備だった。 「コンビニの店長さん優しい人だね」 「小さかった頃の娘さんの服だったらしいけど、捨てるに捨てられんらしくてな。駄目元で聞いてみたら案外あっさりくれた……しかし、いきなりゆきみが外に出たいって言い出したから何事かと思ったら、鯛焼きの屋台行きたいとはな」 「だって出来たてが一番熱くて、おいしんでしょ?」 「まあそうだけど……っておい、俺の腕に体を密着させるな」 「えー? だって寒いんだもん」 「ありったけの防寒具着けてもか」 「確かに温かいけれど」 ゆきみはパーカーの温もりをギュッと抱きしめる。 「このパーカーも、店長さんが娘さんのためを想った、温かい代物なんだよね……」 ヨウイチは頷く。 「なんだろう、服の温もりよりも、人の温もりを強く感じるよ。ほら、ヨウイチの体も抱きつくと温かいしさ」 「こら、頬をお腹に擦り寄せるなって」 「へへへー、あったかーい」 「あー、カップルだー」 突然、近所の小学校に通う子供たちが近づいてきて、二人を囲んでしまった。子どもたちはヨウイチと抱きつくゆきみを交互に見ながらはやし立てている。 「としのさカップルだー」 「ひゅーひゅーあついあつい」 「おにいさんこのかたとはいつごろからおつきあいをされてやがるのですか」 「いいですなぁういういしいですなあ」 「ああもうガキどもはさっさと離れろ」 ヨウイチはシッシッと子どもたちを追い払う。が意に介さず子どもたちはきゃっきゃっと騒いでいて、二人はすっかり足止めされてしまった。 「うあー、おにいさんのちかくにいるとあたたかいです」 「ほんとですな、ほかほかしとりますわ」 「いいから離れろー、もう」 「ねえヨウイチ。あの子たちってどうしてヨウイチの部屋着みたいに半袖半ズボンなの?」 「まあ、子どもだからな」 「へぇいおねーちゃん、おれといっしょにあそばなぁい?」 ゆきみよりもいくぶん幼そうな男の子が精一杯のキメ顔を作って誘う。 「おうゆきみ、お前ナンパされてんぞ」 「ヨウイチから離れると寒くて死んじゃうからやだ」 ゆきみはヨウイチを握る力を一層強くする。 「難儀なことで」 「おねーちゃんのまわり、なんだかすずしいね」 「ひょっとしたらおねーちゃん、ゆきのようかい?」 「そうなのかい?」 「ねえヨウイチ。あの子どもたちってどうしてあんなに勘が鋭いの?」 「まあ、子どもだからな」 「ゆきといったらさいきん、ゆきがふりませんなあ」 「ことしはまだゆきがふらんですね」 「たのしみなんですがねえ」 ふとヨウイチは思い出して、ゆきみに小声で話しかける。 「そうだゆきみ、この際だから雪を降らす練習してみたらどうだ。俺を襲った分だけ大分能力は戻って来たんだろ?」 我ながらいいアイデアだ、とヨウイチはゆきみに微笑みかける。 しかし、ゆきみは沈んだ表情をして、黙りこくってしまった。 「え、ど、どうしたんだよゆきみ」 「あーおにいさん、かのじょなかせたー」 「いーけないんだいけないんだー」 「ゆきのおねえちゃんなかせたー」 「お前らは黙ってろ、うるさいな」 ヨウイチはぺしっと子どもたちの頭を叩く。 「うわーたたいたーやられるーたすけてー」 「少しは痛がれや」 突如としてゆきみがヨウイチの体から離れ、元来た道を走り去っていった。 「お、おい、まてよ!」 あわててヨウイチが後を追う。しかしゆきみは冬風の追い風に乗るように疾走し、ヨウイチは中々追いつけない。 ようやくゆきみを捕まえたのは、二人が暮らすマンションの扉の前だった。ゆきみは体躯座りで顔を膝に埋めながら、扉に持たれかけうなだれている。 「なんだってお前はいきなり走って帰ろうとしてんだよ、鍵は俺がもってんのに」 ヨウイチは腕を組み、立ちながらゆきみを見下ろす。 「……私は」 ゆきみは顔を俯かせ、白い息を吐きながらつぶやいた。 「おう」 「雪女、なの」 「……ああ、知って、る?」 「なんで疑問形なの」 「寒がりな雪女というのを果たして雪女というカテゴリにいれていいのか逡巡していた」 「…………やっぱり、ヨウイチは、こんな私を、雪女だとは思わない?」 ゆきみは顔を上げ、ヨウイチを見上げる。 ゆきみの顔は悲壮感に満ちていた。ゆきみの体が震えているのは、冬の空気のせいでもなく、寒がりな体質のせいでもないように、ヨウイチは思えた。 ヨウイチは腰を下ろし、ゆきみと同じ目線になる。 「そら、ゆきみは雪女だけど寒がりだし炬燵は好きだし、トムヤムクンスープがぶ飲みするしお汁粉食べまくるし、全然雪女っぽくはない……だけど」 「……だけど?」 すがるような目でゆきみはヨウイチを見つめる。ヨウイチははにかみながら、ゆきみの頭を撫でた。 「それがお前なんだろ? お前の好きなように生きればいいさ。雪女にこだわることもない」 「でもっ!」 ゆきみは凍えた肺から大声を捻りだした。 「私、私は……雪女として生まれてきたから……もっと、もっと雪を降らして人を、人を襲わなきゃって思って……でも、寒いの苦手だから、能力も上手く使えなくて……」 「それだったらもっと練習すればいいさ。ちょうどいい練習台がいるんだしさ」 「そう言う問題じゃないの!」 「ゆきみ」 「ヨウイチはわからないでしょ! 雪女として生まれた私の気持ちが! この苦しみが! わからないもん! わからなくていいもん! 私の苦しみは人間に理解されたくない! いいから黙ってよ!」 ゆきみは発狂するように大声を出した。ヨウイチは口を閉じ、穏やかな表情で、ゆきみが収まるのを、じっと待ち続ける。 しばらくたつと、ゆきみは落ち着きを取り戻し、呼吸をゆっくりと整えた。 「……ごめん、ヨウイチ。いきなり大声、出して」 「いや、いいよ。それで、ゆきみ……一体、何が苦しいんだ」 ゆきみを叱るでもなく、あやすでもなく。ヨウイチはゆきみの苦しみを受けとめようとした。 そのヨウイチの温かさをゆきみは甘受し、解けた糸を治すようにつらつらと、話し始めた。ゆきみの生まれを。 「ヨウイチ、私はね、人を、凍えさせて、死に至らしめる、妖怪として生まれたの。雪山にやってきた登山の人を、猛吹雪に蔽わせて遭難させて……。人々の恨み辛みが重なって生まれたのが、私、雪女。この私の白い着物ね、これ……死装束なんだ。」 「……」 「私以外の雪女たちは、皆、人を襲って、凍死させてきたの。でもね、私は皆と違って……人を傷つけたくなかった。そう、だから私は、寒がりだったの。人を傷つけ生命を奪うこの雪女のとしての能力が、嫌いだったから。そして私は、人の温もりに憧れていた。でも、それを皆は理解してくれなくて、寒がりの私を馬鹿にしてた。うん、当然よね。だって私、人を凍らせて死を誘う妖怪だもん。そんな私が、寒がりで、それで、人の温かさが大好きだなんて……おかしいよね。雪女、失格よね」 「……ゆきみは、人間が、好きなんだな」 「うん……好き。温かくて、ヨウイチみたいに、ぽかぽかするから……」 「それでいいんじゃねえかな」 「……え?」 「人間が好きな妖怪がいたって、いいじゃねえか。ゆきみがそういう風に生きていきたいんだったら、それでいいんだよ」 「でっ、でも……私は、人を襲うために生まれてきたんだよ……? そんな簡単に、自分の生き方なんて変えられないよ……」 だって、とゆきみは言って、 「人の命を奪えって、ずっとずっと……」 「ゆきみは、自分が変わるのが、怖い?」 ゆきみは無言で頷く。 「そっか……」 そう言ってヨウイチは、ゆきみの頭をもう一度撫でつけながら、笑った。 「俺と、同じだな」 「……ヨウイチ、も?」 「ああ、そうだ。俺も、昔な」 「昔……?」 「ああ。そうだな、ゆきみがしゃべったんなら俺の事も話さなきゃな。実は俺はな、ちょいと厄介な家で生まれたんだ」 ヨウイチはどこか遠くを見て、皮肉っぽく笑った。手はどこか震えていて、目もうっすらと暗くなっている。 「小さい頃から俺はな、両親に『私たちのことを聞いていればあなたは幸せになれるの』『私たちの言うことを聞かない子はいらない』って言われて生きてきた。親の機嫌が第一で、俺の気持ちなんて何も考えてくれなかったんだ。ちょっと反発しただけで一日中飯抜きなんて当たり前だったし、暗い押し入れの中に三日間閉じ込められたこともあった」 「……ヨウイチのお父さんとお母さんが、そんな、ことを?」 「ああ。『お前はだらしが無くてすぐに怠けるクズ人間だから、私たちがこうやってお前を矯正しているんだ』『お前を学校に行かせるためにどれだけ私たちが汗水たらして働いてきたと思っているんだ』『他の家庭ならお前みたいな怠けものは直ぐに捨てられてしまうからな、私たちに感謝しろよ』……あー、くそ。思い出しただけで腹立ってきた」 「ヨウイチ……泣いているの?」 「……」 ゆきみから目線を逸らしながら、ヨウイチは鼻を噛んだ。目にはうっすらと涙が滲んでいる。 「……そうだよ、俺は、心の奥底では傷ついていた。親に叫びたかった。どうして俺をそんなに貶すのかって。だから俺、一年前にさ、両親に言ったんだよ。『そんなに俺が嫌いなら、俺は家を離れる。それでいいだろ』って。そうしたら親が怒鳴ったんだよ。『私たちが今までどうしてお前を育ててきたんだって』。そして俺がどうして、って聞いたら、さ……」 ヨウイチはもう一度大きく鼻を噛んで、自傷気味に笑うと、財布から生徒手帳を取り出して、ゆきみに見せた。 「ほれ、名字の次に下の名前で……養、一。これでヨウイチって読むんだ」 「養う……?」 「ああ。『一人で養う』で養一。つまり俺は……親を養うために生まれてきたんだ」 ゆきみの手から、ヨウイチの生徒手帳が滑り落ちた。 「俺の存在理由は、両親のため。両親の都合のいい、命令に従順な奴隷を作るために、今まで俺を育ててきたって、ことだ……ああ、ひどいさ。俺の人生はつまり、両親のためだったんだよ。しかも俺の名前に一生消えない刻印を残してさ。キラキラネームのほうがまだ良かったよ」 「……それでも、ヨウイチは……」 「ああ。啖呵切ってさ、『あんたらの援助が無くても一人で生きてやる! 絶縁上等だ!』ってな。それで、親が用意していた私立高校の道を蹴って、実家から遠く離れた公立高校に進学したんだよ。親も愛想尽かしてさ、『私たちの命令に背くお前をこれ以上世話したくない』っつってな。もちろん俺もこれ以上親と関係を持ちたくなかったから、こっちから仕送りを拒否したよ。だから今、こんな隙間風吹きまくってるぼろアパート借りてさ、週5のバイト入って必死に高校通ってんだ。まー忙しくて目がまわっちまいそうだよ。だけど……」 ヨウイチは白い歯を見せた。憑き物が落ちたような、晴れ晴れとした顔つきをゆきみに見せる。 「楽しいんだ。自分の人生を、自分で決められる今の環境が、さ」 「自分の人生を、自分で決める……」 ヨウイチの言葉を、ゆきみは何度も、何度も何度も、復唱する。 「ああ。生まれた理由なんて選べない。だけど、生きる目的なら選べる。俺はそうやってこの道を選んだ。必死にバイトして大学進学の資金を溜めて、本当に自分がやりたかったことを、大学でやるんだ」 そしてヨウイチは、すう、と手のひらをゆきみに差し出した。 「だから、さ。ゆきみも、一緒に生きようぜ。誰かから命令された人生じゃなくてさ、自分で選ぶ人生に、さ。そっちのほうが、楽しいぜ」 「私、私の人生は……」 ゆきみはぽろぽろと涙をこぼしながら、自分自身の心に問いかける。胸に秘めた、本当の自分の心に。 「私は……人を、人を、温かくする、雪女になりたい……でも、できるかな、私に」 「出来るさ、ゆきみなら」 「でも、どうやって……」 「人間はそれなりに強い生き物なもんでな、積もった雪を駆け遊んだりさ、スキーなんかも楽しんだりとかしてるよ。雪は何も、人に危害を与えるものじゃない。使いようによっては、心を温かくしてくれるんだ」 「……本当?」 「ああ。さっきのガキどもの顔見ただろう?雪を待ち望む、わくわくした顔をさ。俺も昔、あのガキと同じ年だった時も、積もった雪の地面を走りまくって雪合戦したり、雪だるまとか作ったりした。それで遊び疲れて雪にどしゃって体を預けるとさ、火照った体で雪が、温かくなるんだよ。冷たくなんて感じない。雪で遊ぶのが楽しくて興奮して、心が温まってるんだ。だから、雪の寒さなんて気にしないのさ。ガキどもが半袖半ズボンなのも、そういう理由だよ。あいつらは、雪が大好きなんだ」 「人の、心が、温まって……」 「そうそう。ゆきみが着ているその服も、温かいだろう?」 「うん、温かい……温かい、温かいよぉ、温かいよぉ……」 ゆきみの熱い涙粒が一粒、また一つ頬を流れていき、マフラーを濡らしていく。ヨウイチは涙を指で拭ってあげながら、ゆきみの顔をじっと見つめる。 「いいんだよ、ゆきみが生きたいようにさ、生きたらいいんだよ。生まれなんて関係ないさ」 「……っ!」 ゆきみは決壊を超えた涙があふれて止まらず、たまわずヨウイチの体に抱きついた。 ヨウイチは無言でゆきみの背中に両手を這わせ、大切そうに胸元によせる。 そして二人は、真冬の空の下、お互いに抱きしめ合いあった。ヨウイチは何度もゆきみの背中を撫で、ゆきみは熱い涙をヨウイチの胸に濡らし続ける。 二人はしばらくずっと、お互いにお互いの温かい心の気持ちを、与え続けあっていた。 ・・・ 「おおー、ゆきがふりましたなあ」 「そうですなあ、たのしいですなあ、とえぃっ」 「うひゃあ、ゆきがっせんですー」 「よーしおおゆきだまをくらえーっ」 「ぬあーっ」 「わはー、やはりゆきはたのしいですねえ」 「やはりさむいきせつにはゆきまつりですね」 「ゆきといえば、ついせんじつあったあのとしのさカップルですが」 「あのおねえさん、やっぱりゆきのようかいでしたのですか」 「ううん、かもしれませぬなぁ」 「そういえば、おねえさんのかれしのおにいさん」 「おにいさんにちかづくだけで、ほんのりとあたたまりました」 「まるでこのゆきのように、あたたかいですなぁ」 「なぬ、ゆきがあたたかいともうしますかい」 「きみのからだがほかほかしているからでしょうかな」 「いたしかたあるまい。ゆきをまえにしてはしゃがぬなど、しょうがくせいのかざかみにもおけませぬ」 「そうすると、ゆきというのはふしぎですね」 「というと」 「つめたいゆきではしゃいでいる、われわれのからだとこころは、じつのところあったまっているのです」 「これいかに」 「ふしぎですなあ」 「あのとしのさカップルみたいですねえ」 「あのふたりが、われわれのこころをあたたかくするゆきを、ふらせてくれたのでしょうなぁ」 「あたたかいゆき、ですねえ」 |
テレグノシス 2015年12月15日(火)19時14分 公開 ■この作品の著作権はテレグノシスさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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2016年01月30日(土)18時02分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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つとむュー様 ご感想ありがとうございます! >この人間暖房機と雪女の組み合わせ。 お互いが体温や特徴を求め合う構図になっているのがとても良かったです。 まず「人間抱き枕」というフレーズがある日突然頭の中に入ってきまして。 それで冬、雪、雪女……となって、主人公の人間暖房機だ、と着地した次第です。 この設定は色々と賛否両論ありました。 ラノベに限らず様々な創作物は「え、どういうこと?」みたいな設定が沢山あります。 本作ではそれが「人間暖房機」ですが、こういう無茶な設定をどうやったら読者に受け入れてもらえるか。 今後の課題にしていきたいと思います。 >ヨウイチのような汗かきの人は汗臭いというイメージがあるのですが、 そういったことを感じさせない描写も良かったと思います。 そうですね、全体的に爽やかな印象を主人公には心がけました。 主人公はやっぱり清潔感がないと。 >名前が無いという設定は、ちょっと強引かなあと思いました。 が、ゆきみという名前を付けてあげることによって、二人は特別な関係になったわけで、 読者にそう感じさせる効果は絶大だったと思います。 確かに強引でしたね。 いっそのこと改名、ということにしたらよかったかな? いやでも、それよりも初めての名付け親、という新鮮さが無くなってしまう……? 難しいところですね、でも、褒めて頂いて嬉しい限りです。 >しかし、ヨウイチの家庭事情は、ちょっと極端すぎるような気もします。 ヨウイチの体質についても、なぜそうなったのか最後まで説明がないので、 それを説明できるような家庭事情にするという手もあったんじゃないかと、感じました。 これもまた強引でした。 体質と結び付けようとは考えましたが、どうも上手くいかず。 それよりもゆきみが納得するようなお話にしたほうがいいだろう、と。 理屈より道理だと。 そう考えてやった結果、こんな感じに。 無理矢理すぎると、やはり読者も「うーん」となってしまうのでしょう。 でも理屈をこねまわすと、そもそも人間暖房機は科学的にどうなんだ、という原始的な疑問に辿りついてしまうことに……。 難しいですね。 読者に納得してもらいやすい設定の決め方を、これからも考えていきたいと思います。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月30日(土)18時01分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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ハイ様 ご感想ありがとうございます! >これは「暑がり」と言っていいのでしょうか?w なんていうかもう、異能力ですよね。 ちょっとやりすぎましたね……。 分かりやすさを重視したいがために、とんでもなく暑がりにした結果、あんなことに……(笑) ここを受け入れてもらえるかどうかがこの作品の最大の難関でした。 >文章の矛盾や会話のやりとりの不自然さについて はい、色々抜けていました、お恥ずかしい……。 こういうところをしっかりと確認できないと、駄目ですよね。 大反省します。 >自分の人生を自分で決められるようになってからが、人生の本番ですよね。 そうなんですよね、そこからなんですよね。 如何に自分の人生をコントロールできるか。 それを説教っぽくならないように伝えることに力を入れました。 そこを共感していただいて、ホッとしています。 >おおむねよろしかったですが、ところどころの単語の使い方が怪しい部分がちらほら散見されました。 うう、面目ないです……。 日ごろから文章チェックや単語確認を徹底してまいりたいと思います。 >最後の小学生たちの会話は賛否両論の可能性がありますが、私的にはアリです。 この話の雰囲気にマッチしていて、単なる感動で終わらせない締め方だったと思います。 そうですね、しんみりと余韻が残るような感じにしたかったので、小学生たちに再登場してもらいました。 小学生たちが遊んでいるその雪には、主人公と雪女の愛情が籠っているんだ。 そんなしみじみとした読後感を狙ってやってみましたが、ご好評いただいて嬉しいです。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月30日(土)18時01分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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おとぎの国のアリス様 ご感想ありがとうございます! >有ると無いでは生活が一変しますからね。幸いにも今年は、暖冬で楽な年越しを迎えられそうです。 雪国の方でしたか! 私はこれまで雪にあまり縁が無かったので、「雪=非日常」 なイメージが湧いていました。 雪国ですと大変ですよね…… >キャラクターの設定、描写に関しましては申し分ないと思います。 巧いこと組み上げられたなぁと、感心することしきりでした。 設定と描写という、小説にとってキモとなる部分を褒めて頂き嬉しい限りです。 特にゆきみの可愛さを感じ取ってくれたら、至上の喜びでございます。 >冒頭からラストまでまったく同じテンポでお話が続いていくことでしょうか。 ちょっとストーリーが一直線すぎたきらいがありましたね。 他の方も指摘されていましたが、テンポの付け方についても今後学んでいきたいと思います。 >バシッと決まったかといいますと、ややパンチ不足感は否めませんでした。 おそらくその理由は、主人公の過去について唐突すぎたのではないか、と内省しています。 もう少し複線を張って、すんなりと理解(それでいて以外だな、と思わせる)させることができたのではないか、と。 納得はしてくださったようなので、あとはその見せ方、ですね。 >ゆきみを迎えに来る。どうする、ゆきみ?どうする、ヨウイチ? こんな、なにがしかの決断を迫られる展開があってもよかったかもしれませんね。 主人公のヨウイチの葛藤が足りなかったですよね。 ゆきみを受け入れるか受け入れないか。 私は「こんなカワイイ女の子を見捨てられるか!」という意識があまりにも先行してしまい、 主人公にそういった葛藤を芽生えさせる考えをもつことが出来ていませんでした。 静かなお話、という印象を持たれたのでしたら、もう少しラノベチックな雰囲気に変えた方が、いいのかな……? やはりもっと文章を柔らかくしないと……。 >この噂って、結局なんだったんでしょう? 松岡修○さんです。分かりにくかったですね……(恥) ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)22時30分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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ウサリアス様 ご感想ありがとうございます! >ゆきみの年齢が、分かりづらいのが、少し引っ掛かりました。 そこは抜けてしまいましたね。 ご指摘にある通り、幼女と一言に言っても年齢層にかなり開きがある。 小学何年生に見えるな……という描写一つ入れるだけでも、もっと分かりやすくなりますね。 幼女という言葉に完全に甘え切っていた(?)からこその失敗です。 今後は気を付けたいと思います。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)22時29分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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青出様 ご感想ありがとうございます! >人を傷つけたくなくて雪を降らせることを躊躇していた雪女が、 雪を降らせることで人を喜ばせることもできることを知るというのは、 創意工夫にあふれたラストだったと思います。 雪女というキャラの落とし所はここだろう、と考えてラストを作りました。 やはりラストを褒められると、うれしいですね。 >彼の存在が周囲を温かくしている様子が読み取れて、作品世界にとてもいい雰囲気が漂っていました。 はい、そうなんです! そこなんです! 暑がり→ハートウォーミング、という繋がりを意識させるのが今回の作品のメインです。 冬、という、体が凍える季節に、暑がりの主人公が回りを暖かくする。 そんな雰囲気を感じ取ってもらえたならば、もう成功です。 >とくに、名前を付けるシーンが好きです。彼女のほおの様子のかわいらしさがとてもよく伝わってきました。 性格的にも、大人びすぎず、リアルな子供っぽさも控えめで、ラノベのキャラとしてちょうどよいさじ加減になっていたのではないでしょうか。 幼女キャラの設定にはこだわりましたね。 ラノベのキャラっぽさ、というのが上手く伝わったようでなりよりです。 >余談ですが、着物が死に装束というところ、ゾクッとしました。オカルトネタが好きなので、すごく惹かれるところでした。 私も最近知ったのですが、結構いろんなところで使えそうな「シリアス」ネタだと思います。 >ストーリー的にもキーとなるキャラ達ですが、妙にこましゃくれていて憎めない感じが好きです。 「人類は衰退しました」の妖精さんは最高ですよね(朗らかな笑顔で)。 >ゆきみは「雪女の能力を復活させたい」ということを話していますが、 ここをもう少し強く押し出してもいいのかなあと思います。 確かにゆきみからは「危機感」を感じませんでしたね。 例えば「●●日までに能力を取り戻さないと消滅してしまう」くらいの危機感を持たせればよかった。 どうなるんだろう、と強く思わせる取り組みが必要でした。 >感情描写で違和感があるところがありました。 反省しかないです……。 >以下気になった文章表現です。 (自分自身に腹パンする音) 丁寧に文章を書く姿勢を、大切にしたいと思います(涙目) ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)22時28分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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いりえミト様 ご感想ありがとうございます! >正統派のライトノベルという感じでしたね そうですね、なんかそんな感じを狙ってやってみました。 ちょうど長編執筆に行き詰っていたところで今回の企画に参加したのですが、 褒めていただいて光栄です。 >主人公・ヨウイチの『人間暖房機』という設定は一見バカバカしいくて、 最初は「なんじゃそりゃw」と思いながら読んでいました。 ストーリーの序盤から「はいこういう設定でやります」 という暴力のような勢いで進めようとすると、上手いこと読者もついて来てくれるのではないかと。 そんな狙いでやってみましたが、ついて来てくれてうれしいです。 >互いの弱点を補い合うような、主人公とヒロインのコンビがよかったと思います。 私の好きなジャンルは「共依存」です。よろしくお願いします(真顔)。 >ただ、中盤にもうちょっとイベントが欲しかったようにも思いました。 >もちろん、この枚数では厳しいとは思いますが……。 そうですね、ちょっと詰め込み過ぎたきらいがありますね。 もういっそのこと、序盤からすでに主人公と雪女が同居しているくらいの勢いのほうがいいかもしれません。 二人が出会ったときのエピソードを二文三文で収めると、ページ数にかなり余裕が生まれる。 >あと気になったのは、ヨウイチの両親についてです。 束縛していたことはともかく、名前の由来に関しては、さすがに両親酷過ぎるだろうと思いました。 このあたりも、枚数を考えた上で、「分かりやすさ」を重視したのだろうとは思いますが。 分かりやすい「悪」を作るために、そうしました。 しかし、やはり滅茶苦茶だなぁ、と思われてしまったことは反省点ですね。 そのあたり、もう少し分かりやすくて理解しやすい「悪」の設定方法を考える力を身につけないと……。 >とはいえ、この枚数としてはしっかりまとまっていましたし、王道ラノベとして楽しめました。 その言葉で、失っていた自信を取り戻せました……! ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)22時28分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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モンハンほも様 ご感想ありがとうございます! >それだけに冒頭が惜しいです。 字下げができておらず、失礼ながら文章もそこまで書き慣れてなさそうだったので、 この時点で読むのを止めてしまう人も多いのではないでしょうか。 なんで最終チェックを怠ってしまったのだろう、と今でも後悔しっぱなしです。 >文章については指摘が難しいのですが、丁寧に書きすぎとでもいいましょうか。 そうなんですよね、わざわざ書かなくても伝わるよ、ということも書いてしまうんです。 そうすると文章としてのテンポが著しく低下してしまう、という。 書き始めの段階は三人称にしたほうがいい、というアドバイスの元書いてみたのですが、 いっそのこと一人称のほうがやりやすそうですね。 一人称にすると、変にこねくり回した文章にすると一発で違和感が分かるので、逐次修正が可能ですし。 >キャラのバックグラウンドもしっかり見えましたし、ラストの締め方も上手かったと思いました。 ありがとうごさいます。 特にラストは、暖かい雪、というフレーズを子どもたちに言わせたいがためにやりました。 そこを褒めていだたいて、嬉しい限りです。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)22時27分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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筋肉バッカ 様 ご感想ありがとうございます! >雪といえば一般的には冷たいイメージですが、その雪の妖怪である雪女が暖かさを求めるというのはおもしろい着想だと感じました。 主人公とのやり取りも微笑ましいものがありました。 主人公とのやり取りを褒めていただいたことが一番の収穫です。 >ヨウイチとゆきみの出会いですが、ヨウイチ君があっさりゆきみのことを受け入れすぎだと思いました。 もう少し動揺や恐れを見せてくれたほうが自然かなと。 言い訳をします。 動揺とか恐れを見せるシーンを入れると、どうしてもテンポが悪くなりそうだ。 それよりも早くヒロインとのいちゃいちゃシーンをブチ込みたい。 ……で、一気に飛び越えてしまおう、と やっぱり葛藤は必要ですよねぇ。 簡単にやりすぎた、というのは反省材料です。 >強制された生き方を変えようと行動しているのではないかなと感じました。なので、強制力というものが絶対的なものではない気がして、 ゆきみの苦しみというのがいまいちピンときませんでした。 はい……完全にそれはミスです。 ゆきみの苦悩を、雪女としての強制力をもっとしっかり考えるべきでした。 いきなりシリアスになったかと思えば、悩んでいる理由がまったく共感できない。 最悪のケースですね。 もっとキャラの立場に立ったストーリーの道筋を作っていこう、と思います。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月29日(金)21時32分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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99kg 様 ご感想ありがとうございます! >作風の割には難しい漢字や言い回しが多い。 私の悪癖に「なんか難しそうな言い回しにすればなんかそれっぽい感じになるだろう」 がありまして、それでかなり読みにくくなってしまっていまいました……。 これは本当になおさなきゃいけないところですので、改善したいと思います。 >惜しまれるのはヨウイチの体質について何も触れられない事でしょうか。 過去に体質の秘密があるのかと思いきや、別にそれは関係なかった。 この作品は、あくまで「妖怪」と「人間」との絆を書きたかったんです。 人間が妖怪と同じ土俵に立つためには、どうしても人間側の主人公に、妖怪とタメを張れるくらいの「特性」を持たせる必要がある。 そう考えての、極度な暑がり、という設定でした。 そうすれば雪女という妖怪と、同じフィールドに立てるだろう、と。 そのため、「暑がりというにも程というものがあるだろう」と思われるのは、もう仕方がないことだと。 そう思わせるくらいに主人公の特性を際立たせてやろう、と考えたんです。 しかしやはり違和感は覚えるもので。 そもそも主人公の暑がりはもはや妖怪と同程度なのではないか、と。 思いきってギャグテイストにすれば良かったのかな……? でも、その暑がりという設定で、主人公と雪女が抱き合って眠るというシーンが作れると……! >普通体温が高い人は周りを寒く感じる。風邪を引いて熱が上がった時に寒気を感じるのはその為だ。 という話がありますが、これには科学的根拠はないそうですね。 まじですか(失神) >実際体温高すぎると体に色々と弊害が出て長生きは難しいのですが、 そういう所からゆきみがなくてはならない存在になるとドラマになったのかな、とも思います。 プラスとマイナスが引き合うように、二人が自然に出会い求め合う展開は非常によいのですが、 それだけにヨウイチの設定が、その為だけに無理矢理つけられた感じがしてしまいます。 ヨウイチの設定にマイナスの要素を付けることは、どうしても怖気ついてしまいましたね。 一応「暑がり過ぎて日々の生活が億劫」みたいな要素はあるんですが、根本的なマイナス、という訳でもない。 もっとこう、お互いを求めあう姿を見せつければ……。 そうか、共依存か。 あと分かりにくすぎる文章や単語の選び方……精進いたします。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月25日(月)23時28分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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ピューレラ様 ご感想ありがとうございます! >自身も異様なほど体が熱くなる体質であるならば、多少は自分の反対の体質の子なのかも? と思ってもおかしくない、そう考える方が自然なように考えました。 あーなるほど、主人公が雪女のことを「俺と正反対の奴や」と思うほうが 分かりやすくて自然ですね。 雪女登場のシーンでドンと「妖怪です」みたいな決め打ちをしてしまったので、 ちょっと不自然でした。 登場シーンを変更するならば、 ・コンビニ帰りの主人公が、暖かいところなのに寒さでぶるぶると震えている女の子を見つける ・主人公は「自分と正反対な奴がいたもんだ」と思うが、実は女の子は寒がりな雪女だった といった感じでしょうか。 こうすると、主人公と雪女の対比が上手く頭に入りこんできやすいのかな、と。 >この部分、笑いました。こういうネタ好きです。 ありがとうございます(笑) ここらへんは完全にノリで思いついたのをブチ込んだ感じです。 >こういう暗くなりがちな設定や語りは敬遠される時もありますが 物語を深くする大事な部分だと思います。 そうですねぇ。 暗い設定については、それを抱えるキャラ自身がそれを既に乗り越えていることが重要なのでは ないかと考えて書きました。 この部分が物語のキモなので、そこを評価していただいて大変光栄です。 ご感想ありがとうございました!
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2016年01月22日(金)16時31分 | テレグノシス | 作者レス | ||||
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タカテン様 ご感想ありがとうございます! >なんだこの小学生たちは?w これはあれです、「人類は衰退しました」の妖精さんをイメージして書いてました(笑)。 確かに小学生を使うのであれば違和感なく素直なセリフを挿入できますね。 ヨウイチとゆきみの関係を歳の差カップルと見立てるための会話シーンでしたが、 変な言いまわしにすることなく直球なセリフを出したほうがいいかもしれませんね……。 >小学生たちにからかわれて、ゆきみが逃げ出すシーンですが、 そこまで彼女が追い込まれている印象を受けませんでした。 あー、確かにゆきみが追いつめられている感があまりなかったですよね。 本来のプロットでは、最初の場面で ・主人公がコンビニのラジオで、雪山で遭難していた登山者が凍死体で発見される、というニュースを聞く というのを入れて、終盤で登山者を殺したのはゆきみだった……としていたんです。 でもさすがにそれはやりすぎだしヨウイチも対処しきれないだろう、ということで消去しました。 ゆきみ自身にもっと葛藤させる場面を作りたかったんですが、うまくいかず……。 >そのおねーさんに「雪女は人間に害なす者」であることを言わせ、 動揺するヨウイチの様子に嫌われてしまったとゆきみが逃げ出すと、 より自然な展開になるように感じます。 そうか、ヨウイチに大きな葛藤をさせればよかったんですね。 確かにヨウイチの方も、ちょっと雪女であるゆきみを家の中で受け入れるのが安直すぎた、という反省もあります。 コメディみたいなノリにして強引な設定を押し切る形にしたんですけど、 それが結局後半の話で突っかかって、なんともぎくしゃくした感じになってしまいました。 主人公側にももっと葛藤させてやればよかったんですが……。 そこでご指摘にもあった、雪女のおねーさんを登場させると言う案。 二人の関係を一番俯瞰的に見れる立場ですので、確かに一番、二人の関係を揺るがせやすいキャラなんですよね。 そのアイデア、つまり、物語を俯瞰的に見れるキャラの設定の仕方は、大変参考になりました。 ご感想、ありがとうございました!
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2016年01月17日(日)18時42分 | タカテン yRNUcsqs0o | 10点 | ||||
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冬企画への参加、お疲れ様です。 拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。 (良かった点) ・ ヨウイチとゆきみの関係性 ただ幼い雪女を拾った、のではなく、ヨウイチはゆきみに冷やされて、ゆきみはヨウイチに暖められて、お互いを必要とする関係性が良かったです。この手の話は女の子が一方的に主人公に依存する傾向が強いのですが、ヨウイチの特異体質で上手くゆきみの居場所を作っていたと思います。 ・ ヨウイチの名前がカタカナ表記の理由 最初はあまり深く考えていませんでしたが(実際名前が意味もなくカタカナ表記ってのはよくありますし)、ゆきみがユキミではなく、ゆきみであるところでなんとなく意味があるのかしらんと勘ぐっていましたが、まさかそんな漢字表記だったとは……両親はニートかよw とは言え、カタカナ表記に意味があったのは良かったと思います。 (気になった点) ・ なんだこの小学生たちは?w 最初にふたりをカップルだと囃し立てる時もセリフに違和感がありましたが、どうしてこやつらのセリフで話を締めくくったし? いや、やりたいことはわかるのですが、もっと素直な小学生らしいセリフでよかったんじゃないでしょうか。なんかね、そのセリフには子供って言うよりも笑天のメンバーを見ているような年齢を感じましたよ(ぁ (自分ならこうするという無責任なアドバイス) 小学生たちにからかわれて、ゆきみが逃げ出すシーンですが、そこまで彼女が追い込まれている印象を受けませんでした。 ここはモブな小学生よりも、ゆきみを山に連れ戻そうとやってきた雪女のおねーさんでも登場させた方がいいんじゃないでしょうか。そして、ゆきみ自身から「雪女としての存在意義」を語らせるのではなく、そのおねーさんに「雪女は人間に害なす者」であることを言わせ、動揺するヨウイチの様子に嫌われてしまったとゆきみが逃げ出すと、より自然な展開になるように感じます。 で、最後にゆきみが雪を降らすシーンも、そのおねーさんが「雪女なのに、温かい雪を降らすなんて……。まぁ、でも、そんな雪女がいてもいいのかもね」と、実はゆきみを強引に連れ戻す為にやってきたのではなく、ゆきみを心配してやってきたという事情をほんのり匂わせたりするとなんかいい感じのような気がします(適当 それでは失礼いたします。 執筆お疲れ様でした。
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2016年01月17日(日)13時45分 | ピューレラ | 0点 | ||||
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お疲れ様でした。 いくら親からの仕送りが無いとはいえ、お腹をすかせている幼女に あまりにも無碍に別けてあげないところに引きました。 ごく普通の高校生が「雪女かも?」という女の子に出会ったら信じられないという態度に なるのは自然だと思うのですが 自身も異様なほど体が熱くなる体質であるならば、多少は自分の反対の体質の子なのかも? と思ってもおかしくない、そう考える方が自然なように考えました。 そして暑がりのヨウイチの部屋に炬燵があった事もあれ?という感じでした。 【好きだった点その1】 >「人間の世界で、天候を操る妖精と称えられている元テニスプレイヤーの男性がいるっていう噂を聞いたんだけど……本当?」 この部分、笑いました。こういうネタ好きです。 【好きだった点その2】 ヨウイチの出生の秘密が語られるところか好きでした。 こういう暗くなりがちな設定や語りは敬遠される時もありますが 物語を深くする大事な部分だと思います。
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2016年01月10日(日)15時09分 | 99kg mXR.nLqpUY | 0点 | ||||
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作風の割には難しい漢字や言い回しが多い。 せっかく今回ルビが使えるのだから使ってくれると読み易かった。 惜しまれるのはヨウイチの体質について何も触れられない事でしょうか。 過去に体質の秘密があるのかと思いきや、別にそれは関係なかった。 本当にただの汗かきだったんでしょうか。それにしては尋常ではない。 始めは自身の周りの温度が上がる、熱を回りに発生させる能力なのかと思いましたが、本当に体温が高いだけの人だった……という結末っぽい。 片方が妖怪なのに対し、もう片方が人間というのはなんか後味の悪さと言うかそんな感じがします。 ホントは何かあるんだよね? 秘密があるんだよね? という期待が最後まで捨てきれないが、それが救われる事がない。 普通体温が高い人は周りを寒く感じる。風邪を引いて熱が上がった時に寒気を感じるのはその為だ。 という話がありますが、これには科学的根拠はないそうですね。 実録される生まれつき体温が高い障害を持った人は怒りっぽく、情緒不安定で物凄い力を出したそうです。 るろうに剣心の志々雄真実(ししお まこと)が発汗できなくなって体温が上がり、尋常でない力を出したのはそういう所から来ています。 実際体温高すぎると体に色々と弊害が出て長生きは難しいのですが、そういう所からゆきみがなくてはならない存在になるとドラマになったのかな、とも思います。 プラスとマイナスが引き合うように、二人が自然に出会い求め合う展開は非常によいのですが、 それだけにヨウイチの設定が、その為だけに無理矢理つけられた感じがしてしまいます。 >常備装備 常備でいいんではないでしょうか。 >ヨウイチの体に近づくだけで...、部屋の温度をじわりと上げてしまうほどなのだ。 ヨウイチに近づくと部屋の温度が上がるのは誰かが近づくと発熱? >全身雪女 全身雪女って何だ!? 片腕サイボーグみたいなノリだろうか >閑話休題 閑話休題というほどには脱線していないのでは。 というのは単なる突っ込みです。
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2016年01月05日(火)19時25分 | 筋肉バッカ 9.WICozezU | 0点 | ||||
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こんにちわ。読ませていただきました。 雪といえば一般的には冷たいイメージですが、その雪の妖怪である雪女が暖かさを求めるというのはおもしろい着想だと感じました。主人公とのやり取りも微笑ましいものがありました。 気になった点です。 ヨウイチとゆきみの出会いですが、ヨウイチ君があっさりゆきみのことを受け入れすぎだと思いました。もう少し動揺や恐れを見せてくれたほうが自然かなと。 >>でっ、でも……私は、人を襲うために生まれてきたんだよ……? そんな簡単に、自分の生き方なんて変えられないよ…… それと上記のゆきみのセリフなのですが、ゆきみは結局、人を襲えと教えられただけで、人の命を奪ったことはないのですよね? そして、自ら雪山を離れた。とすると、完全にとは言えないまでも、強制された生き方を変えようと行動しているのではないかなと感じました。なので、強制力というものが絶対的なものではない気がして、ゆきみの苦しみというのがいまいちピンときませんでした。 以上です。 執筆おつかれさまでした。
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2016年01月04日(月)11時33分 | モンハンほも | 10点 | ||||
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拝読いたしました。 まず最初に。冒頭だけで判断するとあまりいい印象ではなかったのですが、全部読んでみると面白かったです。キャラのバックグラウンドもしっかり見えましたし、ラストの締め方も上手かったと思いました。 それだけに冒頭が惜しいです。字下げができておらず、失礼ながら文章もそこまで書き慣れてなさそうだったので、この時点で読むのを止めてしまう人も多いのではないでしょうか。少なくとも字下げぐらいはしっかり見直して頂ければと思います。 文章については指摘が難しいのですが、丁寧に書きすぎとでもいいましょうか。主語・述語をしっかり意識されているので基本は理解されているのだと思うのですが、作品の雰囲気を考えると一人称でテンポを意識した方がベターかなと思いました。 拙い感想で申し訳ございません。 以上、失礼いたしました。
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2016年01月04日(月)13時59分 | いりえミト | 20点 | ||||
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こんにちは。 御作『人恋し幼雪女』を拝読したので、感想を書かせていただきます。 正統派のライトノベルという感じでしたね。よかったと思います。 主人公・ヨウイチの『人間暖房機』という設定は一見バカバカしいくて、最初は「なんじゃそりゃw」と思いながら読んでいました。 でも、『雪女なのに寒がり』というヒロイン・ゆきみのキャラと組み合わせることで見事な効果が発揮されているんですねぇ。そのあたりが上手かったです。 互いの弱点を補い合うような、主人公とヒロインのコンビがよかったと思います。 ストーリーとしては王道な感じでしたね。 名前をつけるシーンや、お互いの胸の内を明かして分かり合うクライマックスなど、ラノベ的な面白さのツボをしっかりと押さえている印象でした。 小学生の会話で締めるラストも、いい感じだったと思います。 話の展開としては、短編としてまとまっていると思います。 ただ、中盤にもうちょっとイベントが欲しかったようにも思いました。 ヨウイチとゆきみが、スムーズに仲良くなった感じだったので、時には喧嘩をしたりとか、一緒に遊びに行ったりとか、そういったイベントを経験して徐々に仲良くなっていく過程が欲しかったかなとも感じました そういう過程を経たほうが、ラストシーンもより盛りあがるのではと思うので。 もちろん、この枚数では厳しいとは思いますが……。 あと気になったのは、ヨウイチの両親についてです。 束縛していたことはともかく、名前の由来に関しては、さすがに両親酷過ぎるだろうと思いました。 両親との確執というのは、ヨウイチのキャラを確立させるために必要であることは確かだと思いますが、もうちょっと自然なエピソードはなかったものかなと。 このあたりも、枚数を考えた上で、「分かりやすさ」を重視したのだろうとは思いますが。 上記の2点を考えると、長編向きの内容だったのかなという気もします。 とはいえ、この枚数としてはしっかりまとまっていましたし、王道ラノベとして楽しめました。 私からは以上です。 執筆おつかれさまでした。
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2016年01月02日(土)01時12分 | 青出 | 10点 | ||||
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こんにちは。感想を書かせていただきます。心のぬくもりと気温を関連させたアイデアが光る作品で、心が温まりました。 ここが好きです ○テーマ 人間の少年と雪女が温度を介した交流を通して、それぞれに生きる目標を発見していく物語、と解釈しました。人を傷つけたくなくて雪を降らせることを躊躇していた雪女が、雪を降らせることで人を喜ばせることもできることを知るというのは、創意工夫にあふれたラストだったと思います。 ○キャラのアイデア 体が熱を発する少年と寒がりの雪女というキャラは、組み合わせも抜群で興味を惹かれるものでした。ヨウイチの能力は一体何なのでしょうか。不思議ですね。彼の存在が周囲を温かくしている様子が読み取れて、作品世界にとてもいい雰囲気が漂っていました。 ○ゆきみ 幼女キャラは難しいなあという印象を自分は持っているのですが、ゆきみは出色だったと思います。とくに、名前を付けるシーンが好きです。彼女のほおの様子のかわいらしさがとてもよく伝わってきました。性格的にも、大人びすぎず、リアルな子供っぽさも控えめで、ラノベのキャラとしてちょうどよいさじ加減になっていたのではないでしょうか。 余談ですが、着物が死に装束というところ、ゾクッとしました。オカルトネタが好きなので、すごく惹かれるところでした。 ○小学生 最後の会話が笑えました。ストーリー的にもキーとなるキャラ達ですが、妙にこましゃくれていて憎めない感じが好きです。 ここが気になりました ○ゆきみに強い動機があるといいと思います。 冒頭、主人公ヨウイチの紹介から始まって、ゆきみとの出会いが描かれ、ふたりの同居生活が語られるわけですが、その先の物語を読み進めさせる牽引ネタが欲しいと思いました。ゆきみは「雪女の能力を復活させたい」ということを話していますが、ここをもう少し強く押し出してもいいのかなあと思います。この会話部分がギャグで流れてしまっているように感じ、あまり印象を強く持つことができませんでした。読者として「次はどうなるんだろう?」というハラハラドキドキを味わえたら、もっとよかったと思います。 ○感情描写で違和感があるところがありました。 まず、ゆきみとの最初の出会いですが、夜道で幼女に頼まれたら、肉まん1つくらいはあげるかなあと思いました。そういう時間に外にいるということはおそらく家庭的な事情があるのだろうなあということは予想がつきますし、ヨウイチは優しい人物なので。 次に、“「もう怒った! 雪女の矜持を傷つけたね!」”の部分ですが、ゆきみが怒り出すのが唐突に感じてしまいました。もっとわかりやすい挑発があればよいと思います。 ○以下気になった文章表現です。 “帰路へと向かう。”→“帰路へつく。” “ヨウイチは咄嗟に幼女に駆け寄って大事そうに抱き上げる。”→“ヨウイチは咄嗟に幼女に駆け寄って慎重に抱き上げる。”(初対面の人物なので、「大事」という表現は大げさかなと思います)。 “さて、とヨウイチは布団の上に幼女を仰向けにして、ゆっくりと寝転がせる。”→“さて、とヨウイチは布団の上に幼女を仰向けにして、ゆっくりと横たわらせる。”(「寝転がらせる」だと乱暴に落としてしまう印象を持ちました)。 “そして弁当を炬燵の上に乗せ、いただきますと唱和して弁当の山を一気に平らげる。”→“そして弁当を炬燵の上に乗せ、いただきますと言って弁当の山を一気に平らげる。”(【唱和】1 一人がまず唱え、続いて他の多くの人たちが同じ言葉を唱えること。 2 一方の作った詩歌に答えて、他方が詩歌を作ること。dictionary.goo.ne.jp/jn/110589/meaning/m0u/%E5%94%B1%E5%92%8C/ より)。 “ヨウイチはもう一度大きく鼻を噛んで、自傷気味に笑うと、財布から生徒手帳を取り出して、ゆきみに見せた。”→“ヨウイチはもう一度大きく鼻を噛んで、自嘲気味に笑うと、財布から生徒手帳を取り出して、ゆきみに見せた。” その他、誤字と段落一文字目に空白がないところがありました。 楽しませていただきました。今後も頑張ってください!
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2015年12月31日(木)18時14分 | ウサリアス | 10点 | ||||
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どうも、感想専門のウサリアスです。 内容としては、悪くないのですが、ゆきみの年齢が、分かりづらいのが、少し引っ掛かりました。 というのも、幼女といっても、人によっては、幼稚園生の3~5歳くらいだったり、小学生前半の6~9歳、12歳ぐらいまでと幅広いです。 私は、ゆきみは、小学生前半というイメージで読んでいたせいか、小学生の冷やかしや、後半の生い立ちをいうシーンに違和感を覚えてしまいした。 ですので、ゆきみの年齢が分かるような描写を曖昧せず、きちんと書いていた方が、もっと良かったです。特に、シリアスものだと、違和感を抱かせないことへの予防としても、きちんとしておいたほうが、いいのではないでしょうか?
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2015年12月31日(木)04時04分 | おとぎの国のアリス | 20点 | ||||
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拝読いたしました。 心温まる雪のお話でしたね。 私自身、実際雪国に住んでいますので、雪はとても身近な存在です。ですが、正直に申し上げてわたしは、雪が大嫌い!なのです、ごめんなさいぃぃ!! 有ると無いでは生活が一変しますからね。幸いにも今年は、暖冬で楽な年越しを迎えられそうです。 視覚的にも四季が感じられる点においては、寒いだけの太平洋側よりは少しだけ得なのかもしれませんけどね。 おっと、話が逸れすぎましたね。戻します。 対照的な登場人物による、ハートフルコメディ?なのかな。 ゆきみちゃん、寒がり屋の雪ん子。私的には、雪女よりは雪ん子のイメージでした。可愛いかったですね。ちなみに、わたしは寒がりなんでノーサンキュです。ヨウイチのようなことを求められたら、布団から蹴り飛ばしますです。。 戻し。 今作品については、キャラクターの設定、描写に関しましては申し分ないと思います。巧いこと組み上げられたなぁと、感心することしきりでした。 難点を挙げさせていただけるのであれば、冒頭からラストまでまったく同じテンポでお話が続いていくことでしょうか。内容自体は徐々にシリアスな雰囲気をまといますので、飽きるとまではいかないのですが。雰囲気を壊さない程度には変化が欲しいような気もいたしました。 最大の伏線と思われる、ヨウイチの生い立ちと名付けの理由。バシッと決まったかといいますと、ややパンチ不足感は否めませんでした。もちろん、ストーリーとしてはきちんと収められています。充分に納得できるものでした。 どちらかといいますと静かなお話ですので、いかにもラノベチックなキャラを登場させるのも躊躇われます。なかなか難しい設定だと思うのですが。 そうですねぇ―― ゆきみのお母さん、いや、お父さんの方がいいのかな?が、ゆきみを迎えに来る。どうする、ゆきみ?どうする、ヨウイチ?こんな、なにがしかの決断を迫られる展開があってもよかったかもしれませんね。お子ちゃまたちから冷やかされるシーンは、あまり印象的ではありませんでしたので。作者様も苦悩されたのかな? この程度ならば、雰囲気を壊すこともないような気も…。けど、難しいですね。 最後に……。 「人間の世界で、天候を操る妖精と称えられている元テニスプレイヤーの男性がいるっていう噂を聞いたんだけど……本当?」 この噂って、結局なんだったんでしょう?外国人選手にまで広げてみたんですけど、答えが見つかりませんでした。 なんだかまとまらない感想になってしまいました。ご容赦ください。 執筆お疲れ様でした。 炬燵これで「こたつ」って読むんですね、初めて知りました。 炬燵をまったく使用しない地域もありますので、「こたつ」で開いたほうが読者には優しいような気もしました。読みがわかったうえで漢字を見ると妙に納得。なんか、日本語ってすごい! では、またどこかで。優しいお話をありがとうございました。
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2015年12月29日(火)23時56分 | ハイ s7d/2ml3o. | 20点 | ||||
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拝見いたしましたので、感想をおいていきます。 ではまず、気になったところや、面白かったところなどを見ていきます。 >ヨウイチは生まれつき暑がりだった。 >『人間暖房機』 >「ははは。冬の夜11時でも君がいるだけでフロアがこんなに温かいんだよね。ヨウイチ君を雇うだけで光熱費が浮いちゃったよ」 ●のっけから良い意味でも悪い意味でもひっかかったのですが、これは「暑がり」と言っていいのでしょうか?w なんていうかもう、異能力ですよね。 いや、つっこんだら負け、みたいな感じがしますが負けでいいですからつっこみました。 >「でも私、おなかがすいたの。お願い、一個だけでもいいの。ちょうだい?」 「やっ…… や、やらねえ!これは俺んのだ! というかこんな4つも食べられないだろ!」 ●すいません、多分何らかの修正をした際に間の文を消したか、前後で変更があったと思われます。そのためか、会話文のつながりがおかしくなっています。 一個でいいと言っているのに、四つも食べられないだろ、ってつっこみは???でした。 一応。 >「そう。だったら……」 すると幼女は、イラズラっぽく笑って、 「凍らせて保存しちゃえばいいのよね?」 ●この一文も前後の話とつながっていませんでした。 なんで雪見はいきなり保存の話をしだしたんでしょう? ご確認をお願いします。 >(おそらくゆきみは今、己の存在理由に、何かしらの忌避感を持っているはずだ) ●この部分、忌避感であっていますでしょうか? 今一度ご確認を。 >「楽しいんだ。自分の人生を、自分で決められる今の環境が、さ」 ●これ、好きな一言でした。私もそう思います。自分の人生を自分で決められるようになってからが、人生の本番ですよね。 ●文章 おおむねよろしかったですが、ところどころの単語の使い方が怪しい部分がちらほら散見されました。いい作品であればあるほど非常にもったいないので、今のうちにつぶされたほうがよろしいかと思います。こういう人に心当たりがありますが……まあ、今は気にしないことにしておきます。 ●キャラ どちらもキャラが立っていたと思います。特に寒がりな雪女ってのは良いです。すごく良いです。ディモールト良いです。 主人公も良かったですが、暑がりの一言で片付かない体質が面白かったと同時に、なんで? と違和感もありました。 ●テーマ 可も不可もなく、と言ったところでしょうか。 ●ストーリー コメディで進めて、感動系で締める。教科書のお手本といえる良い終わりかたでした。 最後の小学生たちの会話は賛否両論の可能性がありますが、私的にはアリです。 この話の雰囲気にマッチしていて、単なる感動で終わらせない締め方だったと思います。 実のところ、冒頭付近ではさほど期待せずに読みだしたのですが、読み終えた後は心が温かくなる良いお話でした。それだけに、つながりの不明な会話とか、単語の使い方がおしいです。 ともあれ、読んで良かった、そう思える作品でした。 私は、今作を投稿された作者さんに感謝します。 それでは、共にあげていきましょう!
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2015年12月29日(火)22時35分 | つとむュー | 10点 | ||||
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冬企画の執筆、お疲れ様でした。 御作を拝読いたしましたので、感想を記したいと思います。 >『人間暖房機』という風変わりな愛称で呼ばれるヨウイチは、冬の季節でも体の火照りが止まらず、日々の生活にも難儀していた。 まず、設定が面白かったです。 この人間暖房機と雪女の組み合わせ。 お互いが体温や特徴を求め合う構図になっているのがとても良かったです。 今回の企画では、他の作品で炎族と氷族が登場しており、 本作品と比べながら読んでみると、さらに面白いんじゃないかと思いました。 あと余談ですが、ヨウイチのような汗かきの人は汗臭いというイメージがあるのですが、 そういったことを感じさせない描写も良かったと思います。 >「うん、名前ってものは無かったかなあ。雪女の仲間たちとは一緒に過ごしていたけれど、特に名を名乗り合ったとかはなかったかな」 名前が無いという設定は、ちょっと強引かなあと思いました。 が、ゆきみという名前を付けてあげることによって、二人は特別な関係になったわけで、 読者にそう感じさせる効果は絶大だったと思います。 >「楽しいんだ。自分の人生を、自分で決められる今の環境が、さ」 このセリフはとても良かったと思います。 あと、このセリフでゆきみが納得するところも、なかなか説得力があったと思います。 しかし、ヨウイチの家庭事情は、ちょっと極端すぎるような気もします。 ヨウイチの体質についても、なぜそうなったのか最後まで説明がないので、 それを説明できるような家庭事情にするという手もあったんじゃないかと、感じました。 ここからは、個人的な妄想になりますが、 例えば、実はヨウイチは雪男と雪女の間に生まれた子供で、 マイナス×マイナスで、逆に暖房機のような子供が生まれてしまい、 両親は「とても育てられない!」とヨウイチの育児を諦めてしまい、 ヨウイチは施設で育てられて、不自由な子供時代を過ごしていたとか…… あと、ラストは、申し訳ありませんが、 よくわからなかったです。 (こちらの読解力不足だと思いますが……) いろいろ書いてしまいましたが、設定が面白い作品でした。 拙い感想で申し訳ありません。 今後のご活躍に期待しています。
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合計 | 11人 | 110点 |
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